『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は一誠さんがイリナさん達に交渉を持ちかけます

それでは本編どうぞ


第36話

「さて、そろそろ教えてもらおうか。君達は何故私達に接触してきた」

 

食事を終えたゼノヴィアが俺と小猫に切り出してきた。まだ片付けられていない大量の皿やら、隣でデザートに舌鼓をうっているイリナのことが気になるが、聞かれたからには本題に入ろう。

 

「お前達が去ったあと、俺なりに色々と考えてみたんだが・・・・俺達と手を組んでみないか?」

 

俺の提案に、イリナとゼノヴィアは驚いた表情をしたのり、互いを見やった。

 

「・・・・それは、昨日の魔剣使いのためか?」

 

木場と直接戦ったゼノヴィアは、木場のエクスカリバーへの憎悪を理解しているらしく、俺に尋ねてくる。

 

「まあ、本音はそういうことになるな。木場の復讐のためにエクスカリバーを破壊させてやりたい。一応聞くが、分割されたエクスカリバーは、折れた破片を核にして作られているんだよな?」

 

「そうよ。私達もいざという時は聖剣を破壊して核となる破片だけを回収するつもりだったから」

 

「だったら、木場に破壊させても問題はないわけだ。お前たちはそのあとに破片を回収すればいい」

 

破壊と回収。俺達とイリナ達では最終的な目的が違う。だが、だからこそ利害は一致している。交渉が成立する可能性はある・・・・と願いたい。

 

「・・・・・随分と個人的な事情で協力を申し出るんだね」

 

「そうだな。けど、流石に個人的な事情が目的ではそちらさんを納得させる材料としては弱いから、それなりの建前を用意してきた」

 

「・・・・というと?」

 

「教会から聖剣を奪った堕天使、それも聖書に名を残すほどの大物、コカビエルがこの町にいる。この町が俺達の主であるリアス・グレモリーが納めていることをコカビエルほどの堕天使が把握していないとは思えない。つまりコカビエルは何らかの企みを抱いているからこそわざわざこの町に来ている可能性が高いということだ」

 

「つまり君達は眷属悪魔としてそれを見過ごすことはできないということか?」

 

どうやらゼノヴィアはそれなりに頭は回るようだな。理解が早くて助かる。

 

「そうだ。何か起こってしまってからでは手遅れになる可能性が高い。迅速に問題を解決するために任務にあたっている教会の戦士お二人に協力を申し出たということさ」

 

「このことは君達の主は了承しているのか?」

 

「いいや、部長から了承は得ていない。小猫は俺が強引に誘ったが、今回の協力の申し出は俺の独断で決めたことだ。種族間問題になったら、管理問題で部長が責められる可能性もあるが、それでも責任は俺が背負うつもりだ」

 

「なるほど。確かにそれなりの建前はあるようだな」

 

まあ、あくまでもそれなりだ。実際には想定よりも面倒なことになる可能性はある。それでもリスクを多少減らすためにもこうして建前でも理由をこの二人に言っておかなければならなかった。

 

「・・・・いいだろう。君達の手を借りることにしよう」

 

協力申請を承諾するゼノヴィア。物分りがよくて助かった・・・・断られたら『たまたま』現場に居合わせて、互いに目的のため行動した結果聖剣を壊せましたって展開に持ち込もうかなとも考えてたんだがその必要もなさそうだ。

 

(むしろそっちの方が交渉をする必要もなかったのではないか?)

 

(いや、種族間問題にはなりにくいかもしれないけど、協力したほうが確実性は高いからな。交渉したほうがいいと判断した)

 

大切なのは確実に木場に聖剣を破壊させることだからな。だったら確率の高い方を選ぶのは当然のことだ。

 

(・・・・本当にそれが理由か?)

 

(どういうことだ?)

