DRAGONQUEST11過ぎ去りし時を求めずに 作:イレブン
ドラクエ11神作品でした!残された仲間達はどうなっているのか、想像でかいていこうと思います。なにげにこの世界線は不憫ですよね。
カミュは、空を見上げていた。青く澄み渡る空を、ただ眺めてた。浅い青の髪が揺れ、雪国なのにもかかわらず、不思議と肌にあたる風が気にならない。
一時期こんな色の空を見ることができなかった。真っ黒に常に覆われて、人々の気力も減退し、滅亡寸前にまで追い込まれた日々を思い出す。正直今こうして景色を眺めていても、そんな日々があったことなんて誰も信じてくれないほどに平和そのものだ。
カミュはそっと息を吐くと踵を返す。するとおんぼろの小屋が正面に映る。戸は開きっぱなしで、その奥であわただしく動き回っている奴がいた。
「ったく……おっせぇぞマヤ。まだ支度できねぇのか?」
カミュが不平を漏らし、右手を頭に置く。すると、マヤと呼ばれた奴は頬を膨らませてカミュに抗議する。
「うっさいなぁアニキ……女ってのは時間がかかるもんなんだよ」
「お前は女らしくしてたことなんてあったか?」
「んなっ!? お、オレだって年頃の女なんだぞ!」
「だったらまず言葉遣いから直せ。セーニャとかマルティナに比べたら全然だぜ」
カミュは両手を頭の後ろに組みながら呆れるようにため息をついた。それ故に、マヤがボソリと何かを呟いていたことに気づかなかった。
カミュはとりあえず暇潰しに腰に差してある短剣を磨くべく、ポケットから布を取り出そうと手を突っ込む。だが、変に引っ掛かってしまい、後ろに足をずらす。しると、じゃりっと鈍い音がした。足をどけると、そこには土がついてしまったが、金色の欠片があった。カミュはそれを拾い上げ、視界に映す。すると、脳裏に何かがよぎってきた。汚れてはいたが、そのなかで輝き続けている思い出が。
「……そういや、そんなこともあったな」
「なんかいったかアニキ?」
カミュがポツリと呟いた言葉がマヤの耳に届いてしまったようだ。カミュはあわててなんでもないといって、布を再び取り出そうとする。今度はするりと取れ、カミュは刀身を丁寧に拭いていく。ちょうど、二人を裂く黄金の茨を断ち切ったものと同じだ。
かつてマヤは、すべてを黄金に変えてしまうペンダントに取り憑かれ、全身を黄金に変えられてしまった。カミュは救えなかったという自責の念を抱いてそっと去っていってしまったが、その間に魔王にマヤがつけこまれ、魔王の配下にされてしまった。心の闇を増大させたマヤと対峙したカミュは、友と共にマヤを縛る金の茨を断ち切って、マヤを救いだした。そして彼女と約束したのだ。世界が平和になったら、二人で旅に出ようと。
「お、おまたせアニキ!」
漸く支度を終えた妹は両手に大きな鞄を持ちながら来た。カミュはその姿をみて頭を抱える。旅に出るというのにその大荷物ははっきりいっていただけない。
「もう少しまとめろよ……そんなんじゃつかれるだろ」
「女ってのは荷物が多くなるんだよ!」
「……はぁ、まあいいや。とりあえずいくぞ」
カミュは腰につけたポーチの中身を確認し、雪道を歩き始めた。その横をマヤがにっこり笑いながら歩いていく。もう叶わないと思っていた光景がいま実現したと思うと、感慨深い。
「アニキ、最初はどこにいくんだ?」
「そうだな……お前のそのバカでかい荷物もあるし、船があるところに向かうぜ」
「じゃあクレイモランか? でも船なんて貸してもらえるのか?」
クレイモランもありだが、カミュが考えていた場所とは違った。
「……いや、クレイモランじゃないぜ」
「えっ?」
疑問に思う妹をよそにカミュは目的の場所まで歩いていく。そして間もなくカミュは立ち止まった。ごつごつとした岩で出来た洞窟があり、中で下品な笑い声が響いてくる。
「ここだ」
「こ、ここってまさか……?」
「そうだ、昔の俺達の職場さ」
「ま、まさかここのバイキング達から船を奪うのか!?」
「そのまさかだ。いくぞ」
そういうとカミュは腰から短剣を抜き出し、入っていった。だがマヤは腕を引っ張って兄を止めた。
