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コガネシティの人混みの中に、いつかの冷酷を見つけた。
あの時は何もかも否定して撥ね除けていた、冷たい吊り目は幾らか穏やかな色がさしていて、何よりも彼の変化をあらわしているようにみえた。
目の前を歩く、彼の無防備な背中にそっと近付いて、少しだけ後をつける。時折、キョロキョロと辺りを見回しながら歩いているあたり、誰か、若しくは何処かを探しているみたいだ。彼の一挙一動に合わせて揺れる、特徴的に跳ねた髪の先に、間違えて蝶々なんかが止まったりしないかなぁとか思う。彼の若草色の髪の毛は、きっと新緑よりも柔らかくて独特の甘さがあって、帽子(彼のはキャスケットって言ったか)を被っていなかったらそんな奇跡みたいな面白いことが起きたりするのかもしれない。少なくとも、自分の固くて真っ黒な毛髪に比べれば、彼の髪はすごく綺麗なものだと思う。
ま、つい最近まで日陰でしか呼吸をしていなかった彼に、そんなこと起きるはずもないのだろうけど。
そんなことを考えているうちに、目の前の人はいよいよポケットからモンスターボール…ではなくて、小さなメモ書きだろうか、恐らく地図を取り出した彼に飛び付いて挨拶してあげることにした。
「ラーンスさんっ!」
と、名前を呼びながら思い切り、体当たりじみたハグを繰り出すと、彼は悲鳴をあげて飛び上がった。 奇襲は成功したみたいだ。ひゃあ、だか何だか声を上げたまま目を白黒させて現状を把握しようと必死になっているランスさんの襟を無理やり引っ掴んで顔を合わせる。ひ、と小さな悲鳴が上がったような気がしたけどすっぱりと無視して僕はにっこりと笑った。
「こんな街のど真ん中で偶然ですね、まだ捕まってなかったんですか?こんにちは!」
捲し立てるように挨拶する。どんどんと気分が高揚していく僕とは正反対に、ランスさんの顔色はみるみる悪くなっていった。ぱ、と襟元を解放してやると、彼は慌てて二、三歩分の距離を取って僕を見た。既に涙を蓄えている目はどこか絶望に似た色が浮いているのが見てとれて、可笑しくなって笑ってしまった。急に笑い出した僕に身を竦ませるランスさんとの距離を一歩だけ詰める。
「折角だから、ね、僕とお茶でもしましょうよ?」
そうやってもう一歩、距離を詰めて笑う僕とは対照的に、ランスさんは泣きそうに顔を歪めた。
ああ、もう。これだから。
僕は何時まで経っても貴方に意地悪するのが止められない。
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