『兵藤一誠』の物語   作:shin-Ex-

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前置き思いつかない………

と、とりあえず本編どうぞ!


第92話

 

「はーい!私借り物レースに出まーす!」

 

教室内に、よく通るイリナの声が響く。今はクラスで体育祭の出場種目決めをしているのだが、イリナは転入したばかりだというのに率先して声を上げている。

生来の社交性の高さも相まって、既にクラスの人気者となりつつあるイリナ。共に行動することの多いアーシア、ゼノヴィアと一括りにされクラスの3人娘と呼ばれるほどであった。俺としては転入してきた3人がクラスに馴染めているのはいいことだとは思うのだが………この3人の人気があまりに高すぎて、クラスの大半の男共から睨まれることが多くなったのが少々心苦しい。

ただまあ、そのことに関してはそこまで気にしているわけではない。それ以上に俺が今気にすべきことが他にあるからだ。

 

「………はぁ」

 

笑顔を振りまくイリナを見て、思わずため息が出てしまう。原因は先日イリナに町の案内をした時の事だ。あからさまに気まずくなってしまったし、あの日はイリナの笑顔も酷くぎこちなかった。あの時のイリナの顔を思い出すたびに、胸が痛くなる。

幸い、次の日からはイリナはあまり引きずっていないらしく、元の明るい笑顔を見せてくれるようになったのだが………正直、俺としてはまだ気まずい。どうイリナと接すればいいかわからずに頭を抱える日々を送っている。さらに、そんな俺に追い打ちをかけるように………イリナが俺の家に住むこととなってしまったのだ。

グレモリー家の財力によって豪邸へと作り替えられた俺の家には現在、部長とグレモリー眷属全員が暮らしている。父さんと母さんは賑やかになると言って喜んでおり、俺としても特に大きな不満はなかったわけだが………そこにイリナが加わったのだ。部長の方には元々そういうことで話は通っていたらしく、これはイリナをこの町に派遣したミカエル様の意思でもあると言うので反論は無いのだが………家でイリナと顔を合わせるたびに、胸が痛む感覚に襲われてしまう。しかも、イリナの方からは普通に接してきているのだからなおさらだ。あんなことがあってもあんなに普通でいられるイリナを羨ましく思う一方、気まずさで軽く凹んでいる自分が情けなくなってくる。

 

「………はぁ」

 

今日何度目かになるかわからない溜息を吐く。いい加減ネガティブすぎてそろそろ誰かから突っ込まれるかなと思っているところに………桐生が俺に声を掛けてきた。

 

「ちょっと、一誠。脇のところ破れてるわよ?右腕の脇」

 

「え?」

 

桐生に言われ、右腕を上げて確認しようとしたその瞬間………

 

「はい!決まり!」

 

声が上がったと思ったら、黒板に俺の名前が書かれていた。どうやら俺は嵌められたらしい。考えてみれば、桐生の席から俺の服の脇が破れているところなんて見られるはずがない。そんなことに気が付けないほどに、今の俺は余裕がなかったらしい。

 

「桐生、お前………」

 

「いいじゃない。あんたまだ度の種目にも立候補してなかったでしょ?どうせ後に残ったのに突っ込まれるんだから同じよ同じ」

 

確かに、桐生の言い分もわからないことは無い。正直、桐生に嵌められなければどれにも立候補せずに残ったものに参加することになっていただろう。なのでまあ、別に構わないといえば構わないのだが………なんか釈然としない。

 

「たくっ………それで?俺は何の種目にでるんだ?」

 

「あれよ。あれ」

 

桐生に促されるままに黒板を見ると、俺の名前は二人三脚のところに書かれていた。

二人三脚。二人一組で出る競技だ。となると当然、もう一人いるはずなのだが、その相手は………

 

「一誠さん、頑張りましょうね!」

 

なんと、アーシアであった。いや、まあ変にあまり知らない相手と組まされるよりは俺としてはよほどいい。桐生としてはアーシアが白目を使う男子と組まされるのを阻止するために俺を嵌めたのだろうが、これならばまあ納得はできる。

 

「ああ。よろしくなアーシア」

 

こうして、俺はアーシアと組んで二人三脚に出場することが決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝負よゼノヴィア!」

 

「望むところだイリナ!」

 

種目決めの翌日から始まった、体育祭の練習。学園全体での練習なのでそこそこの人数が校庭に集まっているのだが、その中でも駆けっこで競い合っていたイリナとゼノヴィアはひと際目立っていた。まあ、美少女と言っても過言でない2人が、陸上部の男子にも負けないどころかそれを遥かに超える速さで爆走しているのだから、目立たないはずはないだろう。

