『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は一誠さん対イリナさんのおはなし

ただラストで・・・・

それでは本編どうぞ


第33話

「一誠くん・・・・」

 

「・・・・・」

 

旧校舎の裏手にある開けた場所で、俺とイリナは向かい合っていた。少し離れたところでは木場とゼノヴィアも同じように向き合っている。

 

これから俺はイリナと、木場はゼノヴィアと戦う。部長は渋っていたけれど、やらせないと事態を収めることができないからと了承してくれた。朱乃先輩が結界を張ってくれているから、互いに殺さないように配慮しつつも、存分に戦うことができそうだ。まあ、木場はともかく俺は必要最小限で済ますつもりだけどな。

 

「一誠くん、私本気でいくから覚悟してね?」

 

イリナは腕に巻いていた紐に手をかける。すると紐は形を変えて日本刀のような形をとった。

 

「それがイリナのエクスカリバーか」

 

「そうよ。擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)。形を自由に変えることができる聖剣よ」

 

律儀に能力を教えてくれるイリナ。おそらく、教会の戦士としてこれまで戦ってきた経験があるから自分の方が有利だと考え能力を教えてくれたのだろう。イリナに甘く見られたことは癪だが、情報が得られたのは好都合だ。

 

(ドライグ。俺があの刃に触れたらどうなる?)

 

(分割されているとはいえエクスカリバーほどの聖剣だ。一撃でも相当なダメージを負うだろう)

 

つまり、一撃たりとも食らったらアウトということか・・・・・流石に聖剣相手では相性的には圧倒的不利だな。しかも能力からして斬撃中に形を変えてきて回避が難しくなるかもしれない・・・・まあ、だからといって負ける気は毛頭ないが。

 

「一誠くん、今からでも悪魔になった理由を教えてくれれば退くわよ?」

 

「冗談。負ける気が一切しないのに降参なんてしないさ」

 

『BOOST!!』

 

イリナの申し出を断りながら、俺は左手に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を展開する。

 

「それって・・・・まさか、赤龍帝の籠手!?」

 

赤龍帝の籠手を目にしたイリナは予想外だったのか、驚きをあらわにする。

 

「ああ。俺は今代の赤龍帝だ。そして、その名に恥じない力を身につけているつもりさ。イリナの方こそ降参したらどうだ?」

 

「ッ!?私を甘く見ないで!」

 

俺の挑発で気を悪くしたのか、はたまた赤龍帝の籠手の能力を鑑みたためか、イリナは一気に接近して剣を振り下ろしてくる。俺はその斬撃を後ろに大きく跳躍することで躱した。

 

(やはり斬撃の際、わずかに形を変えているな。紙一重で躱そうとしたらバッサリ斬られるな。かといって今みたいに大きく躱すとこちらから攻撃もしにくい・・・・だったら)

 

「はっ!!」

 

「・・・・・赤龍の爪(ドラゴン・ネイル)

 

再び接近して斬りかかってくるイリナ。俺はイリナの斬撃を右手に赤龍の爪を展開して受け止めた。

 

「赤い・・・・爪?」

 

「魔力で作った爪だよ。思ったとおり、聖剣は悪魔に致命傷を負わせることはできても、魔力まで問答無用で斬ることはできないようだな」

 

「私と斬り合うつもり?」

 

「ああ、そのつもりだ!」

 

腕を振るって剣を弾き、今度は俺が爪でイリナに斬りかかる。イリナはそれを躱そうとするが・・・・俺はその動きに合わせて爪の形をわずかに変えた。爪はイリナの体を捉えることはなかったが、首から下げていた十字架の鎖を切り裂き、十字架は地面に落ちた。

 

「今の・・・・・私の斬撃を真似したの?」

 

「ああ。といっても見様見真似だからうまくは決まらなかったが・・・・・あと何回かやれば慣れるだろう」

 

「だったらその前に終わらせてあげるわ!」

 

俺に攻撃をさせる暇を与えないようにと、連続で斬りかかってくるイリナ。教会の戦士として戦ってきた経験は伊達ではないようで、斬撃は鋭く早い。だが・・・・俺を仕留めるには足りない。俺はイリナの斬撃を悉く爪で防いだ。

 

(残念だなイリナ・・・・・やっぱりお前じゃ俺には勝てないよ)

