どう崩壊するから見てのお楽しみ
それでは本編どうぞ!
「これは・・・・・すごいできね」
「あらあら。一誠くん、まさかこんな才能まであったなんて・・・・・」
「・・・・・・いっそ死にたい」
「一誠さん、大丈夫ですか?」
休み時間に、俺は部長と朱乃先輩に先程の授業で作ったイリナの像を見られて、思わず頭を抱えたくなっていた。そしてアーシアはそんな俺を見て慰めてくれている。
こんなものを見られて、なおかつアーシアに慰められるとか正直恥ずかしすぎる。
「なんで俺はこんなものを・・・・・・そもそも俺、芸術の才能なんて皆無なのに」
「あら、そうなの?けど、一誠は魔力で龍の体の一部を模したりしているから才能はあると思うのだけれど?」
「いえ、あれは芸術じゃなくてあくまでも戦闘スキルの一環ですので。自慢じゃないですが、俺の美術の成績は万年5段階評価では2ですよ」
「それは意外ですわね。まさか一誠くんに苦手なものがあるなんて・・・・・・」
俺に苦手分野があることに驚いている様子の部長と朱乃先輩。二人はいったい俺のことをなんだと思ってるのか・・・・・・
「ところで一誠、この像はどうするつもりなのかしら?」
「それは・・・・・・一応持って帰りますよ。不本意とはいえこんなクオリティで作ってしまったからには壊すのははばかられますし」
「そう・・・・・机の上に飾るの?」
「あの、部長。そんなに詳しく聞かれると俺さすがに泣きたくなるので勘弁してください」
ただでさえこれを作ったという事実だけでも凹みそうなのに、部長の質問は俺のさらなる追い打ちをかけるものでしかなかった。
(だが、無意識で不本意だったとはいえ、あの娘の像をこれほどの精度で作り上げたのだから、やはりお前はあの娘のことを・・・・・・)
(ドライグさん、マジやめてください。俺のライフはとっくにゼロです)
ついにはドライグにまでからかわれる始末だ。というか、こいつ本当に二天龍の片割れなのかって思うほどにノリがいいんだけど。これってまさか俺のせいか?
「ねえ一誠くん、今度よろしければ私の像も作ってくださらないかしら?そのためなら私、一誠くんにこの体をまじまじと見せて差し上げますわ?もちろんおさわりもアリで」
「朱乃!あなたは何を馬鹿なことを言っているのよ!」
「あら、馬鹿だなんて失礼ですわ。私は本気よ」
「余計にタチが悪いわよ!」
滅茶苦茶な提案をしてきた朱乃先輩に、部長が叱責する。最近、朱乃先輩からのアプローチがすごいんだが、なぜなのだろうか・・・・・・まったく理解できない。
「あの、一誠さん」
「ん?どうしたアーシア?」
「いえ、あちらの方が少し騒がしいのでどうしたのかなと」
アーシアの指さす方に視線を向けると、確かにそこは妙に人が集まっていて何やら騒がしかった。耳を澄ませると、シャッター音が多く響いていることがわかる。
「確かに騒がしいな・・・・・見に行ってみるか」
「はい」
気になったので、俺はアーシアと共に騒ぎのある場所に近づいて行った。どうやら言い争いを終えたらしい部長と朱乃先輩も一緒だ。
「あ、部長。それに皆も」
騒ぎの現場の近くには木場が居て、俺達に声をかけてきた。
「木場、お前も気になって見に来たのか?」
「まあね。なんでも魔女っ娘が撮影会をしているらしいよ」
「「「「魔女っ娘?」」」」
なぜこんなところに魔女っ娘がいて撮影会をしているのか・・・・・・余計に気になってしまった俺は人込みをかき分けた。
そしてその先にいたのは・・・・・木場の言う通り、魔女っ娘だった。カメラに向かって笑顔でノリノリでポーズを決めて、そして周囲の学園の生徒がその姿を写真に収めている。その光景はさながらどこかのコスプレイベントの一角で見られそうなものであった。
というか、ピンクを基調とした露出面積多めの衣装とあのステッキは・・・・・・間違いない。魔法少女ミルキースパイラルのコスプレだ。なぜこんな学園の中でミルキーのコスをした娘がいるんだ?