というか、イリナにしてもゼノヴィアにしても教会の戦士として戦ってきただけあって運動神経良すぎるんだもんなぁ。体育祭みたいなイベントでは大活躍間違いなしだ。対抗できそうなのなんてそれこそ同じ悪魔である生徒会メンバーぐらいな気がする。

 

「うわっ………あの二人速いな」

 

「ん?匙か」

 

「よう兵藤」

 

イリナとゼノヴィアの走りっぷりを眺めていた俺に、匙が声を掛けてきた。正直、匙ともレーティング・ゲーム以来、少し気まずさを覚えているのだが………まあ、イリナと比べればまだマシなので、普通に話すことぐらいはできる。

 

「って、その包帯どうした?怪我でもしたのか?」

 

匙の右腕には包帯が巻かれていた。それも結構広い範囲に幾重にもだ。俺達悪魔は回復力も人間よりも高いため、大概の怪我ならすぐに治るのだが………これほど包帯が巻かれているということは結構重傷なのか?

 

「ああ、これな」

 

匙は腕の包帯を解く。匙の腕には俺の考えていたような怪我は見られなかったが………代わりに黒い蛇のような痣が色濃く浮かんでいた。

 

「これは?」

 

「アザゼル先生に聞いてみたんだが、どうにも前のレーティング・ゲームでお前にラインを接続したのと血を吸ったのが原因らしい。繋がってた時間は短いし、血も少ししか吸ってなかったけど、その少しでこんな影響が出ちまうほど今のお前の力は強いってアザゼル先生は言ってたぜ」

 

どうやらこの痣の原因の一旦は俺にあるらしい。そういえば、アザゼル先生は俺の血を飲めばギャスパーも力を高めることができると言っていたし………俺の血はそんなに影響力の強いものなのか。

 

「それ大丈夫なのか?」

 

「大きな問題は無いらしい。ただ、ヴリトラの力が前よりも強く出るようになるかもしれないって」

 

「………呪いか?」

 

「恐いこと言うなよ………ヴリトラってあまりいい伝承を残してないんだぜ?それこそ本当に呪われそうだ」

 

少し嫌そうに言う匙。だが、心配もわからないでもない。以前ドライグから少し聞いたのだが、ヴリトラは龍王の中で唯一邪龍とも呼ばれる存在で、一部伝承では忌み嫌われているらしい。その能力も、直接的な戦闘能力というよりは特異な能力を駆使するトリッキーなタイプだったようだし、呪いの一つや二つ覚えていてもおかしくはない。

 

「なんというかまあ、ご愁傷様だな………一応俺が原因っぽいし、何かあったら相談ぐらいは乗るぞ?」

 

「もしもの時はそうさせてもらう。ところで兵藤は何の競技に出るんだ?」

 

気分を変えたかったのか、匙は俺の出場種目を尋ねてきた。

 

「二人三脚。アーシアと一緒にな。ちなみに今はアーシアが二人三脚で使う紐を持ってくるっていうから待ってるところだ」

 

「マジかよ………美少女と一緒に二人三脚とか普通に羨ましいなちくしょう!俺のパン食い競争と変わってくれ!」

 

「いや、そもそも俺とお前クラス違うだろ………それよりも匙、後ろ」

 

「後ろ?」

 

俺に言われ、後ろを振り返る匙。そこには生徒会長のソーナ様と、副会長でソーナ様の女王(クイーン)でもある真羅先輩が居た。

 

「匙、話しをするのも結構だけれど、仕事もちゃんとしなさい」

 

「生徒会はただでさえ男手が足りないのですから、しっかりと働いてください」

 

「す、すみません!それじゃあ兵藤、またな」

 

慌てて二人について、生徒会の仕事に戻る匙。なんだかんだ、匙も忙しい毎日を送っていそうだ。

 

『………ヴリトラか』

 

何を思ったのか、ドライグはヴリトラの名を口にした。

 

(どうしたドライグ?)

 

『いや、気にするな。ただ、俺や白いの以上に幾重にも魂を切り刻まれ奴も、近いうちに目を覚ますことになりそうだと思ってな』

 

(そのきっかけが俺ってことか?)

 

『まあそうなるな。アザゼルに協力するファーブニルに、神器となったヴリトラ。そしてタンニーンともまみえた。お前は龍に縁があるのかもな』

 

龍に縁か………そうなると、いずれ他の龍王とも会うことになるかもしれない。

二天龍であるドライグには劣るようだが、それでも強大な力を持つ龍の王達。

どれほどの力を有しているのか興味が沸く俺は、やはり戦闘狂なのだろうと改めて自覚した。

 




イリナさんとの気まずさを引きずる一誠さん。こういうところは原作イッセーさんに比べてだいぶ情けなく見えますね………

それでは次回もまたお楽しみに!
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