ジパング×艦これ外伝 ~あの日を忘れない~   作:秩父快急

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宮城県沖

 

 3月11日 2100 宮城県仙台沖20キロ

 

 「夜が明けるまで、これは待機だな。」

 艦橋から陸の方向を見ていた尾栗が呟く。沿岸部は津波による海面変動が未だに観測されており、倒壊した家屋や流された車の残骸などでとても突入は不可能。とりあえず夜間でも活動可能な海鳥が遭難者の捜索に当たっていた。CICでは海鳥から送られてくる映像を見る梅津の姿があった。

 

 (これは…。予想よりもひどいな。)

  CICのモニターには海鳥の映像と共に、NHKの報道特別番組が表示されていた。イージス護衛艦という性能を活かして、情報収集を行うみらい。既に東北地方の陸上自衛隊の部隊は動いているそうだ。だが、仙台空港が津波でやられ、航空自衛隊松島基地の飛行機が全滅し、隊員が孤立状態と情報が入っている。今、仙台で捜索に当たれる自衛隊機は護衛艦の搭載の哨戒ヘリだ。

 

 バラバラバラ…。

 

 「ーこちら海鳥。現在、仙台市若林区上空。暗視カメラによる映像を送ります。」

 

 仙台市若林区。夕刻、宮城県警のヘリが200~300人の遺体を発見したと情報があった地域だ。沿岸の海上では津波で倒壊した家屋に車から漏れ出たガソリンが引火し、火の玉となって海上を漂流している。

 

 「森…。お前、この景色どう思う。」

 ふと、佐竹が呟いた。眼下には点々と燃え盛る家屋。そして高台には小さな明かり。まるで文明が退化したかのような景色に、佐竹は唖然としていた。

 

 「…とにかく、今は状況を確認して明日の捜索活動の手がかりを掴む。それしか、言えないです。」

 「ああ、そうだな。」

 仙台市若林区上空で旋回する海鳥。この日の空は不気味なほどに美しい星空だった。

 

 3月12日 0300 東京市ケ谷 防衛省作戦室

 

 ここでは陸海空各幕僚長が集まり、災害派遣の作戦概要について話し合われていた。

 

 「既に宮城県沖には横須賀と大湊からの護衛艦隊が集結。各艦の哨戒ヘリにて偵察活動を行っています。また、舞鶴と呉からも準備整い次第いつでも出撃可能です。」と、海上幕僚長。陸上幕僚長は

「東北各地の駐屯地から出動してる他、朝霞から第一師団、練馬からは特科が出動してます。」

 航空幕僚長は「松島基地が津波により使用不能。その為、小松と三沢から偵察機を飛ばしています。」

 と、統合幕僚長に報告が上がる。

 

 「うむ。各部隊は明朝より救助活動を開始し、被災者の救出に全力を尽くせ。」と、統合幕僚長が指示を出す。

 

 

 0400 護衛艦みらい CIC

 

 「市ケ谷より連絡。明朝日の出より救助活動を開始せよ。とのことです。」

 と、みらいに市ケ谷から連絡が入る。水平線の彼方が赤くなり始めた頃…。

 

 キイイイイイインンンン

 

 SH-60Jのエンジンが唸りをあげ始めた。救助用具を積み込み、発艦作業に入る。

 

 「本当は同行したいが、俺は副長だ。林原、頼んだぞ。」

 「了解しました!」

 角松が林原に労いの言葉をかける。そして…。

 

 「0425 ロクマル離艦します!」

 

 SH-60Jは仙台市街地へ向けて飛びたった。同時に艦橋では付近の漂流物に人がいないか目視による捜索活動が始まった。

 

 0730 みらい艦橋

 

 「両舷、漂流物に注意しながら前進微速。」

 尾栗が指示を出し、ゆっくりと陸地へ向けて航行する護衛艦みらい。共に横須賀を出た護衛艦いかづちも一緒だ。護衛艦いかづちのSH-60kは海上の遭難者救助のために待機している。

 

 「あっ!」砲雷科から応援に出された米倉が叫んだ!

 「前方1000に人影を確認。要救助者と思われる。」

 艦橋からの連絡でCICにいた角松が護衛艦いかづちに連絡を取る。

 

 「ーこちらいかづち。了解した。直ちに向かう。」

 

 護衛艦いかづちからSH-60kが離艦し救助に向かう。救助されたのは30代の男性。話によると、車で避難中に津波に飲み込まれ…。なんとか自力で脱出したものの沖合まで流され、たまたま近くに流れてきた家屋の残骸に乗って夜を明かしたそうだ。救助された男性は護衛艦いかづちで応急措置を受けている。その頃仙台市若林区へ向かったみらいのSH-60Jは建物に取り残されていた要救助者6名を乗せて護衛艦みらいへ戻ってきた。

 

 バラバラバラ…。

 

 SH-60Jからみらいへ降りる被災者方々、梅津の指示でお風呂を沸かしていたので救助された方々はみらいに到着次第、お風呂に浸かることができた。

 

 1430 みらい艦長室

 

 「…ふぅ。」

 椅子に腰掛け、大きくため息をつく梅津。給養科の隊員が持ってきた戦闘糧食のおにぎりと豚汁をかきこむ。

 (午前中で救助できたのは、いかづちと合わせて12名…。我々よりも陸自の方がはるかにキツいだろう。)

 梅津は陸上自衛隊の部隊のことを心配していた。阪神淡路大震災の時は、阪神基地に勤めていたから、陸上自衛隊との合同作戦ができた。だが、今回は海の上。哨戒ヘリによる救助しか出来ずに悔しい気持ちで一杯だ。

 仙台港等、沿岸部は依然津波注意報が発令中。その上瓦礫だらけで入れない。今回は海の地震。津波を伴ったので阪神の時とは対処方法が違うのだ。

 

 (津波注意報が解除されるまでは短挺を下ろせないな。)

 

 と、海の外を見ながら梅津は思った。

 

 

 




横須賀から緊急出港した護衛艦みらい。宮城県沖まで全速力で来たものの…。津波警報発令中と夜の暗闇のために捜索活動が開始できない。その為、一度海鳥による偵察を行うことになりました。護衛艦いかづちと共に行動するみらいを翌朝待ち受けていたのは…。瓦礫と海と化した仙台沖だった。自分自身、被災当日帰宅してテレビをつけたらあの大津波の映像…。逃げる車や人々を次々と飲み込んでいく景色は未だにトラウマです。この東日本大震災では航空自衛隊松島基地も津波によって全機能喪失しました。自衛隊も予想外の被害を受けるなかで護衛艦みらいの乗組員達はどう対処していくのでしょうか?
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