カルデアがダブルマスター体制だったら。   作:バナハロ

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本当は途中で視線を変えるつもりはなかったのですが、せっかくマスターが二人いるんだし、二箇所の戦場を表す事にしました。藤丸目線の時はこれから(藤丸)がつきます。


最終決戦は派手に(藤丸)

 作戦は大きく分けて二班に別れた。田中さん達、囮役と私達、奇襲役。私達の班は、マシュ、ジャンヌオルタ、佐々木さん、リップ、イスカンダルさん、船長、アタランテさん、オリオンとアルテミスさん、そして田中さんの所からエミヤさんを借りた。

 さて、そんなわけで待機中。多少の陣形はあれど、海岸で正面から堂々と待ち構えている間、田中さんが全員に言った。

 

「一応、確認するぞ。これからの作戦は基本的にシンプルだ。俺達が敵の囮になり、敵を分断し、藤丸さん達がイアソンの本隊を叩く」

 

 ……やってる事も言ってる事も立派なんだけど、腫れ上がった右瞼、左頬、右顎と脳天のタンコブが気になる……まぁ、あんなことをいきなり女の人に言ったらボコボコにされるよね、そりゃ。

 現在の陣形は、マシュと私、リップが先頭に立ち、壁役。その二列にエミヤさん、ダビデ、アタランテさん、オリオンとアルテミスさん達アーチャー軍団が並び、弓を構える。

 海岸では、エミヤさん達が作った拠点の中に船長の船を隠していて、いつでも発進出来る様に備えていた。他のメンバーは各々、意味深にテキトーな位置に居座っている。

 まず私達の班の仕事は、ここで敵を食い止める事。ここから、あくまで敵を自然に田中さん達が誘い込む。

 

「来たぞ」

 

 直感により、いち早く敵が近づいている事に気付いたアルトリアオルタさんが田中さんに声をかける。直後、海岸の向こうから船が見えた。

 

「よーし、矢放て!」

「え、も、もう撃つんですか?」

「まだこっちに着いてもいない間に片付けられるなら、それはそれでラッキーだからな。削れる分は削っときたいし」

 

 沖田さんの質問に田中さんは平然と答える。ホント、容赦のない人だなぁ……。

 直後、矢の雨がアルゴノーツに向かっていく。しかし、それらはアルゴノーツに届く前に撃ち落とされていく。

 

「な、何が起きてるの?」

「ヘクトールとアキレウスが迎撃してんな。流石、トロイア戦争の化け物二人だ」

 

 オリオンが説明してくれた。しかし、四人がかりの狙撃を打ち払うなんて……本当に凄い人達だったんだな……。

 こちらの狙撃がしばらく続くが、向こうに届く気配は無く、徐々に船は近付いてくる。ならば、次の手と言わんばかりに、田中さんはエミヤさんに指示を出した。

 

「エミヤさん」

「了解だ」

 

 直後、エミヤさんが出したのは、スナイパーライフルだった。私は銃に詳しくはないし、どういう武器なのか分からないけど、遠距離から狙撃するためのもの、ということだけは分かった。

 それを持ってその場で寝転がり、スコープの中を覗き込む。そのエミヤさんに、田中さんが声を掛ける。

 

「一人、行ける?」

「やってみよう」

 

 直後、躊躇いなく引き金を引いた。だが、結果は喜ばしいものではないのか、エミヤさんの表情は変わらない。

 

「……無理か」

「まぁ、仕方な……」

「マスター、上!」

 

 上空から警戒していたアストルフォくんから声が聞こえる。顔を向けると、強引に突破して来たアキレウスが自身の宝具を使って突撃して来ていた。

 あの矢の雨の中を切り抜けて来たの……? やっぱりとんでもないんだな、アキレウスって……。

 

「全員、奇襲に備えろ!」

 

 田中さんの怒号で、まず真下に立ち塞がったのはリップとマシュだった。アキレウスの奇襲を二人がかりで受け切った。

 これにより、前衛と後衛が二つに分離された。しかも、アキレウスの戦車には、他にヘラクレスともう一人、青い髪の侍っぽい人が降り立った。

 

「ハッ、随分と俺達のために準備してくれてたみたいだな。そっちのマスター」

 