「しょ、正気かよアニキ!? あいつらは腕っぷしはいいし人数も多い! オレ達二人で勝てる相手じゃないぜ!」
二人は赤ん坊の時バイキングに拾われ、こきつかわれた過去がある。何度逆らっても歯が立たなかった故か、マヤは必死に説得する。だが、カミュは笑うのをやめずポーチからあるものを取りだし、マヤに突き出す。
「いいからこれつけろ。偽物だけどな」
「な、なんだよこれ……それに偽物ってどういうことだよ?」
「そいつはあのペンダントのレプリカだ。お前、あいつらを一度金にしたことがあるんだろ?」
「ま、まさかそれで脅してってことか?」
「そういうことだ。ペンダントの恐怖を刻み込んでいるはずだからな」
「な、なるほど……それならいけそうだな。よし……」
マヤはペンダントを首にかけると、カミュと共に洞窟に入っていった。洞窟を進んでいくにつれ、笑い声が大きくなり、思わず耳を塞ぎたくなる。どうやら手にいれた宝に対して狂喜してるようだ。
「へっへっへ! 今日は大漁だなおい!」
「世界が平和になって油断してるボンボンから奪い取れるからな!」
「銅や銀もたくさんだぜ! こりゃあ高く売れるな!」
「へぇ……そりゃよかったな」
ゲラゲラ笑っている好きに背後へと迫ったカミュは不敵な笑みを浮かべた。
「お、お前はカミュか!? てめぇ、いままでどこにいたんだ! 仕事サボってどっかいきやがって!」
宝の山を囲っていたガタイの良い男が血相を変えてカミュの胸ぐらを掴まんと腕を伸ばす。だが、後ろにいるマヤの姿を視界に映すとびくっと腕を震わせ、その場でとどまった。
「お、お前は……あのときの!? や、やめろ近づくな!」
ガタイの良い男が情けない声をあげると他の男達も慌てて後ろに下がる。
「おいおい何をそんなにびびってるんだ? 昔は俺達をコキ使ってたくせによ。いいぜ、金なんてたくさん持ってきてやるよ! お前達を金にしてな!」
「や、やめろ! なんでもする! なんでもするから金にするのだけはやめてくれぇ!!」
「へぇ……今なんでもするっていったよな? じゃあそうだな……船でももらうとするかな」
「ふ、船!? そ、そんな俺達バイキングは船なしじゃ……」
「じゃあまた金にされたいんだな。よしわかった」
「ま、待て! 一隻だけならいい! それ以上は勘弁してくれ!」
「いいぜ。ただし小さな船はなしだ。一番大きいやつで頼むぜ」
「……っ、わかった! さっさと持ってけ泥棒!」
カミュは感謝するぜと吐くと、他のバイキング達はいそいそと船の準備を始めた。
「お、おまたせしました……」
「よし、乗るぞ」
カミュはマヤをつれて船に乗り込み、その後船首の舵を握った。
「拾ってくれてありがとよ! まあとりあえずあばよ!」
カミュは不敵な笑みを浮かべると妹に帆を広げてもらい、発進した。洞窟を抜け、外から光が差し込んでくる。
そのときだった。水が突如もっこりと膨らんだのは。まるで水で出来た山だ。そしてそれはだんだんと面積を広げていき、飽和の限界を突破した瞬間、大量の水しぶきが弾けた。
「な、なんだ!?」
腕で覆い被さる水をかばいながら前をみると、そこには人間の数倍はある体躯を誇ったタコがいた。
「……ちっ、ここでクラーケンか」
「な、なんだよアニキあれ……バカでかいぜ!」
「ただで船を渡すわけにはいかないぜ! 俺のペットで捻り潰してやる!」
沖からは、さっきのガタイの良い男の声。どうやら奴がこのクラーケンを飼っているようだ。
「魔物をペットか、趣味悪いな。おいマヤ、船尾の方に隠れてろ」
「貴様ごときが俺のかわいいクラーケンに勝てるわけないだろ! 長い間ここを離れていたから頭が腐っちまったんじゃねえか?」
「そ、そうだ無茶だぜアニキ! あんなバケモンに一人で勝てるわけないだろ!?」
ギャハハと哄笑する親玉に妹も悔しいが同調するしかなかった。あんなやつに勝てるわけない。兄が戦えることは知っているが、いくらなんでも敵う相手じゃない。
だが、カミュは背に納めた何かを二つ取りだし、それぞれ握るとマヤに笑って見せた。円形で周囲に太い刃がいくつも取り付けられている。いわゆるブーメランというやつか。見るからには強そうではあるが、それでも敵うとは思えない。
