『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は部室で交渉のおはなし

そして・・・・・

それでは本編どうぞ


第32話

(全く・・・・・面倒な状況になったものだ)

 

放課後のオカ研の部室にて・・・・現在、部室に備え付けられているソファに昨日うちの訪れたイリナとその同行者・・・・ゼノヴィアの二名が腰を下ろしている。どうやらこの二人、この町を治める部長と何らかの交渉を持ちかけるつもりらしい。昨日うちの寄ったのはそのついでといったところだろうか。

 

だが、教会の人間が悪魔と交渉とは・・・・・この町に来ていた神父が惨殺されていると部長が言っていたし、よほど面倒なことがこの町で起きてるということか。

 

しかもさらに面倒なことに・・・・・木場の奴もかなり殺気立っている。イリナとゼノヴィアのことを忌々しそうに見ているからな。やはり教会の人間への憎悪は抑えきれないか・・・・先日話をして少しは頭を冷やしてくれると思ってた矢先にこれとは本当に間が悪い。

 

まあ、それについてはイリナだから仕方がないとも言えるか。昔からタイミングを考えずに俺を振り回すものだから俺は困惑しまくってたからな。わざとではないんだろうがあいつのそういうところはどうにかならないものか・・・・

 

(相棒、勝手にモノローグを読んですまないが変なふうに逸れてきているぞ?)

 

ドライグに指摘され、確かになにか変な方向に思考が逸れていってることに気がつく・・・・・うん、今はとにかく交渉を見守るとしようか。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側で管理、保管されていたエクスカリバーが奪われました」

 

話を切り出したのはイリナだった。教会で保管されてたエクスカリバーが奪われたって・・・・なんでよりにもよってエクスカリバーなんだよ。タイムリーすぎるだろ。おかげで木場のやつ、表情がさらに険しくしやがった。

 

それにしても、エクスカリバーの強奪か・・・・・過去の大戦で折れて、今は錬金術で7本に分割されたってことは調べて知っているが、それでも強力な聖剣だ。警備も厳重だというのにそう簡単に奪われるものか?

 

「・・・・下手人は?」

 

部長も俺と同じ考えに至ったらしく、イリナ達に尋ねた。

 

「堕天使の組織・・・・グリゴリの幹部、コカビエルだ」

 

「「「ッ!?」」」

 

出てきた名前に、俺を含めた眷属全員が身体をこわばらせた。堕天使の組織が教会から聖剣を強奪・・・・それもコカビエルといえば聖書にも記された堕天使だ。こうなると事態は深刻だと言わざるを得ない・・・・ヘタをすれば天使、堕天使間の戦争の種火にもなりかねない。

 

「それをわざわざ私達に教えるということは・・・・・エクスカリバーとコカビエルの所在は・・・・」

 

「ええ。コカビエルはこの町に奪ったエクスカリバーを持ち込んでいるわ」

 

だろうな。でなければこの話を俺たちにする意味がない。

 

「つまりあなたたちがここに居るのはグリゴリからエクスカリバーを奪還するためということね」

 

「ああ。7本のエスクカリバーのうち、カトリック、プロテスタント、正教会から1本ずつ・・・・つまり3本のエクスカリバー奪われがこの地に待ちこまれた。私はカトリック、イリナはプロテスタントから残ったエクスカリバーを託され、奪われたエクスカリバーの奪還を命じられたというわけさ」

 

二人だけで奪還・・・・相手はグリゴリ、そして堕天使の幹部コカビエル。

 

(ドライグ・・・・どう思う?)

 

(無謀以外のなにものでもないな。コカビエルはかつて神や魔王と渡り合った堕天使だ。その実力は折り紙つき・・・・少なくとも小娘二人でどうにかできる相手ではない)

 

まあ、そうだろうな・・・・・二人の実力は知らないが、流石にコカビエル相手では・・・・

 

「・・・・・まさか交渉の内容というのはその奪還に私達に協力しろってわけではないわよね?」

 

部長もこの任務の無謀さを理解しているようだ。けどまあ、協力云々のことは本気で言っているわけではないだろう。部長もわかっているはずだ・・・・・教会が悪魔と手を組むことを良しとするはずがないと。

 

「いいえ、その逆。私たちから一切の協力を要請しない。あなたたち悪魔には今回の一件に関わらないで欲しいの」

 

やっぱりそうきたか。清廉潔白を謳う教会が悪魔と協力だなんてありえない。だからこの交渉は・・・・・牽制だ。

 

「見くびられたものね・・・・私たちが堕天使に助力するとでも思っているの?」

 

「本部はその可能性も憂慮している」

 

「それは無いわ。グレモリーの名にかけて、卑劣な堕天使と手を組むだなんてありえないわ。当然、あなたたちに協力するつもりもないけれど」

 

まあ妥当な判断だな。この状況で下手に動けば三すくみの関係性に影響を与えかねない。それを避けるためにも手出ししないほうがいいに決まってる。

 

そうに決まっているんだが・・・・・なんでだ?なんで俺は・・・・・心の底から納得することができないんだ?

