はたしてどうなるか・・・・・
それでは本編どうぞ
「馬鹿な・・・・・私のエクスカリバーが・・・・・」
膝をつき、表情を絶望と落胆で染めるバルパー・ガリレイ。
僕の同士から抜かれた聖剣因子・・・・皆の思いと共にその力を授かった僕は、『
あとは・・・・・
「次はあなただバルパー。覚悟を決めてもらおう」
あとは諸悪の根源・・・・・バルパーさえ倒せば・・・・!
「聖魔剣・・・・ありえない。相反する二つの要素が混ざり合うなど・・・・」
聖魔剣をバルパーに向けるが、バルパーはそれを意に介することなく考えにふけっている。そんなバルパーの態度に怒りを抱く僕だったが・・・・・
「まさか・・・・・そうか!わかったぞ!聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているというのなら説明がつく!魔王だけでなく・・・・・神もまた既に死んでいるのか!」
「「「・・・・・え?」」」
バルパーの発言に僕の怒りは一気に冷えていくのを感じた。バルパーの話を聞いていたその場にいた全員が表情を驚愕に染める。特に元聖女であるアーシアさんと、教会の戦士であるゼノヴィアは相当動揺していた。
「バルパー、それは・・・・」
「ぐぅっ!?」
神の死・・・・・それが信じられず、バルパーに問いただそうとしたその瞬間だった。バルパーは・・・・光の槍に貫かれて倒れてしまった。
「バ、バルパー!?」
突然のことに慌てながらも、僕はバルパーに近づいて生死を確認した。槍はバルパーの心臓を貫いており・・・・・バルパーは間違いなく死んでいた。
光の槍・・・・・この場でそれを放てる者は一人しかいない。僕はそれを放った人物・・・・・コカビエルの方へと視線を向けるが・・・・
「ッ!?これ・・・・は・・・・・」
その光景を見て、僕は確信した。コカビエルは狙ってバルパーを殺したわけではないと。あの槍は・・・・・偶発的にバルパーに突き刺さってしまったものだと。
僕の目に映るのは・・・・・ぶつかり合う赤と黒。想像を絶するほどに苛烈な戦いを繰り広げる一誠くんとコカビエルの姿だった。
「「おおおぉぉぉぉ!!」」
咆哮を上げながら、二人は互いを倒すために体を動かし続けていた。一誠くんは全身に身につけた鎧の半分近くを砕かれ、体のいたるところに切り傷が生じ、そこからは多量の血が吹き出している。ただでさえ痛々しい姿だが、あの傷をつけたのはコカビエルの光の武器だ・・・・・その痛みは僕の想像を絶するものだろう。
だが、ダメージを受けているのは一誠くんだけではない。コカビエルもまた全身から血が吹き出しており、8枚あった翼は今では5枚になっている。そしてなにより・・・・・左足の膝から先が存在していなかった。
二人共、既に動けなくなってもおかしくないほどの重傷なのに・・・・・それでもなお、二人は戦い続けていた。
「はあはあ・・・・・思った以上にやるな赤龍帝」
「はっ。お前に褒められたところで嬉しくもなんともないんだよ。とっととくたばりやがれ」
攻撃の手を止め、二人は言葉を交わし始める。その間も、殺気と闘気は一切失われておらず・・・・僕は、僕たちは口を挟むことができなかった。
「・・・・赤龍帝。お前は俺に笑うなと、楽しむなと言ったな。確かにこの戦い、既に楽しむ余裕など俺にはない。だが・・・・・それでも言わせてもらおう。今まで俺が戦ってきた中でもお前ほどの強者はそうそういなかった。貴様と戦えたことを・・・・・俺は一人の戦士として誇りに思い、お前に敬意を評す」
コカビエルは真っ直ぐに一誠くんを見据えながら言う。その目からは、言動からは一切の邪気も悪意も感じられない。一介の戦士として・・・・・コカビエルは一誠くんのことを認めているんだ。
この事態を巻き起こしたのはコカビエルだ。それは許せないことだし、敵であることにも変わりはない。けれど・・・・・あんな態度を見せられては、敵でもコカビエルを認めざるを得なかった。
だけど・・・・・
「誇り?敬意?そんなものどうでもいい。そんなもののために俺は戦ってるんじゃない。俺はただ・・・・・お前を倒せればそれでいい!」
一誠くんは・・・・・誇りも敬意も何一つ抱いていなかった。一誠くんの目から読み取れるのは怒りと憎悪、そして殺意だった。あの目は戦士の目ではなく・・・・・ただの復讐者の目・・・・・僕と同じ目だ。こうして傍から見てようやく気づく・・・・・あれは見ているものを不安にさせるものだ。
複雑な気分だった・・・・・この戦い、敵であるコカビエルには敬意を抱かされるというのに、味方である一誠くんには不安を抱いてしまう・・・・・どうしてこうなってしまったのだろうか?
