少女×幼女戦記【完結】   作:ふぃれ

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戦闘書くの難しい
文章力が欲しい今日このごろ


第5話 ラインの護り

 皆様ご無沙汰しております。

 ティナ・アルベルト魔導少尉です。

 このような泥まみれの格好で大変申し訳無いのですが、ここでは自分の身だしなみを気にする余裕など無く、仮に綺麗に身繕いした所ですぐにまた泥まみれとなってしまいます。

 それもその筈、ここライン戦線では主な戦闘が塹壕戦であるのです。

 いくら航空魔導師が空を飛ぶものとは言え敵の火線が集中する中、遮蔽物の何も無い空を考え無しにフラフラ飛んでいては良い的です。

 ですので、わたし達魔導師も歩兵の皆さんと共に塹壕に身を隠し、砲兵隊の皆さんの砲撃によって敵が混乱している隙に空へと上がる訳です。

 つまりは砲撃が無ければまともに戦闘が行えず、そしてその砲撃を敵に当てる為にはわたし達、弾着観測員が必要となります。

 そう言う事でわたし達の役割の重要性と共に、今この場においてはこのような姿での挨拶となってしまう事をどうかご理解頂きたいと思います。

 

 わたし達が今いるここ、ライン戦線を一言で表すならば、地獄と称する以外無いでしょう。

 血と硝煙、泥と汗、垢と糞尿の入り混じった臭いが充満する塹壕内に籠もっていれば、発狂してしまいたくなる気持ちもまあ分からないではありません。

 とは言え何の策も無しに空に向かえば、前述の通り一瞬で蜂の巣ですが。

 

 そんな訳で、誠に遺憾ながら我が第三小隊はわたしを含め三人となってしまいました。

 わたしの指示を無視して外へ飛び出し二階級特進を果たした彼につきましては、そのご冥福をお祈りすると共にご遺族の方々におかれましてはお悔やみ申し上げる次第でございます。

 ……あまりに淡白な反応だと言われるかも知れませんが、この戦場ではまるで消耗品の様に人の命が失われて行くのです。

 そのたびにいちいち感傷に浸っていては、今度は自分がお祈りされる立場となりかねません。

 割り切るしか無いのです。

 割り切れ無かった者から死んでいくのです。

 だから、仕方が無いのです。

 

 

「敵、魔導師反応確認。二個中隊規模」

 

 無線から聞こえてくる声に意識を切り換え、顔を青くした部下を見やります。

 まあ確かにこっちの倍いますからね。

 気持ちは分かりますが、お仕事はちゃんとやってもらいますよ。

 

「どうやらなかなか団体のお客さんのようですね。わたし達は観測員ですので直接戦闘を行う訳では有りませんが、逆に向こうからは積極的に狙われるでしょう。我々が倒れれば、援護砲撃が無くなります。どうか皆さん、自分の命を粗末に扱う事の無いように。では仕事に掛かりましょう」

 

 さて、倍する敵にどこまでやれるでしょうか。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵の魔導師を何とかしろ!観測手が狙われてる!」

「駄目だ!今外に出れば狙い撃ちだ!」

「こんな状況で観測などできるか!頭の上を敵が飛び回ってるんだぞ!」

「クソッ!やられた!狙撃されてるぞ!」

「何でこんな所まで侵入を許した!」

「応援は!応援は来ないのか!CPは何と言ってる!」

 

 

 何たる事でしょう。

 浸透突破して来た敵魔導二個中隊により、わたし達第四○三強襲魔導中隊は瞬く間に壊滅の危機を迎えてしまいました。

 いわゆる観測手狩り。

 敵魔導師を抑えようにも、そもそもの数が違い過ぎます。

 こちらは定数割れの一個中隊、しかもその内いくらかはひよっこに毛が生えた程度。

 対して相手は精鋭の二個中隊。

 最初から勝負になる訳も無く、それでもハルトマン中隊長他、古参の方々が必死に抵抗しておられましたが徐々に押し込まれ、今では半数以上を失う始末。

 しかも制空権は完全に相手のものとなり、塹壕から僅かでも身を乗り出せば敵魔導師の狙撃術式により狙い撃ちです。

 例え塹壕に身を潜めていたとしても、今度は爆裂術式によって強制的に吹き飛ばされますが。

 その上、司令部は状況を理解しているのか観測を継続せよと言ってくるのみ。

 この状況で出来るものならぜひやってみせて欲しいものです。

 

