あまり得意ではありませんが………
それでは本編どうぞ
「オラァ!!」
美猴が俺の腹部に向かって如意棒を突き出してくる。それを直撃する前に左手で掴み、逆に美猴を地面に叩きつけようと持ち上げた。
「うおっと、やるねぇ!」
地面にたたきつける前に、美猴は如意棒を縮めて俺の左手に蹴りを入れてくる。その衝撃で如意棒を手放してしまったが、逆の手に
「次はこっちよ」
後方から黒歌の声が聞こえてくる。振り向きざまに爪で引き裂くが、黒歌の姿はそこにあれど手応えがまったくない。どうやら幻術によって作り出した分身だったらしい。
「残念。死んじゃえ」
黒歌の操る木の根が、俺の身体を拘束して動きを封じてきた。そして動けない俺に対し、黒歌は魔力の塊を放ち、それを爆発させる。
「はい終わり。まずは一人………」
「勝手に殺すな」
「なっ!?」
「黒歌!」
隙のできた黒歌に、
「嘘でしょ?今のを受けて無傷だなんて………」
「いいや、少し効いたよ。蹴られた腕も鎧越しだっていうのに少し痺れたし。さすがにヴァーリとチームを組んでいるだけあって強いなお前達」
「それはこっちのセリフだ。ヴァーリから戦い方が少し拙いって聞いていたがどこがだよ?」
「あいにくと、一カ月も山籠もりして実戦訓練に明け暮れていたんだ。いやでも経験値は積み重なる」
実際、タンニーンさんとの修行が無かったらここまでは動けなかった。美猴の初激だってあんな風に防ぐことは難しかっただろう。
「黒歌、やっぱこいつは本気でやらないとマズイぜぃ?コカビエルを倒し、曲がりなりにもヴァーリと渡り合えたこいつの実力は本物だ」
「わかってるわ。遊びはいらない。本気で殺すわ」
「んじゃ俺は、赤龍帝と全力で遊ばせてもらうか!」
喜々としてはしゃぐような笑みを浮かべる美猴と、俺を強く睨んでくる黒歌。二人の表情は対照的だが、二人共俺に対して殺気をぶつけている点では共通していた。
あの修行により、俺も強くなった自覚はある。だが、この二人は最低でも最上級悪魔クラスの力を有しているだろう。後ろの二人に被害が出ないように本気を出したこの二人と戦うとなればやはり少し分が悪いか。となると、何か策を用意しないと………こういう時、遠距離戦の手段がほとんどないのが悔やまれる。
「妙なオーラを感じてきてみれば、どうやらパーティに相応しくない来客のようだな」
俺が思案していると、上空から巨体が降り立つ。この一カ月で何度も目にしたその巨体は、まぎれもなくタンニーンさんだった。
「兵藤一誠、加勢するが構わないな?」
「ええ。助かりますタンニーンさん」
「マジかよ!?こいつ元龍王、
「何が最高よ。赤龍帝だけでも厄介なのに、また邪魔が増えたわ」
タンニーンさんの加勢に敵であるはずの美猴は喜びをあらわにし、対照的に黒歌はげんなりした様子だ。
「さーて、それじゃあ。派手にいくとするか!」
「馬鹿言わないで。他の悪魔に感づかれたら余計面倒なことになるじゃない」
二人はそれぞれ分身を作り出しながら構えを取る。分身含め、合計10を超える数だ。この中から本物だけを探り当てるのは正直不可能だ。どうしたものか………
「ふんっ。その程度の分身で惑わそうなど甘く見られたものだな」
そう言いながら、タンニーンさんは火炎を口から吐き出した。火炎は巨大で、分身を巻き込んで美猴と黒歌を飲み込む。なるほど、これだけ広範囲の火炎なら確かにいちいち分身を気にする必要もないか。
「あっちち!さすが元龍王。大したブレスじゃねぇか」
「黒焦げはさすがに勘弁だわ」
本体と思われる二人が、火炎を裂けるように上へと飛び上がった。だが、そう来るのは予測済み。俺は二人よりも先に飛び、両手に展開した爪で迎撃する。
爪が二人の身体を引き裂くが………引き裂いた感触が伝わってこなかった。どうやら、本体だと思っていたこの二人も幻術だったらしい。そうなると本体は………
「一誠先輩、下です!」
「ッ!?」
小猫の叫び声が聞こえると同時に、俺は後方へと飛び退く。その直後、俺のいた場所に伸びた如意棒と球体の魔力が通り過ぎていった。
「ちっ。熱いの我慢して仕掛けたってのに空振りかよ」
「白音………やってくれるわね」
下を見ると、炎のダメージを受けながらもその場に立つ美猴と黒歌の姿があった。どうやら、分身を囮に使って俺に不意を突こうとしていたらしい。こんな手に引っかかるとは俺もまだまだだな………
「すまない小猫。助かった」
振り返り、小猫に礼を言う。だが、小猫の姿は普段とは少し違い、黒歌のように頭から猫耳を生やしていた。おそらくだが、さっき美猴と黒歌の本体を捉えたのは小猫の猫又としての力であり、あの猫耳はその影響で出てきたものなのだろう。
