『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回はこの章の最後の話となります

それでは本編どうぞ


第68話

禍の団(カオス・ブリード)の襲撃やヴァーリの裏切りがあったものの三種族の和平協定はなされた。この協定を期に、世界は変化していくと部長は言っていたが・・・・・正直実感は沸かない。別に急に身の回りで変わったことがあったわけでは・・・・

 

「今日からお前達の世話をしてやる。俺のことはアザゼル先生と呼べ」

 

・・・・・早速あったよ。笑みを浮かべ、挨拶をするアザゼル。どうしてこうなったのか・・・・

 

「・・・・・ソーナ?これはどういうことかしら?」

 

部長はアザゼルを連れてきたシトリー様に詰め寄った。

 

「その・・・・神器(セイクリッド・ギア)の知識は豊富で色々と教授できるだろうからオカルト研究部の顧問にうってつけだとサーゼクス様が・・・・」

 

「それだけで許可したの?」

 

「拒めばお姉様がくると言われてしまって・・・・・」

 

「・・・・そっちにも神器使いは居るのだから生徒会の顧問になって貰ってもよかったのではないかしら?」

 

「・・・・・」

 

わざとらしく目をそらし、返事を返さないシトリー様。どうやら俺達は売られたようだ。

 

「と、とにかくあとはよろしくねリアス。あ、そうそう・・・・兵藤君」

 

居心地が悪いのか、そそくさと去ろうとするシトリー様であったが、出る前になぜか俺に声をかけてきた。

 

「何でしょうかシトリー様」

 

「その・・・・お姉さまから伝言です。今度一緒にミルキーのDVDを見ようと・・・・」

 

レヴィアタン様とミルキーのDVD・・・・恐れ多いが、なかなか有意義かもしれない。

 

「あの・・・・嫌だったら断ってもいいのですよ?」

 

「いえ、是非ともご一緒させていただきますと伝えてください」

 

「・・・・え?」

 

異様に戸惑った様子を見せるシトリー様。よほど意外だったのだろう。

 

「あ、その時はギャスパーも一緒に連れていきたいのでそう伝えてもらえますか?」

 

「ぼ、僕もですか一誠先輩?」

 

「ああ。レヴィアタン様のミルキーのコスプレは完成度高いからな。一見の価値はあるぞ?」

 

「ま、魔王様は恐いけど・・・・・確かに興味があります」

 

ビクビクしながらも、乗り気なギャスパー。人見知りのこいつがここまで乗り気とは・・・・いい傾向だ。さすがはミルキー。

 

「で、ではお姉さまには伝えておきます・・・・」

 

レヴィアタン様に伝えると約束して、シトリー様は部室をあとにした。

 

「今代の赤龍帝が魔法少女に夢中とはな・・・・・まあ、面白いからいいか」

 

「俺のことよりアザゼル総督、その腕どうしたんですか?」

 

俺はなくなったはずのアザゼルの腕へと視線を向けた。先の戦いで失ったはずなのに、なぜかアザゼルは両腕とも健在だった。

 

「義手だよ。俺特製のな。生身とほとんど遜色なく動く上にミサイルにもなる」

 

(ミサイル機能って必要なのか?けどまあ、義手とはいえ腕が戻ったようでよかった・・・・・よかった?)

 

なぜかアザゼルの腕が戻ったことに安堵する俺。なぜ自分でもこんなふうに思っているのかわからず戸惑うが・・・・・考えても答えは見つかりそうになかったため考えないようにすることにした。

 

「それよりもだ、今後のことを話させてもらうぞ」

 

アザゼルは当たり前のように部長の机を占領して話を進めた。

 

「禍の団のだなんて物騒な組織が出てきちまった以上、お前達にも抑止力として働いてもらいたい。ヴァーリは白龍皇である以上、必ず赤龍帝である兵藤一誠と接触するだろうからな」

 

「上等だ。あんな半端な幕引きのせいで不完全燃焼だったからな。今度こそ決着をつけてやる」

 

「ヴァーリに劣らず血気盛んだな・・・・だが、今のお前ではヴァーリに勝つのは難しいぞ?先の戦いでは優位に進めていたが、フィジカル面以外ではお前はヴァーリに劣っているんだからな。何よりお前は赤龍帝として決定的な欠陥がある」

 