 

「アルベルト少尉!無事だったか!」

「中隊長殿。申し訳有りません。我々が足を引っ張ってしまったばかりに」

「いや、良くやってくれた。どの道これ以上は無理だろう」

 

 わたしの小隊は、辛うじて損失こそ出ていないもののわたし以外は満身創痍、これ以上の戦闘は無理でしょう。

 中隊長殿もそれは分かっているのか、こちらを咎める様子がありません。

 しかしこのままでは、わたしが彼らと共に先に逝った方々の下に行くのも時間の問題でしょう。

 何か状況を打破する一手が必要となります。

 わたしはここで死ぬ訳にはいきません。

 ターニャにもう一度会うまでは何が何でも生き延びなければ。

 そうでなければ、嘘になります。

 わたしの存在が、彼らの死が、全て無意味な物になってしまうのです。

 

 わたしは後ろを振り返り、部下達に指示を出します。

 

「第三小隊は解散します。あなた達は、中隊長殿の指揮に従って下さい」

 

 わたしの言葉が理解出来ないとばかりに目を見開く彼らをそのままに、中隊長殿に向き直ります。

 

「中隊長殿、わたしが敵の撹乱に当たります。その間に観測を行って下さい」

「ふざけるな!そんな物、認められる訳が無いだろう!」

「ですが、このままでは全滅も時間の問題です。撤退が許可されない以上、誰かが敵を引き付ける必要があります」

「だからと言って、それをお前が行う必要はないだろう!……俺が行く。お前が観測を行え」

「いえ、中隊長殿は隊の指揮の為残るべきです。それに、わたしは的が小さいですから中隊長殿よりは被弾しにくいでしょう」

「いや、しかし……!」

「時間がありません。次の敵の爆裂術式に合わせて飛びます。彼らを、お願いいたします」

「おい!待て!」

 

 

 中隊長殿はまだ納得していない様ですが、ここで議論している余裕はありません。

 わたしは急いで演算宝珠の準備をしながら、自分のすべき事を確認。

 敵の爆裂術式による魔力反応に紛れ一気に戦闘高度まで上昇、その後攻撃を行った敵に向かって飛ぶ。

 離れて飛んでいては狙い撃ちされてしまいますから、敵の銃撃を牽制できる近接戦闘に持ち込むしかありません。

 敵もこちらを捜索する為に小隊単位で分散しているらしく、勝機はあります。

 チャンスは一度切り。

 そう何度も同じ手は使えませんし、そもそも失敗すれば生きては戻れないでしょう。

 

 思わず首もとに有る宝珠のチェーンに触れました。

 実はこのチェーンは元々わたしの育った孤児院のシスターが持っていたロザリオなのですが、わたしが軍に入る時お守り代わりにと頂きました。

 親のいないわたしに取って、シスターはまさに親代わりと言えます。

 そのため少し加工して貰い、宝珠のチェーンとして使っているのでした。

 

 しかし思わずそれに縋るとは、案外弱気になっているようですね。

 目を閉じて、チェーンを強く握りしめます。

 大丈夫!弱気になれば、成功する物もしなくなります!

 余計な事を考えるのは、生きて帰ったらいくらでもすれば良い!今はすべき事に集中しろ!

 

 再び目を開いた時には、もう迷いはありませんでした。

 

 

 意識を集中する。

 全神経を研ぎ澄まし、敵の攻撃を待つ。

 ……………………来た!敵の魔力反応です。

 どこを狙って来る?

 あまり遠くては上手く紛れる事が出来なくなりますし、近すぎると今度はわたしも巻き込まれてしまいます。

 

 着弾。

 爆発による轟音と衝撃が体を襲う。

 しかし意識はクリアに。

 

 上手い!