 

「だけど二人だけでことに当たるだなんて・・・・・あなたたち、死ぬ気?」

 

「ええ、そうよ」

 

「ッ!?」

 

部長の問いかけに、さも当然のように答えるイリナ。それを聞いて俺は、思わず強く拳を握ってしまった。幸い、誰にも見られてはいないようだが・・・・

 

「教会は堕天使の手に渡るぐらいならエクスカリバーを全て消滅させても構わないと判断した。私たちの役割は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ」

 

「そのためなら私たちはこの身を捧げる所存よ。エクスカリバーに対抗できるのはエクスカリバーだけなのよ」

 

「相変わらずあなた達の信仰は常軌を逸しているわね・・・・」

 

イリナとゼノヴィアの発言に、部長が呆れたように言う。教会の命令を、命をかけて全うする・・・・・言葉にすればそれはなんとも聞こえのいいものだ。だが、俺には教会が二人の使い捨ての駒にしているようにしか思えない。

 

それも全て聖書に記された神への信仰のためだというのなら・・・・・やはりそれはあまりにも残酷だと言わざるを得ない。アーシアの件や木場の件含めて教会への不信感は一層強くなった。

 

「本当に、たった二人で可能だと思っているのかしら?」

 

「無駄死にするつもりはないさ。そのための奥の手もある」

 

「そう・・・・・まあ、協力するわけでもないのだから、これ以上深入りはしないわ。頑張りなさい」

 

「悪魔から応援されても大して嬉しくもないが、一応受け取っておこう。イリナ、帰るぞ」

 

「・・・・・ごめんなさいゼノヴィア。ちょっと待ってて」

 

イリナと共に部室からさろうとするゼノヴィアであったが、イリナはゼノヴィアに断りを入れて・・・・・俺の前に歩み寄ってきた。

 

「一誠くん・・・・・聞かせて。どうして悪魔になったの?」

 

イリナは悲しそうな表情を浮かべ、俺を見つめながら尋ねてきた。表情からして俺が悪魔になったのを快く思っていないんだろうな。

 

「・・・・・答える必要はない」

 

俺は・・・・悪魔になった理由をイリナに話すつもりはなかった。そんなこと・・・・・わざわざ言う必要はない。

 

「教えて」

 

「断る」

 

「どうして教えてくれないの?」

 

「教えたくないからだ」

 

しつこく食い下がってくるイリナ。だが俺は話さない。話したくない・・・・・イリナには特に。

 

「私・・・・幼馴染なんだよ?一誠くんの幼馴染なのに・・・・それでも教えてくれないの?」

 

「・・・・・だからどうした?」

 

「え?」

 

「幼馴染だからどうしたって言うんだ?それが教える理由になるとでも思っているのか?だとしたらおめでたいな」

 

「ッ!?」

 

俺はイリナが怒るとわかっていて、わざと辛辣な言葉を投げかけた。予想通りイリナは表情をこわばらせるが・・・・・俺も心が痛むのを感じた。

 

「幼馴染だからどうしたって・・・・本気で言ってるの?私は一誠くんのこと・・・・・」

 

「幼馴染だから大切に思っていたか?それはありがたいが・・・・悪いが俺はそうじゃない。今の俺は悪魔で、イリナは教会の人間。今ことを構えることはなくても、立場上俺達は敵同士。この立場はたかが幼馴染というだけで覆るものじゃない」

 

ごめん・・・・・ごめんイリナ。本当はこんなこと言いたくはない。だけど・・・・それでも俺はイリナを否定しなければならない。イリナへの想いを受け入れるわけにはいかないから。

 

「だから私に悪魔になった理由を教えてくれないっていうの?」

 

「そうだ。わかったら早く帰れ。昔のよしみで任務がうまくいくように祈るぐらいのことはしてやるからさ」

 

「・・・・嫌」

 

「え?」

 

「嫌よ!一誠くんが悪魔になった理由を教えてもらうまで帰らない!だから教えて!」

 

教えてもらえないことに業を煮やしたのか、声を荒げるイリナ。言ってることはめちゃくちゃだが・・・・それはまあ俺も人のことは言えない。

 

「わがまま言うな。お前には任務があるんだろ?任務と俺が悪魔になった理由を聞くこと・・・・・どっちが大事なんだよ?」

 

「それは・・・・・でも・・・・!」

 

「イリナ・・・・・その悪魔の言うとおりだ。私たちにこんなところでのんびりしている暇はない。早く行くぞ」

 

ゼノヴィアが俺の言葉に同調し、イリナを連れて行こうとする。これでようやく終わると思ったが・・・・

 

「だったら・・・・だったら私と戦って一誠くん」

 

「・・・・は?」

 

イリナの言ってることの意味が分からず、俺は思わず間の抜けた声を出してしまった。

 

「私と戦って・・・・私が勝ったら一誠くんが悪魔になった理由を教えて」

 

なるほど、そういうことか。正直イリナと戦いたくはないんだが・・・・だけど、これを利用すれば・・・・

 

「・・・・・わかった。その勝負受けてたとう」

 

「一誠!?何を言ってるの!?」

 

主である自分の許可も取らずに、勝手に勝負を受けた俺を咎めるように声をあげる部長。申し訳ないが・・・・今回は我を通させてもらう。

 

「イリナが勝ったら俺が悪魔になった理由を教えてやる。だが・・・・俺が勝ったらもう詮索するな」

 

「ええ、それでいいわ」

 

よし、これで勝てればもう詮索されなくて済む。それに・・・・きっと、イリナからの心象も悪くすることができるだろうからな。

 

それでいい・・・・それできっと・・・・・

 

「ダメよ一誠!そんなこと許可・・・・」

 

「ちょうどいい・・・・・僕も一枚噛ませてもらおうかな」

 

止めようとする部長を遮るようにして、これまで沈黙していた木場が前に出てきた。

 

「誰だ君は?」

 

「・・・・君たちの先輩だよ。失敗作だけどね」

 

木場が不敵な笑みを浮かべると同時に、部室内に無数の魔剣が出現する。

 

(・・・・・木場も焚きつけてしまったか。これはちょっと面倒なことになってしまったが仕方ないか)

 

内心でぼやきつつ、俺は右手で赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宿る左手を触れながらイリナを見据えた。

 




原作とは違う経緯で一誠さんVSイリナさんの展開となりました

おかげでアーシアさんが貶められることはなかったけど・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!
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