「一誠先輩、姉様たちが幻術を使って来たら私が本体を教えます。だから先輩は迷わず攻撃してください」
「わかった。頼むぞ小猫」
これで厄介な幻術による分身に意識を割く必要は無くなった。思い切り攻撃を仕掛けることができる。
「幻術による分身は封じられちまったか」
「構わないわ。だったら攻撃に意識を集中させればいいだけよ」
「ちげぇねえ。来い筋斗雲!」
金色の雲を出現させ、その上に乗る美猴。機動力を上げて翻弄しようってところかな?まあいい。真向勝負なら負けやしない。
「兵藤一誠」
「はい。一気に決めます」
「上等!やれるものならやってみやがれぃ!」
「何としてでも、白音を連れていくわ!」
互いに力を高め、接近していく。だが………それを阻む者が現れた。
「そこまでです」
美猴と黒歌の後方の空間が裂け、その奥から剣を持った青年が姿を現す。
「戻りが遅いから来てみれば。まったく貴方達と来たら………」
どうやら、こいつは二人の仲間であるらしい。男の持つあの剣………あれで空間を引き裂いたようだが纏うオーラの性質は聖剣のものだった。
「空間を切り裂くあの剣………気を付けろ兵藤一誠。あの剣は聖王剣コールブランド。史上最強の聖剣だ」
聖剣であるのはわかっていたが、最強の聖剣とは………そんなものの使い手がヴァーリの仲間に居るとかとんでもないな。それに………あの男の腰に差しているあの剣。あれもただの剣ではなさそうだ。
「腰に差している剣もただの剣ではないな?」
タンニーンさんもその剣のことが気になっているようで、男に尋ねる。
「この剣が気になりますか?こちらは最近発見された最後のエクスカリバー。
支配の聖剣………行方不明になっていたという聖剣まで向こうの手の内か。コールブランドにエクスカリバーの一振り。厄介な剣士が敵方に居たものだ。
「そんな情報簡単に教えちゃっていいの?というか何しに来たの?」
「お前、ヴァーリに付き添ってたはずだろ?」
「私は貴方達を迎えに来たんですよ。まったく、勝手な行動は慎んでほしいですね」
美猴と黒歌を睨みながら言う。大した迫力だ。おそらくこいつは人間だろうに、妖怪相手でもまったく臆していない。
「いやぁ、俺は止めたんだがよ?黒歌が………」
「一番楽しんでたくせに何言ってるにゃ!」
「はあ………まあいいでしょう。私としても赤龍帝に………正確にはそのお仲間に興味がありましたので」
二人のやり取りを見て溜息を吐いた後、男はこちらに視線を移した。
「赤龍帝殿。聖魔剣とデュランダルの使い手によろしくお伝え願えますか?いつか一剣士として相まみえたいと」
剣士として、か。どうやらこいつはテロリストではあるものの剣士としての矜持というものを持ち合わせているようだ。そのうえで、どこか好戦的な雰囲気も感じ取れる。美猴といい、さすがヴァーリが仲間にするだけあって戦い好きのようだ。
「今ここで俺達に倒されて捕まるとは思っていないのか?」
「ええ。私達はここで退くので戦う気はありませんよ。グレモリーの姫君が援軍を呼んでいるでしょうしね」
チラリと部長の方を目配せすると、表情を歪ませていた。どうやら、この男の言う通り援軍を呼んでいたらしい。確かに、援軍が到着すれば被害は出たかもしれないが彼等を捕らえることができたかもしれない。それなら援軍が来るまでこいつらを足止めした方が良いのかもしれないが………
「兵藤一誠、足止めしようと考えているのならやめた方が良い。コールブランド相手では、致命傷を負いかねないぞ?」
「ええ………わかっています」
ここは、無理してでも足止めをするのは得策ではない。タンニーンさんの言う通り、あの聖剣を相手にしてはただでは済まないだろう。
「では二人共、帰りますよ」
「ちぇっ。これから面白くなりそうだったってのによぉ」
「美猴?」
「わかってるって!そう睨むなよ!」
不満げにする美猴を、目で制する。美猴ほどの実力者に言うことを聞かせるってことは、この男もやはり相当な実力者なのだろう。
「仕方ないわね………今日のところはここで退いてあげる。だけど覚えておきなさい白音。私はあなたを諦めないから。いつか必ず連れていくわ」
「姉様………」
「それじゃあ、さようなら」
空間の裂け目を通って、三人は撤退していく。
「まったく………とんでもないのを仲間につけやがって」
鎧を解除して天を仰ぎながら、俺は宿敵であるヴァーリの手強さを改めて再認識した。
やっぱり戦闘描写難しい………
一誠さんも強くなってるとはいえ、あの二人相手では圧倒とはいかないと思い、接戦となりました。まあ、大したダメージは負っていませんが
それでは次回もまたお楽しみに!