『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は一誠さんとリアスさんのお話です

それではどうぞ


第19話

 

「部長?まだ起きてらしたんですか?」

 

深夜二時、いつものように短時間しか眠れなかった俺は走り込みをしようと別荘を出ようとしたのだが、部屋に灯りが点っていたので中を覗いてみると・・・・そこには部長がいた。

 

「いくら悪魔といえど、ちゃんと寝ないと体に悪いですよ?」

 

「それはこちらのセリフよ。一誠こそ昼間あれだけ熱心に修行していたのだからしっかり寝ないとダメじゃない」

 

まあ確かに昼間は結構ハードな修行をしてはいたからそう言われるのは仕方ないのだが・・・・

 

「いえ、俺はもう寝て起きたんですよ。これから走り込みに行こうと思って」

 

「寝て起きてって・・・・まだ二時なのだけれど?」

 

「ああ、そういえば部長にはまだ言ってませんでしたね。俺不眠症気味で一日二時間ぐらいしか眠れないんですよ。だからこの時間に起きてるのは俺にとってはいつものことなんです」

 

「不眠症って・・・・あなた、それ医者に見てもらったほうがいいと思うのだけれど?」

 

心配そうに俺に勧めてくる部長。心配かけてしまうことは心苦しいが、治る見込みがないから医者に見てもらってもなぁ・・・・

 

「俺なら大丈夫ですよ。これが俺にとっての普通なのですから」

 

「でも・・・・・」

 

「もしも本当に辛くなったら相談しますから。だから心配無用です」

 

「そう・・・・まあ、本人がそこまで言うのなら何も言わないけれど・・・・」

 

渋々といった様子で部長は引き下がってくれた。

 

「それよりも、部長の方はこんな時間まで起きて何をしてらしたのですか?」

 

「戦術の勉強よ。ゲームを経験しているライザー相手では気休めでしかないかもしれないけれど、出来ることはやっておきたいの」

 

なるほど。確かに、格上が相手となると戦術は重要になってくる。気休み程度だとしても、勉強しておいて損はない。

 

「なら、まだ寝ないのでしたら俺もご一緒してもいいですか?どれだけ鍛えても俺は実戦経験に欠けますので戦術で補いたいので」

 

「ええ。構わないわ」

 

「ありがとうございます」

 

部長からの許可を得て、俺は近くにあった本に手を伸ばした。結構分厚いな・・・・これは読み応えがありそうだ。

 

「・・・・・一誠、あなたに聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」

 

「なんですか?」

 

「仮にあなたがライザーと・・・・・フェニックスと一騎打ちをするとしたら、どうやって倒すかしら?」

 

ふむ、これはまたストレートに聞いてくるな。フェニックスはほとんど不死身。まともにやりあえば倒すのは難しい。倒す方法があるとしたら・・・・・

 

「俺だったらまあ、心が折れるまで殴り続けますね。不死身といっても、心を折れば再起不能にはできるでしょうし」

 

「あなたならばそれはできるかしら?ライザーを・・・・倒せるかしら?」

 

「その質問に答える前に、俺からも聞きたいことがあります」

 

「え?」

 

ライザーとのゲームが決まった時から、部長には聞きたいことがあった。それをこの機会に聞いてみようと俺は切り出す。

 

「部長がライザーとの縁談を頑なに拒否する理由・・・・・よろしければ教えていただけないでしょうか?」

 

俺はこれを部長に聞いてみたかった。あくまでも俺の所感になるが、ライザーは軽薄で強引に見えるが、その実誰よりも悪魔であることに誇りを抱いている。ゲームの前に準備期間を設けたりと部長の顔も立ててくれている。

 

眷属を女で固めてハーレムを築くようなやつだが、それでも結ばれればきっと部長の事を大切にしてくれるだろう。部長ならおそらくそれはわかっていると思うのだが・・・・その上でなぜ縁談を拒否するのかが俺は気になった。まあ、生理的に受け付けないとかの理由だったらそれまでだが。

 

「・・・・・私はね一誠、グレモリーなのよ。どこまでいっても私にはこの名前が付き纏う」

 

「それが嫌なんですか?」

 

「いいえ、そんなことはないわ。むしろグレモリーであることに私は誇りを抱いているわ。けれど、だからこそ私は『グレモリーのリアス』ではなく、『ただのリアス』として愛して欲しいと願っているの」

 

