聖戦士伝説 ~カ・オスの聖戦士~   作:早起き三文

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29話 絆持つ者達

「苦労でありました、女王」

 

ラウの国王であるフォイゾンが目の前の少女に声をかける。

 

「いずれは大決戦となりましょう」

 

ナの国の女王である「シーラ・ラパーナ」はそう言い、言葉を続ける。

 

「ゴラオンは?」

 

「あと3年ほどで」

 

フォイゾンが指を折りながら、隣の席の女王に答える。

 

「オーラ・ノヴァを掠め取れた」

 

フォイゾンがシーラの羽を見ながら答える。

 

「リの国から?」

 

「で、ある」

 

フォイゾンは少し自慢気に話す。

 

「リとは戦えるか?」

 

「きゃつらが今さら、アから離れる事はないでしょう」

 

「ケム、ハワは?」

 

「どうもアの国派が優勢であるみたいであるなあ……」

 

フォイゾンは団子を食べながら、聖女王に答える。

 

「劣勢ではあるな」

 

シーラは軽く呟く。

 

「ウロボロスは解析されたでしょうに……」

 

「数の話である」

 

シーラは紅茶を飲みながら答える。

フォイゾンはそれに答えない。

 

「ドレイクとて、明らかに老いております」

 

シーラがそうはっきりと言い放つ。

 

「以前ほどの野心はないと?」

 

「あれば、フラオンを弑しておりましょう」

 

フォイゾンは再び団子を口にほおりこむ。

 

「フォイゾン王とて若くはない」

 

「儂は若い」

 

「ホウ……」

 

「床の欲が衰えん」

 

その言葉にシーラは苦笑する。

 

「力強き王よ」

 

「可っ!可っ!可っ!」

 

フォイゾンは大笑する。その笑い声を心地好く聞きながらナの女王は訊ねる。

 

「ヴェルバインな? どうであるか?」

 

「女王よ、感謝する」

 

フォイゾンがシーラに頭を下げる。

 

「ボチューンの改良は?」

 

「完了してある」

 

シーラは紅茶を飲み干して、白き羽を拡げた。

 

「リーンの如き翼であるか?」

 

「違うな。不可解な物である」

 

「ふむ……」

 

「だが、力ではある」

 

「であるか……」

 

フォイゾンは少し複雑な顔をした。

 

「ゴラオンも同じであるな」

 

シーラはその言葉に強く頷いた。

 

 

 

「ナの地上人である」

 

ラウの中庭で、シーラの侍従であるマフメットがナの聖戦士達を紹介する。

 

「ジェリル!?」

 

「フェイ・チェンカ!?」

 

二人の男女の声があがる。

 

「知り合いかい?」

 

アレンが訊ねる。

 

「昔の男だよ!!」

 

ジェリルがにやつく。

 

「忌々しい女め!!」

 

フェイが憎々しげにジェリルを睨む。

 

「何をやったんだ?」

 

ニーが興味がある風情で訊ねる。

 

「情けない男であるよ!!」

 

「なんだと!!」

 

ジェリルにフェイが噛みつく。

 

「ナニが無いに等しい!!」

 

「このアマ!!」

 

「おやめなさい!!」

 

リムルが二人を止める。

 

「ナの国に閉じこもっていな!! フェイ!!」

 

ジェリルはそう言ったあと、さも面白そうに笑いながら去っていった。

 

「フェイ?」

 

アレンはフェイの顔を覗き込む。

 

「だから女は!!」

 

フェイの目から光る物が流れ落ちる。

 

「だから、男か!?」

 

「そうだよ!!」

 

フェイは涙目で叫んだ。

 

「なんだよ、この地上人は……」

 

ニーは呆れた顔でナの聖戦士を見た。リムルはさっきから笑いをこらえている。

 

「フェイを笑うな!!」

 

マフメットが居合わす者たちに怒鳴る。

 

「女……!?」

 

フェイは彼女をしげしげと見つめた。

 

「言い返すがよい!!」

 

マフメットがフェイを睨む。

 

「いや……」

 

フェイは首を振りながらマフメットに顔を向ける。

 

「謝……」

 

その言葉にマフメットは少し戸惑ったようにフェイから顔を背ける。

アレンはその二人をタバコをくわえながら、笑みを浮かべて見守る。

 

(主よ、この二人を祝福したまえ。そして守りたまえ……)

 

アレンは胸の内でそう十字を切った。

 

 

 

「聖戦士の子であるか?」

 

「はい」

 

噴水のある庭園でマーベルは娘をシーラの腕の中に渡す。

 

シーラ女王は背中の羽を輝かせながらその赤子を腕に抱えた。

 

「とっ…… とっ……!」

 

シーラは慣れない手つきで赤子をあやそうとする。

 

「女王……」

 

ショウはその危なっかしい手つきを不安げに見ている。

 

「善き子である」

 

シーラはその赤子をあやす。

 

フギャアア……!!