「心配するな、マヤ。こんなやつどうってことないぜ」
カミュは不敵な笑みを浮かべながら小さくその場で二回跳び跳ねた。二度目の着地を終えると、カミュの体が稲妻のごとく左右へと動き、くるっとその場で一回転した。その瞬間、カミュの体は3体に増えていた。
「なっ、アニキが三人!?」
「な、なんだと!?」
カミュの後ろには全身を青い色に染められたカミュが二体おり、クラーケンを睨み付けている。
カミュは双方のブーメランを後ろに引き、構える。後ろの影も模倣するように腕を後ろに引いた。
「なんたって、俺は魔王を倒したんだからなっ!!」
カミュはそういうと勢いよく腕を前に回し、思いきりブーメランを投げた。合計6本のブーメランが様々な軌道を描き、クラーケンへと襲いかかる。
「は、弾き返せ!!」
主の指示通りクラーケンはすべて弾こうと二本の触手を動かす。だが、鈍重なそれでは俊敏に飛ぶブーメランをとらえることができず、二本のブーメランに逆に触手を切り落とされてしまった。
「い、いいぞアニキ!」
触手を失ったクラーケンは痛みに悶えながらもカミュを睨む。だが、もう事は遅かった。残り四本のブーメランがクラーケンを切り裂かんと迫っているからだ。クラーケンは抵抗する間もなく、その身を縦横無尽に刻まれてしまった。血飛沫があたりに弾け飛び、暗い海を赤く染めていく。その度に痛みを訴える叫びが洞窟内にこだましている。
「く、クラーケン!! しっかりしろ!」
主の叫びをよそにおぞましい断末魔をあげながら力を失っていく。そしてその胴体は深い水の中へと沈んでいってしまった。
宙を舞っていたブーメランはカミュの手元に戻り、分身を解く。
「おい、もう出て来ていいぞ」
そういってマヤを出させると、カミュは船からいきり跳躍して、親玉の元へと向かった。
「ひ、ひぃっ!?」
「よくも俺達を殺そうとしたな。まあ正直相手が雑魚で助かったけどよ」
静寂が場を包み込み、もう親玉を守るものはない。親玉は目に涙を浮かべ、必死に命を乞う。
「も、もうあなた達には逆らいません! ですから殺すのだけは勘弁してください!」
「俺達を殺そうとしたのに、自分がそうなると命乞いか。呆れたもんだな」
「つ、つい出来心だったんです! もうしませんから!」
「そう簡単に許せることじゃないな。だが……そうだな、ひとつ条件がある」
「は、はいなんでしょう!」
「船と金を用意しろ。それで許してやる。船は今のやつでいい。金は金庫がすっからかんになるまでだ。いいな?」
「は、はい! わ、わかりました!」
自分の命を優先してきたか。カミュはほくそ笑みながら金が出てくるのを待つ。
「お、おまたせしました!! 金です!」
「んまあ、こんだけあれば十分か。さて、じゃあ俺達は旅に出るからな、探さないでくれよ」
そういうとカミュはふたたび大きく跳躍して、船に飛び乗った。そして、帆を開き、舵をとって、洞窟の外へと漕ぎ出した。
差し込む光のヴェールに船が包まれ、視界が奪われる。そしてそれがだんだん薄れていき、剥がれたその瞬間。すみわたる青空、宝石のように輝く海、心地よい潮風が二人を迎えた。
「す、すげぇ!! オレ、始めてみたよこんな景色!」
「だろ? これからもっと、すごいものが見られるぞ!」
「アニキ!! まずどこからいこうか!」
「そうだな……どこにいくか」
興奮しているマヤを横目にカミュは舵を握りしめる。そしてカミュは、延々と広がる地平線を眺める。
「……お前達が消えたことで、この景色があるんだよな」
カミュはぼそりと呟く。今はもうこの世界にはいない二人の友を想う。あの二人は今頃それぞれの場所で元気にしているだろうか。
「なぁマヤ。俺イシの村にいきたいんだけどいいか? 途中寄り道とかはしてもいいからよ」
「イシの村か~。確かアニキの友達がいるところだよな! あのときは色々迷惑かけたし、話したいと思ってたんだ。いいぜ!」
もうそいつはここにはいないんだけどな。
カミュはその言葉をどうにか喉の奥まで飲み込んだ。悟られないように無理矢理笑うとカミュは舵を切っていった。
イシの村に向かいますが、その道中に寄り道をするかもです。