それでは本編どうぞ
イリナ達の来訪の翌日の放課後、俺は町に出てきていた。目的はイリナ達と接触して交渉を行うためだ。
だが・・・・
「・・・・小猫、なんで居るんだ?」
俺は隣について歩く小猫に尋ねる。
「怪しい動きをしていたのでつけてきました」
「尾行か。だったらなんでわざわざ俺の前に出てきたんだ?尾行なら普通姿を現さないだろう?」
「私では一誠先輩相手に尾行し続けるのは無理です。気づかれて撒かれるぐらいなら出てきて事情を聞いたほうがいいと判断しました」
なるほど・・・・確かに尾行され続けていれば途中で気づいて撒こうとしてただろう。こうして俺の前に出てきたのは正しい判断かもしれない。
「一誠先輩、一体何をしようとしているんですか?」
「・・・・話したら部長に報告するのか?」
「話の内容次第です」
内容次第か。このまま話さずにいたら部長に報告されるだろう。話したとしても報告されるかもしれないが・・・・まだ話したほうがよさそうだ。
「・・・・・イリナ達に接触する。交渉したいんだ」
「エクスカリバーの件ですか?」
「ああ」
単独で動こうかとも思ったんだが、いざというとき鉢合わせになるとあとが面倒だからな・・・・決して、決して決して決してイリナと会うためなどではない。というか二度と会いたくないと思ってたし。会ったら厄介なことになるってわかりきってるし。また泣かれでもしたら最悪だし。断じてイリナに会うためとかじゃない」
「一誠先輩、途中から声にでてます」
「・・・・え?」
こ、声に出てた?今のが・・・・?
(相棒、お前は本当に時々やらかすな)
やめろドライグ。俺の傷をえぐるんじゃない。今羞恥心で死にたい気分だんだから。
「・・・・一誠先輩、私も協力します」
羞恥心で悶えそうになっていた俺に、小猫が言う。というかさっきのは触れないんだな・・・・まあ俺としては助かるが。
「祐斗先輩のため・・・・なんですよね?だったら私も手伝います。私も祐斗先輩のために何かしたいです」
木場のために、仲間のためにか・・・・小猫の目からは強い決意を感じる。仮にここで拒否してて勝手についてくるか、あるいは部長に報告されるかのどちらかだろう。だったら・・・・小猫にも手伝ってもらおう。
「わかった。小猫にも協力してもらおう。一応言っておくが、部長達には・・・・」
「内緒にして欲しいんですよね?大丈夫です。わかっています」
「それならいい・・・・それともう一つ。今回の件はバレてもバレなくても俺が強引にお前を誘ったってことにしておけ」
「・・・責任を全部一人で背負うつもりですか?」
「発案は俺だからな。小猫まで責任を負う必要はないさ」
それこそこの交渉で種族間の関係を悪くする可能性もある。小猫にそこまでの責任を負わせるわけにはいかない。
「・・・・・それは合意しかねます。一誠先輩だけに全て背負わせたくありません。それに、一誠先輩が私を強引に誘ったといっても誰も信じないと思いますし」
「だとしても、だ。小猫がどう思おうとそういうことにしておいてくれ。でなければ協力の申し出は断らさせてもらう」
「・・・・・わかりました」
申し出を断るというのが聞いたのか、小猫は渋々といった様子ではあるが了承してくれた。
「頼んだぞ小猫。それじゃあまずはイリナ達を探さないとな」
とは言ったものの、これが結構大変そうなんだよなぁ。任務活動中の白いローブを着た二人組の女性だなんてそう簡単に見つかるはずがない。あの二人だって人目のあるところに堂々と出ているなんてことは流石に・・・・
「あ、居ました」
「・・・・・え?小猫、今なんて?」
「あの二人居ました。そこに」
小猫の指差す方へと視線を向ける。そこには・・・・
「迷える子羊にお恵みを・・・・・」
「天の父に変わって哀れな私達に慈悲をぉぉぉぉ・・・・」
路頭で祈りを捧げ、募金活動をしているイリナとゼノヴィアがいた。よほど困っているのか、表情が悲しげだ。
「え~・・・・」
ない。これはない。見つけるの大変そうだなぁと思ってた矢先、こんなに簡単に見つかるなんて・・・・しかもなんかすっごく哀れに思えてしまうし。
「一誠先輩、非常に声をかけにくいです」
「奇遇だな小猫。俺も同じ気持ちだよ」
正直、あの哀れな二人組に声をかけるのには抵抗がある。できることなら無関係を装ってこの場を素通りしたいが、あの二人と交渉するために町に出てきたので声をかけざるを得ない。
そもそもあの二人はなぜ募金を募っているのだろうか・・・・
「はあ・・・・仕方がない」
俺は意を決して、哀れな迷える子羊二人に声をかけるのであった。
「うまい!日本の食事はうまいぞ!」
「これよ!これが故郷の味よ!」