アザゼルの言う欠陥とは、おそらく譲渡のことを言っているんだろう。俺は譲渡の力を一切使えない。あれば使えれば、もっと戦術の幅が広がるのだから使えないままにしておくのは確かに勿体ないと言えるだろうな。

 

「お前は強いが課題も多い。普段から鍛錬は欠かしていないようだが、それを克服するために俺からいくつかアドバイスをしてやろう」

 

アザゼルからのアドバイスか・・・・神器に関しては三種族の中では最も詳しいだろうし、長年の経験もある。アザゼルに教われば確かに強くなれそうだな。

 

「他にもそうだな・・・・・聖魔剣使いお前、禁手(バランス・ブレイカー)をどれだけ維持できる?」

 

アザゼルが木場に向かって尋ねた。

 

「現状では一時間が限度です」

 

「話にならないな。最低でも三日は保たせろ。強力な力も維持できる力が短かったら使い勝手が悪すぎる。一応聞いておくが兵藤一誠・・・・・もう面倒だから一誠でいいか。お前はどうだ?まさか1日ももたないだなんて言わないよな?」

 

「さすがにもっともちますよ。そこまで長時間禁手状態でいたことはないですが、2週間は維持できるはずです」

 

「上出来だな。もっとも、ヴァーリは一カ月もたせることができるが」

 

一カ月か・・・・・軽く俺の倍以上はある。そこでも差が突いちまってるのか。

 

「まあ、禁手の長時間維持についても色々とレクチャーしてやるよ。次に・・・・・朱乃、まだバラキエルが憎いか?」

 

「当然です。母はあの男のせいで死にましたから」

 

アザゼルから問われた朱乃先輩は、きっぱりと断言する。だが、そこに込められた感情は・・・・・単純な憎しみではないように感じられた。

 

「気持ちはわからないでもないが・・・・あいつはお前が悪魔になったときも何も言わなかったぞ」

 

「あのヒトが私に何か言える立場にあると?」

 

「そういう意味じゃねぇが・・・・・まあいい。お前ら親子の問題にこれ以上俺が首を突っ込むのも野暮か」

 

「あんな男、父親なんかじゃありません!」

 

珍しく口調を荒げる朱乃先輩。朱乃先輩とバラキエル・・・・・二人の関係は、色々と根が深そうだ。

 

「あとは・・・・・そこのハーフヴァンパイア」

 

「ぼ、僕ですか?」

 

アザゼルに指され、明らかに動揺してみせるギャスパー。

 

「お前は素質な一誠と同等・・・・いや、それ以上と言っていい。停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)っていう強力な神器も持ってるしな。ただ、はっきり言って現状、お前は弱い」

 

「うぅ・・・・」

 

随分とはっきり言うなアザゼル・・・・・まあ、事実ではあるが。禍の団の襲撃の時に神器の制御はできるようになったが、それでもギャスパー自身に戦う力がない。サポートとしては優秀だが、素質を考えれば個人でも戦えるようになった方がいいのは確かだ。

 

それに・・・・

 

「なにより、引っ込み思案なところがな・・・・今だってそんな状態だし」

 

現在、アザゼルが居るせいか、紙袋を被っているギャスパー。中々異様な存在感を放っている。

 

「まずは引きこもり脱出を最優先するべきだ。そのためのメニューを考えてやる」

 

「で、でも僕は一誠先輩に鍛えてもらってますし・・・・・」

 

「肉体鍛錬を中心にして鍛えているんだろう?それはそれで悪くはないんだが、一誠は一誠で自分の鍛錬で手一杯になることもある。一誠の修行の妨げになりたくないなら俺の修行も受けた方がいいぞ?」

 

「僕が一誠先輩の妨げに・・・・わかりました。やってみます」

 

俺の名前が出たとたんにこれか・・・・・随分と慕われたものだ。まあ、悪い気はしないが。

 

「ここにいる全員、素質はあるんだ。正しい修業をすれば、相応の強さを手に入れることができる。そうすれば禍の団も退けられるだろうし、将来的にはレーティング・ゲームで結果を残せるだろう」

 

「だからあなたのアドバイスを素直に受けろと?」

 

部長は怪訝そうにアザゼルを見る。

 

