カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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第一特異点邪竜百年戦争オルレアン
変態はカレーうどんの汁並みに落ちない通り名だ。


 なんやかんやで、俺にサーヴァントができた。名前は沖田総司。かの有名な新撰組の一番隊隊長で、剣の腕は天才と謳われた最強の侍とも言えるだろう。それが何故、女性なのかは分からないが、とにかく当たりを引いたと言える。

 しかし、その容姿が問題だ。すごく可愛い、しかしセイバーにそっくりなのだ。セイバーといえば、俺がパンイチで暴れ回り、その所為でキャスターさんに焼かれた人だ。

 ………まさか、本人って事はないよな?そう思って、全員との自己紹介を終えて、とりあえず俺の部屋にいる沖田さんをチラッと見た。

 

「? なんですか?」

 

 明るい表情で聞いて来た。やっぱ、気の所為だよな……。あの人、こんな明るい人じゃなかったし。

 

「所で、沖田さんのクラスは?」

「セイバーですよ!」

 

 いや、やっぱどっちだ……?

 落ち着け、俺。もっと簡単な確認方法があるだろ。

 

「あの、沖田さん」

「はい?」

「もしかして、宝具って約束された勝利の剣だったりします?」

「はい?全然違いますけど」

 

 よし、別人だ。俺は盛大にホッとして、胸を撫で下ろした。

 

「いやー、良かったー。マジであのセイバーだったら死んでたわ。特に心臓が」

「私以外に、セイバーがいるのですか?」

「いないよ?」

「じゃあ、あのセイバーって……?」

「いや、さっきまで俺達冬木市にいたんだよな。その時のラスボスがセイバーだったわけだが、そいつがアーサー王でさー」

「アーサー王って?」

 

 ………あーそっか。沖田さんって鎖国してた時の人だから海外の英雄とか知らないのか。まぁ、それなら仕方ないな。

 

「まぁ、いずれ知り合うかもしれないって事で」

「えー、セイバーってことは剣使う方なんですよね?沖田さん、すごい気になるんですけどー」

 

 気にするなっつの。それより、次の任務がいつになるか分からないんだから、寝てた方が良いかな。

 

「じゃ、俺寝るわ。おやすみー」

「ええっ⁉︎なんで寝るんですか!」

「そりゃお前、今日は疲れたからな……。もう起きてるのも面倒だ」

「わ、私は⁉︎私はどうすれば良いんですか⁉︎まさか、同じ部屋で……!」

「いや、沖田さんには沖田さんの部屋があるんじゃねぇの?」

「マスターなら一緒に探してくださいよ!」

「ロマンかマシュか藤丸さんに聞けよ、おやすみ」

「ち、ちょっとー!」

 

 無視して俺は目を閉じた。相手にしてるタイミングではない。もう疲れたしさっさと寝たい。

 

「ふーん?そうですか?そういう感じで来ますか?なら、沖田さんにも考えがあります」

 

 羊でも数えるか。羊が1匹、羊が2匹、羊が3匹………。

 

「ふんっ」

「あっ、てめっ、布団返せよ!」

「せいっ!」

「ちょっ、わ、脇腹はやめっ……ぷははははは!」

「私のマスターになったからにはもう少しシャキッとしていただきますよ!そんなぐーたらな生活は許しません!」

「てめっ……!マジで疲れてるんだから勘弁してくんない⁉︎」

「疲れてる、というのは働かない人ほど何度も言う言葉なんです!」

 

 くそッ、全国の窓際社員共め………!その文化は新撰組でも同じだったということか。無駄な知識を得てしまった。

 

「俺は本当に疲れてるんだよ!頼むからくすぐるのはやめろ!」

「じゃあ、なんで疲れてるんですか?」

「そっ、それは……!」

 

