新たな世紀王になってしまった俺が神喰いの世界を駆ける 作:カオスロイドR
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それでは12話始まるよ。
フェンリル極東支部、最上階にある支部長室。
支部長室にはソファーやテーブル、壁の近くの少しの装飾品が並べられており一枚の絵が飾られている。
そしてヨハネスが座っている支部長の椅子の後ろに地球儀と数冊の本、そして壁半分を覆う大きなフェンリルの紋章が掲げられていた。
「そうかライダー君はリンドウ君と新型使い二人のミッションに同行して行ったか」
ツバキの報告を肘を机に付け腕を組んで聞くヨハネス。
「最初はどうなるかと思ったが報告書を見る限り彼は皆に受け入れられているようだな」
「そうだね彼はあの外見の所為でずいぶん苦労したようだからよかったよ」
ヨハネスが読み終えた報告書をツバキの横にいた榊が手に取り目を通す。
「彼女も驚いているだろうね、なにしろ今まで信じてきた常識が覆されるのだから」
楽しそうに笑う榊。
「…そうでしょうね、私も初めて報告を聞いたとき信じられませんでしたから」
そんな榊を見て悪趣味と思い呆れるツバキ。
だが榊の性格を知るツバキとヨハネスはいつものことなので大して気にしていない。
「最初はどうなるかと思っていたが彼が受け入れられているようでよかった。何しろ君を筆頭に彼に対する不信感があったからね」
「確かに今の彼は少しづつだけど受け入れ始められている。特にツバキ君はよく彼のトレーニングに付き合ってるらしいじゃないか、どういう心境の変化だい?」
ライダーがアナグラに来た頃、ツバキのライダーに対する視線が不信感の塊だったを思い出し訪ねる榊。
「…確かに奴は人は違う姿をしています…そして私は奴のその容姿と能力に警戒心を持ったことは事実です、しかしそれは極東支部を守るためであり今もその時の判断は間違っていなかったと思っています。ですが今は奴の根が真面目だから少し認めただけです」
「すまない少しからかいすぎたようだ許してくれ。君が教え子を心配していること分かっている」
「私もまだまだ未熟でした。リンドウのいうとおり奴は改造されたとはいえ人の心までは失っていないようです」
「かつてのこの地域のことわざというのにあった百聞は一見にしかずって奴だね」
自分の軽率な言葉にヨハネスが謝罪し、日本と呼ばれていた頃の言葉を思い出す榊。
「ツバキ君…ライダー君の事を引き続き任せる…以上だ、下がってよろしい」
「了解しました、失礼します」
一礼してツバキは退室する。
「しかし彼を改造したという組織って何者なんだろうね?」
「少なくとも本部ではないな。だが確実とはいいきれん…あそこは魑魅魍魎の巣窟だ。我々のあずかり知らぬ所でなにか企んでいるかもしれん。もしくはフェンリル以外の組織が失われていた過去の技術を見つけそれを彼の体内に施した可能性がある…いずれにしろ彼の処遇は今は現状維持でいいだろう」
「……そうかい、じゃあ僕は仕事に戻るから失礼させてもらうよ」
榊も支部長室から出て、扉を背に上を見上げる。
(今は…ね、つまり段階が進めば彼の身が危険になるかもしれないな…特にアラガミに対する対抗策を独占していることで数少ない資源を管理している本部とってその独占に亀裂を生じようとする彼の能力は邪魔でしかない…そのとき彼とここにいる神機使い達はどう動くのだろうね…そしてヨハン…君がやろうとしている事を知った時も……)
榊はライダーとヨハネスのこれから起こるであろう出来事に一抹の不安を覚えるのだった。
その頃『贖罪の街』と呼ばれる旧ビル街を巣にしている研究サンプルとして監視をしていたアラガミ『シユウ』2体が捕食の兆候を見せ始めた為、始末するべく雨宮リンドウ、神咲ユウカ、新人のアリサ・イリーニチナ・アミエーラ、そして我らが仮面ライダーBLACKは現場である贖罪の街に急行していた。
(本当に神機を持ってこないなんて・・・)
ミッションに向かう道中、私、アリサ・イリーニチナ・アミエーラはロシア支部から極東支部に配属され、苛ついていた。
なんでいくら激戦区とはいえ新型の私がこんな世界の最果ての地に来なければならないのかと。
それに極東のゴッドイーター達は不真面目で本当にこれが私と同じ選ばれたゴッドイーターなのかと信じられなかった。
そして極めつけは私達の乗るジープに奇妙なバイクで並走している男だ。
見た目も黒いジャケットと黒いズボンと赤いマフラーをして頭にアラガミの所為で今は少なくなった虫のような仮面を被っている。
ふざけた格好をしている上にもっとも許せないのがアラガミを神機なしで殺せるなんて子供でも分かる嘘をついてる事だ。
