それでは本編どうぞ
「う・・・・ん」
目を覚ますと、見知った天井が俺の目に映った。
「ここは・・・・俺の部屋?」
俺は確か、教会の祭儀場にいたはずだ。だが、今はなぜか自分の部屋のベッドの上で横になっている。一体どうして・・・・
「目が覚めたようね」
聞き覚えのある女性の声が俺の耳に入る。声のする方に顔を向けると、そこには部長がいた。
「ごめんなさい一誠。勝手に上がらせてもらったわよ」
「いえ、それはいいんですけど・・・・・どうして俺はここに?俺は教会の祭儀場にいたはず・・・・・」
「私がその祭儀場からここに連れてきたのよ。あなた、呆然としていてとても動ける状態ではなさそうだったから」
呆然としていたって・・・・ああ、そうか。俺はレイナーレを死なせてしまって、それで・・・・
そうだ、レイナーレ。彼女はどうなって・・・・・
「部長、レイナーレは・・・・・」
「・・・・彼女の遺体はお兄様にお願いして堕天使の組織、グリゴリに引き渡してもらったわ」
部長のお兄さんというと・・・・・確か今の魔王ルシファーだったか。魔王様直々に引き渡してもらったって言うなら信用はできるか。
「彼女は独断でこの町で色々と企んでいたようだから本来なら私が処理するところなのだけれど・・・・一誠はそれを望まないと思ったから、グリゴリに引き渡したわ」
「俺が望まない・・・・ですか。俺とレイナーレの間に何があったのかご存知なんですか?」
「おおよその事の顛末は知っているわ。彼女に聞いたから」
そう言いながら、部長は俺のすぐ隣を指差す。そこには俺の右手を握り締めながら眠るアーシアの姿があった。そういえば、ドーナシークの光の槍を掴んだせいで右手は焼け爛れていたけど・・・・痛みを感じない。おそらくアーシアが直してくれたのだろう。
「アーシア・・・・・ありがとう。ごめんな」
俺はアーシアをないがしろにしてしまったというのに、アーシアは部長に事情の説明をしてくれた上に怪我まで直してくれた。頭が上がりそうにないな。
「一誠・・・・聞いてもいいかしら?」
「なんですか?」
「一誠は本当に彼女を、あの堕天使のことを愛していたの?」
問いかける部長の眼差しは、いつになく真剣なものであった。それだけ重要なことなのか、はたまた理解できないから気になるのか・・・・・まあ、おそらく後者なのだろうが。
「はい。愛していましたよ」
俺ははっきりと断言する。本当はこんな過去形みたいな言い方はしたくはないけれど・・・・レイナーレが死んだ今となっては、過去形にせざるを得ない。それが・・・・・悲しく、辛かった。
「おかしいですか?悪魔である俺が敵対する種族である堕天使のレイナーレを愛するのは」
「いいえ、そんなことはないわ。私は同族とはいえ、敵対関係にありながら恋に落ちて結ばれた悪魔を知っているわ。だから、あなたのそれをおかしいとは思わない。けれど・・・・・彼女はあなたを殺したのよ?殺されたのに・・・愛していたというの?」
部長の疑問はもっともだ。自分を殺した相手を、それでも愛し続けるなど正気の沙汰ではない。
だけど・・・・そもそもの前提が間違っている。
「違いますよ部長。殺されても愛してるんじゃない・・・・・愛しているから殺されたんです」
「え?」
「部長に転生させられたあの日・・・・・俺はレイナーレに死んで欲しいと言われて、俺はそれを受け入れ、彼女に殺されました。結果としてほんの僅かな未練があって部長を呼び寄せて悪魔に転生させられましたが・・・・それでも、俺はレイナーレに請われたから望んで殺されたんです」
「彼女を・・・・愛していたから?」
「はい。でなければ殺されたりしませんよ」
人間と堕天使という種族の差があったとしても、白龍皇を倒すために鍛えていて
『死ぬほど愛している』・・・・・きっと、俺のレイナーレへの想いはそう評されるものなのだろうな。
