『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回は修行を終えた後のお話。メインは一誠さんとタンニーンさんの会話となります

それでは本編どうぞ


第78話

「「はあはあ・・・・・」」

 

互いに荒く息を切らせる俺とタンニーンさん。実戦形式の修行が最終日を迎えた今日、俺とタンニーンさんはいつにもまして苛烈な戦闘を行っていた。油断すれば命さえ持っていかれないほどの戦い・・・・それも今、終わりを迎えた。俺は地面に背をつけているのに対して、タンニーンさんは片膝をついている。結果だけ見れば、俺はタンニーンさんに敗れたという形であった。

 

「さすがはタンニーンさんですね。かないませんでした」

 

「何を言う。お前は修行中常に禁手(バランス・ブレイカー)状態で消耗が激しかった。休養時にしっかりと禁手を解いていればどうなっていたかはわからんぞ?」

 

「そういってもらえると助かります」

 

確かに、常に禁手状態を維持していたため消耗は激しかった。だが、だからといって禁手を解くことはしなかった。そもそもこの修行の目的の一つが禁手の継続時間を延ばすことにあったからだ。

 

「万全の状態ならば禁手はどれほど保たせられるようになった?」

 

「一カ月はいけます。まあ、戦闘で大きな力を使えば短くなりますが。ただ、ずっと禁手状態で居たおかげか、負担は軽減されているように感じます」

 

「ふむ、それならば上々だ。俺との修行が意味のあるものとなったようで何よりだ」

 

満足げに語るタンニーンさん。実際この修行は俺にとって有意義であった。禁手の持続時間のこともそうだが、基礎能力の向上や実戦経験の蓄積も同時にこなすことができた。今の俺は、修行を行う前よりも確実に数段強くなっているはずだ。

 

「少ししたらグレモリーの屋敷まで送ろう。それまで身体を十分に休ませるといい」

 

「ええ。そうさせてもらいます」

 

タンニーンさんに促され、俺は久方ぶりに禁手を解除して体力回復につとめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兵藤一誠、修行を終えた今だからこそ、お前に一つ忠告しておくことがある」

 

グレモリーの屋敷に向かう途中、タンニーンさんが俺に声を掛けてきた。

 

「修行を始める前と比べ、お前は数段上の強さを手にした。それはお前の向上心があってこそのものであり、その点は俺も評価している。だが・・・・・お前は少々ストイックすぎる」

 

「といいますと?」

 

「休息や食事の時間でさえ禁手状態を維持するのは、結果的に見れば禁手時間を延ばすことに繋がったのだろうが、普通はそこまでしない。はっきり言ってお前のストイックさは異常だ」

 

「それは・・・・・そうでもしないと、俺は白龍皇に勝てそうにないから」

 

俺は白龍皇・・・・ヴァーリよりも弱い。だからこそ強くならないといけないんだ。たとえどんな無茶をすることになろうとも。

 

「そこだ。俺が解せないと思っているところは」

 

「え?」

 

「なぜそこまで白龍皇を倒すことに拘る?何がお前を駆り立てる?」

 

「何って・・・・・俺は今代の赤龍帝ですよ?白龍皇を倒したいと思うのは普通の事では?」

 

赤龍帝と白龍皇は戦い続ける定めにある。だから俺だって歴代の赤龍帝達がそうであったように、白龍皇と戦わなければならない。そんな当然のことに、タンニーンさんは何を疑問に感じているというのだろうか?

 

「確かに赤龍帝と白龍皇は戦う宿命にある。これまでもそうだった。だが・・・・・・兵藤一誠、お前は赤龍帝の宿命を、兵藤一誠としての宿命として考えているのではないか?」

 

「・・・・・・どういうことですか?」

 

「お前が打倒白龍皇を語るとき、並々ならぬ思いを感じた。お前は何としても白龍皇を倒さなければならないのだと考えているのだろう。だが、お前はそれが少々強すぎる。まるで自分に言い聞かせるかのように、自分はそのために存在しているのだと言わんばかりにだ」

 

タンニーンさん、何を言い出すかと思えば。そんなの・・・・・

 

「そんなの当然じゃないですか」

 

「なに?」

 

「俺は赤龍帝として生まれたんです。だから白龍皇を倒すために生きる。それが生きる目的・・・・・・それは当然のことじゃないですか?赤龍帝の宿命は、そのまま俺の宿命ですよ」

 

「・・・・・」

 

俺が自分の考えを口にすると、タンニーンさんは黙り込んでしまった。一体どうしたんだ?

