少女×幼女戦記【完結】   作:ふぃれ

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第7話 キャンパス・ライフ

 こんにちは!

 わたしの名前はティナ・アルベルト、十三歳です!

 わたしはこの春から大学一年生になりました。

 ええ、大学生です。

 中学生の間違いじゃ無いですよ?

 飛び級大学生なのです。

 とは言え皆様の想像する大学とは少し違うかも知れません。

 わたしの通うのは軍大学……軍人の為の大学であり、将来立派な将校になる為の勉強をしています。

 つまりは当然ながらわたしも軍人であるのです。

 まあ、飛び級には違いないですが。

 

 

 改めまして、皆様ご機嫌よう。

 ティナ・アルベルト魔導中尉です。

 前回もお話ししたかと思いますが、わたしは今、軍大学に所属しております。

 軍大学ともなればかなり高度な知識を学ぶ事になり、日夜勉強漬けの日々を過ごしております。

 生来余り勉強の得意でないわたしにおいては、講義の後も自室で自主学習の毎日です。

 そう言った意味では優秀なルームメイトが羨ましい限りですね。

 時々勉強を教えて貰っている身としては、余り文句は言えないですが。

 

 と、そう言えば紹介がまだでしたね。

 わたしは今大学近くの寮に暮らしているのですが、わたしは同級生の一人と寮で同じ部屋に暮らす、いわゆるルームメイトであるのです。

 そして驚く事なかれ!

 なんとわたしのルームメイトである同級生とは!

 

 我が愛しのターニャ・デグレチャフであるのです!

 まさかわたしと共に、ターニャが入学してくるとは!

 ああ、この時ほど生き残れて良かったと思った事はありません!

 これはもう運命と言っても良いのではないでしょうか!

 

 大学が始まる前に寮の部屋を決める為下見に来ていた時に偶然ターニャと出会ったのですが、そこでターニャも同じ大学に入学する事を知りそれならば同じ部屋にしましょうとなった訳です。

 初めターニャは一人部屋にするつもりで有ったらしくルームシェアにかなり難色を示していましたが、わたしが「ご飯作ってあげる!美味しいコーヒーも入れるから!」と言った所、渋々了承したみたいでした。

 

 

 ちなみにターニャは料理などは一切行いません。

 思えば孤児院にいた時から、幼かったとは言え、シスターのお手伝いをしている所を見た覚えがありません。

 その為ターニャは基本的に外食で済ませるつもりだったそうで、それならばわたしが作ってあげるとなったのです。

 それから実はターニャは大のコーヒー好きであり、密かに良質なコーヒー豆を隠し持っているほどです。

 わたしには苦いだけで美味しいとは思えないのですが。

 そもそも子供の舌に合う物じゃ無いのです。

 別に子供になる前からそんなに好きじゃ無かったですけど。

 

 それでもターニャの為ならばと美味しいコーヒーの入れ方を調べましたし、おかげで本人にはなかなかご好評頂けているようです。

 しかしこの体にカフェインの取り過ぎは良くないです。

 ターニャ背が低い事気にしてましたよね?

 子供の内からカフェインばっか取ってると伸びないですよ?

 まあその方が可愛いので本人には言いませんけど。

 

 ……あなた今、小さい方が可愛いって意味だと思いましたね!?

 あなたは何も分かってない!

 ターニャの可愛さはそんな些末な事では語れないのです!

 いいですか?例えターニャが高身長の美人さんだとしてもターニャの可愛さは微塵も揺らぐ事は無いのです!

 大切なのは、ターニャが自分で自分の首を絞めちゃってる所なのです!

 普段大人顔負けにしっかりしているターニャ、でもちょっと抜けてるとこが良いんです!

 まあ確かにちっちゃい方が可愛さが加速するのも認めます。

 でもそれはターニャがターニャである事実の前には霞んでしまうのです!

 そこんとこ間違えて貰っては困るのですよ、全く。

 

 …………こほん。

 失礼致しました。

 少し興奮してしまったのです。

 とにかくそう言う訳でターニャとは同じ部屋で暮らす事になったのでした。

 

 

 

 そうして始まったわたしの華のキャンパスライフ。

 毎日ターニャと一緒にいられると言うだけで、最近ちょっとモヤモヤしていたわたしの心は晴れやかになり、どんな事でも頑張れる気さえします。

 ターニャと共に日々勉強に訓練に明け暮れていると、士官学校時代を思い出します。

 とは言え短縮コースで即席士官を生み出していた士官学校と違い、さすが未来の将校を育成する軍大学、あの時より数段しっかり教えて頂けます。

 まあこちらも短縮コースには違いありませんが、それでも無駄が無くなった分以前より効率的と言われているくらいです。

 それなら余裕が有るかと言われればとんでもない。

 余裕どころかその分以上に厳しく評価されるのですから、僅かも気を抜く事が出来ません。

 訓練が終わればすぐに眠っていた士官学校時代とは違い、今は毎日毎日自主学習に励みようやく何とか付いて行けている有り様です。

 そんなわたしを見かねてか、時々わたしの自主学習にターニャが付き合ってくれます。

 

