『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は珍しくドライグさん視点があります

それでは本編どうぞ


第37話

「・・・・・二人共、どうしてこんなことを?下手をすれば種族間の争いにも発展しかねないんだよ?」

 

イリナ達が去っていったあと、木場が俺と小猫に尋ねてきた。

 

「お前の復讐を果たさせるためだ。俺はお前の復讐心を一番理解しているからそれを否定することができない。だから協力しようと思った・・・・まあ、建前だけどな」

 

そう、木場のタメっていうのは本当は建前だった。もちろん建前といっても感情移入してはいるのは事実だし、それも力を借そうと思っている理由ではあるけど・・・・・本当の理由は別にある。

 

「建前?ていうことは本音は別にあるってことかな?」

 

「ああ。俺のしたことは部長に迷惑をかけることかもしれない。だけど、それでもお前が一人で復讐に走って『はぐれ』になるよりはよほどマシだ。将来的なことを考えても、お前は眷属の中核になり得る存在だからな」

 

「眷属の中核・・・・それは僕よりも君の方がふさわしいと思うけれど?君の方が僕よりもはるかに強いし」

 

「俺には無理だよ。俺は・・・・・俺の部長への忠義は、俺の自己満足でしかないんだからな」

 

そうだ、俺の部長への忠義はただの生きる目的に過ぎない。そこには決定的に足りないものがあるのに俺自身が理解している。俺は決して・・・・眷属の中核にはなりえない。

 

「・・・・・小猫ちゃん、君はどうなんだい?どうしてこんなことを?」

 

木場は次に、小猫に尋ねた。

 

「・・・・・祐斗先輩がいなくなるのは嫌です。寂しいです。だから・・・・・手伝わせてください」

 

小猫は木場の手を取りながら言う。木場が居なくなることを想像してか、その表情は悲しげだ。

 

「木場、何度も言うがお前の復讐を俺は否定するつもりはない」

 

「一誠くん?」

 

「お前が復讐を望み、果たそうというならそれもいいだろう。その憎悪、復讐心はお前のものなんだからどうしようがお前の自由だ。だがな・・・・これだけは覚えておけ。『木場祐斗』という存在はもうお前一人だけのものではないんだ。お前を必要としている者がいる。お前に居なくなって欲しくないと思っている者がいる。それを忘れるな」

 

我ながら反面教師的な物言いだということはわかっている。誰よりも自分の事を認められない俺が言うべきセリフではないということは重々承知だ。

 

だが・・・・だからこそ俺は木場に言わなければならなかった。木場は・・・・・必要とされる存在だと理解しているから。

 

「二人にここまで言わせてしまうなんて・・・・これは僕も無茶できそうにないね」

 

木場は笑みを浮かべながら言う。最近憎悪のせいで笑うことがめっきり減ったから、こういう表情を見ると少しホッとする。

 

「今回は二人の厚意に甘えさせてもらうよ。一誠くんのおかげで結果的に真の敵もわかったことだしね。だけど、聖剣は必ず破壊する」

 

「当然だ。そうしてもらわないと困る。さて、本格的に動くのは明日にして今日は一旦帰ろうか。相手が相手だし・・・・・覚悟決めるのにも時間かけたほうがよさそうだしな」

 

堕天使の幹部、コカビエルと戦う可能性もある。それなりの心構えで挑むには一晩ぐらい時間をかけたほうがいいだろう。

 

「そういうことで、俺は今日はこれで失礼させてもらう。二人共また明日な」

 

「はい」

 

「またね一誠くん」

 

俺は二人に軽く手を振って、家路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(堕天使の幹部コカビエル・・・・・なあドライグ、お前の目から見て今の俺とコカビエル、どちらが強い?)