「イリナ、ファミレスの料理は流石に故郷の味とは言わないだろう。というかどれだけ空腹だったんだよ」
目の前で女性とは思えぬ勢いで食事しているイリナとゼノヴィアに俺は思わず呆れながらツッコミを入れてしまった。
俺達は今ファミレスに来ている。どうにもこの二人は空腹だったようで・・・・話を切り出すいいきっかけになると思い連れてきたのだ。
「それにしても訳のわからない絵画を買って路銀が尽きるとか・・・・イリナ、あまり相棒に迷惑をかけてやるなよ」
「し、仕方ないでしょ!ペドロ様の絵画なんだから信徒としては買うしかないわ!」
「俺も絵を見せてもらったが、ペドロとやらはそんなのじゃないと思うぞ?」
「そんなことないわ!ペドロ様はきっとこんなのよ!」
「俺が言うのもなんだがこんなの扱いはないだろう・・・・」
本当にイリナは子供の頃からなんか抜けてるというか思い込みが激しいというか・・・・
「ゼノヴィア、イリナがこんなですまないな。今は悪魔とはいえ幼馴染として謝罪する」
「どうして一誠くんが謝るの!?」
「いや、イリナがこんなのは私も理解している。君が謝ることはないさ」
「ゼノヴィアまで何言ってるの!?というか私をこんなの扱いしないでしよ!」
いや、イリナだってさっきペドロをこんなの扱いしてただろうが・・・・・
「というかイリナ、外見は多少大人っぽくなったようだけど性格は全然変わってないんだばお前」
「そんなことないわよ!昔ほどヤンチャじゃなくなったし自分ではすごく女の子らしくなったって自負してるわ!」
「女の子らしさ云々はともかく、ヤンチャさに関しては健在だろうが。妄想激しくて思い込んだら一直線なところは治ってないみたいだし。俺が昔それでどれだけ苦労したと思ってるんだよ」
本当に、昔はイリナに振り回されっぱなしだったからな俺は。俺の意見聞かずに暴走してたし、フォローする身にもなれってんだ。
「む~・・・・そ、そういう一誠くんだってその年齢に見合わないクールさはどうにかならないの?よく子供っぽくないって言われてたじゃない」
「確かに言われていたがそれで人様に多大な迷惑をかけた覚えはない。というか今はもう17歳になったんだから年相応だろ」
「そんなことないわ!一誠くんほどクールな17歳はそうそういないわよ!ゼノヴィアもそう思うわよね?」
「それはわからないが・・・・少なくともイリナがこの男を貶める気が一切ないことだけはよくわかった」
まあ確かに自分で言うのもなんだがクール云々が一般的に悪口にカウントされるかどうかは微妙だよな。
(実際は相棒も抜けてるところもあるがな)
ドライグ、今は黙ってろ。
「全く、この様子じゃ教会内でも迷惑をかけまくってるんだろうなお前は。このままじゃ嫁の貰い手も見つからないぞ?」
「ふぇ!?い、いいいい一誠くん!?急に何言って・・・・」
「いや、なんでそこで動揺して顔を赤らめるんだよ?」
てっきりまた怒るのではないかと思っていたが、イリナの反応は俺の予想とは異なるものだった。小声で恥ずかしそうに顔を赤らめている上にモジモジしている。
これは・・・・まさか?
「イリナ、お前まさか嫁の貰い手がいるのか?」
「そ、そんなのいないわよ!これから先もできないし作らない自信があるわ!」
「いや、なぜそこをそんなに自身満々に言うんだ?」
女からすれば嫁の貰い手がないのはいいことではないだろうに。
あ、まさかこいつ・・・・
「イリナ、ひょっとしてお前・・・・・」
「ッ!?そ、そうよ。私は・・・・」
「独身主義者なのか?」
「なんでそうなるのよ!」
てっきりイリナは生涯独身を貫くつもりでいるのかと思っていたが・・・・どうやら違ったらしい。
「私の気持ちも知らないで・・・・一誠くんの馬鹿!悪魔!」
「またこれかよ・・・・・」
またしてもイリナに罵倒されてしまった俺。別に俺が悪いことなんて何もない・・・・
「一誠先輩、今のも先輩が悪いです」
「やはり悪魔は最低だな」
「なんで!?」
悪いことなんて何もないと思っていたのに、なぜか小猫とゼノヴィアにまで責められてしまった。というか小猫よ、『も』ってなんだよ『も』って。決闘の時泣かれたのも完全に俺が悪いって思ってるのかお前は?
(・・・・相棒、お前はこの女が関わると頻繁にやらかすな)
(いや、何がだよ?わけがわからんぞ・・・・)
そしてドライグにまで呆れられる始末だ。
本当に何だって言うんだ・・・・・別に俺、何も悪いことしてないのに。
「マジで勘弁してくれ・・・・・」
頭を抱える俺に、フォローを入れてくれる者は誰もいなかった。
普段クールなのにイリナさんが関わるとポンコツ度増し増しになる一誠さん
ギャップが激しいけど・・・・まあ、これはこれでいいよね!
それでは次回もまたお楽しみに!