カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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船酔い激しい設定にしてしまったため、手抜きに見えるかもしれませんが違います。すみません。


男の友情は女子より固い。

 なんか制圧した船の船員にボスのところに案内してもらえるらしく、何処かの島に来た。

 無論、船酔いダウン星人の俺は海岸で寝転がっている。頭がガンガンする……吐き気は治まったが体調が悪い……。

 

「では、案内させてもらいますぜ」

 

 海賊の一人がそう言うと、元気に案内を始めた。付いて行こうとする藤丸さんパーティ+α(沖田さん、エミヤさん、クー・フーリンさん、アストルフォ)。

 

「よろしいのですか?ますたあ」

 

 清姫だけは残ってくれたが、その理由が俺を襲うためってのはいただけねぇなぁ。

 とりあえず、もう二人ほど残しておきたい。

 

「あー待った、エミヤさん。それと……クー・フーリンさんとアストルフォ」

「? なんだ、マスター?」

「エミヤさんはここに残って。それから、クー・フーリンさんはこれ持って行って」

 

 通信機を投げ渡した。

 

「? 通信機?」

「万が一、罠だったらどうすんだ。というか、罠の可能性も少なくない」

「なるほどな。了解」

「となると、俺はその万が一の時のために残っていろという事か?」

「まぁ、そういう事」

「了解した」

 

 良かった……。了解してくれる程度にはまだ俺は嫌われていないようだ。

 

「僕も?」

「ライダーって事はなんか出せるものがあるんだろ?救出する時に乗り物はあった方が良い」

「分かったよ、マスター」

「わたくしも残りましょうか?ますたあ」

「ああ、頼む」

「えっ⁉︎よ、よろしいんですか⁉︎」

「ああ」

 

 清姫が驚いていたが、当たり前だ。藤丸さんがこれから行うのは戦闘、或いは共同戦線の願い出だ。バーサーカーはいない方が良いし、何より清姫くらいしか俺の事嫌いじゃない人いないからいづらくなる。や、流石にアストルフォたんには嫌われてないと信じたいけど……。

 

「じゃ、行って来るね」

 

 藤丸さんが手を振ってジャンヌオルタ、マシュ、小次郎さん、パッションリップ、クー・フーリンさん、沖田さんを連れて海賊達と歩いて行った。

 しかし、今回は本当に俺は役に立たないかもなぁ。船酔いでダウンとか戦う戦わない以前の問題だし。

 にしても、沖田さんまだ怒ってたな。レイシフトされてから一回も話してない。というか、完全に俺の存在を見てないよね。そんなに嫌ならもう契約解除すりゃ良いのに。

 いまだにガンガンする頭を抑えて頭の中で愚痴ってると、エミヤさんが声を掛けてきた。

 

「マスター、わざわざ持ってきたのか?通信機」

「まぁね」

「必要なら俺が作ったんだが……」

「いや、エミヤさんには魔力を温存しておいてもらわないと困る」

「? なんでだ?」

「多分、船を作るはめになるから」

「……は? 船?」

 

 まぁ、あくまで想定の段階だから下手なことは言えないんだけどね。今回、エミヤさんに同行させなかったのも、万が一戦闘になって戦われたら困るからだ。

 

「……船酔いしない船なら作らんぞ」

 

 やっぱりエミヤさんの中の俺のイメージはそういう感じかよ……。いや、まぁ実際そういうイメージ持たれても仕方ないけども。

 

「……あそう」

 

 お陰で気のない返事をしてしまった。そんなもん作らせるくらいなら、今のうちに酔い止めと頭痛薬もらってるっつーの。

 頭痛を抑えてると、アストルフォが元気に俺の隣に座って聞いてきた。

 

「ね、マスター。今のうちにみんなを紹介してよ!」

 

 あ、ああ。そうだったな。まずは近くにいるメンバーから紹介した。

 

「あそこの着物が清姫、バーサーカーな。変態だから気をつけて」

「よろしくお願いします」

「で、あっちの赤服がエミヤさん、アーチャーな」

「エミヤだ、よろしく頼む」

「うん。二人ともよろしく」

 

 ああ、アストルフォ可愛い……。こんな素直な子、他にいないぞオイ……。婚約したい……。

 