「まあ、少し前までは敵対勢力だった奴から教えを受けるってのは思うところもあるだろう。だが、和平がなされた以上はこうやって関係性を築いていかなければならない。それが平和に繋がっていくんだ。だから、文句はあるかもしれないが付き合ってもらうぞ。俺はお前たちの先生なんだからな」

 

アザゼルの言っていることは理解できた。和平がなされた以上は、こういうことも必要になってくる。俺としては文句はない。

 

それに・・・・・なぜかアザゼルのことは信頼できる。信じても大丈夫だと思える。このひとについていけば俺はきっと強くなれる。今よりもずっと・・・・・・

 

だから・・・・

 

(頼りにしてますよ・・・・アザゼル『先生』)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・私一人を呼び出して、何のつもりかしらアザゼル?」

 

アザゼルに呼び出され、私は旧校舎の一室に来ていた。

 

「そう身構えるなよ。それと俺のことはアザゼル先生と呼べって言ってるだろ?」

 

「いいから話しなさい」

 

「おーこわっ・・・・」

 

こっちも暇ではないと言うのにこの男は・・・・・くだらないことだったら取り合わないでさっさと帰ろうかしら?

 

「・・・・お前に一誠のことで言っておきたいことがあってな」

 

「一誠について?」

 

いやに神妙な面持ちを見せるアザゼル。これは真剣に聞いた方がよさそうね。

 

「あいつは強い。ヴァーリが歴代最強の白龍皇になるように、あいつも歴代最強の赤龍帝になるだろう。だが・・・・・今のままなら、あいつは歴代の赤龍帝の誰よりも凄惨な破滅に向かって行っちまうかもしれない。それも遠くない未来にな」

 

「それは・・・・・」

 

否定したかったけれど否定できなかった。私も・・・・・そう思ってしまったから。

 

コカビエルとの戦いの時も、白龍皇との戦いの時も、一誠は自分の破滅を顧みなかった。どれだけ傷つこうとも、死ななければそれでいいと。どれだけ傷つこうとも敵を倒せればそれでいい・・・・きっとそんなことを考えて闘っていたのでしょう。

 

見ている私達の不安や悲しみなど、知ったことではないと言わんばかりに一誠は・・・・・傷つくことを恐れなかった。

 

「あいつを自分のことを大切にしようとしない。自分のことを顧みていない。それはあいつの心に闇が巣食っているからだ」

 

「・・・・堕天使レイナーレを死なせてしまったことが、あの子にそうさせてしまっているのね」

 

「いや、そうじゃない」

 

「え?」

 

私の言葉を、アザゼルは否定した。

 

「正確にはそれだけじゃない、だな。レイナーレの件も間違いなくあいつの心の闇になっているだろう。だがそれだけじゃない・・・・・レイナーレの件以前から、あいつの心には闇があった。重く、根深い闇がな」

 

レイナーレの件とは別の、重く根深い闇・・・・・それが何なのか、まったく見当がつかない。私には・・・・・わからない。

 

「あいつが何を抱えているのかは俺にはわからない。だが、わからないからって放置していいものじゃない」

 

「・・・・・私にどうしろというの?」

 

「あいつを大切にしろ。大切にして・・・・見守ってやれ。んで、間違ってると思ったらしっかりと叱ってやれ。主としての責務を果たせば、それでいい」

 

アザゼルの言っていることは当然のことだった。当然のことだったけれど・・・・難しいことだった。私は・・・・・一誠に守られてばかりだから。

 

大切にしてるつもりではある。見守ってあげてるつもりでもある。ちゃんと叱ってあげてるつもりでもある。けれど・・・・・それが一誠に届いているのか、わからなかった。

 

「・・・・言いたいことはそれだけだ。じゃあな」

 

「待ちなさいアザゼル・・・・・なぜあなたは、一誠の心にレイナーレ以外の闇があるとわかったの?」

 

アザゼルが一誠と会ったのは私よりもずっと後。ほんのつい最近のこと。だと言うのに、アザゼルがなぜそれを知っているのかが不可解だった。

 

「・・・・・さあ、なぜだろうな?」

 

アザゼルは意味深な、それでいてどこか優しいな笑みを浮かべて、部屋から出て行った。

 

 




一誠さんの心の闇はもちろん自分の存在についてなのですが・・・・・それをおぼろげながらなぜアザゼルさんが知っているのかはいずれ判明しますのでその時までお待ちを

それでは次回もまたお楽しみに!
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