それでは本編どうぞ
「一誠、どうしたの?」
小猫を追いかけて森に入ったところで、部長に声を掛けられた。どうやらバルコニーから飛び降りたのを見られたらしい。
「小猫が森に入っていくのが見えまして。様子もおかしかったので追ってきたんです」
「それは気になるわね………私も行くわ」
「はい」
部長と共に森の奥へと進んで行く。しばらくして小猫の姿を確認できたが、小猫は一人ではなかった。小猫の向かいに着物を着て頭に猫耳を生やした女性と………会談の際、ヴァーリを迎えに来ていた美猴と呼ばれた男もいる。
「部長!」
「ええ!」
隠れて様子を見ようとも思ったが、あのレベルの相手ではおそらく気が付かれる。俺と部長は駆け出し、小猫と二人の間に入った。
「部長、一誠先輩………」
「小猫、あっちの女性の方はもしかして………」
「はい………私の姉です」
部長の問いかけに答える小猫。もしかしたらと思っていたが、やはり彼女が話に聞いてた小猫の姉………主の悪魔を殺したという猫又か。
「グレモリーの姫さんに赤龍帝………また会ったな」
「あらん?これがヴァーリの話してた赤龍帝?ヴァーリを楽しませたって聞いてたからどんなものかと思ったけど………確かに、それなりに雰囲気はあるわね」
「お褒めに預かりどうも。テロリストの一味がこんなところで何をしに来た?まさかパーティに参加しに来ただなんて言うつもりはないだろうな?」
「黒歌が悪魔達のパーティを見学するって出てったっきり中々戻らなかったんでな。迎えに来たんだよ。そしたら姉妹の感動の再開にご対面ってわけだ」
パーティの見学、ね。そんなことの為にわざわざ敵地に赴くはずもないし、この女………黒歌の狙いは十中八九小猫なんだろうな。
「白音、私と一緒に来なさい。あの時連れてってあげられなかったことは謝るから、また姉妹一緒に仲良くしましょう?」
黒歌は不敵な笑みを浮かべながら小猫に言う。白音、というのは小猫の本当の名前なんだろう。だがこの女………話では小猫を見捨てたと聞いていたから小猫にはもう関心が無いのかと思っていたが、そうでもないのか?冗談で言っているようには聞こえない。
だがまあ………だからと言って、わかりましたの一言が俺の主から出てくるはずもない。
「この子は私の大切な眷属よ。貴方達には指一本触れさせないわ」
「部長………」
まあ、部長ならこう答えて当然だ。このひとは誰よりも眷属である俺達に愛情を注いでくれているのだから。
「俺達としてはその娘さえもらえれば大人しく帰るつもりなんだがな。それでこの場は丸く収めねぇか?」
「つまんねぇ冗談言ってんじゃねえぞクソ猿が。部長がこう言ってる以上大人しく帰………すわけにもいかないな。お前達はテロリストだ。ここで会った以上、押さえつけて引き渡す」
「はっ。言うじゃねぇか赤龍帝」
美猴からの提案を一蹴して、
「眷属ねぇ………私から言わせればだから何って感じよ。白音は私の妹。私には妹を可愛がる権利があるの。ほら、白音。お姉ちゃんの胸に飛び込んでおいて?」
両手を広げて小猫を迎え入れようとする黒歌。もしもあいつらが敵じゃなくて、俺も立場が違ったら、それを許容していたかもしれない。だが、今の俺はグレモリー眷属の一員。部長が小猫を渡さないと言っている以上、こいつらに手出しはさせない。
だがまあ………それでも、聞いておくのが筋というものだろう。
「小猫、お前はどっちの手を取る?」
「え?」
「部長とお前の姉がお前に対して手を伸ばしている。お前はどっちの手を取る?血肉を分けた肉親か、敬愛すべき主か。お前の選択はどっちだ?」