 

(・・・・・いや、なんでもない。気にするな)

 

気にするなって・・・・・そんな意味深に聞かれたら普通に気になるんだがな。まあ、気にしてもしょうがないからほうっておくか。

 

「ちょっと、何言ってるのゼノヴィア!?いくら一誠くんとはいえ悪魔なのよ!悪魔の手を借りるなんて・・・・」

 

どうやら俺達が手を貸すことは反対らしく、イリナがゼノヴィアに反論する。だが・・・・

 

「という割には顔は嬉しそうにしているぞイリナ。幼馴染に協力してもらえるのがそんなに嬉しいのか?」

 

「そ、そんなことないわよ!」

 

いや、俺の目から見ても普通に笑みを浮かべているように見えるんだけどな。下手なこと言うとやぶ蛇になりかねないから黙っておくけど。

 

「実際問題、私達だけの力で任務を達成できる確率は低い。命を捨てる覚悟は確かにあるが、任務を遂行して生きて帰り、これからも主のために戦い続けることが真の信仰だと私は思う。そのためなら協力も悪くはないだろう」

 

「それはそうだけど・・・・」

 

ゼノヴィアの言い分は間違ってはいないだろう。それはイリナもわかっているらしい。

 

「無論、表立って悪魔と協力するというのもまずい。だから君たちには正体を隠して欲しい」

 

「わかった。簡単な変装はしておくさ」

 

協力を受け入れてもらった以上は、それなりの配慮はするつもりだ。別にこの二人を陥れたいわけではないからな。

 

「はあ・・・・・一誠くんとはいえ、悪魔の手を借りることになるなんて・・・・」

 

「そう言うなイリナ。悪魔の手を借りるのが嫌だというなら、ドラゴン・・・・赤龍帝の手を借りると思っておけばいいだろう。上はドラゴンの力を借りるなとは言っていないのだからな。これも主のお導きというやつさ」

 

「屁理屈にも程がある気がするけど・・・・・まあいいわ。確かに一誠くんの力を借りられるのは助かるし。主よ、お導き感謝します」

 

「「ッ!?」」

 

イリナが十字を切った瞬間、俺の頭に激痛が走った。隣にいる小猫も痛そうにしている。

 

「イ、イリナ。俺たちの前で十字を切るな・・・・」

 

「・・・・・痛いです」

 

「あ、ごめんなさい」

 

今のはマジで痛かった・・・・・下手に戦闘でダメージ受けるよりも痛いぞ。

 

「ともかく、交渉は成立したってわけで、こちら側のもうひとりの協力者も呼ばせてもらうぞ」

 

俺は携帯を出し、木場と連絡をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・話はわかったよ」

 

数十分ほどした後、やってきた木場に今回の交渉のことを話した。というか木場のやつ、ちゃっかりコーヒーを頼んでたけどこれ俺持ちか?イリナとゼノヴィアの分も俺が出すことになってるし、なんか小猫も勝手に料理頼んでたんだが・・・・まあ、仕方ない。諦めよう。

 

「聖剣使いに許しを請うのは遺憾だけど、僕としても益のある話だ。乗らせてもらうよ」

 

「随分な言いようだね」

 

話には乗ってくれたが、刺のある言い方にゼノヴィアは少々顔をしかめた。

 

「やっぱり『聖剣計画』のことで恨んでるのね。でもね、あの計画のおかげで聖剣使いの研究が飛躍的に伸びたわ。だからこそ私やゼノヴィアみたいに聖剣に呼応できる使い手が誕生したのよ」

 

「そのためなら僕たちのような失敗作は処分されても構わないと?」

 

「・・・・いいえ、そんなことはないわ」

 

憎悪を篭った目で、木場とイリナとゼノヴィアを見る。教会にとって有益なことでも、木場はその犠牲になった者の一人だ。今のイリナの言いように憎悪を抱いても仕方がないだろう。それがわかったのか、イリナも失言だったと表情を暗くしている。

 