「アストルフォといるだけで心が癒されるなぁ……」

「ほんと?そう言われると僕も嬉しいよ」

 

 可愛い過ぎて死にそうなんだけど……。

 でも、だからこそだろうか……。こんな頭痛でダウンしてる姿を見せたくない……。男として初めて見栄を張りたくなった。

 

「ダメだ……。悪いけど俺寝る。エミヤさん、絶対に能力使わないでよ。通信機渡すから、クー・フーリンさんから通信があって安全が確認出来たらみんなそっち行って良いから。清姫も絶対行けよ」

「了解した」

 

 まぁ、しばらく俺に出来ることはない。その海賊の大将と上手くお友達になれる事を祈るだけだ。

 そう思って目を閉じると、アストルフォが不満そうな声を上げた。

 

「えー、寝ちゃうの?」

「悪い、体調不良だ……」

「じゃ、僕の膝使うと良いよ。ほら、おいで?」

「はーい!」

「お、お待ち下さいますたあ!わたくしのお膝も空いて……!」

「爆弾の膝借りるほど肝座ってねえよ」

 

 そう言って、アストルフォたんの膝を借りた。

 

 ×××

 

 夜中。お腹が空きすぎて目が覚めた。そういや、レイシフトされてから何も口に入れてなかったな……。

 のそっと身体を起こすと、場所は野営地だった。どうやら、ほっといて良いと言ったのに誰か運んでくれたようだ。

 

「んっ……」

 

 頭の痛みも気持ち悪さも引いている。寝てりゃ治るとはこのことか。

 身体を起こすと、辺りはかなり荒れていた。襲撃にあったのかと思ったが、一番多く転がってるのが酒瓶の所を見ると宴会があっただけのようだ。

 しかし、全員寝てる辺り警戒心が薄いな。こういう自然の場所って何があるか分からんのに……。

 

「……腹減った」

 

 大丈夫、カップ麺持ってきてあるし、ライターもある。

 その辺の木を拾ってきて、海岸に移動して火を付けた。その上でお湯を沸かし、カップ麺に注いだ。

 火は危ないのでさっさと消して、カップ麺を持ったままさっきの野営地に戻ってきた。

 

「美味っ」

 

 カップ麺もやっぱ美味いなぁ。なんだかんだ、初代のカ○プヌードルが一番美味いわ。

 さて、見回りだ。昼間は船酔いで役に立たないし、俺の仕事は夜中の警備員みたいな事くらいしか無い。

 今のうちに野営地の中や人数の把握しておくか。食べ終えたカップ麺のゴミをその辺に捨てて歩き回った。藤丸さん達も一緒に寝てるところを見ると、多分同盟は成功したんだろう。

 同盟相手は海賊、名前はわからんけど女か。大将っぽい格好した巨乳がでっかいいびきをかいてる。品がねえな……。

 続いて、うちのパーティは全員無事かを確認。藤丸さんはマシュとパッションリップと寝てるし、ジャンヌオルタも近くの木にもたれかかっている。

 クー・フーリンさん、エミヤさん、清姫、アストルフォも無事だ。

 

「……あれ、沖田さんは?」

「ここですよ」

 

 後ろから声がした。

 

「どうも」

「起きてたん?」

「はい。普段、マスターはこういう時、一人でカッコつけて見回りしてますから」

「カッコつけては余計だろ」

 

 起きてたのか。ならちょうど良い、聞きたいことがある。

 

「つーか、お前なんで怒ってんの?」

「……別に怒ってません」

「嘘つけよ、ヤケに突っかかって来るじゃん」

「………」

「大体、藤丸さんと特訓してたからってボコされるいわれは俺にはないからな」

 

 すると、沖田さんは黙ってしまった。暗くてどんな顔をしてるのか知らないけど、返事はない。

 

「理由はなくストレス発散でボコしてたのなら、契約解除するからな」

「っ……」

 

 それでも返事はない。まぁ、大事な戦力を契約解除はしない。俺が殴られるのを我慢すれば良いだけだしな。

 すると、沖田さんの方から声が聞こえた。

 