 レンガを蹴ったらモンスターにたまたま当たり、逃げ回って炎の中にヘッドスライディングしてズボンが燃え、パンツ一枚で宝具展開出来たマシュ達の歓喜を邪魔し、そのまま女の子が三人、英霊が一人いる中でパンツ一枚で共にセイバーを倒しに行き、敵が出て来る度に変態と名付けられ、最後には敵とは言え女の子の前でパンツ一枚で小躍りしながら、演技とは言えパンツを脱ごうとしたなんて言えない。

 

「ほら!やはり特に何もないんじゃないんですか!」

 

 っ!な、何もない、だと……⁉︎俺にあった出来事を知らないとは言えトサカに来たぞ。

 俺はくすぐられながら足を振り上げ、沖田さんの首を脚で挟んだ。

 

「なっ……⁉︎」

「秘技・崩れるレインボーブリッジ‼︎」

 

 脚を力技で振り回し、無理矢理ベッドの上に薙ぎ倒した。完全に油断していたようで、沖田さんはあっさり倒された。そのまま馬乗りになり、両腕を封じるように両膝で押さえつけると、両手を構えた。

 

「っ⁉︎なっ、何をするつもりですか⁉︎」

「そすんす」

「は?そす……?」

 

 この前見たアニメの主人公がやってた。小1でも高1を倒せるように、人間だってサーヴァントを倒せるものだ。

 

「ななななななななななな‼︎」

「あああああああああああ⁉︎」

 

 必殺の鎖骨突きを繰り出した。両手から繰り出される連撃かつ乱撃が沖田さんの鎖骨に的確に直撃して行く。

 

「ちょちょちょちょっと!どどどど何処触っててててるんですかかかかか!」

「フハハハハ‼︎後悔するが良い‼︎我の言うことを聞いて大人しく出て行けばこんな事にはならなかったろうになあ‼︎」

「どどどどドヤ顔で言ううううう事ですかこの変態イイイイイ‼︎」

「好きなだけ我輩を罵るが良い、その度に20発ずつ追加して行くだけだ」

「いいいい好い加減にしななななさい!おおおお怒りますよよよよよよ‼︎」

「馬鹿め!貴様がどれだけ怒ったところでこの状況が打破出来るわけでは……!あ、ちょっ、馬鹿動くなって。どんだけ馬鹿力だよ筋肉ゴリラ」

「いいい言うことにかいてゴリラらららら⁉︎もう絶対に許しませんんんんんん‼︎」

「いや、そうじゃなくてマジで動かない方が」

 

 直後、もにゅっという感触。あまりにも沖田さんが揺れるものだから、俺の突きは狙いが狂った。つまり、おっぱいに直撃した。

 

「あっ」

「えっ」

 

 そのお陰で、乳首を真上から圧迫してる状態でピタリと俺の動きは止まった。

 ………え、何これ、柔らかい。何この弾力。これが、女性のオッパイというものなのか………?

 気が付けば、俺の手は突手モードからキャッチングモードへと変形していた。ああ、柔らかい………。俺が使っていた枕より柔らかい……。これが、女性の胸というものか………。

 

 おっぱいぱい おっぱいぱいぱい おっぱいぱい。

 

 正臣、心の一句。

 そんな事をしながら、気が付けば両手でおっぱいを揉んでると、轟ッと下から魔力が溢れ出てるのに気付いた。

 沖田さんが、顔を真っ赤にして俺を睨んでいた。あ、ヤバイなこれ。

 

「貴様……!本当にいい加減にしなさいよ……‼︎」

「い、いや、待った。俺は言ったぞ?動いたらダメだって。な?それなのに対抗したのは沖田さんの方で」

「いくらマスターと言えども許しません……!」

「分かった、仮に俺が悪かったとしよう。だが、そもそも疲れてると言ってるのにしつこく聞いて来たのは沖田さんの方で」

「覚悟して下さい……最低でも細切りにしますから……!」

「最低でも⁉︎てかタンマ!俺が悪かったです!純度100%で俺が悪かったので勘弁して下さい‼︎」

「菊一文字‼︎」

「うおっ⁉︎」

 

