それでは本編どうぞ
第26話
『大人になったら私と結婚してくれる?』
『その時に嫁の貰い手がなくて俺に好きな子がいなかったら考える・・・・・かな?』
『やった!約束だよ!』
『結婚するとは一言も言ってないんだけど・・・・・まあいいか』
「・・・・・・なにがまあいいか、だ。何もよくねえよ」
いつも通り深夜の二時近くに目を覚ました俺だが、目覚めは最低最悪だった。なにせ昔の黒歴史にもなりかねない・・・・・いや、完全なる黒歴史な夢を見てしまったからな。
(随分と不機嫌そうだな相棒。大丈夫か?)
(大丈夫だよ・・・・・・多分)
正直寝起きということを差し引いてもだいぶ機嫌は悪いが、とりあえずドライグには大丈夫だと返しておく。
先程まで見ていた夢・・・・・それは幼い時の夢であった。もっとも、幼いといっても、『兵藤一誠』の年齢的な意味でだ。精神年齢的には前世からのものを引き継いでいるため、考え方やらは実年齢に対してそこまで幼稚ではない。だからこそ、あの夢の内容は俺にとっては黒歴史以外何ものでもないのだ。
幼い頃の約束など、大人になってみれば羞恥、恥辱の塊だ。それが結婚が絡んだものであるというのならなおさらである。あの時はその場のノリに任せて了承寄りの返事を返してしまったが、今になってしまえば後悔しかない。そしてそれはおそらく向こうも同じだ。まあ俺と違って覚えていないかもしれないが・・・・・むしろ覚えていない方が幸せだろう。叶うことなら俺もこの記憶は抹消してしまいたい。
というか『幼い頃の結婚の約束』というものが異様なまでに美化されているこの世の中はおかしいと思う。そんなもの当事者からすればマジで最悪なんだぞ。その上両者同意をもって反故したとしても何故か責められたりもするし・・・・・・今からでも全世界の幼子達に結婚の約束なんてそう易々とするものではないぞと促してやりたい。
「・・・・・はあ」
だめだ、考えれば考える程さらに気分が悪くなるのを感じる。自分で自分の首を有刺鉄線で締め上げてしまった気分だ。
(これ以上はやめよう・・・・・いつものようにトレーニングに励んで早々に忘れるに限るな)
そう思い、俺は着替えて外に出てトレーニングに勤しむのであった。
「・・・・・はあ」
最悪な夢を見たのが今朝のこと。現在俺はまたしても頭を抱える状況に陥っていた。
放課後、今日は旧校舎の清掃を部長の使い魔にやらせるということでうちでオカ研の活動をすることになった。それ自体は別に構いやしない。そう、それだけならば。
問題は・・・・・
「こっちが小学生のときの一誠よ」
「あらあら、幼い時からもう端正な顔立ちをしていますわね」
「だけど、やっぱり幼い分可愛らしくも見えるわね」
「わかります部長さん!」
「昔の一誠先輩・・・・・愛らしいです」
なぜか、昔のアルバムの鑑賞会が開かれていることだ。
会議をはじめようとした矢先、嬉々として母さんがアルバムを持ち出し、何故か全員がアルバムに興味を持ってしまってオカ研の活動はアルバム鑑賞会へとすり替わってしまったのだ。今朝に続いてどうしてこう、昔のことでこんなにも頭を悩ませなければならないのだろうか・・・・・
「ごめんなさいねぇ。一誠ったら写真が好きじゃないって言ってあんまり撮らせてくれなかったからアルバムが少なくて・・・・・」
母様、世間一般においてアルバム10冊は少なくないと思います。写真好きじゃないって言ったのに、結構お構いなしにシャッター切りまくってくれたおかげでこんな数になっちゃったんじゃないですか・・・・・
「あはは・・・・・大変だね一誠くん」
「そう思うならその手に持っているアルバムを閉じろ」
苦笑いを浮かべながら動揺してくる木場であったが、その手にはしっかりとアルバムが開かれている。こいつ、本当にいい性格してやがる。
「まあ、そう言わないでも。僕だって仲間の過去は気にな・・・・え?」
突然、木場は表情を変えた。先程までの笑顔は消え、ひどくこわばっている。
「どうした?」