なるほど・・・・なんとなくわかった。どこまでいってもグレモリーの名がつきまとう部長は、『リアス』という個人で見られることは少ないだろう。『グレモリー』は部長の誇りであると同時に、『リアス』という個人を殺す呪縛。だからこそ、部長は『リアス』を愛してくれる相手を欲しているのだろう。

 

「我儘なのはわかってるの。だけれどこれを譲ってしまったら私は自分で『リアス』という自分を殺してしまうことになってしまう。ライザーにもいいところがあるのはわかっているけれど、それでもライザーは私を『グレモリーのリアス』として見て結婚を迫っている。だから・・・・嫌なのよ」

 

「部長・・・・」

 

部長の言っていることは確かに我儘だ。部長は上級悪魔・・・・・立場のある者は時に自らを律し、殺さねばならない。特に今回は御家事情が関わっているのだからなおさらだ。だが、悪魔なんてそもそもが欲深い生き物。願いを持つことを咎めることはできないし、部長の眷属である俺は部長の我儘(願い)のために戦うのは当然の事。

 

それに、俺は以前部長に言った。『部長はどうか、まともな恋愛をしてください』と。部長の意志に反する御家事情が絡んだ縁談をまともな恋愛というには無理がある。

 

尋ねたのは興味本位・・・・俺のやることは変わらない。

 

「俺にはグレモリー家の事情は詳しくはわかりません。ですが、これだけは言えます・・・・俺は部長の眷属。この力は部長のために振るいます。たとえ誰の恨みを買うことになろうとも」

 

「一誠・・・・・ありがとう」

 

「お礼なんていりませんよ。それが部長の眷属である俺の生きる目的なんですから」

 

そう、それが俺の生きる目的。自らが定めたものに自分で反することなんてできるはずがない。だから俺は・・・・・部長のためにライザーを倒す。

 

「さて、先程の問いの答え、俺がライザーを倒せるかどうかですが、ライザーの実力を正確に理解しているわけではないのおおよその勝率になりますが通常状態なら勝率は三割。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使えば五割といったところでしょうか」

 

「赤龍帝の籠手を使って五割・・・・あなたの力でも勝率は半分程度なのね」

 

「まあ、それだけ不死身っていうのは厄介っていうことですよ。それにあくまでも目算になりますし。ただ・・・・・」

 

「ただ・・・・・?」

 

「・・・・・いえ、なんでもありません」

 

俺は出かけた言葉を飲み込んだ。

 

本当は勝率をさらに上げる方法はある。禁手(バランス・ブレイカー)・・・・それを使えば勝率はおそらく八割を超えるだろう。

 

禁手は神器(セイクリッド・ギア)の至る究極系・・・・・・その力は通常状態の赤龍帝の籠手とは比べ物にならない。その力があればよほどのことがなければ勝てるだろう。まあ、本当は禁手より上の力もあるのだが・・・・・それは流石に使うことはないだろう。

 

(禁手のことは話さないのか相棒?)

 

(ああ。今回のゲーム、できれば禁手は使わないようにしたい。もっと言えば、俺ひとりじゃなく、眷属一丸で勝ちたいと思っている)

 

仮に俺一人でライザーを倒したとして、確かに部長はライザーとの縁談を回避することができる。けれど、そうなったら部長のために強くなろうとしてくれている朱乃先輩たちの中である種の不満が芽生えてしまう可能性がある。部長のためなら誰に恨まれても構わないとは思っているが、だからといって積極的に不満を抱かせるのは本意ではない。

 

それに、このゲームはグレモリー、フェニックスの両家も見るだろうし・・・・・一人に頼った戦術は部長への不審、不評を招きかねない。そうなっては部長の立場を悪くしてしまうだろう。

 

だからこそ、禁手はあくまでも奥の手・・・・使わなければならない状況に追い詰められない限りは使わないほうがいいだろう。

 

(お前にはお前の考えがあるということか・・・・まあ、好きにするといい。お前が決めることだからな)

 

(ああ。そうさせてもらうよ)

 

「一誠?急に黙り込んでどうしたの?」

 

「え?あ、すみません。なんでもありませんよ」

 

俺は部長に謝罪して、手にしていた本を開いて読み始める。

 

ライザーとのゲーム・・・・果たしてどうなるか。




既に禁手に至っている一誠さん。果たしてゲームで使うのかどうか・・・・・

そしてゲームに対して色々と考えている模様。見ようによっては上から目線に見えるかもですが・・・・・

それでは次回もまたお楽しみ!
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