 沖田さんが俺の膝に押さえつけられていた腕を無理矢理動かして腰の剣を握ったため、慌てて飛び退いて逃げた。

 刀を構えたままゆらりと立ち上がり、俺を睨んだ。前髪に隠れた眼光が赤く光ってるように見えた。

 

「沖田さんタンマ!死んじゃう、俺死んじゃうから!」

「それが何か問題でも?」

「大問題だろ!傷害致死だろ‼︎」

「問答無用‼︎」

 

 沖田さんが突きを放ち、俺は慌ててジャンプで回避した。俺の股間の下の辺りのズボンに突き刺さり、ズボンは引き裂けた。

 

「ああああ⁉︎またぁ⁉︎」

「次は貴様の番だ‼︎」

 

 突き込んだ刀を振り上げられ、俺は後ろの壁を蹴って沖田さんの上を跳んで回避した。

 ヤバイ!殺される!部屋から出ないと!慌てて部屋を出てパンツのまま走り出した。

 

「待ちなさーい!」

「ごめんなさい!俺が悪かったです!」

「もう遅いです!」

 

 直後、前からマシュと藤丸さんが歩いて来た。俺の姿を見るなり、二人揃ってゴミを見る目を向けて来た。

 

「どけええええええ‼︎」

 

 二人のラリアットが俺の胸と腹に直撃した。どいてもらえなかった。

 

「先輩、やはりこの人変態のようです」

「そうだね、牢に放り込んでおこうか」

 

 今夜は牢屋で寝る事になった。つーか、なんでカルデアに牢屋があるんだよ………。

 

 ×××

 

 翌日、ブリーフィングの時間。俺、沖田さん、マシュ、藤丸さんの四人はロマンに会議室に集められていた。

 

「それでは、ブリーフィングを開始………君たち、何かあったのかい?」

 

 ロマンの言う通り、構図は俺が一人と女子三人に別れて座っている。うん、聞かないで。色々あったとしか言えないから。

 

「それよりロマン。話を進めて」

「ああ、うん、まぁいいけど……」

 

 藤丸さんに言われ、ロマンは会議を進めた。

 

「まずは……そうだね。君たちにやってもらいたいことを説明しようか」

 

 言いながら、ホワイトボードに文字を書き始めた。

 

「まず一つ目、特異点の調査及び修正。さもなければ、人類に2017年は訪れない、これは分かるね?」

 

 その確認に、四人は頷いた。

 

「そして二つ目、聖杯の調査だ。これは推測だけど、特異点の発生には聖杯が関わっている。聖杯とは願いを叶える魔導器の一種だけど、おそらくレフはそれを何らかの形で手に入れ、悪用したんじゃないかな」

 

 つーか、聖杯でもなければ時間旅行なんて無理だろうな。ドラえもんでもいない限りは。

 

「なので、特異点を調査する過程で必ず聖杯に関する情報も見つけられるはずだ。歴史を正しく戻したところで、聖杯が時代に残ってるのでは元の木阿弥だ。なので、君達は聖杯を手に入れるか破壊しなければならない。以上の二点が作戦の主目的だ。ここまでは良いな?」

 

 その質問にも、全員頷いた。

 

「うん、よろしい。さて、任務の他にもう一つやってほしい事がある。霊脈を探し出し、召喚サークルを作って欲しいんだ。冬木市でもやっただろう?そうすれば、補給物資も送れるしサーヴァントも自由に召喚出来るようになる」

 

 へぇ、そんなもんがあったのか。知らなかった。

 

「そうやって戦力を強化していくわけだ。分かったかな?」

「把握しました」

 

 マシュが頷いた。待てよ、それって冬木市で俺もサーヴァントを召喚できたって事なんじゃ……。いや、黙っておこう。

 

「それと、最後に一つ」

 

 ロマンがそう言うと、誰かが部屋に入って来た。綺麗な女性だった、変な杖を持ってる。

 