「その……すみませんでした」

「? 何が?」

「前から、怒られてはいたんです……。エミヤさんや、立香さんから……。『バカが悪い時はともかく、理不尽な暴力はダメだ』って」

「おい、謝ってる相手にバカはねーだろ」

「え?あ、いや今のは言われたのをそのまま抜粋しただけで……」

 

 俺の別称が「バカ」になってる件について新たな問題が発生してるんだけど。

 

「私もわかってるんです……。バ……マスターが悪い時以外は、確かに私が悪かったって」

「バカって言い掛けなかった?本当に謝る気ある?」

「だから、すみませんでした……」

 

 まさか、こいつが素直に謝る時が来るとは……。やはり、嫌われてはないのかな……?

 しかし、エミヤさんや藤丸さんもそういう注意はしておいてくれてるのか。それは少しありがたい。

 

「まぁ、別に気にしてないから」

「そ、そうですか」

「それより、今回もちゃんと戦えよ。沖田さんいないと勝てるものも勝てない戦が多いからな」

「は、はい!」

「じゃ、見張りは俺に任せてさっさと寝ろ。どうせ明日は朝から動くんだろうし」

「ならマスターも寝たほうが……」

「俺は明日の昼に寝るから。……てか、寝ないと死ぬ」

「あー……理解しました」

 

 船酔いな。夜型の生活になりそうだが、この際仕方ない。

 言われるがまま、沖田さんは寝ようとした。その時だった、別の所からのそっと起き上がる影が見えた。

 

「うー……うるさいなぁ。だれー?」

 

 アストルフォたんが目を覚ました。やべっ、起こしちまった!

 

「アストルフォ!ごめん、起きちゃった?悪いな、眠れないなら一緒に寝てやろうか?」

「うん……眠れるなら、それも良いかな……」

「よっしゃ!オイ、沖田さん!俺寝るから見張っとけよ!」

 

 ボコボコにされた。

 

 ×××

 

「……ター、マスター。起きろマスター!」

 

 翌日、船に乗る前にエミヤさんの背中で寝ることに成功した俺はしばらく寝てたわけだが、何故だか起こされた。眼を覚ますと、日差しがすごい。

 身体を起こすと、陸地だった。え、なんで出港前に起こすの……?バカなの?

 

「着いたぞ、マスター。出番だ」

「は?」

「この島にサーヴァントの反応があるらしい。戦闘になる可能性もある、行くぞ」

 

 ああ、そういう事……。しかし俺がいなくても良い気もするけどな。ま、頑張るしかないか。

 

「へぇ、あんたが立香達のリーダーかい?」

 

 船長っぽい女の人が声を掛けてきた。エミヤさんがサポートするように耳元で囁いた。

 

「……仲間になった海賊の船長、フランシス・ドレイクだ」

「あ、ああ。あなたがひとつなぎの大秘宝を求める?」

「は?何?」

「口に気をつけろ、マスター。人間だが、彼女は聖杯を持っている。自力で手に入れた猛者だ」

「……ま、マジ?」

「マジだ」

 

 ば、バケモノ……。てか、そんな人が味方で良いのか……?

 

「何でも、とんでもなく頭が良いみたいじゃないかい。期待してるから、よろしく頼むよ」

「へ?は、はい……。よろしくお願いします?船長……」

「やめな、そんな丁寧な口調は。背中がむず痒くなる」

 

 そ、そうですか……。てか、改めて見るとオーラがすごいなこの人……。覇王色の覇気でも持ってんのか?

 

「で、この島で何すんの?サーヴァントをシバけば良いのか?」

「いや、まだ敵味方も判別出来ない状態だ。遭遇し、様子を見次第で行動を変える」

「了解」

 

 仕方ないので、俺も戦闘の準備をした。鞄からホルスターと拳銃を用意した。

 その直後だった。

 

「んー、その辺りかあ?」

「きゃっ⁉︎」

「ひゃあっ⁉︎」

「フォウ⁉︎」

 

 ドガン!と凄まじい発砲音が響き渡り、マシュ、藤丸さん、フォウから悲鳴が上がった。

 俺自身も悲鳴を上げそうになり、慌ててエミヤさんの背中に隠れた。発砲音の正体はドレイク船長の銃だった。

 

