『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回はシリアスから離れてちょっとドタバタな感じに

ただラストで・・・・・・・

それでは本編どうぞ


第50話

「皆、今日は私たち限定のプール開きよ。その前に、掃除をしっかりを終わらせましょう」

 

部長の号令の下、俺たち眷属は一斉にプールの掃除を始めた。本当のプール開きは数日先なのだが、今日は俺達が掃除を引き受ける代わりにプールを使わせてもらえることになっているらしい。

 

正直、俺個人としてはプールにはさほど興味はない。だが、それでも部長からの命であるからしっかりとこなさなければならない。それにまあ・・・・・・・一応これも修行にならないこともないしな。

 

「・・・・・・一誠くん、随分と器用なことをしますのね」

 

朱乃先輩が俺の方を見ながら言う。器用なことというのは、デッキブラシを巻き付けて掃除しているいる魔力でできた尻尾のことを言っているのだろう。もちろん、手の方にもちゃんとデッキブラシは持っている。

 

「まあこれくらいは。魔力の精密操作と長時間の維持のいい修行になりますよ」

 

「私も魔力に秀でてはいますが、それはできる自信は・・・・・・悪魔になったのは私よりも後なのに、一誠くんはすごいですわね。なにより、こんな時でも修行に結び付けるだなんて・・・・・・随分とストイックね」

 

感心したような、それでいてどこか呆れたように言う朱乃先輩。ストイックか・・・・・昔から強くなることを意識していたから、言われてもあまり感想は抱けないな。

 

「ストイックで、その努力に相応しい強さを持っていて・・・・・本当に一誠君は頼りになりますわ」

 

なぜか俺に近寄り、腕を絡ませてくる朱乃先輩。俺を見つめる視線は、どこか艶っぽく感じる。

 

「朱乃先輩、どうしたんですか?」

 

「さあ?どうしちゃったのかしらね?」

 

「これじゃ掃除できないんですけど・・・・・・部長に怒られますよ?」

 

「少しくらいなら大丈夫ですわ」

 

より一層に腕を絡ませてくる朱乃先輩。本当にどうしたというのだろうか・・・・・・

 

「一誠くん・・・・・・私、一誠くんにはシンパシーを感じていますの」

 

「え?」

 

「あなたは堕天使によって運命を狂わされてしまった。私も堕天使に・・・・・・」

 

一瞬、悲しげな表情を浮かべた朱乃先輩。堕天使と何かあったということか?

 

「強くて頼りがいのある一誠くん。そんなあなたにシンパシーを感じるからこそ私はあなたを・・・・・あなたに・・・・・」

 

朱乃先輩の様子がどこかおかしい。確かに時折艶っぽさと大胆さを見せるひとではあったが、だが今はどこか危うさと弱々しさを感じる。こんな朱乃先輩を見るのは初めてだ。

 

「一誠くん、私をあなたの・・・・・・」

 

「何をしているのかしら朱乃?」

 

朱乃先輩の言葉を遮るように、部長が現れて声をかけてきた。声からして明らかに怒気が含まれていることがわかる。

 

「掃除をさぼって一誠と何をしているのかと思えばあなたは・・・・・・・一誠をからかうのはやめてちょうだい!」

 

「あら?私からかってなんていませんわ。本気ですもの」

 

「なおさらやめなさい!私の目の黒いうちは一誠に手出しはさせないわよ!」

 

「なぜそれをリアスに言われなければならないのかしら?私が一誠くんをどうしようが私の勝手でしょう?」

 

「「・・・・・・・」」

 

火花を散らしそうな勢いで互いをにらみ合う部長と朱乃先輩。これは何というかまずそうだな・・・・・・どうにか話を逸らさないと。

 

「あの、お二人とも。言い争いしている暇があったら掃除を進めませんか?このままではプールで遊ぶ時間が減ってしまいますよ?」

 

「そんなことはどうでもいいわ。今は朱乃と話しをつける方が大事よ」

 

「それに関しては同意見ですわね。掃除は話が終わって・・・・いえ、やはりここは掃除を終わらせてしまいましょう」

 

何か閃いたといった表情を浮かべる朱乃先輩。なんというか、さらに嫌な予感がするのだが・・・・・・

 

「一誠くん、掃除が終わったら私の体にオイルを塗ってくれないかしら?隅から隅まで・・・・・誰にも触らせたことのないところまで全て、一誠くんの手で塗りたくって欲しいの」

