『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回はいよいよあの戦いが始まります

それでは本編どうぞ


第65話

 

「さて、ギャスパーの奪還には成功した。力の制御もできるようになったから、皆も動けるようになってるはずだわ」

 

「迷惑をかけてごめんなさい・・・・・」

 

「気にするなギャスパー。結果論だが、そのおかげでお前は力を制御できるようになったわけだしな」

 

正直、今回のことがなければギャスパーが力を使いこなせるようになるのはもっと先になるだろうと思っていた。今回の一件は歓迎すべきものではないが、それでもきっかけになったと考えれば無駄ではないだろう。

 

「とにかく向こうに戻りましょう。皆が心配だわ」

 

「ええ。行きましょう」

 

「はい」

 

部長とギャスパーと共に、新校舎の方へともどる。

 

部長の言う通り、皆が心配というのもあるが・・・・・妙な胸騒ぎと予感がする。俺のこの勘、当たるか否か・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧校舎を出て、あと少しで新校舎に到着するというところで・・・・・アザゼルの姿が俺達の目に移る。

 

どうやら戦闘をしていたらしいアザゼルは、負傷していた。それも左腕を失うと失う大怪我だ。

 

「お?そっちも終わったようだな。お疲れさん」

 

俺達に気が付いたアザゼルは、怪我などどうでもいいと言った様子で俺達に笑みを浮かべてくる。どうやら左腕を失いはしたものの、そこまで大きなダメージではないようだ。

 

自分でもなぜかはわからないが、アザゼルが平気そうにしているのにほっとする俺だったが・・・・・そんな俺の目の前でアザゼルが閃光に呑まれた。

 

「ッ!?これは・・・・・」

 

今のは明らかにアザゼルを狙った攻撃だった。それが誰によるものだったのか確認するために閃光の放たれた方へと視線を向けると・・・・・そこには白い鎧を身に纏ったヴァーリがいた。

 

「ちっ・・・・ここで反旗かよ、ヴァーリ」

 

アザゼルは片膝をつきながら、ヴァーリに向かって言う。

 

「そうだよアザゼル。悪いね。禍の団(カオス・ブリゲード)についた方が面白そうだったんだ。なにせアースガルズと戦ってみないかとオファーが来たんだからな。アザゼルはそんなこと許してはくれないだろう?」

 

「当然だ。俺はお前に強くなれとは言ったが、世界を滅ぼす要因は作るなとも言ったはずだ」

 

「関係ないね。俺は戦えればそれでいい」

 

ヴァーリは根っからの戦闘狂ということか。俺も血の気は多い方だと自覚はしているが。あいつのように平和を乱してまでとは思えない。

 

「まったく・・・・・カテレア達旧魔王派が禍の団に与してると知ったときお前もそうなのかもしれないと頭をよぎったが・・・・・・そこから目を背けちまうとは俺も焼きが回ったものだ」

 

旧魔王?なんでここでその話が・・・・・・

 

「なぜ俺と旧魔王が繋がるのかわからないと言った顔をしているな兵藤一誠」

 

どうやら俺のことに気が付いていたらしいヴァーリが、こちらに視線を向けながら言う。

 

「俺の体には旧魔王の血が流れているんだよ。魔王の血を引く父と、人間の母親の間に生まれた混血児だ。旧魔王の血を引き、人間の血によって『白い龍(バニシング・ドラゴン)』の力をこの身に収めた俺はまさに奇跡、運命に導かれたと言ってもいいかもしれない」

 

「・・・・奇跡だの運命だの、随分なロマンチストだな」

 

「ふふっ。少しくらい気取らせてくれたっていいだろう?さて、兵藤一誠。改めて俺の真の名を名乗らせてもらおう。俺の名は・・・・・・ヴァーリ・ルシファー。先代魔王、ルシファーの血を受け継ぐ者だ」

 

「ルシファー・・・・ですって?」

 

ヴァーリが悪魔の翼を広げながら名乗ると、部長は目に見えて驚愕していた。無理もないだろう。部長はサーゼクス様という現ルシファーを身内に持つのだから。

 

かくいう俺も、部長ほどではないにせよ驚いていた。まさかよりにもよってルシファーだとは思ってもみなかったからだ。

 

「・・・・・アザゼル総督。ヴァーリの言っていることは事実ですか?」

 

「ああ、間違いない。魔王の血を引く白龍皇・・・・・あいつは間違いなく最強の白龍皇となるだろう」

 

それはまあ、当然だろうな。何せ魔王ルシファーの血縁だ。そんなのが白龍皇だなんて強いに決まっている。

 

「兵藤一誠、俺は運命とは残酷なものだと思っていたよ。何せ君は俺の宿敵だと言うのに、その出生はあまりにも平凡なものであったからね」

 