 アキレウスの視線の先には、一番後ろで控えている田中さんがいる。まるで、最初からそこにいるって事がわかっていたみたいだ。

 

「どうかな? あんまり何も考えてないかも……」

「ハッ、言ってろボケ。やるぜ、お前ら!」

 

 全員に声を掛けると、まずはヘラクレスが怒号を上げた。その後ろで、青髪の侍もニヤリとほくそ笑む。

 

「おまんら全員、なます斬りにしちゃるわァッ‼︎」

 

 そう言うと、三人は一気に田中さんに向かって走り出した。それを見るなり田中さんは、エウリュアレの手を掴んだ。

 

「よし、逃げるぞ」

「ふふ、キチンとエスコートしなさいよ?」

「お前ら、足止めよろしく!」

「応よ!」

「ああ」

「りょーかい!」

 

 それにより、沖田さんとクー・フーリンさんとアルトリア・オルタさんとアストルフォと清姫が立ち塞がる。アステリオスは護衛なのか、田中さん達について行った。

 さて、ここまでは予定通り。私達には私達の仕事がある。

 

「船長、船は⁉︎」

「行けるよ!」

「全員、突撃準備ー!」

「むぅ……! 余は是非ともアキレウスと戦いたかったが……!」

「良いからこっちに来てください!」

 

 私の号令で、私の班のみんなは船に乗り込んだ。イスカンダルさんだけ渋っていたので、無理矢理、背中を押させてもらったが。さて、ここからが勝負だ。

 船に乗り込むと、私達は一気にアルゴノーツに向けて前進する。だけど、まだ気が抜けない。あそこには、まだまだ手強いサーヴァントが残っているのだから。

 

「さぁて、立花! どうするんだい⁉︎」

「距離を離されず寄りすぎずに保ってまずは射撃戦! アーチャーの皆さん、お願いします!」

「了解だ!」

 

 アタランテさんの返事で、みんなが射撃を始めた。

 

「お前ら、大砲の弾ァガンガン積みな!」

「撃ちまくれ!」

 

 船長も大砲で攻撃を開始してくれる。しかし、それらを迎撃するのは、やはりヘクトールとメディアだ。いや、よくよく見ればもう一人いる。あれが、田中さんの言ってた不確定要素かな? 

 徐々に距離を詰めつつ射撃戦になる中、そのもう一人は動かない。ていうか、あの人思いっきり見たことあるんだけど……まさか。

 

「Arrrrr……」

 

 やっぱり、ランスロットだ! 黒い鎧のバーサーカーはすぐに動き出し、船の上に落ちているさっきまで私達が撃っていた矢を掴むと、メキメキとそれを武器に変換していく。

 

「や、ヤバい……! マシュ!」

「はい!」

 

 その投擲をギリギリマシュが防いだ。が、このまま矢を放っても敵に強力な武器を渡すだけだ。

 ならば、作戦を切り替えるまでだ。

 

「エミヤさん、マシュの盾は作れますか?」

「可能だが……」

「なら、白兵戦の準備! リップ、マシュ、エミヤさんは盾を構えて前衛に! 船長、牽制代わりにガンガン、砲弾をお見舞いして下さい!」

「あいよ!」

「了解です!」

 

 そう言うと、全員で徐々に接近して行った。大丈夫、白兵戦はむしろこっちの望み通りだ。

 船を寄せると、一気に全員に声をかけた。

 

「総員、攻撃開始ー!」

「「「「うおおおおお!」」」」

 

 マシュを残した全員が突撃し、私も敵の船に乗り込んだ。まぁ、出来ることなんてないんだけど、私だけ安全圏から見てるだけ、なんてことは出来ない。

 

「チィッ……奴らめ、おいお前ら! 何とかしろ!」

「へいへい。せいぜい、働かせていただきますよっと」

 

 頭数では勝っているものの、相手はヘクトールにメディアとタッグを組めば防衛最強の二人だ。そこにランスロットが加わったとあれば、簡単には崩さない。

 そんな時だ。イスカンダルが私の肩に手を置いた。

 

「……早めに片付けた方が良いのなら、余が力を貸すぞ」

「え?」

「我が臣下を使えば、あの者らが何者であっても一瞬で蹂躙できるぞ」

「なるほど……でも」

 