「わからないわ。愛しているからって殺されることさえ受け入れるだなんて・・・・・どうしてどこまでできるのか私には・・・・」
「わからなくていいんですよ。これはきっと理解してはならないことだと思いますので・・・・部長はどうか、まともな恋愛をしてください」
主である部長に、俺と同じような恋情は抱いて欲しくない。この恋情は・・・・呪いといってもいいほどにいびつなのだから。
「部長、俺の方からもいくつか話したいことがあるのですがいいでしょうか?」
「ええ。言ってみなさい」
「ではまず・・・・アーシアの件ですが、彼女は今どういう状況に置かれているんですか?」
結果として儀式とやらは行われなかったが、アーシアは元々は堕天使側の人間。本来なら悪魔である俺の家にいることさえ許されないはずだが・・・・・おそらくアーシアをここに連れてきたのは部長だ。部長はアーシアのことをどう扱っているのか気になった。
「そうね・・・・・結論から言うと、彼女は私の眷属となったわ」
「・・・・は?」
一瞬、部長の言っている事の意味が分からずに間の抜けた声が出てしまった。
「えっと・・・・部長?アーシアはシスターなんですよ?それなのに眷属って・・・・」
「まあ驚くのも無理はないわね。彼女にお願いされたとき、私も驚いたもの」
「お願いされたって・・・・・まさか、アーシアは望んで悪魔になったって言うんですか?」
信じられなかった。アーシアは信心深いシスターだ。そんなアーシアが神と敵対する立場にある悪魔になろうだなんて・・・・
「『一誠さんを近くで支えてあげたい。だから私を悪魔にしてください』・・・・・彼女はそう言ったわ。彼女は目の前で愛するものを失った一誠のことを心配している。だから悪魔になることを望んだのよ」
俺を支えるために?俺はアーシアをないがしろにしてしまったっていうのに・・・・どうして・・・・
「どうしてお前は・・・・そんなに・・・・・」
俺はすぐ傍で眠るアーシアを見やる。悪魔になったからには、神に祈るだけでもダメージを受けてしまうというのに、それでも俺のために・・・・・ああ、なんでこの子はこんなにも優しいんだよ。いっそこんなにも優しくなければ・・・・俺としても楽だったのに。
「彼女を利用しようとしていた堕天使たちについては私が処理したからそこは問題ないわ。今後彼女は私の眷属悪魔として生きていくことになる・・・・一誠、あなたは彼女の先輩悪魔よ。彼女があなたを支えようというなら、あなたは彼女を守りなさい」
「・・・・はい。肝に銘じます」
部長の言うとおりだ。俺が守らなければならない。彼女の人生は俺が狂わせてしまったようなものなのだから・・・・俺が責任を取らなければ。
アーシアを守る・・・・・生きる目的がひとつ増えたな。
「部長、もう一つお話が・・・・いえ、話というより、誓いですね」
「誓い?」
俺はアーシアが握る手を解き、ベッドから起き上がり部長に膝まづいた。
「部長、改めてここに誓います。俺の命はあなたのものです。あなたのためなら俺はあなたの剣にも盾にもなりましょう。この命、あなたのお好きにお使いください。俺は・・・・あなたに生涯、忠誠を誓いましょう」
改めて誓う。部長への・・・・リアス・グレモリーへの忠誠を。それも生きる目的だから。
白龍皇を倒すこと、アーシアを守ること、部長への忠義を尽くすこと・・・・その三つが俺の生きる目的
そしてレイナーレへの贖罪・・・・・それが俺の生きる理由
背負って生きなければならない・・・・・死に絶えるその時まで
レイナーレさんが悪魔に転生するのではと考えていた方もいるかと思いますが、純粋な堕天使である彼女が悪魔になるのは問題がありすぎるため不可能と判断しました
そして、まだ一章だというのに一誠さんの心には大きな闇が・・・・果たしてこの先どうなっていくのか
それでは次回もまたお楽しみに