【完結】Fate/Zero 正義   作:北条 ゆう(いすわーる)

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前編:英霊召還
《第一話 ウェイバー・ベルベット》


 

「魔術師としての素養は血統によって決まる。これは覆すことの出来ない事実である」

 

 西暦二〇〇四年九月、学園都市《ロンドン時計塔》。魔術師の教育機関として最高峰を誇るこの場所の講堂で、講師ケイネスは手に持っていた生徒の論文を教壇に叩きつけながら、こう言い放った。

 講堂、正確に言えば三〇〇人ほどが収容可能な大講義室の公聴席に座っていた二〇歳前後の一人の青年が立ち上がった。

 

「ウェイバー・ベルベット君。私の生徒の中にこのような妄想を抱くものがいたとは! 実に嘆かわしい」

 

「でも先生僕はそうは思いません。最近、学会で発表された──」

 

 それからウェイバーは、最新の学説も交えた主張でケイネスに論戦を挑み始めた。

 ウェイバーは優秀な学生であり、将来有望な魔術師の卵であった。魔術師としては祖父の代から数えて三代目であり魔術師の世界では《歴史の浅い半人前の家系》出身ながら、エリート魔術師を数多く輩出する最高峰の養成機関:ロンドン時計塔の入学試験をパスし、単位認定が厳しい、通称《地獄のケイネス講座》の学期末試験も常にAランクの最優秀成績で突破してきた秀才であった。現代魔術学では天才とも言える非の打ち所の無い学生であった。

 しかしウェイバーは未だ魔術師の卵であり、学生であった。これが並みの講師相手ならば、もしかしたらこの場では論破することも可能であったかもしれない。

 だが如何せん相手は今時計塔で最も勢いがある講師と評判の、アーチボルト家九代目当主:ケイネス・エルメロイ・アーチボルトである。時計塔の現代魔術科を束ねる部長、すなわち君主(ロード)である彼には権力もあれば、それに見合うだけの実力もあった。ウェイバーの主張は一つ一つしらみ潰しに丁寧に反論され、完璧に論破されてしまった。

 反論にさらなる反論を返すも、もはや土壷にはまっている。その主張には論文に、あるいは最初の主張にあったようなキレは無い。

 

「し、しかし、しぇん生、ぼぉくは、今の旧つぁ……旧態依然としたまじぅ――」

 

 しどろもどろのその反論をケイネスは右手を宙に伸ばし遮った。その手の甲には赤い入れ墨が入っていた。

 

「君の主張は妄言に等しい……そういえば君の家系は魔術師としてはまだ三代しか続いていなかったね。いいかね、君のベルベット家は未だ赤ん坊にも等しい。親に意見する前に、まずは言葉を覚えるのが先じゃないかな?」

 

 ちょうど言葉に詰まり始めていたウェイバーに対する嫌味を込めた発言であり、同時に『この話はこれでお仕舞い』というケイネスの意思表示でもあった。

 しかし主張を論破され、家柄を馬鹿にされたウェイバーからすればたまったものではない。イギリス人だけあって皮肉や嫌味には慣れている彼であったが、こればかりは赤面ものの事態であった。おまけにウェイバーの耳には数人の生徒の嘲笑まで聞こえてきた。

 

「静かに。それでは講義を始める」

 

 嘲笑は止み、講義が始まった。ケイネスは先程のことなど無かったかのように平然と淡々と授業を進めていく。さながらウェイバーとの論戦など羽虫を潰すがごとき些事であったと言わんばかりであった。

 ウェイバーは隣に座っていた友達の『授業は受けていった方がいい』という助言を無視して、講義室を飛び出したのだった。

 

 

 

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