 それもありだけど……もし、前の特異点みたいに魔神柱が出て来たら……と思うと、むしろ温存したい所だ。

 

「何か懸念があるのか?」

「懸念、と言えるほどのことじゃないけど……念には念を入れるのが、田中さんのやり方だから」

「……そうか」

 

 あの人、馬鹿でアホでチキンで要らないプライドは高い癖に必要なプライドは皆無の、モテない男代表みたいな人だけど……それでも、戦術に関しては誰よりも上だ。

 

「……了解だ。そういう判断をするのならば、余はマスターの指示に従おう」

「……ありがとうございます」

 

 そう言いつつ、とりあえず前線へと乗り込んだ。

 いくら、守りのうまいヘクトールと好きに暴れられるランスロットがいても、やはり数の暴力には敵わない。それも、私のチームはマシュ以外のみんなの火力が高い。あっさりと制圧してしまった。

 ジャンヌオルタの文字通りの火力が焼き尽くしたかと思えば、その裏から佐々木さんが奇襲を仕掛け、リップがまた派手に攻撃し、イスカンダルさんが豪快に薙ぎ払う。

 

「クソ、クソクソクソ! ヘラクレス達はまだか⁉︎」

「向こうも手間取ってるんでしょうよ。……ったく、だから兵を分けるのは反対だったんだ。……っと!」

 

 ボヤいたヘクトールに、イスカンダルさんが襲い掛かった。

 

「ハッハッハッ、よう。貴様がアキレウスの宿敵、ヘクトールか!」

「……あらら、しかもなーんか立派な英霊にも襲われちまって。前に来た時はあんたいなかったよな?」

「何、余のトップはそちらさんとは違い、中々、有能でな。念には念を入れる男よ!」

「なるほどな。あの野郎にヘラクレス、さらにもう一人からの猛攻を凌いでる時点で、確かに有能か。あーあ、おじさんもあっちに混ざりゃ良かった」

 

 軽口を叩き合いながら、イスカンダルさんは一人でヘクトールを抑えていた。そのヘクトールに、一本の矢が向かって来る。それを、バックステップで回避した。

 

「ありゃ、避けられちゃったダーリン」

「まぁ、守りの闘いに関しちゃヘクトールはしぶといからな。当てるより、足を止めるつもりで射て」

「はーい」

 

 アルテミスさんが援護射撃を行なっていた。これで二対一。あとは任せても問題ないだろう。

 その横で、ランスロットの猛攻を相手にするのは、佐々木さんだった。

 

「Arrrrr‼︎」

「ふっ、まるで獣のような猛攻よ。拙者では、一発貰えば即退去となるだろう」

 

 ランスロットからの攻撃を回避しつつ、受け流しては斬り返す。そのランスロットの背後から、エミヤさんが二刀を構えて姿を表す。

 

「セイっ!」

「ふっ、助太刀、感謝するぞ。赤服の弓兵よ」

「軽口を叩く暇があるなら、奴から目を離さん事だ。簡単にはいかんぞ」

 

 そう言って、二人がかりで仕掛けていた。さて、これで残りはイアソンとメディア。私は船長とマシュとダビデとアタランテとリップと一緒にイアソンへと歩みを進めた。

 

「ひっ……め、メディア! 何とかしろ!」

「そう言われましても……私は回復魔術しか取り柄のない女。この状況を打破出来るような術はありません」

「なんで笑っていられるんだお前は⁉︎ な、なんとかしろ! 俺を守れ!」

「やぁ、イアソン。その前に一つ良いかな?」

 

 慌てて女の子の背中に隠れる男に、ダビデが声を掛けた。

 

「君は何故、エウリュアレを望んでいた? まさか、契約の箱に捧げるつもりだったんじゃないよね?」

「だったらなんだ!」

「いやいや、それはさすがに看過できない。何せ、あれは文字通り世界を滅ぼす箱だ。死を定め、死をもたらす箱だよ?」

「な……ど、どういう事だ、メディア⁉︎」

 

 イアソンに声を掛けられたメディアは、ニコニコと微笑んだままイアソンを眺めていた。

 

 


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