「一誠くん、この写真・・・・・」
「ん?ああ、これか・・・・・」
その写真は俺が幼馴染の女の子の家で撮ったものであった。嫌だって言ったのに強引に連れ込まれて写真を撮らされたからよく覚えている。。
「この写真がどうかしたのか?」
「これ見覚えは?」
木場が指差したのは、壁に掛かっている剣であった。
「・・・・・ああ、覚えてるよ。俺も気になってドライグに確認をとったぐらいだからな」
あの時はどうしてそんなものがあの家にあったのか気になったが、もしかしたら骨董品感覚で買ったのかもしれないって思って済ませたんだったな。
「こんなこともあるんだね。まさかこんなところで・・・・・・聖剣を目にすることになるなんて」
そう、その剣は模造品でもなければ骨董品でもなく、ましてはただの剣でもない。それは・・・・・・聖剣だった。
ただ、それが聖剣であること自体は特に気にしていない。本当に骨董品感覚で買ったものかもしれないからな。問題は・・・・・木場の方だった。
「聖剣・・・・僕は・・・・・」
その表情には明らかな怒りが感じ取れた・・・・いや、怒りなどという生易しいものじゃない。その感情はおそらく・・・・・・憎しみだ。
「木場、お前・・・・・」
「一誠、ちょっといいかしら?」
きっかけが自分の写真である以上、一応事情を聞こうと思った俺であったが、母さんに声をかけられて遮られてしまった。
「なに母さん?」
「飲み物とお茶菓子を用意しようと思ったのだけれど切らしちゃって・・・・・ちょっと買ってきてくれないかしら?」
なんともまあ間の悪い・・・・・まあ断る理由はないからいいけど。
「わかった、行ってくるよ。他に何か買ってくるものはある?」
「大丈夫よ。お願いね」
「ああ」
母さんに飲み物とお茶菓子用のお金を受け取って、俺は外に出て行った。
「・・・・・あなた達にききたいことがあります」
一誠が買い物に出たとほぼ同時に、一誠のお母様が嫌に神妙な面持ちで私たちに切り出してきた。どうやらこのために一誠に席を外させたようね。
「このアルバム・・・・・・幼い頃の一誠を見て、どう思ったかしら?」
幼い頃の一誠。少し目つきは鋭いけれど、それでもあどけなさがあって可愛らしいと思った。だけど、お母様が聞きたいのはそういうことではないのでしょう。お母様が聞きたいのは・・・・・
「・・・・・笑顔が少ないと思いました」
そう、写真の中の一誠は極端に笑顔が少なかった・・・・というより、笑っている写真はほとんどなかったのだ。そのことには皆も気がついていたようで、表情が暗かった。
「あの子は昔から滅多に笑わない子だったの。それだけならまだしもどこか大人びていて・・・・・いい意味でも悪い意味でも子供っぽく無かったわ」
一誠はどこか年不相応に見えていたけれど、それは幼い頃からだったらしい。
「それでも、滅多に笑わないってだけで嬉しいって感情があることはわかっていたわ。表情に出ないだけで、この子はちゃんと喜んでくれてるんだって私と夫はわかっていた」
表情から読み取れない感情・・・・・一番身近な親だからこそ、お母様やお父様はそれを察知することができたのみたいね。正直羨ましいわ・・・・・私も主として、一誠の感情の機微に気がつくことができるようになれればいいのだけれど・・・・
「だけど・・・・・・最近はそれさえもわからなくなってしまった。いいえ、無くなってしまったといったほうがいいかもしれません」
「・・・・え?」
「つい最近・・・・・一誠がオカルト研究部に入って少ししたあとから、一誠から『喜び』の感情を一切感じることができなくなってしまったわ。その理由に・・・・・あなたたちは心当たりはないかしら?」
「ッ!?」
お母様の言葉に、その場にいた全員が表情をこわばらせてしまった。
心当たりなど、あるに決まっている。その原因を・・・・・・私たちは知っているのだから。
のっけからフラグを建てていくスタイル
果たしてどうなるか・・・・・
それでは次回もまたお楽しみに!