 なかなか近くに着弾した様です。

 かなり理想的な位置。

 これで僅かながら成功率が上がります。

 全速で魔力を込め、宝珠を起動。

 そのまま煙に紛れる様に空へ飛び、爆風を利用して加速し一気に敵との距離を詰める。

 

 

 いきなり飛び出したわたしに驚いたのか、最初こそ動揺していましたがそこは流石に精鋭、直ぐに反撃態勢に移ります。

 こちらに狙いを定めるのが見えます。

 

 魔力回路全開。

 反応速度上昇。

 痛覚遮断。

 

 被弾面積を小さくする為、顔前に右腕を伸ばして出来るだけ身体を真っ直ぐにし、右手に発現させた魔導刃を盾の代わりに使用。

 この距離とスピードでは、周りに張った障壁など役に立たず、体を覆う防殻術式のみが頼り。

 何発かはその防殻も抜かれますが、無視。

 頭や内臓などの重要器官への攻撃のみを魔導刃で防ぐ。

 

 躊躇するな!致命傷さえ避ければ死ぬ事は無いのです!

 敵は一個小隊四人、最初の接触で一人は貰います!

 

 そのまま敵部隊中央に突っ込み、速度そのまますれ違いざまに斬り裂く。

 一人。

 

散開(ブレーク)散開(ブレーク)!近接戦闘用意!」

 

 敵部隊の指揮官らしき人物が周囲に指示を出す為に一瞬意識を逸らしました。

 その隙に、死角に回り込む。

 

「隊長ぉ!後ろです!」

「っ!?」

 

 遅い。

 二人。

 

「よくも隊長を!」

「このやろぉぉぉぉ!」

 

 左右から二人同時に突っ込んでくるのが見える。

 このままでは、やられる。

 集中しろ!

 もっと!もっと!!もっと!!!

 

 左右の攻撃に僅かなズレを確認。

 右側が僅かに速い。

 右から襲い来る銃剣の刃とすれ違う様にして相手の懐に滑り込み、顎を狙い軍靴を蹴り込む。

 蹴った反動を利用して反対側に飛び、相手の攻撃の上から魔導刃を振り被った。

 切り裂かれた敵が落ちて行くのを横目に全身のバネを使い体を捻り、そのまま返す刃で残る敵を斬り払う。

 三人、四人。

 

「はっ……!はっ……!はっ……!はぁっ……!」

 

 息が苦しい。

 上手く呼吸が出来ない。

 酸素が足りず、意識が朦朧とする。

 

 

「はぁっ……!ふぅ……!はぁ……っ!?ぐぅっ!!」

 

 被弾した!?

 距離が有った為に防殻で弾かれはしましたが、明らかにこちらを狙った攻撃。

 すぐさま周囲に意識を向ける。

 こちらに向かって来る敵影を確認。

 視認出来るだけでも数は八人。

 離れていた他の敵も、こちらの異常に気がついたらしく、宝珠には更なる敵性反応があります。

 

 駄目、まだ息が整わない!

 このままでは囲まれてしまう。

 

 何とか態勢を整えようとするが、上手く身体が動かない。

 無理をし過ぎたらしい。

 最初の銃撃で受けた傷からいくつも血が零れる。

 意識した途端に全身を襲う痛みと熱。

 酷い喪失感。

 身体から抜ける血と共に、力が抜け落ちる様な錯覚を覚える。

 いや錯覚などではなく、実際に刻一刻と残り時間がすり減って行く。

 意思だけではどうにもならない。

 これ以上はまともに動けそうも無い。

 

 

 ……………………ああ。

 

 ここまでですかね。

 

 中隊長殿たちは無事でしょうか。

 

 ごめんなさい、ターニャ。

 

 もう一度、逢いたかったのです。

 

 

「ティナ!」

 

 ああ……。

 ターニャの幻覚が見えます。

 

「おいティナ、無事か!?」

  

 せっかく念願の後方に行ったのだから、こんな所にターニャがいるはずなんてないですのに。

 それともまさか本物の天使様でしょうか?

 ふふ、確かにわたしにとっての天使様はターニャですからね。

 

「後はこちらに任せて下がれ」

 

 しかし最期の時までターニャの幻覚を見るとは、我ながら何と未練がましいのでしょうか。

 ですが……。

 たとえ夢でも、最期にもう一度ターニャに逢えて良かったのです。

 

 

 

 そこでわたしの意識は途切れた。




戦闘です。
描写については……、お察しです。
カッコ良く戦闘書ける人は尊敬します。
後、ティナはあんまり強くしないと言ったな?あれは嘘だ。

原作では全滅した部隊ですが、隊長他、何人か生き残ってもらいました。
ただ今後登場する可能性は……。

あ、ちなみにティナは生きてます。
念のため。

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