 そんなターニャはと言えば大学でも変わらず非常に優秀であり、軍大内で上位十二名から選ばれる十二騎士に名を連ね得るほどだそうです。

 十二騎士に選ばれれば爵位が与えられ参謀将校となれる事が確定するほどで、そこに選ばれるかも知れないと言うターニャの優秀さと、そのターニャでさえ末席に名を連ねるのが精一杯と言う事実に、その凄まじさにわたしはただただ圧倒されるしかありません。

 流石にそれらはわたしには遠い世界の話にしか感じられませんが、だからと言って遊んでいられる訳ではありません。

 わたしはわたしで、わたしに出来る精一杯をなさなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある休日の昼下がり。

 わたしは今日も今日とて自室で一人机に向かっています。

 ターニャは、休日だと言うのにいつものように軍服を身に纏い、ライフルを担いで出掛けました。

 多分大学に行ったのでしょう。

 たしかに今日は休日ですから講義は有りません。

 ですが、大学の図書室は休日でも利用出来ます。

 そのためターニャは自主学習に大学の図書室を利用しています。

 寮にも資料室くらい有りますが、ターニャ曰く全然足りないのだそうです。

 ……わたしにとっては寮の資料室でも充分過ぎるのですが。

 

 

 初めはターニャもわたしに付き合ってくれようとしていましたが、今日は大丈夫だと断りました。

 ターニャと一日中一緒にいられる事実は非常に魅力的でしたが、流石にわたしのせいでターニャの休日を潰してしまうのは忍びないのです。

 ちなみにターニャはどこへ行くのにも軍服にライフルと言う装いです。

 いえ軍服は良いとして常にライフル持ち歩くのはどうなんでしょうか。

 もちろん大学内には持ち込めませんので、いつも入口で取り上げられるのですが。

 合理性を重んじるターニャにしてはひどく非生産的な行動ですし、気になって聞いてみた所、

 

「ん……。いやなに、恥ずかしながら戦場の癖が抜けなくてな」

 

との事ですが、戦場ってノルデンの事でしょうか。

 その時のターニャはライフル担いで歩き回ったりして無かったと思いますが。

 いまいち腑に落ちないのですが、まあ毎回衛兵にライフルを預ける時のターニャがちょっと罰が悪そうで可愛いので、別に止めたりはしません。

 

 話が逸れましたね。

 思考も逸れてますが。

 朝からずっと机に向かっていたので流石に疲れました。

 時間も時間ですし、少し休憩にしましょうか。

 

 そんな事を思っていると、丁度ターニャが帰って来ました。

 しかも何だかすごい嬉しそう。

 まるで鼻歌でも聞こえて来そうな雰囲気です。

 念願叶って後方である大学生となってからのターニャは大変ご機嫌で可愛いのですが、それでもここまで上機嫌なターニャは珍しいです。

 と言うか初めて見たような気がします。

 何かこちらをチラチラ見てますし。

 よっぽど話したいんですかね。

 そわそわしているターニャが可愛すぎてずっと見てたいのですが、わたしはその誘惑をぐっと堪えて声を掛ける事にします。

 

「何か良い事でも有ったのですか?」

 

 わたしがそう訊ねると、まるで待ってましたと言わんばかりの勢いでこちらに駆け寄って来ました。

 

「ティナ!やったぞ!参謀だぞ!」

「?」

 

 落ち着いて下さい、意味分かりませんよターニャ。

 

 何でも大学の図書室でたまたま戦務参謀次長閣下にお会いし、お話しさせて頂く機会を得たそうです。

 そこで閣下からいくつか質問されたそうで、その時の感触がかなり良かったようです。

 なるほどそれで参謀ですか。

 うーん、どうなんでしょう?

 わたしは実際その場面を見ていた訳では無いので、何とも判断が付きません。

 しかしそれを言って、せっかくのターニャのご機嫌を損ねる必要はありませんね。

 

「おめでとうございます。これでターニャの願いが叶いますね?」

「ああ、ありがとう!そうだ、これでわたしは参謀だ!エリート出世コース確定だ!ティナ!やったぞ!」

「っ!?」 

 

 ふ、ふおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

 た、ターニャが!わたしに、だだ、抱きついて……!

 お、落ち着いて……落ち着いて……落ち着いて……落ち着けるかぁ!

 ターニャのご機嫌を保ったさっきのわたしグッジョブです!

 

 しかし何なんですか、この可愛い娘は!

 一体わたしをどうしたいんですか!?

 やーばーいー。

 ターニャが愛おし過ぎてやばいです。

 もう何か色々限界ですよ!

 

 ……?

 あれ?あれれ?

 何ですこれ?

 何か視界がグルグルしますぅ……。

 

 その後も興奮さめやらない様子のターニャがわたしに何か説明していましたが、わたしはこれ以上彼女の言葉を受けとめる事が出来そうもありませんでした。

 せっかくのターニャの超可愛いチャンスだと言うのに、こんな所でリタイアするなんて不本意極まりないです。

 ああもう、わたしのバカ!

 でも、もう、ほんとに限界です。

 

 ああ、ターニャ。

 

 すみません。

 

 おやすみなさい。


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