(旧作)13番目の星座   作:ふくつのこころ

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私が好きなものを詰めた作品です。

一つ、難点があるとしたら、それは不定期というところでしょうか。

何処かの作品に似たところもあるかもしれませんが、それは無意識で出ているかと思われます。
そういうのを探すのも面白いかも?


プロローグ
ー始発、出発進行ー


十年前・薙払(なぎはらい)神社――――――――

 

「とらちゃん?」

 

神社の境内の中にある本堂に行くための階段に座るのは、黒髪パッツンの長髪の無表情な巫女装束の女の子、+αでこの百戸虎之介(ひゃっことらのすけ)

確か、この日は街から引っ越すちょうど前日の日の筈。

このときから、既にノーモア・フレンド(交友関係はこの子だけ)だった僕にとって唯一人よく遊んでいた子だった気がする。

 

昔から持っていた『人外』ばりのチカラ。

そのチカラがあったばっかりに、誰とも馴染めなかったし、近所の人も両親も俺に対して結構余所余所しかったりしたけど、この子さえ居てくれたら、当時の俺はソレで満足だった。

別れを言いにいくのが悲しくて悲しくて神社に来るまでの道のりで泣いていたのに、何故か彼女の顔を見たら安心してしまった。

 

『泣いていたはずの俺が自分の顔を見たときに泣き止んだ』。

僕が仮にあの子なら、何があったかなんて理解できやしないだろう。

いっつも無表情だから、寂しいと思われてるのかどうかとか、理解できているのかどうかは僕には分からないんだけれども。

 

「あした、ひっこすの?」

「うん。えっと、その、ありがとうな。あそんでくれて。」

 

僕は名前を知らなかった。

気がつけば一緒に遊んでいたし、特に彼女のことを名前で呼ぶことがなかったから、その必要がないと幼心ながらに思ったのかもしれない。それと対照的に彼女に名前を知られていたのは近所に住んでいて、僕の親代わりの保護者と彼女の親が僕の話をして、それを聞いて知ったのたかもしれないけどさ。

 

口から紡がれる言葉の一つ一つを搾り出すように話す僕を見て、彼女はクスッと笑った。

雪のように白い肌に整った顔立ち、そして頭のてっぺんにある包丁の刃のようなアホ毛。

 

まるでマンガの中から抜け出してきたかのような彼女は常に無表情であることが多いからこそ、たまに見せる笑顔は見るものすべてを吸い込むような美しさを秘めていた。

 

「そういえば、とらちゃん。わたしのなまえ、しらなかったよね?」

 

そう言うと彼女は立ち上がって僕の前に立ち、小首を傾げながら微笑んだままで僕に名前を教えてくれた。

 

「あらためて、わたしはなぎはらいじんじゃのみこの『         』だよ。なまえおしえるのおくれてごめんね?とらちゃんがひっこすまえのひになのるなんて、おぼえてもらえないかもしれないけど」

 

この瞬間まで知らなかったんだ、彼女の名前を。

このときに僕は初めて彼女の名前を知ったんだ。

学校の同級生が誰も彼女の名前を知らなかったし、誰も彼女とは関わっていなかったから仕方なかったかもしれない。

彼女がどこのクラスかなんて今じゃ、分かりもしないことだけれど、最も不思議だったのは()()()()()()()()()()()()()()ところか。

でも、よく考えてみたれば、ただ単に本当に知らなかっただけなのかも。

 

ほとんど言葉を発してなかった気がするし。

 

「そんなことないよ。まえのひにきいたからこそ、おぼえているかもしれない。だから、『   』ちゃん。そんなかおしないで?」

 

泣きそうにも笑っているようにも見える彼女の頬に手を当てて、僕はニッコリと笑って安心させるように言った。

我ながらイケメソである。

自分でもなんつーことを女の子にしてるんだ、と思うね。

 

「とらちゃん、だいすき」

 

近づいてくる彼女の顔。

は、はやい!?

この子の顔が僕の顔と重なるまで数十秒もいらないぞ!?

まさか、まさかのことだと思うが、僕はこの子にファーストキスを取られたのか!?

