それでは本編どうぞ!
部長からの了承をえて、俺は再びギャスパーのいる部屋の前へと戻ってきた。まずは部屋には入らず、扉をノックする。
「・・・・・誰ですか?」
中から返事が聞こえてくる。応対はしてくれるようで安心した。これで返事が返ってこなかったら為す術なしだからな。
「兵藤一誠だ」
「一誠・・・・・新しく
「まあ、部長にはそう言ってここには来た。けど、別にお前を無理にここから連れ出そうとは思っていないさ」
そんなことをしたって意味がない。たとえ出てきたとしても、心が閉じこもったままだからな。
「なら何をしに・・・・・・?」
「ちょっとお前と話がしたくてな」
「僕とお話し?」
「そうだ。無理にとは言わないが、ちょっと付き合ってくれないか?」
「・・・・・わかりました」
とりあえず、話はしてくれるらしい。しかも、足音が聞こえてきたからわざわざ扉の前まで来てくれたようだ。
「それじゃあまあ、単刀直入に聞くがギャスパー。お前はなんで外に出たくないんだ?」
「・・・恐いからです。外は恐いことばかりだから僕は外に出たくありません」
「なるほど・・・・・まあ、気持ちはわかる」
「え?」
「外の世界はいいことばかりじゃない。お前の言う通り、恐いことなんていくらでもあるし、知らなければよかったと思うこと、見なければよかったと思うこと、聞かなければよかったと思うことがゴロゴロしてる。外の世界ってのは、自分にとって都合のいいことばかりじゃないのは確かだからな」
実際、ただ安全を求めるだけならばこの部屋の中に閉じこもってればいいと思うしな。そう思うこと自体は、俺は悪いとは思わない。誰だって、恐いことから逃げ出したいと思うものだ。それも、ギャスパーの場合特にだ。
「・・・・・・否定しないんですか?」
「否定なんてしないよ。俺にお前を否定する資格なんてないんだからな。ただ・・・・・」
「ただ・・・・・・なんですか?」
「ギャスパー、お前が一番恐いと思っていることは外の世界そのものではないんじゃないか?お前が恐いと思っていることは・・・・・お前自身の中にあるんじゃないのか?」
「・・・・・・」
俺の問いかけに、ギャスパーは答えなかった。だが、それは俺の言っていることを肯定していることと同義だった。
「お前が一番に恐れているのは。お前のその眼。見たものを停めてしまう
「・・・・・はい」
今度は声に出して肯定するギャスパー。だが、その声は酷く弱々しく、か細いものであった。
「僕はこんな神器なんていらなかったんです。皆停まっちゃうんだ。皆恐がるんだ。皆嫌がるんだ。僕だってい嫌だ。友達を・・・・・仲間を停めたくなんてない。大切な人の停まった顔を見るのは・・・・・・もう嫌だ」
声から伝わってくる悲痛な感情。おそらく過去に何かあったのだろう。俺なんかでは推し量れないような何かが。本当なら踏み込むべきではないのかもしれない。だが・・・・・それでも、このままにはしておけない。
「ギャスパー・・・・・お前は強いな」
「え?」
「見たものの時を停める力。そんな力を持ってしまったら力に溺れたり傲慢になったりしてもおかしくない。だけどお前は違う。自分の力を恐れることができている」
見たものを停める力。それはあまりにも利便性が高すぎる。利便性の高さは悪用のしやすさにつながるが。ギャスパーはそんなこと微塵も考えていない。悪用どころか、そのことに対して罪悪感さえ感じている。
「それは・・・・・・僕が臆病だから」
「確かにお前は臆病だろう。だが、その臆病さを俺は非難するつもりはない。むしろ、それは誇らしいことだと思っている。自分の力を恐れているお前は、その力に溺れることはない。その臆病さはギャスパー・ウラディとして、確固たる強さを持っている証なんだ」
「臆病さが・・・・・強さの証」
「そうだ。その強さは誰しもが持ち得る強さじゃない。その強さを誇ってもいい」
そう、ギャスパーの心の強さは誰にでも持ち得るものではない。現に俺だって・・・・・力を発現したばかりの時はともかく、今の俺は自分の力を恐てなどいない。ゆえに、俺は時として自分でも自覚できるほどに傲慢な考えをしてしまうことがある。そんな俺に比べて・・・・・・・ギャスパーの方がよっぽど心が強い。
「ギャスパー・・・・・俺はさっき、お前を無理に連れ出すつもりはないと言った。それを今更撤回するつもりなどない。だが・・・・・お前自身はどうしたいと思っている?」
「僕自身が?」
「恐いのはわかる。その恐怖を抱いたまま、外に出るのはお前にとって簡単なことではないんだろう。ここにいたいのならここにいたって構わない。部長は俺がどうにか説得してみせる。だがそれは、お前がずっとその部屋の中に居続けてもいいと思っているならの話だ」
あくまでも可能性の話だが、ギャスパーが心の底からこの部屋の中に居続けることを望んでいるわけではないのかもしれない。外に出たいという気持ちはあっても、神器の能力や過去がギャスパーを心ごとこの部屋に押さえつけているのかもしれない。
まあ、あくまでも可能性の話なのだが・・・・・・
「僕・・・・・でも、僕は皆を停めちゃうから・・・・・・」
今度は部屋から出たくないとは言わなかったか。皆を停めてしまうから・・・・・それが一番引っかかっているということか。
「停めてしまうのが嫌で外に出たくないっていうなら、皆を停めることないようになればいい。修行して力を上手く扱えれるようになればいい」
「修行をして力を・・・・・・けど、修行といわれてもどうすればいいか・・・・・」
「それなら俺が修行を付けてやるよ。俺なら赤龍帝の籠手があればお前の眼でも停まることはない。お前の修行に付き合ってやることができる」
「僕なんかのために・・・・・修行に付き合ってくれるんですか?」
「ああ。俺でよければな」
まあ、それもこれも部長のためなんだけどな。ギャスパーが外に出て、力を使いこなせる様になれば大きな戦力になるだろうからな。それに、俺自身こいつが力を使いこなせるようになったらどれだけの戦闘力を身につけることになるのか気になるし。
・・・・・・我ながら、性根が腐ってるな。まあ、ギャスパーに言った言葉に嘘はないんだが。
「力を使いこなせれば僕は・・・・・・大切なひとを守ることができますか?」
「お前がそうあろうと願い続ければ・・・・今の強さを維持し続ければ可能だろうな」
結局のところどうありたいか、どうあろうとするのかは自分次第。だが、ギャスパーなら大丈夫だろう。気弱で臆病だが・・・・・・・それでもこいつは強いから。
「・・・・・・一誠先輩」
部屋の扉が開く。扉の奥には、ビクビクしながらも確かな覚悟を感じさせるたたずまいのギャスパーが居た。
「・・・・・・お願いします一誠先輩。僕を鍛えてください」
「ああ。言っておくけど、結構厳しめに行くから覚悟はしておけよ?」
「はい!よろしくお願いします!」
大きな動作で頭を下げるギャスパー。まったく・・・・・・まさか俺が自分から他人の修行に付き合って鍛えることになるとはな。
まあいい。やるからには徹底的にやらせてもらおう。部長の眷属として恥じない力を身につけてもらうためにも・・・・・・・
手始めに・・・・・・
「ギャスパー・・・・・・とりあえずお前10kgの重りをつけて何km走れる?」
「・・・・・・え?」
なんか気づいたらギャスパーくんが一誠さんの弟子になったような展開に
・・・・・・・ギャスパーくん、ガンバ
それでは次回もまたお楽しみに!