『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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今回からレーティング・ゲーム、スタートです

原作との相違点は果たして………

それでは本編どうぞ


第85話

『それではゲームスタートです!』

 

「私の可愛い下僕達!行きなさい!」

 

ゲーム開始のアナウンスの後の部長の一声の下、俺達眷属は行動を開始する。

 

ショッピングモールを舞台とした今回のレーティング・ゲーム。作戦としては俺と小猫が陽動として店内フロアを進み、手薄となった本陣を立体駐車場を経由する木場とゼノヴィアが叩くという作戦だった。俺達が進行している間はギャスパーが店内の監視を行い、進行具合で部長と朱乃先輩、アーシアが動く手筈になっている。

 

「行こう、小猫」

 

「はい。索敵はあたしが請け負います」

 

頭に猫耳を付けた小猫が言う。仙術の力を使うため、猫又としての姿をあらわにする必要があるようだ。

 

「見える範囲に敵はいないが………どうだ?」

 

「近くではないですが動いています。まっすぐにこちらに向かって二人………相手の詳細まではわかりませんが、数分ほどで接敵します」

 

「そうか………今のうちに出しておくか」

 

左腕に籠手を出現させ、接敵に備える。とはいえ、やはり禁手(バランス・ブレイカー)は使えないだろう。ここでは禁手状態で周りの物を壊さずに戦うのは難しい。まあ、通常状態でもある程度力を抑えないと壊しかねないが………これで力加減間違えて負けましたってことになったら部長に合わせる顔が無い。

 

「………以前から思っていましたが、一誠先輩は戦いになると少し雰囲気が変わりますね」

 

「そうなのか?あまり自覚はないんだが………」

 

「うまく言葉にできないんですが………普段よりも少し鋭くなるような気がします」

 

「まあ、戦いとなれば集中しないとならないからな………普段よりも緩んでたらダメだろ?」

 

戦いの最中気を抜けばどんな痛手を受けるかわからない。小猫の言う鋭さが集中状態にあるというのなら、それは当然のことだ。特に最近はコカビエルや白龍皇、タンニーンさん、美猴に黒歌という気の抜けない強敵と戦い続けてきたためか、より集中が深まってきた気がする。

 

「そうなんでしょうけど、私は………ッ!?」

 

「どうした?」

 

「凄い速度で近づいて………上です!」

 

「よう兵藤!」

 

上を向いた瞬間、神器(セイクリッド・ギア)を展開した匙の姿を捕らえた。どうやら急にスピードが上がったのは、神器のラインをロープのように使い、天井の柱を伝ってきたからのようだ。

 

「まずは一撃!」

 

匙は壁を足蹴にし、勢いをつけ、俺に膝蹴りを放ってくる。俺はその蹴りを左腕の籠手で受け、匙の身体を弾き飛ばした。

 

「いい蹴りだな匙。しかも抜け目なくしっかり繋げてきやがる」

 

「これぐらいできなきゃ、お前と渡り合えやしないからな」

 

俺と小猫の正面に立つ匙。そしてその隣にもう一人………確か仁村って名前の一年の兵士(ポーン)だったかな?正直仁村の方は情報が少ないから能力がわからない。

 

ともかく、先に一撃貰っちまったか。ガードしたからダメージはほとんどないとはいえ、しっかりと触れた瞬間に俺にラインを繋げてきている。それも一本ではなく二本………一本は匙の神器と繋がっているが、もう一本はショッピングモールの奥に続いていて、どこに繋がっているかわからない。

 

「一誠先輩、そのライン………」

 

「ああ。匙の神器に繋がってる方はともかく奥に続いているもう一本………アザゼル先生から匙の神器は応用の利くものだと聞いていたが、どういうものかはわからないな」

 

奥に続く方も通常のものと同じように力を吸い上げるものなのか、あるいは別のなにかを吸い上げるのか………考えても検討もつかないな。

 

ただ………

 

「匙、こいつが俺を倒すための策か?」

 

「さあ?どうだろうな?」

 

質問をするが、匙は不敵な笑みを浮かべまともに答えようとしない。だが、あの態度からして、二本目のラインの方に何か仕掛けがあるのは間違いないだろうし、このラインが勝負の鍵となっている可能性があると見てもいいだろう。

 