 

嫌な予感的中だった。朱乃先輩は自身の指を俺の指に絡ませ、俺の耳元で囁くように言ってきた。そんなことをすれば部長の怒りにさらに火を注ぐことになるだなんてわかりきっているだろうに・・・・・・

 

「朱乃・・・・・・あなた私の言っていることを理解できていないのかしら?一誠に手を出さないでと言ったはずよ?」

 

「ええ、ですから私からではなく一誠くんから手を出してもらおうかと思って」

 

「それが許されるわけないでしょう!何を考えているの!」

 

部長の言葉に激しく同意する俺は。数回首を縦に振った。

 

「朱乃がそういうつもりなら私にも考えがあるわ・・・・・・一誠、主として命じるわ!掃除が終わったら朱乃でなく私にオイルを塗りなさい!」

 

「・・・・・は?」

 

あまりにも予想外の部長の一言に、俺は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

「ちょっとリアス!どうしてそうなるのよ!」

 

「朱乃の毒牙にかかるぐらいなら、私がこの身差し出して一誠を守ろうと思っただけの話よ」

 

「そんなの一誠くんが困るだけじゃない」

 

「あなたの方が一誠を困らせてるじゃない!」

 

「いえ、そもそも俺はお二人にオイルを塗ったりは・・・・・・」

 

「「一誠(くん)は黙ってなさい!」」

 

おかしい。俺も話の中心人物のはずなのに黙れと言われてしまった。もうこれどうしろっていうんだよ・・・・・

 

「大体あなた、男嫌いのはずでしょ!それなのにどうして一誠を狙うのよ!」

 

「そんなの私の勝手よ!リアスだって男になんて興味がないだなんて言ってたわ!」

 

「一誠は別よ!というより私のはあなたとは違うわ!」

 

「とにかく私の邪魔をしないでちょうだいリアス!」

 

言い争いは段々とヒートアップしていく。ついには二人とも体から魔力がにじみ出てきてしまうほどだ。

 

このまま過熱すると掃除どころか、プールそのものが消滅しかねない・・・・・・そんなことになればおそらく生徒会長であるシトリー様に怒られるだろう。主に部長が。

 

(・・・・・・・これも忠義を尽くすためか)

 

俺はある意味ではライザーとのレーティング・ゲームに臨む時以上の覚悟を持って、部長と朱乃先輩の間に割って入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れた・・・・・」

 

オカ研限定のプール開きを終え、学校から出ようと校門へと向かう俺の足取りは、自分でもわかるほどに重たかった。ひとまずあの場では部長と朱乃先輩を止めることはできたものの、その後も何かと二人は小競り合いを起こし、そのたびに俺が止めるために奔走する羽目になったのだ。

 

唯一、アーシアと小猫に泳ぎを教える時だけは俺の心も幾分安らいだが、それでも疲労の方が圧倒的に上回ってしまっている。

 

「本当に・・・・・・・朱乃先輩どうしたっていうんだ?」

 

部長の方はまあ朱乃先輩が俺に絡んで怒ってああなったのだからまだわかる。だが、朱乃先輩の方はどうして俺に言い寄ってきたんだ?やはり堕天使が関わっているのだろうか?情報が少なすぎて大した考察もできないな・・・・・・あまりこそこそと探りを入れるのは好きじゃないけど、今度部長に聞いてみるか。

 

「やあ、いい学校だね」

 

「ん?」

 

朱乃先輩のことを考えていた俺は、いつの間にか校門まで来ていた。そこで、銀髪の美形な男性に声をかけられる。

 

その男には・・・・・その男の気配には覚えがあった。間違えるはずがない。あの時のような闘気は感じないが、この男は・・・・あの夜に会ったあいつだ。

 

「そうだな。俺もそう思うよ」

 

「ここで会うのは二度目だな『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』・・・・・赤龍帝、兵藤一誠」

 

「また会えてうれしい限りだよ『白い龍(バニシング・ドラゴン)』・・・・・白龍皇」

 

俺は宿敵である白龍皇と、二度目の邂逅を果たした。




このお話ではイリナさんの想いを知っているのでゼノヴィアさんが一誠さんに言い寄ることはありません。ただ、朱乃さんの方は・・・・・・

そして白龍皇との二度目の邂逅。ここで原作となにか差異があるかどうか・・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!

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