・・・・・・いや、今はなぜ彼女がここにいるかなんてことを考えている場合じゃない。今俺がやるべきことは・・・・・・
「あの、すみません。いいですか?」
俺は意を決して、ミルキーのコスをしている娘に話しかけた。
「ん?なーに?」
「その、こんなことを言うのは大変恐縮なのですが・・・・・・杖を振り上げたポーズで写真撮っていいですか?」
「「「「・・・・・え?」」」」
なんか部長達の意外そうな声が聞こえた気がしたけど、今はそんなことに構っている場合ではなかった。
「うん、い~よ♪はい♪」
俺の要望通りのポーズをしてくれたその娘の写真を携帯のカメラに収める。うん、いいポージングだ。だが、やはり携帯のカメラというのは・・・・・近くに父さんが居ればカメラを貸してもらったんだけどなぁ。
「こんな感じでいいかな?」
「はい。ですが、ウインクして杖を持ってない手でピースしてくれると助かります」
「は~い♪」
俺のさらなる要望に対しても即座に対応してポーズを決めてくれる。これは撮りごたえがあるな。学校でこんないい写真が撮れるとは思わなかった。
「あ、あの・・・・・・一誠?」
「何ですか部長?」
遠慮がちに俺に声をかけてくる部長に、俺は撮影をしながら応対した。
「えっと・・・・・・あなたって、こういう趣味があったのかしら?」
「こういう趣味というと?」
「その・・・・・コスプレした女の子の写真を撮ったり・・・・・・」
「いえ。俺も別にコスプレ写真を撮る趣味はないですよ。ただ、ミルキーだけは別でして」
ミルタンに散々DVD見させられて、かなり好きになったからなミルキー。そのミルキーのコスプレをした娘がいるとなったら、別に趣味でなくても写真を撮るのは当たり前というものだ。
「そ、そうなの。まあ、そのことをとやかく言うつもりはないけれど一誠、あなたが今撮っている相手は・・・・・・」
「おらおら!天下の往来で撮影会とは良いご身分だな!」
部長の言葉を遮るようにして匙が現れた。おそらく生徒会としてこの騒ぎを納めに来たのだろう。
「匙、あと一分待ってくれ。もうちょっと撮りたいんだ」
「いや、待つわけな・・・・って、兵藤!?お前何やってんだよ!?」
撮影している者の中に俺が居たのが意外だったのか、匙は大げさに驚いてみせる。まあ、撮影に集中してるから声だけでしか判断できないんだがな。
「見てのとおり撮影だ。こんな機会滅多にないからな」
「俺の中の兵藤のイメージが・・・・・・だあぁぁ!!とにかく解散だ解散!今日は公開授業の日なんだからこんなところで騒ぎを作るな!」
匙の一言で、撮影している生徒達はぶつくさ文句を言いながら去っていった。俺もさすがにここまで言われてやめないわけにはいかないので、携帯をしまう。
「まったく・・・・・・あんたもそんな恰好しないでくれ。さすがにその恰好は参観には適さないでしょう」
「え~。これが私の正装なのに~」
注意する匙に、対してコスプレした娘はぶすっとした表情を浮かべた。というかこれが正装とは・・・・・・ミルタン並みのミルキーファンだなこれは。いっそ尊敬にも値する。
「まったく、この騒ぎは何事ですか?」
「ソーナ・・・・・・・来てしまったのね」
騒ぎを聞きつけたのか、現れたシトリー様。だが、どうにも部長の反応がおかしい。まるで来ない方がよかったと言わんばかりの反応だ。
「あら、リアス。ここにいたのね。今ちょうどサーゼクス様とおじ様を案内していたところなの」
シトリー様の近くには、サーゼクス様とどこかサーゼクス様に似た紅の髪の男性が居た。どうやらあの方が部長の父親らしい。
「ところで匙、問題は早急に解決するようにといつも言っているでしょう。あなたは・・・・・」
「あ、ソーナちゃん見っけ!」
「きゃっ!?」
匙に説教をしようとするシトリー様に、ミルキーのコスの彼女が突然抱き着いた。しかもシトリー様を名前でちゃん付けして呼びながらだ。
「匙、彼女はシトリー様と知り合いか何かなのか?」
「いや?俺は知らないが・・・・・・」
彼女のことは、眷属である匙でもわからないらしい。いったい何者なのだろうか・・・・・・
「おや、セラフォルー。やはり君も来ていたんだな」
俺が疑問に思っていると、サーゼクス様が彼女に声をかけた。セラフォルー・・・・・・その名前には覚えがある。
「あの、部長。俺の記憶が確かならセラフォルーって現魔王の・・・・・」
「ええ、そうよ。あの方はセラフォルー・レヴィアタン様。現四大魔王のおひとりで、ソーナのお姉様よ」
「・・・・・・マジですか」
よもやあのミルキーのコスプレをした娘がレヴィアタン様で、なおかつあのシトリー様の姉とは・・・・・・・世の中っていうのはわからないものだ。
あくまでも、一誠があそこまで熱心なのはミルキーだからです。決してコスプレ撮影が趣味というわけではありません。
まあ、それでも十分酷いのですが・・・・・・まあミルタンのせいということで!
それでは次回もまたお楽しみに!