ラインは応用が利く能力。だが、通常とは違う使い方をしようとすれば、相応の鍛錬が必要になるはずだ。俺だってハードな修行をしてきた自覚はあるが………匙のそれだってきっと負けてはいないのだろうな。一体どんな修行をしたのか、どれほどの思いと覚悟を持って修行に臨んでいたのか。それは、俺では計り知れない、匙地震にしかわからないものだ。

 

それでも、あえて言わせてもらうのなら………俺も見くびられたものだな。

 

「匙………あまり俺を舐めるな」

 

『Blade!』

 

「なっ!?」

 

繋がった二本のラインを切断した瞬間、匙の表情が驚愕に染まった。その表情を見て確信する。やはりこのラインは、匙の切り札だったのだと。

 

「赤い液体………血か。なるほど考えたな。確かに、血を抜かれ続ければどこかで必ず俺は倒れていた」

 

本当に、ここで斬っておいてよかった。どれだけ鍛錬して身体能力を高めようと、生物である限り血を失い続ければ意識を失う。もしも斬らずにこのラインが繋がったままだったら………俺は確実に脱落していただろう。恐ろしい策を用意したものだ。

 

「お前、その剣は………」

 

「聖剣アスカロン。こいつが俺の手にあることはお前も聞いていたんじゃないのか?だったら驚くことはないだろ」

 

俺は右手に持ったアスカロンを匙に突き出しながら言う。本来は籠手から刃が出現するのだが、それでは使いづらいと判断し、俺は通常の剣として右手で持つようにしている。

 

「俺がこれを使うのは予想外だったか?だとしたらやはり、お前は俺を舐めていたんだよ」

 

「な、舐めてなんかいない!俺はお前を倒すために必死に修行した!お前に対抗するために俺は………」

 

「俺もだよ。俺もお前に対抗する手段を手にするために修行した」

 

「え?」

 

「お前は俺をライバル視していた。だからこそ俺を倒すために何らかの策を用意してくると思っていたよ。そしてその策はきっと神器を用いたものだろうともな。だからこそ俺は、こいつを使うことを決め、修行した」

 

このレーティング・ゲームが決まった時、俺はすぐに思った。匙はきっと俺に向かってくるだろうと。匙が俺に向けたライバル心は十分すぎるほどに理解できていたから。だから俺は、アザゼル先生に相談し、修行期間に木場とゼノヴィアから剣の扱いについて学んでいたんだ。

 

アスカロンは龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の性質を持つ聖剣。ドラゴンの神器を持つ悪魔である匙に対抗する手段として、これほど相応しいものはない。

 

「あのパーティの時に言ったはずだ。持てる力を尽くさせてもらうと。その言葉通り、俺は俺が持つ力を存分に使わせてもらう。このアスカロンは、その力の一つだ。この期に及んで見くびって欲しかったと言うのなら謝るが?」

 

「くそっ………冗談じゃねえ!そうさ………お前がアスカロンを使うのは完全に予想外だったよ!コカビエルや白龍皇と渡り合ったお前をすげぇ奴だって思ってだけど………お前は俺の想像を超えていた!だけど、だからって負けられねぇんだ!お前を倒して、俺は先に進む!」

 

策は破綻したが、それでも匙の闘志は消えていなかった。あるいは、俺を倒すための策は他にも用意してあるのかもしれない。正直、ライン以外に対しては俺もどんな手を使ってくるか予測できなかったから用意している対抗策はもうない。

 

だが、それでも匙が向かってくるというのなら俺は匙を倒すために動くだけだ。接近戦を仕掛けてくるにしても、魔力を使ってくるにしても、はたまたラインをさらに応用してこようとも、俺は俺の持つ力を用いて匙を倒す。

 

「小猫、俺は匙の相手をする」

 

「はい。もう一人は私が相手をしますので、一誠先輩は心置きなく戦ってください」

 

「ああ、頼んだぞ小猫」

 

仁村の方は小猫に任せておけば大丈夫だろう。仙術を使える今の小猫なら、そう簡単にやられはしない。だから俺も、匙の相手に専念すればいい。

 

「来いよ匙。赤龍帝の力の一旦………存分に思い知らせてやる」

 

「行くぜ兵藤………お前は俺が倒す!」

 

拳を握りしめ、俺に向かってくる匙。そんな匙を迎え撃つため、俺はアスカロンを構えた。




原作とは違い、この時点でアスカロンを使う一誠さん。しかも、きちんと剣として使います。おかげでゼノヴィアさんの手にアスカロンが渡ることが無くなりましたが………

それでは次回もまたお楽しみに!
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