「その件に関しては教会でも最大級に嫌悪されている。当時の研究者は異端とされ追放。今は堕天使側に身を寄せている」

 

「その者の名前は?」

 

「バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

皆殺しの大司教、バルパー・ガリレイ・・・・木場の憎悪のきっかけになった男。これを聞いてしまったからには聖剣を破壊するだけでは木場の復讐心は晴れないかもしれないな。この男を殺すまでは・・・・

 

「堕天使を追えば、その者にたどり着くのかな・・・・・僕からも情報提供しよう。先日、エクスカリバーを持った者に襲撃されたよ。その際神父が一人殺害されていたが・・・・やられたのはそちら側だろうね」

 

どうやら、イリナ達よりも先に木場が接触していたようだ。だけど、接触してたなら言えよ・・・・自分の手で聖剣を破壊したいってのはわかるけども。

 

「相手の名前はフリード・セルゼン。この名前に覚えは?」

 

「フリード・セルゼン・・・・!?」

 

その名前はよく覚えている・・・・レイナーレと共にこの町に来ていたイカれた神父だ。レイナーレと共に・・・・

 

「一誠くん・・・・手が」

 

「手?」

 

イリナに言われ、自分の手に視線を向けると、血が滲んでいた。どうやらレイナーレのことを思い出しせ、知らずに力が入って強く拳を握りしめてしまっていたようだ。

 

「手当しないと・・・・」

 

「触るな!」

 

「っ!?」

 

俺の手に触れようとするイリナの手を、俺は弾いた。今イリナに触れられたくなかったから・・・・

 

「ごめんイリナ・・・・だが大丈夫だ。この程度どうってことない」

 

「そ、そう・・・・わかったわ」

 

「それにしてもフリード・セルゼンか・・・・奴め、まさかコカビエルに与していたとは」

 

ゼノヴィアの口ぶりからして、どうやらフリードの名に覚えがあるようだった。

 

「彼は13歳という若さでエクソシストとなり、悪魔や魔獣を次々と滅していった天才児だった。だが、奴はやりすぎた。同胞すら手にかけたのだからね」

 

「彼に信仰心なんてものは微塵もなかったわ。あったのは悪魔や魔獣に対する異常なまでの敵対意識と殺意、そして戦闘に対する執着。審問にかけられるのも時間の問題だったわ」

 

イカれた男だと思っていたが、どうやら教会でも随分と手を余していたようだ。

 

「フリードが奪われた聖剣を使って裏で動き回っていたのか・・・・・異常者ではあるが、実力は確かだ。心してかかる必要がありそうだ。ともかく、聖剣破壊の共同戦線といこう。何かあったらここに連絡してくれ」

 

ゼノヴィアが連絡先の書かれたメモを手渡してきた。

 

「わかった。それじゃあこっちの連絡先も・・・・」

 

「その必要はないわ。一誠くんの携帯の電話番号はおばさまから教えてもらったから」

 

「母さん・・・・」

 

あなたは息子のプライバシーをなんだと思っているんですか?いくら幼馴染だからってそうポンポンと教えていいものではないだろうに・・・・まあ、今回は手間が省けたからいいけども。

 

「では、私達はこれで失礼しよう。食事の礼はいずれさせてもらう」

 

「食事ありがとう一誠くん。悪魔だけど、きっと一誠くんだったら主も許してくださるわ。また奢ってね」

 

イリナ、お前の信仰はそれでいいのか?というかまた奢って貰う気満々かよ・・・・

 

「それと・・・・・頑張りましょうね一誠くん」

 

最後にニコリと微笑みを浮かべながら、イリナはゼノヴィアと共にその場を去っていった。

 

それにしても頑張りましょうね、か・・・・・・そんなありふれた言葉でやる気になってしまうなんて、俺も存外単純だな。

 

 

 

 

 

 




交渉の件に関しては色々と考えましたが・・・・変なところがないか心配だったり

それでは次回もまたお楽しみに!
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