 

赤子が泣き出した。

シーラは助けを求めるようにマーベルを見やる。

 

「はいはい……」

 

マーベルは娘を自分の腕に抱く。

 

「全く……!!」

 

ショウはシーラを呆れて見る。

 

「羽が生えているくせに!!」

 

チャムが馬鹿にしたようにシーラの回りを舞う。

 

「レン!!」

 

シーラは傍らの親衛隊長であるレンに顔を向ける。

 

「無礼な聖戦士達とそのフェラリオである!!」

 

レンはシーラのしかめ顔に苦笑いをする。

 

「聖戦士の赤子は?」

 

「善き子であるよ!!」

 

シーラの羽が緩やかに振れる。

 

「レン・ブラス殿」

 

ショウがレンの目を見る。

 

「シュンジ王の部下だったんだってな」

 

「元はリの騎士でありました、聖戦士」

 

レンはショウの顔を正面から見やる。

 

「戦えるか?」

 

「自分はナの騎士であります。ラウの王太子であらせられる聖戦士」

 

レンは世間の評判を言った。

 

「フォイゾンが俺をつなぎ止める為の方便だよ……」

 

ショウはその世間の噂を一笑する。

 

「しかし、聖戦士どのの剣はリーンの物でありましょう?」

 

レンはダンバインの日本刀オーラソードの事を言った。

 

「単なる意匠だよ、レン殿」

 

笑いながらショウがタバコに火を付けようとする。

 

「少し吸ってくる」

 

ショウはマーベル達から少し離れていった。

そのショウをチャムが追いかけていった。

 

「レン」

 

シーラの羽が揺れる。

 

「奥方は?」

 

「先月、事切れました」

 

レンの顔が曇る。

 

「病弱でありましたから」

 

レンはそう言いながら、マーベルが抱えている赤子を見つめる。

 

「欲しいものでありました」

 

「……」

 

シーラの羽が少し陰ったように見える。

 

「レンさん……」

 

話を聞いていたマーベルがレンの顔を見る。

 

「御子をお大事に」

 

レンはそう言い、立ち去る。

 

「善き戦士である」

 

シーラが呟く。

 

「そのオーラも腕前も、そして心根も聖戦士に匹敵する」

 

遠くでタバコを吸っているショウを見ながら、シーラは微笑んだ。

 

 

 

「王」

 

きらびやかな夕陽が照らすラウのバルコニーでゼラーナ隊の女性騎士「キーン・キッス」がフォイゾン王に花が開いたような笑みを浮かべる。

 

「いつ、私と褥を?」

 

「小娘が……」

 

フォイゾン王が苦笑する。

 

「私はジェリルのよりもよくてよ?」

 

「儂はジェリルとはもう寝ることはない」

 

「飽きたのですか?」

 

「それもあるが」

 

フォイゾンは酒に手をつけながらキーンの顔を見る。

 

「娘とか思えるような女と夜を共にできるかよ……」

 

フォイゾン王はそう言いながら笑う。

 

「そんなにあの地上人がいいんですか?」

 

「不幸な生い立ちの娘である」

 

フォイゾンは酒をコップに注ぎながら微笑む。

 

「しかし、善き娘であるよ」

 

夕陽が辺りを赤く染める。

 

「儂からは子や孫達が何故か離れていく」

 

フォイゾンは酒をグイッと飲み干す。キーンが老王に酒を注ぐ。

 

「善きかな……」

 

フォイゾンは傍らの皿にある豆を口にほおりこむ。

 

「死んだ息子や娘があの聖戦士達に似ているのだよ」

 

「ショウやジェリルが?」

 

「おう……」

 

しばし沈黙する二人。

 

「パットフットやエレも儂から離れた」

 

フォイゾンは呟きながら酒を再び飲む。

 

「あれだけ女を作り、子をもうけたというのにだ……」

 

老王の双瞳から涙がこぼれる。

 

「地上人であるジェリルは儂を父と呼んでくれた……」

 

遠くで鳥が鳴く声が聴こえる。

 

しばしの間の後、フォイゾンは子供のように肩をならし、慟哭し始める。

 

「ウォ…… ウォ…ォォ……!!」

 

「王……」

 

キーンは年老いた孤独な王の肩を撫でてやる。

 

「儂が……!! 何をしたと……!!」

 

「私はあなたから離れませんよ……」

 

「ウォ…ゥ…… オォ……!! オォォ……!!」

 

夕陽が二人を強く照らした。

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