そして、いい雰囲気の中で唇を重ねたときに聞こえてきた謎の声。

 

「・・・け」

 

「・・・すけ」

 

「・・・のすけ」

 

 

「眠っている場合じゃあないぞ。お い、起 き ろ よ 百 戸 虎 之 介。」

 

誰かが僕を呼んでいる声がする。

いいところだってんのに、誰だよ空気読めないやつは。

『    』ちゃんを傷つけるってんなら・・・。

僕がこの手で・・・。

俺がこの手で・・・潰してやる。

『    』ちゃんを傷つけるやつを。

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ガタン、ゴトン・・・・。

走っている電車から見える窓は時間を早送りするかのように風景が移り変わるのが早い。

どうやら、俺は眠ってしまっていたようだ。

向かい合わせにしている座席から聞こえてくる寝息。

寝息のするほうに視線を戻すと、芦沢芹那(あしざわセリナ)が時折寝息で肩を上下させて肩まである銀髪を揺らしながら、眠っている。

彼女は三つ下の後輩なのだが、今回、俺が幼い頃に住んでいた薙払(なぎはらい)に帰るにあたり、何故かこの子は付いて来た。

 

「白ネコちゃんが浮気するかもしれないから、私も行く!あ、お前には拒否権とか有り得ないからな!?どうせ、私が居ないと寂しくて泣いて私の名前を呼んでしまうもんな!うんうん、別にいいんだぞ白ネコちゃん♪」

 

何いってんだ、コイツ?と転校することを教えた日には思ったものだ。それにニックネームがあまりにもおかしすぎる。

俺の苗字が『百戸(ひゃっこ)』だからって『白ネコちゃん(変化の仕方→ひゃっこ→ビャッコ→虎と言えばネコ→俺の髪の色は白→白ネコ)』にするとか、先輩に対する敬意とかを俺は別に期待していないんだけれど最低限はあって欲しいと思う。

いくら俺に対する態度が悪かろうと、だ。

 

『次は~反返(そりかえり)~反返~。反返の次は~域崎(いきさき)~』

 

独特の声のアナウンスが電車内に響く。

調べてきたところによると、薙払は域崎の次。ということはあとちょっとで到着する。

もうそろそろ、着くようだ。

 

「ん、もうすぐ着くのか。それにしても、芹那、ぐっすり眠ってやがる・・・」

 

顔見知りでそれなりに仲のいい先輩と一緒とはいえ、未踏の地を踏むことに対して芹那は何にも感じることがないのだろうか。

よく言えば緊張しない、悪く言えば・・・語彙力が乏しくて浮かんでこない。

隣の座席に倒れそうになった芹那の頭を支えるべく、俺はさっと移動して凭れさせてやることにする。

そのときに俺の席の隣に置いていた荷物を取り、右手で芹那の頭を制しながら床に置く。

奇妙な光景かもしれないだろうが、この際だから仕方ない。

 

反返(そりかえり)~、反返(そりかえり)~。』

 

キキーッ、とブレーキがかかって電車が停車する。

時刻は午後六時。

夏場の割りには日がほとんど沈みかかっていて、逢魔時(おうまがとき)の意味通りに妖怪とか出てきそうな時間が近づいているのだと思わされる。

駅は時間が時間だからだろう、帰宅ラッシュのサラリーマンで一杯だ。

お勤めお疲れ様です。

俺の肩で芹那を支えているので、このまま動くこともままならない。

枕さえ持ってきていたらよかったのだが、生憎俺が枕が変わって眠れないタチじゃないので枕の持参はしていない。

そもそも、枕を持っていく奴がいると言うのだろうか。

 

「やぁ、少年。此処、向かいの席大丈夫かね?」

 

俺に声をかけてきたのは壮年の男性。ナイスミドルと言ってもいい渋い声とパリッとしたスーツにオールバックのロマンスグレー。

知的な印象を見るものに持たせ、言葉と形は知っているけどあんまり見たことがないモノクルを左目にしている。

 

「あ、はい。場所とってしまってすいません」

「はは、気にすることはないさ。君の隣で眠っている子は彼女か何かかな?」

 

やっぱりか。

やっぱり言われると思ったよ、そりゃあそうだよなぁ。

付き合っても居ない女の子に対して普通、こんなことしないんだし。

 

「そういうのじゃないですよ!?この子は・・・兄弟みたいなモンです」

 

芹那自身がどんな風に俺を白ネコちゃんと呼んでいるのかは知らないけど、ここは無難に言っておくべきか。

肯定するほど深い仲、ってほどでもないしなぁ・・・・。

 