「一誠・・・・・」
「一誠さん・・・・」
部長と、先程まで神の死に絶望していたアーシアさんでさえ、一誠くんに心配そうな目を向ける。けれど今の一誠くんにはそれに気がつく余裕はなく、気づいたとしても・・・・・きっと何の反応も示さなかっただろう。
こうなってしまっては、僕たちにできることは・・・・・一誠くんの勝利を願うことだけだ。
「一誠くん・・・・・せめて、勝ってくれ」
僕は言葉に出して、一誠くんの勝利を願う。
それは間違った応援だと気づいていながら・・・・・・僕にはそれしかできなかった。
(くそ・・・・・やっぱり強い)
コカビエルの強さに、心内で舌打ちをする。全力で戦っている。
(・・・・・もうひと押し、覚悟を決める必要があるか)
決定打を与えられないとは言え、今の戦い方がコカビエルに通じているのは間違いない。だが、それでも倒すのには足りない。ならば・・・・確実に倒すためには賭けに出るしかない。下手をすれば死ぬかもしれないが・・・・それでももうこれしかない。
「
女王から戦車へと昇格を移行する。これで魔力もスピードも落ちてしまったが防御力は健全。そして・・・・・ただひたすらに、自身の力だけに集中することができる。
「コカビエル・・・・・・これで終わりだ」
今の状態では、これ以上力を倍加させることはできない。ならば全ての力を左腕に集中させる。残った力、ありったけを全てだ。
(倒す)
あとのことなんて考えない。先のことなんてどうでもいい。
(倒す・・・・倒す!)
今はただ、コカビエルを倒すことだけが俺の全て。
(ぶっ倒してやる!ぶっ潰してやる!)
コカビエルは・・・・・・
(必ず・・・・・・倒して見せる!)
コカビエルは・・・・・
「コカビエルゥゥゥゥ!!」
「赤龍帝ぃぃぃぃ!!」
俺はただ、まっすぐにコカビエルに向かって突っ込んだ。コカビエルは俺に向かっていくつもの光の槍を投げつける。俺はそれを・・・・躱すことなく、勢いを殺さずにコカビエルに向かって突き進んだ。
右肩、脇腹、左膝を光の槍が貫く。体に激痛が走ると同時に、毒のように光が俺の体内を駆け巡った。
目の前が霞む。意識が遠のく。だが、それでも俺は止まらない。止まるわけには行かない。
「はあぁぁぁぁぁぁ!!」
意識が飛ばないよう、血を吐きながら叫び、俺はコカビエルに接近する。そして・・・・・すべての力を集約した左腕で、コカビエルの顔面をぶん殴り、地面へと叩きつけた。
ドゴン!、と大きな音を立て、地面は大きくひび割れ、クレーターができる。その中心で、コカビエルは倒れていた。
「見事・・・・だ。赤龍・・・・帝」
最後に笑みを浮かべながらそう言った後、コカビエルは動かなくなる。もう闘気も殺気も感じられない・・・・・起き上がることはないだろう。
「・・・・・笑うなって言っただろうが」
俺はコカビエルへの忌々しさを内に秘めたまま、鎧を解除する。
強敵であったコカビエル・・・・・それでも、倒したことに対する達成感は、一切沸いてこなかった。
バルパー、まさかの流れ弾で死亡
コカビエルもそうですが、一誠さんもそのことには全く気が付いていません・・・・それだけ戦いは過激だったので
そしてコカビエルを撃破した一誠さん・・・・・ただ、これで良かったかどうかと言われると・・・・・・複雑と言わざるを得ないでしょう
それでは次回もまたお楽しみに!