少女×幼女戦記【完結】   作:ふぃれ

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第2話 ノルデン戦区

 皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 ティナ・アルベルト魔導准尉です。

 此方は寒さが身に染みる思いですが、皆様に置かれましてはお変わりなどありませんでしょうか。

 どうかお体に気をつけて、体調など崩されない様にお祈り申し上げます。

 

 

 うん、まあいろいろと言いたい事は沢山ありますが、取り敢えず。

 少尉候補生から准尉となりました。

 何やら北方にて選抜幹部候補生研修なるものを行い、六ヶ月の研修終了と同時に試験免除で少尉に任官されるそうです。

 わたしとしては、試験免除はありがたいですが、それに代わる研修とはどんな事をさせられるのか等と考えていましたが、ターニャ曰くどうやらそんな簡単な問題ではないらしいです。

 

「北方にて、協商連合に不穏な動きが確認されたらしい。この研修はそのための増援を兼ねているのだろう」

 

 なる程そう言う事ですか。

 協商連合とは帝国の北、雪山を越えた向こう側の勢力です。

 とは言えそれほど強大な相手ではありません。

 国境線を巡って多少の小競り合いはあるようですが、そもそも帝国と真っ向から戦える相手では無いはずです。

 しかし最近そんな協商連合の動きが活発であるそうで、帝国としても警戒を高めているようです。

 しかし本当に戦争が起こるかどうかも分からないのに、本格的に戦力を集中させる訳にもいかず、結局わたし達のような新兵未満を送って様子見なようです。

 はぁ……、世の中そう上手い話は転がってないものですね。

 それにしても、

 

「……嫌そうですね、ターニャ?」

「ああ、全くだ!こんな幼女までも前線に駆り出す軍事国家に災いあれだ!」

 

 誰が聞いてるか分からないのですから、あまり不穏当な発言は遠慮願いたいのですが。

 まあ本音で話してくれる程度には信頼されているのしょう。

 ありがたいですね、ますます愛おしくなってしまいます。

 しかし。

 そもそもターニャのプランでは、戦争が始まる前に出世して後方に勤務するのではなかったのしょうか。

 何故前線に送られるのでしょう。

 まあ唯一の救いはターニャと一緒だと言う事ですね。

 ターニャと離れて前線送りになっていたら、わたしが祖国を呪っていた所です!

 ターニャと離れて後方にいるのはどうでしょうか。

 ……迷いますね。

 

「ティナはあまり嫌そうではないな?もしかして前線がお望みか?」

「いえいえ、嫌に決まってます!」

 

 戦争自体起こらなければ良いと思っているほどですのに。

 

「じゃあ何故そんなに落ち着いていられる」

「まあ諦めが半分。後の半分は、……ターニャと一緒だからですかね?」

 

 あ、しかめっ面。

 可愛い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで北方にて偵察任務に従事していますと、何と協商連合が越境進軍してきました。

 ええまあ前線ですし?

 小競り合いはあった様ですし?

 戦闘も覚悟してましたが?

 何故わたし達が来た途端本格的に戦争が始まるのですか!

 ……とは言えそれほど命の危機に瀕している訳ではありません。

 わたし達魔導師の主な役割は砲兵隊の観測員です。

 簡単に言えば、お空の上から観測結果を報告すれば、後は砲兵さん達が勝手に敵を倒してくれると言う訳です。

 普通ならば敵魔導師による観測手狩りが行われるようですが、今回に限ってはそんな心配も無し。

 敵の魔導師は後方での守備に就いているらしく、わたしとしては安全安心である訳です。

 これならば、出撃前にターニャが退屈な国境哨戒よりはマシな任務だと言っていた訳が理解出来ると言う物です。

 なにせ安全に戦場を経験出来るのです。

 ターニャ的に言うなら、楽して評価が稼げると言った所でしょうか。

 まあわたしはそもそも経験したく無いのですが、さすがにそうも言っていられません。

 そうして若干拍子抜けしながらも、初めての戦争を体験して帰還したわたしを迎えたのは、信じられない報告でした。

 

 ターニャ・デグレチャフ魔導准尉が敵魔導師部隊と交戦、瀕死の重傷を負いながらもこれを撃退。

 

 …………はあ何で!?

 敵の魔導師は来ないんじゃなかったの!?

 何でターニャが襲われてんですか!

 単身で敵中隊を退けたとか、その敢闘精神を讃えてとかは聞いてません。

 そんな事はどうでもいいんですよ。

 ターニャは無事なのですか!?

 まずそれを教えろよ!!