「紹介するよ。我がカルデアが誇る技術部のトップ、レオナルドだ」

「………サーヴァント?」

 

 沖田さんが眉をひそめて呟いた。

 

「はい正解〜♪私こそ、ルネサンスに誉れ高い万能の発明家、レオナルド・ダ・ウィンチその人だ。はい、気軽にダ・ウィンチちゃんと呼ぶように」

 

 へぇ、女だったのか……。まぁ、沖田さんですら女なんだし、別にどうでも良いが。

 

「私はこれから主に支援物資の提供、開発、英霊契約の更新などで君達をバックアップする。よろしく頼むよ」

「さて、話を戻そうか」

 

 ロマンがそう言い、早速と言った感じで切り出した。

 

「さっそく、レイシフトの準備をする。みんなは準備は良いかい?」

「いつでも行けます」

「私も大丈夫です」

「はい、私も構いません」

「おk」

 

 二つ返事で返すとロマンは微笑んで頷いた。

 

「よし。………あ、最後に一つ忘れてたよ。この中で、リーダーを決めておきたいと思う」

 

 その言葉に、ピクッと沖田さんが反応した。

 

「私がやります!」

「積極的なのは嬉しいけど、残念ながら沖田さんは適切じゃない」

「どうしてですか⁉︎私は新撰組での一番隊隊長ですよ!」

「いや、というかサーヴァントがマスターを差し置いて隊長になったらまずいだろう」

 

 ………あれ、何となくだけど嫌な予感がして来たぞ。

 

「従って、藤丸ちゃんか田中くんになるわけだが」

「断る!」

「まだ何も言ってないよ田中くん⁉︎」

 

 いやいやいや無理だって!分かるよ?俺だろ?冬木市の様子を見た感じだと俺の方が藤丸さんより頭良いもん!でも、昨日盛大にやらかしたばかりだから!絶対に嫌だから!

 

「困ったな……。田中くんにやってもらおうと思ったんだけど……」

「ロマン、交渉の仕方が悪いんだよ。私ならこうする」

 

 ダ・ウィンチちゃんが口を挟んで来て、俺の隣まで歩いて来た。

 

「な、なんだよ」

「君、趣味は?」

「………ゲーム」

「なら、最新機種を私が作り、テレビと一緒に君の部屋に」

「引き受けよう」

「はい、決まり」

 

 よっしゃ、絶対無事に帰って来てやるぜ。

 ぐははと笑ってると、沖田さんが手を挙げた。

 

「ま、待ってください!その変態マスターがリーダーなんて私は反対です!」

「おい、変態マスターはやめろ。痴漢のプロみたいじゃねぇか」

「そうでしょう⁉︎人の胸をダイレクトに触っといて!」

「ダイレクトじゃないから!服越しだから!」

「………いや、まぁ落ち着いてよ、沖田さん」

 

 ロマンが口を挟み、何とか沖田さんを落ち着かせた。

 

「確かに、その人は少しアレかもしれないが」

「アレって何だよ。人を腫れ物を扱いか」

「でも、落ち着いていれば的確な指示、油断なく僅かな可能性の危険も見逃さない危険察知能力、作戦遂行のためなら羞恥心も捨てる行動力がある」

 

 いい感じに言ってるが、最後のはちょっと違うな。無理矢理、身包みを剥がされて「なんかいい感じに挑発しろ」ってやらされただけだ。飲み会で上司に芸をやらされる時ってあんな気分なのかな……。

 遠い目をしてると、「とにかく」とロマンは続けた。

 

「リーダーは田中くんだ。マシュと藤丸さんもそれで良いね?」

 

 二人は俺の指揮を見てるからか、普通に頷いてくれた。これで4対1、沖田さんも「仕方ないですね」と頷いた。

 

「よし、じゃあレイシフトしようか」

 

 との事で、俺たちは任務に向かった。

 

 


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