「俺のこと、調べたのか?」

 

「当然だろう?白龍皇である俺は赤龍帝である君を無視できない。だから、君のいたって平凡な出生を知ったときはあまりの違いに落胆していたのだが・・・・・調べていくうちに、その落胆は消えていったよ」

 

ヴァーリは声を弾ませながら言う。兜で顔は見えないが、おそらく好戦的な笑みを浮かべているのだろう。

 

「普通の人間であるはずの君は、わずか6歳で赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を起動さえ、あろうことかその瞬間に禁手(バランス・ブレイカー)に至ってしまった。そして俺と同じように悪魔の力を身に宿し、神の子を見張る者(グリゴリ)の幹部、コカビエルさえも倒してしまった。嬉しかったよ・・・・・君が俺の宿敵になりうる力を有していることが!」

 

赤龍帝の籠手を起動した時期のことさえ知ってるのかよこいつは・・・・・むしろ、そこまで調べればわかるっていうのはプライバシーを侵害されているようで面白くないな。

 

「我が宿敵殿にそう言ってもらえるとは光栄だな。それで?なんでわざわざ今ここでそんなことを俺に言うんだ?」

 

「それはわざわざ聞くまでもないだろう?君は俺と戦いたがっていた。俺も君と戦いたい。ならば・・・・・やることは一つだ」

 

「・・・・・まあ、そうなるよな」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

俺はヴァーリの言わんことを理解し、すぐさま禁手化(バランス・ブレイク)する。

 

「部長、ギャスパー下がってて」

 

「戦うの一誠?」

 

「ええ。それが・・・・・俺の宿命だから!」

 

『BOOST!BOOST!BOOST!BOOST!BOOST!』

 

俺は力を高めながらヴァーリに向かって接近する。もっとも、まだ高めた力をヴァーリに叩き込まない。接近したのは攻撃を誘い出すためだ。

 

「いいぞ兵藤一誠!それでこそだ!」

 

ヴァーリは向かってくる俺を迎撃しようと拳を振るう。俺はそれを回避し、反撃・・・・せずに、そのままヴァーリからの攻撃を延々と回避し続けていた。

 

「いい反応だ!だがいつまで躱し続けることができるかな?」

 

ヴァーリは俺に対して拳を振るい続ける。そして俺はそれを回避し続ける。ヴァーリの拳は速く、正直回避は紙一重だった。だが・・・・・それでも今は躱し続けるしかない。なにせ相手は白龍皇なのだから。

 

赤龍帝と白龍皇は宿敵同士だ。だが、俺は能力面では赤龍帝の方が不利だと思っている。

 

『倍化』と『譲渡』の力を有する赤龍帝に対して、白龍皇の力は『半減』と『吸収』。まさに正反対と言っていい能力だ。だが相性が悪い。白龍皇は触れた相手の力を半減させ、その半減した力を吸収してしまう。半減は倍化で相殺させることはできるが、吸収された力は単純に白龍皇の力となってしまう。すなわち、力の上昇スピードで劣ってしまい、赤龍帝の方が不利になってしまう。そのうえ、一対一という状況では、はっきり言って譲渡の力はあまり役には立たないため使える手札も一枚少ない・・・・・・まあ、そもそも俺は譲渡の力を全く使えないのだが。

 

そのため俺が白龍皇に対抗するために考えた戦術は・・・・・一撃必殺だった。ひたすら白龍皇の攻撃を回避し続け自分の力を高め続け、限界まで高まったところで必殺の一撃をカウンターで叩き込んで終わらせる。それが俺の対白龍皇戦術だった。

 

といっても、こんな単純な作戦はヴァーリのような強者ならすでに見抜いているはずだ。だが、見抜いたうえでヴァーリは敢えて俺に付き合って接近戦で俺に攻撃し続けてくれているのだと思う。それは、ヴァーリもまたいち早く俺に触れて白龍皇の能力を発動させたいから・・・・・そして、この戦いを楽しみたいからだろう。

 

互いの利害が一致しているためにこの戦術は成立している。問題はどっちの攻撃が先に叩き込まれるかだ。

 

「さて、兵藤一誠。いつまで躱し続けられるかな?」

 

「そっちこそ・・・・せいぜい当てられるように頑張るがいいさ」

 

勝ってみせる・・・・・必ず最高の一撃を叩き込む

 

必ず白龍皇を・・・・・倒してみせる

 

 




正直、歴代の白龍皇を倒してきた赤龍帝はすごいと思う・・・・・私的には赤龍帝の方が不利にしか思えないので

そして一誠さんの戦術はヴァーリさんにはたして通じるのか・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!

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