 

俺は心内で自身の勝利を確信し、迫り来るイリナの斬撃を防いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一誠・・・・祐斗」

 

なし崩し的に始まってしまった決闘・・・・私はそれを目にすることが辛かった。

 

憎悪を刃に込めて斬りかかる祐斗。溢れ出る復讐心で普段穏やかな表情は酷く暗く、歪んでしまっている。その表情から祐斗の復讐心は私が思っている以上に根が深いことを理解してしまい・・・・主として、そんな感情で突き動かされる祐斗を見ると胸が酷く痛んだ。

 

祐斗は自分だけでなく、聖剣計画の被害者全員の無念を背負ってしまっている。祐斗の復讐心は、きっと正当なもの。祐斗の優しさ故だ。それは祐斗の美点ではあるけれども・・・・素直に祐斗の応援をすることは私にできない。私に出来ることはただ祐斗が憎悪に飲まれ、取り返しのつかない領域に至ってしまわぬように願うだけだった。

 

それだけでも十分に辛いのに・・・・・一誠の方も酷い。

 

幼馴染であるという栗色の髪の少女、紫藤イリナと戦う一誠。紫藤さんは一誠が悪魔になった理由を知るため戦い、一誠はその理由を知られたくないから戦っている。紫藤さんがそれを知りたがっているのは・・・・きっと紫藤さんが一誠に特別な感情を抱いているからでしょう。

 

けれど・・・・だからこそこの戦いは酷く哀れなものに感じられた。

 

一誠が悪魔になった理由・・・・・それは愛する女、堕天使レイナーレに殺されたから。きっと一誠はそれをただ知られたくないから戦っているわけではない。一誠はそれを・・・・・紫藤さんに知られたくないから戦っているのだと私は思う。

 

私の目から見てもわかる。一誠もまた、紫藤さんに対して特別な感情を抱いていると。だからこそ突き放そうとするし、悪魔になった理由を知られたくないのだろう。レイナーレを失い、自分を責める一誠にとっておそらく紫藤さんは・・・・特別であると同時に、受け入れることができない存在なのだろうから。

 

私はその戦いを見ていることしかできなかった。いや、本当は見ることさえ嫌だった。

 

一誠も紫藤さんも・・・・戦いながら浮かべる表情は酷く悲痛なものであった。お互い、大切な相手とこうして戦うことなど望んでいないということがひしひしと伝わってくる。

 

それでも二人は戦っている。二人共互いを想っている故に・・・・戦っている。

 

(私は・・・・・私にはどうすることもできない。一誠も祐斗も・・・・この戦いを止められない)

 

私は己の無力さに苛立ち、拳を握り締めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連続で剣を振るうイリナ。それを爪で防ぐ俺。一見するとイリナの方が圧しているいるように見えるであろう光景だが、実際追い詰められているのはイリナの方だろう。斬りかかるたびに、太刀筋が少しずつ荒くなっていくし、表情も苦々しげだ。十中八九、イリナは早く決着をつけようと焦っている。

 

どれほど剣を振ろうと俺には当たらず、時間だけが過ぎていく・・・・それは時間経過と共に力を倍加させる赤龍帝の籠手を持つ俺を相手にしているイリナにとっては不都合だろう。だからこそ、イリナが赤龍帝の籠手の力を解放される前に俺を倒そうと躍起になるのは無理もないことだが、それを焦りを生み、戦い方が荒くなってしまっている。荒くなれば対処が容易になり、さらに時間が稼ぎやすくなって倍加を重ねることができる・・・・イリナからすれば負の連鎖だ。

 

だがまあ・・・・いい加減決着をつけよう。これ以上時間を稼ぐのは無意味だしな。

 

『Explosion!!』

 

「ッ!?」

 

溜め込んでいた力を解放すると、イリナは後方に飛び退いて俺から距離を取ろうとする。正しい判断なのだろうが、その動きを読んでいた俺からしたらそれは悪手だった。

 

赤龍の尾(ドラゴン・テイル)

 

「きゃっ!?このっ・・・・!!」

 

後方に飛び退いたイリナを、魔力で作った尾で捉える。腕を巻き込んで拘束しているため剣を振るうことはできず、イリナは振りほどこうとするが強化された魔力で作った尾は全くビクともしない。

