最愛記   作:夜雲 小羽

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うら愛と書いていますが、要するに番外編です。

本編も全く書いてないのに…でも書きたかったので書きました。


うら愛.1『紅』

 

西に向かっていた三蔵たち一行はとある村で泊まることとなった。

しかし探しても空いてる宿屋はなく野宿しようと思った矢先、そこで会った子どもたちに導かれて、村の外れまで来た。

そこには赤い花が咲いている大木の下にある白壁の家があったのだ。質素な作りであったが、大きな中庭があって、そこにはたくさんの薬草や香草が植えられ、咲き競う花々の香りでむせかえるようだった。

 

「この家は誰か住んでるんですか?」

 

「誰も住んでないよ。あ、でも昔は人が住んでたよ。だから…電気も水も通ってるから安心して。好きに使っていいから。」

 

 

八戒の問いに一人の男の子が答える。

 

「…でもさ、どこの宿もいっぱいだったし、俺たち以外にも宿探してるやついたよな?ここらへん全然人いないしさー。」

 

「何が言いてェんだよ、猿。」

 

「悟空はどうしてここには人が来ないかを言いたいんですよね?」

 

「そう!それ!」

 

 

しばらくの沈黙のあと、1人の少女が答えた。

 

「実は、前にここに住んでた人が妖怪だったんじゃないかって噂があるの。だから皆ここには来ないの。しかも、ここにある花、手入れが行き届いてるからたまにその妖怪が帰ってきてるんじゃないかって。」

 

「ホントだ。えっとじゃあ、もしかしたら俺らが泊まってる時に帰ってきたり…。」

 

「するかもな。」

 

「ハンっ。くだらねぇ、俺は寝る。」

 

 

三蔵はそう言うと家の中に入っていった。

 

「相変わらず、自由人だな。三蔵サマはよ。」

 

「あはは、まぁ三蔵らしいですよね。いくら考えても仕方ありませんし、僕たちも入りましょうか。」

 

「おう!八戒、飯!!」

 

「はいはい。」

 

 

悟浄も続いて入ろうとすると後ろから袖を少年に引っ張られた。

 

「あ?」

 

「あ、あの…。その妖怪に会っても殺さないで!!とてもいい人だから……。」

 

「……会ったことあんのか?」

 

「うん…。お母さんたちには行くなって言われてたけど、ここらへん一帯は僕らの遊び場だったから…。…とても綺麗なお姉さんで優しい人だった。いつも布を頭にかぶってて耳が尖ってるかはわからなかったけど……。」

 

「…綺麗なお姉さんねぇ……。わかったよ。」

 

「本当に?ありがとう、おじさん!」

 

「おじっ!?…お兄さんな!」

 

 

少年の頭を軽く小突いた。

背中を向けて帰る子どもの姿を見送ると、彼もまた家の中に入っていった。

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

静かな中庭に、紫煙がゆるゆると漂う。平和な、とろけそうな午後。

悟浄は庭の隅に、白壁にもたれて座った。目の前を、蝶がひらひらと横切っていく。生い茂った大木の葉の影がとても涼しく、小さな泉水に反射した光が白壁で揺れている。その陽の光に揺らめく葉影と、赤い花の甘い香りに包まれて、彼は昼寝をしていた。

 

カサリと誰かが草を踏みしめる音がして目を開けた。

かなり時間が経っていたようで、あたりはすっかり夕景だった。

太陽が、地平の向こうへ沈もうとしている。黄昏の庭はまだ一段と美しかった。花と緑と水の匂いがいっそう濃くなり、泉では蛙たちが、草影では虫たちが鳴いていた。

音がした方に首を向ける。そこには布を頭まですっぽりかぶった人物が立っていた。子どもたちが言っていた妖怪と思い距離をとる。

 

 

「あー、アンタが前の住人さん?悪いが、泊まらせてもらうぜ。」

 

「貴方は…。」

 

 

聞こえてきた声に顔をしかめる。聞いたことのある声だったのだ。前にいる人物が布を取った。沈みゆく夕陽に赤々と照らされながら銀色の綺麗な髪が光っていた。

 

「!アンタたしか紅孩児の…。」

 

 

飛雪蘭。紅孩児の直属の部下である。

 

「お前ここに住んでたのか…?」

 

「えぇ。独角と会う前の話だけどね。」

 

「兄貴と?紅孩児じゃなくて?」

 

「うん、私が最初に会ったのは独角だから…。」

 

 

いつの間にか二人は白壁にもたれかかり座って話していた。

連なった山々が、夕陽をうけて薔薇色に燃える。空が青から紫へゆるゆると染まっていく、美しい黄昏。遠くで教会の鐘が鳴っていた。見上げた空に、鳥の群れが西へ西へゆく。

 

「あのよ…。」

 

 

紅い瞳が雪蘭を見つめる。

 

「何?」

 

「…俺の髪、何に見える?」

 

「……。」

 

 

雪蘭の碧い瞳もまた、悟浄を見つめ返した。

その眼差しに心を射抜かれたようで、悟浄は思わず目をそらした。

夕闇の迫るなか、紅く染まった景色はやけに物悲しくて、赤い名前も知らない花の甘酸っぱい匂いが立ち込めていた。

 

「血の色。」

 

「!やっぱりそう…」

 

「とでも…言ってほしいのかしら?貴方は。」

 

「!?」

 

「馬鹿なの?馬鹿なのね?兄弟揃ってホント馬鹿!」

 

 

思ってもみなかった突然の罵倒に目を丸くした。

 

「なっ!?」

 

「…独角も…昔のことは話さないし、貴方に何があったのかは知らないけれど…それを私に押し付けないでくれる?正直、貴方の髪なんか見てもなんとも思わないわよ。熟したトマトぐらいに見えるだけよ。なんなら林檎でも苺でもいいわ。」

 

「全部、食いもんかよ!?」

 

「料理人の性よ。」

 

 

でも、そうね。と雪蘭は付け足して、じっと夕陽を見つめた。

 

「今なら…この綺麗な夕陽に見えないこともないわよ!!」

 

 

夕陽を浴びて雪蘭の少し意地悪な…けれどもとても可愛らしい笑顔が輝いていた。

 

「はは、なんだそりゃ。」

 

 

心の中で絡み合っていた何かがするすると解けていく…そんな気がした。

夕陽が、紅かった。泣きたくなるくらい。紅に散りゆく花も泣いているようだった。

 

「なによ…何か文句でも?」

 

「…雪蘭チャン、俺にあたりキツくね?」

 

「一応、敵だし。」

 

 

山々を薔薇色に染めて夕陽が沈む。白壁も草原も降り注ぐ花びらも、夕陽の最後の輝きを受け赤々と燃えるようだった。

 

「そういや、そーだったな。」

 

「…じゃあ私帰るわ。花の手入れはまた今度にする。」

 

「…じゃあな、雪蘭チャン。」

 

「またね、沙悟浄。」

 

 

降るような満天の星空の下。さらさらと散りゆく最後の赤い花びらの音が、遠い遠い思い出の向こうの、子守唄のようだった。

 

 





11月9日は悟浄のお誕生日です。
おめでとうございます。
なので悟浄とオリ主メインのお話を書きました。
本当は悟浄の誕生日を祝う話を書きたかったのですが、上手く纏めることができなかったのでやめました。


こんな感じで誕生日や何か行事があれば、うら愛(番外編)を挟んでいきます。

これからもよろしくお願いいたします。
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