 

家に帰り、夕食を摂ったあと自室のベッドで横になりながら、ドライグに尋ねた。

 

(そうだな・・・・正直全盛期の俺はコカビエル程度のことなど気にも留めていなかった。やつの実力がどの程度のことなのかははっきりと測れていないからなんともいえん)

 

コカビエル程度って・・・・・・堕天使の幹部といえど、二天龍であるドライグからすれば眼中にもなかったということか。

 

(だが、そうだな・・・・禁手化(バランス・ブレイク)すれば相棒ならまともな戦いにはなるだろう・・・・・多分)

 

多分って・・・・・随分とまあ自信のない言い方だな。

 

(ただ、相棒以外でこの町でコカビエル相手にまともに戦えるものは居ないということは断言できる。相棒が勝てなければ、この町でコカビエルに勝てる者はいないだろう)

 

つまり、俺以外がコカビエルと戦えば敗北は必至。そして負ければ決して軽くはないダメージを負うか・・・・悪ければ死ぬことになるだろう。

 

俺以外の誰かが戦えば死ぬかもしれない・・・・・イリナが死ぬかもしれない。

 

(ッ!?俺は今・・・・・何を考えた?なんでイリナのことを・・・・・?)

 

俺が交渉を持ちかけたのは木場の復讐のため・・・・ひいては部長への忠義のためだ。それ以外に理由はない。

 

それなのに・・・・なぜ俺は真っ先にイリナが死ぬことを想像した?なぜ関係ないはずのイリナのことを・・・・?

 

(・・・・・お前が交渉を持ちかけた理由、あの時口にした言葉の中にはやはり本音はなかったようだな)

 

(どういうことだドライグ?)

 

(魔剣使いの復讐のため。主への忠義のため・・・・そのどちらもお前の本心ではない。お前の本心は、本音はコカビエルと対峙することになるあの女のことが心配だから・・・・・ではないか?)

 

(ッ!?違う!そんなことはない!俺は・・・・おれ・・・・は・・・)

 

違うはずなのに・・・・俺は自分でもわかるほどに動揺していた。動揺しているということは・・・・それは・・・・

 

くそっ・・・・イリナと会ってからこんなのばかりだ。酷くかき乱される。いつもの俺でいられなくなる。俺が俺でいられなくなる。

 

なんだよ・・・・何なんだよ?

 

一体イリナが・・・・・なんだっていうんだよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

相棒が交渉を持ちかけた理由・・・・それは間違いなくあの女、紫藤イリナを想ってのことだろう。本人は否定し、最もらしい言い訳や理由を口にしていたが、そんなものは建前に過ぎない。

 

相棒がそれを認めようとしない理由は二つ。一つは堕天使レイナーレを失った自責の念だ。紫藤イリナの事を思っている相棒だが、堕天使レイナーレへの愛情もまた決して偽りなどではなかった。本気で愛し、本気で大切に思っていた・・・・そんな女を失ってしまった原因が自分にあるのだと、相棒は思い込んでしまっている。故に、もう誰も愛することはできない、愛したくないと相棒は自らに言い聞かせ、紫藤イリナへのそれを相棒は否定し、紫藤イリナのために何かしようとする自分に対してさえ目を背けているのだ。

 

二つ目の理由は・・・・・相棒が自らを『兵藤一誠』と認めることができずにいるからだ。奴には三つの生きる目的がある。アーシア・アルジェントを守る事、リアス・グレモリーに忠義を尽くすこと、そして・・・・・宿敵である白龍皇を倒すこと。だが、それらの目的は成り行きと立場上決まってしまったものであり相棒が『兵藤一誠』として願ったものではない。相棒は『兵藤一誠』である自分を認めない。だから『兵藤一誠』としての自分の願いを持とうとしない。だが、紫藤イリナの力になりたいというのはその願いに当てはまりかねないのだ。成り行きや立場など度外視して、相棒自身がそうしたいと願ったこと・・・・・だからこそ、それを誤魔化そうとする。誤魔化して・・・・違う建前を用意しようとするのだ。

 

やはり・・・・・やはり相棒は愚かで哀れだと言わざるを得ない。純粋に愛する女のために動くことができない。一々面倒くさい理由をつけて自らを偽らなければならない。今までの宿主の中でもここまで愚かで哀れなやつはそういなかった。だが・・・・・だからこそ思う。相棒の救済を。相棒が救われることを。

 

よもや二天龍の一角であるこの俺が一個人の救済を願うとは・・・・・落ちたものだ。だが不思議と不快ではない。

 

・・・・・・紫藤イリナ。最も相棒に近く、同時に最も相棒と遠い存在である女。

 

叶うならば・・・・貴様が相棒の救いとならんことを・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 




あまりにも一誠さんが哀れすぎて救済を望むドライグさん

ドラゴンにここまで心配されるほど一誠さん相当だなぁと我ながら思います

それでは次回もまたお楽しみに!
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