 

「イリナ・・・・俺の勝ちだ」

 

抵抗するイリナを引き寄せ、イリナの顔の前に爪を突き出す。あとほんのわずかこちらに引き寄せれば、爪はイリナの顔に触れる。尾で動きを封じられているイリナに、それを回避する術も、防ぐ術も存在していない。

 

誰が見ても文句のない・・・・・俺の勝利だった。

 

「あ・・・・・」

 

一瞬、何か言おうとしたイリナだったが、俯いて黙り込んでしまった。悔しながら敗北を受け入れた・・・・と見ていいだろう。ひとまず爪と尾は解除しよう。

 

「イリナ、約束通りもう俺が悪魔になった理由については詮索するなよ?」

 

「・・・・・・」

 

声をかけるが、イリナは返事を返さない。まあ、イリナが約束を反故にするとは思えないから大丈夫だろう。

 

俺はイリナをおいて、部長達の下へ戻ろうとするが・・・・俺の服の袖をイリナが掴んで阻んだ。

 

「イリナ?なにを・・・・」

 

「うっ・・・・・ふぇぇぇぇぇぇん!!」

 

「いっ!?」

 

あまりにも突然だった。突然イリナは大粒の涙を流し、泣き始めたのだ。

 

「イ、イリナ!?お前なに泣いて・・・」

 

「一誠くんに・・・・一誠くんに負けちゃたぁ!一誠くんが悪魔になった理由教えてくれないぃ!うえぇぇぇぇぇん!!」

 

「はあっ!?」

 

こいつ・・・・自分から勝負ふっかけておいて負けて大泣きするとかないだろ!?どんだけ子供なんだよ!?

 

「ま、まてイリナ!だからってそんな泣くことじゃ・・・・」

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!!」

 

「いや、だから泣くなって!!」

 

俺の声など聞こえないといった様子で泣き喚くイリナ。どうしていいかわからず、部長達の方に視線を向けるが・・・・・部長達は『あ~あ。泣かせた』と言わんばかりの目で俺を見ていた。

 

「・・・・・悪魔というのはやはり最低だな。イリナをあんなに泣かせるなんて・・・・」

 

「一誠くん、それはないよ」

 

少し離れたところで戦っていた木場とゼノヴィアにまで白い目を向けられる。こいつら戦ってる最中なのになんで意気投合してるんだよ。というか、立場的に味方に近いはずの木場までなんで俺を貶めるんだ。

 

(な、なんで俺が悪いみたいになってるんだよ?俺悪くないぞ?)

 

(相棒、いつだって女を泣かせる男は悪者になるんだ。今回は相棒が悪い)

 

(ドライグまで何言ってるんだよ!?)

 

ついには相棒であるドライグにまで責められる始末だ。俺が何をしたって言うんだ・・・・ただ決闘で勝っただけだというのに。卑怯なこととかも別にしてないのに。

 

ええいくそっ・・・・・とにかく今はイリナをどうにしかしなだめなければ。

 

「イ、イリナ?俺が悪かった。謝るから泣き止んでくれ、というか泣き止んでくださいお願いします」

 

ひとまずかがんでイリナと目線を合わせ、謝罪する。なんか釈然としないが今は泣き止ませることが先決だ。

 

「ぐすっ・・・・じゃあ悪魔になった理由教えてくれる?」

 

「いや、それは無理だけど・・・・」

 

「うえぇぇぇぇぇぇん!一誠くんが教えてくれないぃ!!一誠くんの馬鹿ぁ!!」

 

「だからなんでだよ!?」

 

勝ったら教えないって約束で戦ってたのに、教えなかったら泣かれるってこれほど理不尽なこともそうそうないぞ。しかも思い切り馬鹿とか言われて完全に悪者扱いだし・・・・

 

「ああ、もう・・・・・誰か助けてくれ」

 

「一誠くんの馬鹿ぁ!悪魔ぁ!」

 

ひたすらに理不尽な罵りを受ける俺は、とりあえずイリナの頭を撫でて宥めることにした。

 

 




一誠さんに負けて号泣するイリナさん。そんなイリナさんをオロオロしながらなだめようとする一誠さん

シリアス多めだったから楽しかった(オイ)

それでは次回もまたお楽しみに!
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