そう、結局のところ決めるのは、決めなければならないのは小猫だ。過去に何があろうとも、小猫にとって黒歌は肉親。思うところはあれど、その事実が消えない以上は小猫も黒歌の手を容赦なく振り払うことはできないのかもしれない。そして、黒歌を失い、苦しんでいたところを救ってくれた部長の手も、小猫からしたら縋りつきたいものであるのかもしれない。
故に、結局のところ小猫が自分で決めなければならない。小猫の心情は小猫にしかわからないのだから。
「私………私は………」
黒歌と部長を交互に見やる小猫。そして………小猫は答えを出した。
「ごめんなさい黒歌お姉様。私は搭城小猫。リアス部長と共に生きます」
小猫が選んだのは………部長だった。迷いが、葛藤があっただろうが小猫は部長と共に生きていく道を、『搭城小猫』として生きる道を選んだ。
「………そう。わかったわ」
選ばれなかった黒歌は、顔を伏せる。だがそれは一瞬のことで………顔を上げた黒歌は、殺意に満ちた顔をしていた。
「ならいいわ。そいつら殺して、強引にでも連れていくわ!」
黒歌を中心に霧が発生する。霧に紛れて小猫を連れ去ろうとしているのではないかと思い、小猫の傍に近づくが………そこで異変に気が付く。部長と小猫が、口に手を当てながらせき込み、その場に膝を着いてしまっていた。
「俺っちも巻き込む気かよ黒歌。しかも赤龍帝は動けるみたいだし」
いつの間にか霧の届かない木の上に移っていた美猴が言う。この口ぶりからしてこの霧は単なる目眩ましではないようだ。
「毒霧か」
「正解よ。悪魔と妖怪によく効く特別製にゃ。まあ、赤龍帝には効かないみたいだけど。それとも毒をもっと強めれば効くかしら?」
「そんなことしたら小猫が死ぬぞ?」
「わかってるわ。そんなことしないわよ。本当は毒で弱らせたところを殺して白音を連れて行こうと思ったのに………上手くいかないものね」
こいつなら本気でやりかねないだろうな。毒が効かなくて本当に助かった。だが、それでもこの霧が出ている限り、部長と小猫は苦しみ続ける。まずはこれをどうにかしないと。
「
魔力で翼を出現させ、大きく羽ばたかせる。翼の羽ばたきによって、霧を吹き飛ばすことに成功した。
「あら?霧を吹き飛ばすなんてやるじゃない」
「ヴェーリが気に入るわけだな。面白れぇ。ヴァーリに怒られるかもしれねぇがこんな展開になったからには存分に楽しませてもらうとするか」
美猴が俺に手にした如意棒を俺に突き出す。それと同時に黒歌も俺に殺気をぶつけていた。どうやら二人で俺を潰す気らしい。
そっちがその気ならこっちも相手をさせてもらおう。特に美猴は、ヴァーリとの戦いを邪魔された借りもあることだしな。
「部長、こいつらは俺が相手しますので小猫と一緒に退避してください」
「だめよ。私も戦うわ」
「毒の影響は?」
「それは………」
口ごもる部長。やはりまだ毒が抜けきっていないのだろう。そんな状態の部長を戦わせるわけにはいかない。
「俺は大丈夫です。伊達に一カ月も山に籠って修行していたわけではないので。なので早く退避を」
「………わかったわ。ここはあなたに任せる。けど、退避はしない。なにかあったらすぐに援護できるように後方に控えているわ」
あくまでも、退避はしないということか。部長らしいと言えばらしいのだが………まあいい。何があっても、部長と小猫に手を出させなければいいだけだ。
「話は終わったか?」
「別に終わるまで待ってくれなくてもよかったんだが?」
「これが最後のお話になるかもしれないから気を遣ってあげたのに随分な言い様ね」
「ほざけ………
禁手化し、鎧を身に纏う。さて、不本意なシチュエーションではあるがタンニーンさんとの修行の成果、この場で示させてもらうとしよう。
原作の衝撃的な禁手化が無いのであっさり戦闘開始となりました
正直原作のあのインパクトには勝てない・・・・
それでは次回もまたお楽しみに!