それでは本編どうぞ
「和平・・・・確かに私も悪魔側とグリゴリに和平を持ちかけようとは思っていました。ですが、まさかいの一番にあなたが提案するとは・・・・」
「おいおい、その言い草はないだろう。本当に信用がないな俺は」
「信用以前の問題です。あなたが戦争を嫌うのを理解していますが、同時にあなたの自分勝手さも理解していますからね」
「はっ、自分勝手で悪かったな」
ミカエルの発言に、アザゼルは口では謝罪したが、心がこもっていないことは一発で分かった。まあ、実際悪いと思っていないのだろう。
「先の大戦で我らは神を失ってしまった。その損失はあまりにも大きすぎる。戦争の大元である神も魔王も居なくなってしまったのですから、これ以上三すくみの関係を続けていても害にしかならないでしょう」
「その点に関しては私達も同意見です。種を存続させるためには決断せざるをえません」
「戦争など私達も望むべきものではない。また戦争が起きてしまえば悪魔は滅びる。ならば、天使、堕天使と和平を結ぶ必要性は十分にある」
ミカエルもセラフォルー様もサーゼクス様も和平には賛成のようだ。なあ、各種族疲弊しきっているのだから和平の選択も納得できるものではある。
「天使の長も魔王共も物分かりがいいじゃねぇか。その通りだよ。これ以上三すくみでいがみ合っても仕方がない。天使達は神を失い、悪魔達は魔王を失った。堕天使は俺っていう頭は失わずに済んだが、それでも少なくない同胞を失った。ただでさえ三種族の中で最も総数が少ない俺達にとってはこれはあまりにも痛すぎた。今度戦争が起きてしまえばそれこそ共倒れだ」
たとえ戦争を起こし、敵対勢力を殲滅することができたとしても、そこから先は破滅しかない。一介の悪魔である俺でさえそんなことはわかっているのだから、各種族のトップがそれを理解できていないはずがない。理解できていてなお戦争を望むと言うなら、それは愚か以外のなにものでもないだろう。
「先の戦争で神は死んだ。そして次戦争が起きれば、俺達三種族は共倒れ。人間界へも影響を与え、世界は滅びちまうだろう。そんなアホなことがあってたまるか。神がいなくなって世界は滅びなかった。神がいなくても世界が大きく衰退することもなかった。たとえ神がいなくたって、世界は回るんだ。だったら、今の世界に淀みを与えるわけにはいかない・・・・・世界のためにも、和平は必要不可欠なんだよ」
神妙な面持ちでアザゼルは言う。アザゼルは自分勝手で自分の欲望を優先しているように見える。だが、それでも無責任ではないし、無知でもない。アザゼルはアザゼルなりに世界のことを、種族のことを考え、一勢力の長としての責任を果たそうとしている。
なんて言うか・・・・・こういうのをかっこいい大人というのかな。正直尊敬できる。
「さて、俺達三種族の意思は決まった。次は二天龍・・・・・赤龍帝と白龍皇の考えも確認しておくかな」
アザゼルは俺とヴァーリに目配せをする。まさかこのタイミングで俺達に話を振ってくるとはな・・・・・
「なぜ私達の考えを聞く必要があるのですかアザゼル総督?」
ひとまず、俺は自分が発言する必要性をあまり感じなかったので聞いてみた。
「お前達は今代の二天龍だ。二天龍はその圧倒的強さと存在感で世界に与える影響も大きい。お前たちが選択しなければ、俺達も動きづらくなる。何より、二天龍はかつて三種族が手を組むきっかけになった存在でもあるからな。なら、和平に対する考えを聞くのも当然の流れだと思わないか?」
アザゼルからの返答は、それなりに筋の通ったものであった。一つ反論するとしたら俺はあくまでもドライグの力を持つ
「まずはヴァーリ。白龍皇としてどう考える?」
「俺は強い奴と戦えればそれでいい」
「まあ、お前はそう答えるよな」
ヴァーリはただ戦えればいいだけらしい。その答えはアザゼルも予測していたようで、呆れたように笑みを浮かべている。だがまあ、ヴァーリの考えは俺も共感できなくもないがな。
「兵藤一誠。赤龍帝としてお前はどうだ?」
アザゼルはまっすぐに俺を見ながら尋ねてくる。これは、真剣に答えなければならなさそうだな。
「私は・・・・・戦争には反対ですし、三種族がこれ以上いがみ合っても益はないと思っています。三種族が対立しあっているがゆえに、理不尽や不条理な目に遭う者がいて苦しむ者がいる・・・・・私はそれが嫌です」
俺の頭をよぎったのはアーシアのことであった。傷ついた悪魔を癒したせいで教会から追放され、堕天使に利用されて神器を抜かれそうになって・・・・・そして今は悪魔となってしまい、神への祈りさえまともにできなくなってしまったアーシア。アーシアはまさに不条理によって人生を狂わされた犠牲者だ。アーシアのような存在をこれ以上増やすわけにはいかない・・・・・いいわけがない。
「言っていることは理解できる。三種族のいがみ合いによって犠牲になった者は少なくない。兵藤一誠・・・・・ある意味では、お前もその一人だろう」
おそらくアザゼルはレイナーレとのことを言っているのだろう。仮に三種族が敵対関係でなかったとしたら、レイナーレとあんな風死別することもなかったかもしれない。レイナーレを・・・・失うこともなかったかもしれない。
(その女のことだけではないだろう?)