 

「ドライグ、兵藤一誠は・・・・・」

 

『ああ。相棒はある意味では歴代の誰よりも赤龍帝の呪縛に呑まれている』

 

「そうか・・・・・ふむ」

 

ドライグ?タンニーンさん?一体なにを言っているんだ?俺が呪縛に呑まれている?

 

「兵藤一誠、白龍皇を倒すこと以外に目標はあるか?」

 

「え?まあ、一応・・・・・部長に忠義を尽くすことと、同じ眷属であるアーシアを守り抜くことが俺の生きる目的ですが?」

 

「・・・・他にはないのか?他にお前の・・・・・兵藤一誠としての目的はあるか?お前自身の欲望を満たす夢は?」

 

兵藤一誠としての目的?欲望を満たす夢?そんなの、そんなもの俺には・・・・・

 

「それは必要なものなんですか?少なくとも・・・・・俺には必要のないものです」

 

そう、そんなもの俺にはないし、必要もない。俺はそもそも本当の兵藤一誠ではないのだから・・・・・そんなもの、持つ資格があるはずないんだ。それは・・・・・持ってはならないものなんだ。

 

『タンニーン、相棒は少々事情が複雑でな。そのおかげでこの有様だ』

 

「お前はこれを放置していたのか?」

 

『どうにかできるものならしているさ。こいつは歴代の宿主の中で最も俺に声を掛けてくれているからな。だが・・・・・残念だが、俺ではどうすることもできない。それほどに根が深いのだ』

 

「むう・・・・・・」

 

さっきからドライグとタンニーンさんの言っていることの意味がよくわからない。俺のことを話しているというのはわかるのだが・・・・・まったくわけがわからなかった。

 

「・・・・・兵藤一誠。一つ忠告しておこう」

 

「忠告?」

 

「俺は修行を通してお前を知り、お前に為すべき大儀を果たす強さを持って欲しいと思っていたが・・・・・どうやらそれ以前の問題だったようだ。兵藤一誠、もっと自分と向き合え。自分と向き合い、自分だけの欲望を知れ」

 

「それは・・・・・」

 

「自分には必要のないこと、などと切り捨てるな。そんな達観して考えを持つにはお前はあまりにも若すぎる。お前に今必要なのは『個』だ」

 

俺に必要なものが・・・・『個』?

 

「そうだ・・・・今のお前にはそれが圧倒的に足りていない。足りてないがゆえに、不完全を通り越して不十分なのだ。お前は確かに強いが、それだけでは駄目だ。俺が言ったことをしっかりと考え、自分の中で一つ答えを出してみろ」

 

「・・・・・」

 

「意味が分からないか?ならば、その意味を見つけることも含めて考えてみることだな。ただ力を求めるだけでは、お前は一向に先には進めんぞ」

 

力を求めるだけじゃ・・・・ダメだっていうのか?その先には進めないって・・・・・そもそも『先』って何なんだ?俺はただ・・・・白龍皇を倒して、部長に忠義を尽くして、アーシアを守れればそれでいいのに。それだけが俺なのに・・・・・

 

・・・・・それだけ?俺は・・・・・それだけなのか?

 

白龍皇を倒すことも、部長に忠義を尽くすことも、アーシアを守ることも大切なことなのに・・・・・・必要なことなのに。

 

何なんだろう?それだけって考えると無性に落ち着かない。

 

それだけで十分なはずなのに・・・・・どこか納得がいかない。

 

「俺は・・・・俺は・・・・・」

 

タンニーンさんに、返事を返そうとしても何の言葉も浮かんでこない。

 

何を言いたいのか、俺が何を考えるべきなのかわからない。

 

俺は・・・・俺には・・・・・

 

何もわからない




タンニーンさんの言う一誠さんに足りない『個』というのは個人のことです

一誠さんには決定的に『自分』というものが不足していて、それ故に大きな欠陥を抱いてしまっていますので

この問題が解決するのはいつになることか・・・・・

それでは次回もまたお楽しみに!
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