「それにしても彼女は君の横にいることに幸せを感じている。そう思わせるような笑顔だね?過去に何があったかは分からないが、何かに救われたような。そんなことを思わせるよ、第三者の私から見ても」

 

人生経験が俺より豊富だからこそ、言える台詞。

俺は上から目線で物を言われることが大嫌いだ。それは今も昔も変わることはない。

現に芹那との初めての邂逅でたぶん、彼女には「他人からの束縛を嫌い、そのために一人で過ごそうとするタイプ」と認識されていることだろう。

いや、それは芹那に限ったことではないことだ。

これまでの俺の半生に出会ってきた人間のほとんどが、全員が思ったといっても大袈裟ではないはず。

 

「そんなモンなんですかね?僕はエスパーじゃあないんでそんなことは分からないんですけど。僕と居て幸せだなんて、芹那が思っていたらそれはそれでアリかもしれません。可愛い後輩ですしね」

「惚気かい?いやぁ、若いモンだ」

 

男性は面白そうに俺の言葉を聞いて頷いている。遠い昔の青春の日々を思い出しているような・・・そんな優しい表情を浮かべながら。

可愛い後輩と言うのは芹那の前では禁句である。

『白ネコちゃんは私のもの』と抜かす彼女は物事を都合よく解釈するタチであり、俺が可愛いとか大事だとかをヤツの前で言おうものなら人目を憚らずに頬擦りをしたり抱きついて来る。

迷惑この上ないっちゃありゃしない。

 

「名乗り遅れたね。私はランドルフ・カーター。趣味で民間伝承やらを調べている。」

「民間伝承、ですか。といいますと金太郎とか力太郎とかその辺ですかね?」

 

男性―――――カーターさんが自己紹介とともに渡してくれた一枚の名刺。

『民間伝承研究会会長:ミスカトニック大学教授ランドルフ・カーター』

白地のカードに書かれた肩書きと名前。

携帯の電話番号もメールアドレスも住所も書かれていない、自宅の電話番号を除けば殆ど白紙のようなものだった。

情報化が進んだ現代、携帯電話の普及も多くなり逆に携帯電話を持っていない人間のほうが少ないだろう。カーターさんは携帯電話が嫌いになるほどに機械音痴なのだろうか。

それにしても、ミスカトニック大学か。どこかで聞いたことがあるような名称だけど・・・はて、何処だったか。

 

「あ、僕は百戸虎之介と言います。」

「トラノスケくんか。よろしく」

 

差し出されたカーターさんの右手。

俺は頭は良くないほうだけど、どうすればよいかだなんて分かっているつもりだ。

カーターさんの右手を俺の右手で握り力強く握手した。左手で応えなかったのは左手で握手するのは「喧嘩しようぜ!」という意味だったのを聞いたことがあるから。本当かは分からないけど。

 

「トラノスケくん、君は夢についてどう思う?」

「夢、ですか?そうですねぇ、記憶の整理ですかね?」

 

元々俺が知っていたとかではなくて本で読んだだけのことなんだけど。

特に俺、TSUEEEEEEEEE!の出来る明晰夢という物を見ようとしたけど意識しては見れないということに気づいたのは良い思い出。それよりカーターさんはどうしてそんなことを聞こうと思ったのだろうか。

 

「Exactly(その通りでございます)。その考えもいいが、私にとっては現実では体験できないことをさせてくれる世界だと思うね。私は夢を見るのが毎晩の楽しみでね、書類整理しているときですらウトウト居眠りしてしまうんだ」

「それでどんな夢を見るんですか?」

「そうだね、私がよく見る夢は『域崎~、域崎~。域崎の次は終点・薙払~~』・・・おや、着いてしまったようだ。」

 

ああ、そうか。反返の次は域崎だったもんな、そろそろ着くのか・・・。

て、カーターさんは終点まで乗らないのか!?

電車に一駅だけ乗るってどれだけの金持ちなんだよ・・・。

 

「それではトラノスケくん。彼女さんとしあわせに、な」

 

域崎駅に到着してカーターさんはさっ、と立ち上がり荷物を持って口端を二ヤリと吊り上げてこちらを見てから足早に立ち去っていった。

一番、俺が突っ込むべきだったのかなと思ったのは

 

「カーターさん、日本語上手いよな」

 

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