(ドライグ?)
(もう一人・・・・・お前の心にひっかかる女がいる。その女にしても、三すくみであるがゆえにこじらせているところもあるだろう?)
ドライグが言っているのは・・・・・まず間違いなくイリナのことだろう。こいつは本当に・・・・・俺がいくら否定しても突っかかってきやがる。あいつのことは・・・・・・あまり考えないようにしてるっていうのに。
(ドライグ・・・・・今はその話はやめてくれ)
(・・・・・ああ、わかった。すまなかったな)
ドライグは俺に謝罪してくる。謝るぐらいなら初めから言わないでほしいんだが・・・・・・まあいいか。
「だがまあ、つまりお前は和平には賛成だと言うことだな」
「ええ。ただ・・・・・」
「ただ、なんだ?」
「一つ譲れないこともあります。たとえ和平が結ばれようと・・・・・・何らかの形で、白龍皇と戦わせて欲しいです」
和平だとかそんなことか関係ない。白龍皇との戦いは何があってもなされなければならないものだ。そればかりは・・・・・譲れない。
「・・・・・一誠、それはどうしても譲れないことなのかしら?」
「はい。白龍皇を打ち倒す・・・・・それは俺にとって悪魔になる前から定めていた生きる目的です。こればかりは部長が何と言おうとも譲るわけにはいきません」
たとえ部長からの命令だろうとも、白龍皇との戦いから下りるわけにはいかない。白龍皇を倒すために俺は鍛え続けてきた。強さを求め続けていた。そして俺は白龍皇と出会ってしまった。だったら・・・・・いずれは戦わなければならない。戦って・・・・・倒さなければならない。
「ふふふっ・・・・・よく言った兵藤一誠。俺も同じ気持ちだよ。さっき俺は強いものと戦えればそれでいいと言ったが、その中には君も含まれている。俺も何があっても君とは戦って決着をつけたいと思っていたよ」
ヴァーリもまた、俺と同じ考えであった。今代の赤龍帝と白龍皇・・・・・二天龍の力を継ぐ者として、俺達は戦わなければならない。雌雄を決するために・・・・・この戦いを避けるわけにはいかない。
「なるほど。二人とも歴代の二天龍と比べ異質なところもあると思っていたが、それでもやはり宿命からは逃れられない・・・・・いや、宿命を受け入れていると言った方がよさそうだな。いいだろう。だったらその戦いの機会はいずれ俺がセッティングしてやるよ」
「アザゼル、それは本気で言っているのですか?」
「本気も本気だぜミカエル。こうでも言わないと、こいつらは俺達に反発しちまう恐れがある。お前だってそれは避けたいだろう?」
「それはそうですが・・・・・」
「なに、別に殺し合いをさせようってわけじゃない。どんな結果になろうとも、ヴァーリも兵藤一誠も死なせやしねぇよ。ただ思う存分に戦わせるだけだ。俺は歴代最強になるであろう今代の二天龍の戦いを見届けたい」
どうやらアザゼルは俺とヴァーリの戦いに興味を持っているらしい。そのために戦いの機会をセッティングしてくれると言うのならありがたい限りだ。
「そういうわけだ。和平が結ばれようと、きちんと戦えるようにしてやる。それでいいな?」
「お心遣い感謝いたしますアザゼル総督。そういうことでしたら、俺は和平に関して何も異論は・・・・・ッ!?」
異論はない・・・・・そう答えようとした瞬間、悪寒が走った。この悪寒には覚えがある・・・・・ギャスパーが時を止めようとしている感覚だ。
『BOOST!!』
俺は前と同じように
そして次の瞬間に・・・・・空間内の時が止まった。
あくまでも白龍皇との戦いにこだわる一誠さん。まあ、それが生きる目的の一つなので仕方がないといえば仕方がないのですが
そして本章も佳境へ。どうなることか・・・・・
それでは次回もまたお楽しみに!