 

「落ち着きたまえ、アルベルト准尉」

「っ!……失礼いたしました」

「貴官らは同期であるのだし、まあ気持ちは分からんでも無い」

「はい、いいえ。それもあるのですが、デグレチャフ准尉とは幼なじみでありまして」

「なるほどな、……まあそんな顔をするな。デグレチャフ准尉は命に別状は無いそうだ」

「そ、う、ですか……」

 

 安心した途端に、全身から力が抜けるのを感じます。

 不味い、流石に上官の前で倒れる訳にはいきません。

 なんとか踏ん張って耐える。

 ……後でターニャのお見舞にいきましょう。

 

 

 

 

視点移動:上官 

 

 二人も子供が送られてきた時、最初は参謀本部の意図が分からなかった。

 協商連合の大規模越境作戦。

 これを察知した帝国は中央からの派兵を決定。

 これは各方面軍が守備にあたり、中央の大陸軍で敵を叩くと言う元々の帝国における内戦戦略に基づく物であり、当然の事である。

 そしてその中に士官学校生が研修の名目で参加しているのは知っていた。

 まあ確かに開戦している訳でも無いのに、協商連合程度に大陸軍を全力派兵する訳にもいかないのだろう。

 とにかくその時は、ひよっこの子守を押し付けやがってとは思った。

 それがまさか本当に子守をする羽目になるとは。

 正直、士官学校から来たと言う二人を見た時の認識はその程度だったのだ。

 それからすぐに違和感を覚える事になる。

 確かに二人共、子供とは思えない程に有能ではあった。

 しかしその程度では驚きに値しない。

 少なくとも名目上は成績優秀な候補生が来ているのだ。

 逆にその程度出来なければ、直ぐ様学校に叩き帰す所だ。

 その心配が杞憂に終わったのは喜ばしい事だ。

 しかし違和感の正体はそう言う事ではない。

 どちらかと言えば、二人の内面についてである。

 二人共、子供とは思えない程に落ち着き払っているのだ。

 軍人だからとかそう言う次元の話では無いだろう。

 デグレチャフ准尉の方は余りに軍人然とし過ぎていた。

 軍人として既に完成していると言っても過言ではないだろう。

 彼女と会話していると、まるで古参の将兵かと錯覚を覚える程である。

 しかし私がそれ以上に恐ろしかったのはアルベルト准尉の方であった。

 確かに彼女はデグレチャフと比べて、些か能力的には劣るだろう。

 考え方においてもデグレチャフ程軍人然としている訳でも無い。

 では何か。

 彼女の感情が分からないのだ。

 いや確かに感情を表に出さないと言う意味では二人共大した差はない。

 そう言う事ではないのだ。

 人と言うものはいくら感情を隠そうとしても、その表情なり行動なりに何らかの反応がある。

 しかしアルベルトにはそういった反応が一切無い。

 まるで人形であるかとすら思う。

 その上彼女はこちらの内心を見透かすかのような目をする。

 彼女の前に立っていると、あの獣の様な色をした目を見ていると、まるでこちらの全てが見通されている気さえするのだ。

 相手の手札は何一つ分からないと言うのに。

 

 だからだろう。

 デグレチャフの負傷を聞き、私に詰め寄って来たアルベルトを見たときに、安心したのは。

 普段の彼女からは考えられない程に動揺し、あまつさえ泣き出しそうな顔をしていた。

 それはまるで年相応の少女の様で。

 彼女も人の子であったのだと、当たり前のことを思い知った。

 その時に初めて知ったのだが、彼女等は同郷であり軍属となる以前からの知己であるらしい。

 だからこそ彼女があれほどまで取り乱したのだろう。

 とは言え彼女の本当の顔を垣間見てしまったのだ。

 普段の彼女はそう言った自分の心を押し隠し、軍人であろうとしているのだろうし、それはデグレチャフについても同様だろう。

 もう彼女達を恐れる事等出来はしない。

 我々軍人が、大人が、彼女達のような幼い子供にそれ程までの思いをさせているのだ。

 全く、不甲斐ないものだな。

 

 

 

 

視点回帰:ティナ

 

 そう言えばターニャは例の活躍によって銀翼突撃章を授与されるそうです。

 銀翼突撃章とは授与者のほとんどが二階級特進、授与式にはライフルと軍帽のみが赴くと言われるほど生きたまま授与された者がいないそうです。

 ターニャは久々に生きて銀翼突撃章を授与されたらしく、その事実は軍内で瞬く間に広がる程の大事であるようです。

 何と言うか、まさかそれ程とは。

 ターニャは安全な後方勤務希望では無かったのでしょうか。

 何で前線で大暴れしてるんですか。

 英雄視されてしまえば、後方に下がり難くなると思いますが。

 案の定ターニャは傷が癒え次第、帝都にて大々的に表彰されるとの事。

 更に“白銀”なる二つ名まで拝命したそうで。

 これについては、わたしとしてはターニャの凛々しさや貴さを表現した良い名だと思いますが、欲を言うならばターニャの可愛さをもっと加味して欲しかったものです。

 大体皆ターニャの事を勘違いしているのです。

 ターニャの一番の魅力は何といってもあの愛らしさでありましょうに。

 ……話が逸れました。

 

 わたしはと言えば、ターニャがお休みの間に、もうそれはそれは出撃しましたとも。

 流石に銀翼突撃章のターニャと比べては見劣りしてしまいますが、一般の突撃章も頂けるようです。

 これほどの評価を頂けるとは頑張った甲斐があるというものです。

 授与式の為にターニャと一緒に帝都に戻れる事ですし。

 それにしてもまさかわたしがこれほど積極的に戦争に関わるとは、数ヶ月前では考えられない事です。

 まあターニャをあんな目に合わせた奴らですし、しょうがないですよね。

 ターニャには早く元気になって欲しいものです。

 ああ、ターニャとお話ししたいのです。




周囲から見たイメージとしては、ターニャが動の狂気が孕んでいるのに対して、ティナは静の狂気を抱えている感じです。

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