「ドレイクさん⁉︎敵ですか⁉︎」

「全員応戦準備!」

 

 マシュが確認し、藤丸さんが指示を出すが、ドレイク船長は首を横に振った。

 

「いや、何となく気配がしたから撃ってみた」

「馬鹿野郎!何と無くで撃つな!敵か味方かも分からない段階で手を出すのは軽挙過ぎるし、違ったら敵に居場所知らせるようなもんだろ!」

「そういうネチネチしたのは趣味じゃないねぇ。悪い予感がしたら銃声で撃ち払う。それが生きるためのコツだよ?」

「そんなもん、悪意に怯えて威嚇する野生動物と変わらんだろうが!」

「……今、なんて言った?」

 

 直後、ドレイク船長の鋭い視線が俺に突き刺さった。

 

「言葉に気をつけなよ。あたしはあそこの立香は仲間にすると言ったが、あんたとはそうは言ってない」

「そっちこそ気を付けろ。あんたがいくら聖杯持ちでも、うちのサーヴァントで囲んで叩きゃいつでも殺せんだからよ」

「………」

「………」

 

 まさに一触即発、といった感じで俺とドレイクは睨み合った。それと同時にドレイクの部下は銃やサーベルを構え、クー・フーリンさんや清姫、アストルフォは剣を握って俺の後ろで構えた。

 

「ち、ちょっと二人とも……!」

「落ち着いて下さい……!」

 

 藤丸さんとマシュが慌てた様子で間に入る。その後ろで、ジャンヌオルタは剣を抜き、小次郎さんは鞘を持つ手の親指で刀の鍔を上げ、パッションリップは藤丸さんを守れる位置に移動する。

 いつ喧嘩が始まるか分からない状況で、オロオロし始める藤丸さんとマシュだったが、やがて何かに気付いたように俺の膝を見た。

 うん、俺の膝ガックガクに震えてる。だって怖いんだもんホントに。

 

「って、ビビってんの⁉︎」

「あっ、あああ当たり前だろ!あの有名なドレイクさんだぞ!そんな奴にあんな言い方しちゃってちょっと後悔してた所だよ!」

「台無しだから!色々と台無しだから!」

「うるせぇ‼︎怖いもんは怖いんだよ!でも言うこと言わなきゃダメだろうが‼︎」

 

 すると「ぷっ」とドレイク船長から笑い声が漏れた。

 

「っははは、面白い男だねぇ。チキンってだけならどうしようもないが、それなりに考えて発言出来るなんて、それはそれで男じゃないか」

「っ……」

「安心しな、あんたの事も気に入ったから殺しゃしないよ。ただ、こういう生き方もあるって事は覚えておきな」

 

 そう言うとドレイク船長は「おい!」と一喝し、部下に武器をしまわせると、弾を撃った方向に歩き始めた。それに合わせてカルデアのメンバーもそれぞれ武器を収めた。

 

「ふぅ……。もう、田中先輩!いきなり何を言うんですか⁉︎」

「そうだよ!いや、言ってることは正しかったけど……!いきなり仲間割れかと思ったじゃん!」

「わ、悪い……」

「もう、冷や冷やしましたよ……」

「と、とにかくドレイクと田中さんは合わないみたいだから、今回は私がまとまるからねっ」

「サンキュ、それより早く行って来いよ」

「? 田中先輩は行かないのですか?」

「後から行くから。アストルフォ、沖田さん、清姫も先に行ってて。あー小次郎さん、クー・フーリンさん、エミヤさんは船の護衛な」

 

 その指示に全員従い、早い話が女子は先に行かせて、男子はこの場に残した。

 

「? どうかしたのか?マスター」

「船酔いは大丈夫だったんじゃねぇのか?」

「何か我々にしか伝えられぬ事でもあるのか?」

 

 三人に聞かれ、俺は深刻な表情で俯きながら打ち明けた。

 

「……ちょっとおしっこ漏れちゃったよ……」

「……へっ?」

「……へっ?」

「……へっ?」

「……ここでパンツ取り替えて行くけど……みんなには内緒な?」

 

 この日、過去最大級に可哀想な人を見る目で見られた。

 

 


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