……やっと主人公が話します。
遡ること、数時間前。
雪蘭は、緩やかなバタ足で水中を進んでいた。静寂そのものの川で、とても深いが底地は美しい白色だった。
(…この森の中にこんな綺麗な川があるなんて知らなかった…。って違う違う、私はこの近くにいるかもしれない季厘ちゃんを探してるんだった!)
玉面公主に呼ばれた紅孩児の代わりに独角兕、八百鼡と共に季厘を探しにきたのだ。三人は分かれて彼女を探すことになり、水中が最も得意分野である雪蘭がその周辺の担当になったのだが……。
(もしかして川で溺れてる…なんてことはないよね?)
水の透明度が高く探すにはとても良い環境だったが季厘の姿はない。
(やっぱりいないか…。)
こぽっと泡を吐いて、水面を上がっていった。キョロキョロと周りを見渡す。その見渡した先からよく知る顔が覗かないかと。
後ろを振り返る。何度目かに振り向いた時、突如として大きな音がした。目を凝らして見つめた。季厘が流されている。
雪蘭は長い髪を振り乱すかのようにそちらに体を向け乱暴な水しぶきを残して季厘を助けにいった。
そうして時は今に至る。
「ん、雪お姉ちゃん…?」
その言葉に微笑んだ彼女は後ろから殺気を感じ取り振り向いた。
「……っ。」
四人の男の息を飲む声。脳の奥底が突かれるような、そんな衝撃だった。
彼女の背中を覆う銀色の髪が、陽射しを浴び、時折キラキラと光っている。それはゆるやかな風になぶられ、白い肩を、腕を、サラサラと撫で伝わっていた。
そして、碧い瞳。真っ直ぐに見つめられると、まるで透明な泉の底を覗くような思いがした。
「キレー……。」
四人のうちの一人が思わず呟いた。
彼女は痺れるように甘美だったのだ。
「お前も色ボケしてきたか、悟空。」
「え?あれ、声に出てた??」
「おいおい『お前も』ってどういうことだ、生臭ボーズ!!?」
「どうもこうも、テメェのことだ、エロ河童。」
「なんだとぉ!このハゲ坊主!!」
「うるせぇんだよ、事実だろうが。」
「まぁまぁ。三蔵も悟浄も落ち着いてください。困ってますから、彼女。」
「(左肩にある紋様と耳……。妖怪か。)テメェ、何者だ。」
三蔵は銃口を彼女に向ける。
「三蔵!」
「うるせェ。」
彼女は三蔵を一瞥すると、ようやく口を開いた。
「普通、先にアナタから名乗るべきよ。そんなもの(拳銃)向けられて名乗るほど…か弱くないわよ、私は。」
少し怒気をはらんだ声。一瞬誰が口にしたのかわからなかった。清楚で可憐な姿から性格さえも大人しいものだと勘違いしていた。銃口を向ければ涙を見せるぐらいのそんな女だと。
でも彼女は真っ直ぐただ真っ直ぐ、目を反らすこともなく強い眼差しで四人を見つめていた。
そろそろ独角兕を出したい………。