【完結】Fate/Zero 正義   作:北条 ゆう(いすわーる)

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《第一七話 円蔵山》

 

 大聖杯は円蔵山内部の鍾乳洞に設置されている。

 切嗣とアイリスフィール、アルトリアそしてイリヤスフィールの四人はそこにまるでピクニックに行くかのようにお気楽に道中を歩んでいた。

 どういう経緯を経てこうなったかと言うと。

 

「そんな訳で、セイバーのマスターはアヴァロンを使って体内の害虫を処理し、健全な肉体を取り戻したの。その代わり彼は、アサシンのマスターから依頼されていた私の精神を縛る令呪による魔術をかけず、それを偽装するだけに止めてくれたの。彼、カリヤはこれから愛する人を守ることを第一に考えて生きていくそうよ。全て、ランサーのお手柄。本当に凄いお嬢さんよね。そう思うでしょ、イリヤ?」

 

「うん、お母さま! 私も将来はランサーみたいな、人を助けるヒーローになりたいな~」

 

 そうウットリした様子でイリヤ。

 しかし、しばらくしてハッ、とした表情になって慌てて言葉を続けた。

 

「あ、もちろんキリツグが一番カッコいいよ。私のこと迎えに来てくれるって、お母さまを無事に私のもとに戻してくれるって信じてたけど、やっぱり、ホントに全部叶えてくれたもん。キリツグがやっぱり一番カッコいいよ」

 

「ふふふ。きっとそれを聞いたらお父さまも喜ぶわ」

 

 という和気あいあいとした雰囲気のまま円蔵山内部をドンドンと進んでいく四人。

 何の障害もない。

 このまま何も起こらないのではないかと、一同は思い始めていたのだが、そういう訳にはいかなかった。

 

「! ランサー、気づいたか」

 

「……はい。この先にサーヴァントの気配がします。恐らく、アーチャーでしょう」

 

 一同に沈黙が流れる。

 

「アイリ……仮にこれ以上サーヴァントを取り込んだら、どうなる?」

 

「……耐えられない可能性はあるわ……」

 

「そうか……」

 

 逡巡した後、切嗣は結論を下した。

 

「イリヤ、手を出してくれ」

 

「切嗣!?」

 

 動揺するアイリスフィール。

 

「アイリ、言いたいことはわかる。だけど、理想を実現するには時には苦しい決断を下さなければならないこともある」

 

 差し出されたイリヤの右手に切嗣は令呪を一つ譲渡した。

 

「僕が身代わりとなってアーチャーを足止めする。その隙にアイリ達は大聖杯を破壊してくれ……大丈夫、僕は生き残って見せるよ」

 

「キリツグ……」

 

「大丈夫だよ、お母さま! キリツグはとっても強いんだよ。悪い奴をやっつけて、私たちのもとに帰ってきてくれるわ」

 

「そうですよ、アイリスフィール! キリツグは正義の味方です。悪を滅ぼして、必ずあなた達の元へと舞い戻って来てくれるはずです! 彼はあなた達を悲しませるようなことはしません!」

 

「……えぇ、そうね……あなた、お気をつけて」

 

「あぁ。行ってくるよ」

 

 まるで子供向けのヒーローアニメのようであった。

 切嗣はアルトリアとイリヤスフィールのマスター・サーヴァント契約を眺めながら思う。

 

「見ていてくれているかい、シャーレイ? 僕は正義の味方になったよ……」

 

 呟く切嗣。

 

「シャーレイって誰?」

 

 問いかけたのはアイリスフィール。

 

「友達さ」

 

 切嗣は面倒なことは伝えなかった。

 時には正義の味方であっても、嘘をつかなくてはいけないときがあるからであった。

 

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