私はパパやママの仇をとる為に苦しくて辛い訓練に耐えてきた。
ゴッドイーターをバカにするのもいい加減にして欲しい。
アラガミは銃やミサイルなどの通常兵器さえも通じない。
それを素手で殺すと言い張るなんて…。
絶対に化けの皮を剥いでやる。
「どうしたアリサ、さっきからライダーの方をじっと見てるがそんなにあいつが気になるのか?」
そう言うのはヘラヘラしながらジープを運転している第一部隊でリーダーをしているリンドウという男。
私になれなれしく話しかけてきたコウタって人もそうですけどあなたもゴッドイーターとしての自覚ないんですか。
これだから旧型は。
教えてあげますよ、旧型の時代は終わってこれからは新型の神機使いの時代だってことを。
(いくらなんでも嫌われすぎだろう…)
先ほどからこっちを睨んでいるアリサの殺気に耐えながらバトルホッパーを運転し思わずため息が出そうになる。
これから先彼女とうまくやっていけるのかな。
不安になりながらも現場に到着した僕達はアラガミから見えない岩山の陰でミーティングを行う。
・・・相変わらずアリサが凄い眼でこっちを睨んできてるな。
そりゃ僕が神機を持ってきてないから不思議に思うかもしれないけどさ。
正直やりづらい。
「さ~て今日もいい仕事日和だ。無事に生きて帰ってくるように以上」
そんな僕の心境を知ってか知らずかリンドウさんはいつもの口調でミーティングを始める。
と思ったらすぐ終わった。
「え、それだけなんですか?」
さすがに短すぎのような。
もっとこう相手の特性やそれに対処する各自の動きを相談するとかないんですか。
前に一緒だった第二部隊のタツミさんですら作戦とかあってもう少し長かったですよ。
「サクヤさんも言ってたけどリンドウさんこういう人なの…言うことにいちいち気にしてたら身が持たないそうよ」
ユウカが苦笑して僕に話しかける。
前にも同じことがあったのか。
「いい加減ですね」
呆れた表情のアリサ
はっきり言うなこの子…。
「二人を除いて心が一つになってるようでなによりだ」
う、すみません…
ダメだな、これから協力しないといけないのに。
「ハハッ…冗談だって、そんな悲しい顔すんな」
相変わらず感覚が鋭いのか僕の気持ちを察して笑いながらフォローを入れる。
仮面で顔が隠れて表情は見えないはずなんだけどな。
「期待の新型使いが二人も入って初の任務だがあんまし気張らずにまあいつもどおりにやれってことで」
今日の任務は本部に報告する新型神機同士の共同運用データの収集も兼ねている。
これが成功すれば新型使いはどんどん増えるらしい
とりあえず邪魔にならないようにしないと。
「じゃあ命令はいつもどおり3つ」
3つか…どんな命令か知らないけど気を引き締めないと。
「死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ、運がよければ不意をついてぶっ殺せ…あ、これじゃ4つか?」
なんてシンプルで分かりやすい命令…。
しかも数間違えてるし。
でもリンドウさんらしいな。
冗談を交えて緊張を解そうとしているのか。
「まあとにかく生き延びろ、それさえ守ればあとは万事どうにでもなる」
生き延びればどうにかなる…か。
そうですね、生き延びれば僕の体をこんな風に改造したあの神を一発ぶん殴ることができる。
「旧型は旧型なりの仕事していただければいいと思います」
「はっはっは…せいぜい期待に沿えるように頑張ってみるさ」
うわあこの子上官相手によくそんなことを言えるな…怖いもの知らずかそれともただの無謀なのか。
リンドウさん実力を知ってたらそんなセリフは絶対言えないよ。
言われた当の本人のリンドウさんも気にしてないのか我慢してるの表情と態度からは分からないけど余裕だな。
生意気な後輩の態度も軽く受け流す。
これが大人の貫禄って奴なのかな。
「キャア!」
リンドウさんがアリサの肩を軽く叩くとアリサは悲鳴を上げその場から飛びのく。
「…ずいぶんと嫌われたもんだな」
これは傷つくな…。
そりゃ異性にいきなり触られたからってそんなに過敏に反応しなくても…
「アリサ、大丈夫?」
ユウカが慌てて声をかける。
「リンドウさん…さすがにセクハラはちょっと…」
ユウカの蔑むような視線がリンドウさんを貫く。
当事者じゃないけどこれは結構きついものがあるな。
「え!?い、いやいやそんなつもりはないって!」
ワザとじゃないにしてもこうなった場合ってどうしても男性の方が立場が悪くなるよね。
僕も気を付けよう。
「あ…す、すみません!なんでもありません、大丈夫です」
「んーそうだな、よしアリサ」
急にリンドウさんが右の人差し指の先を上に向ける。
「混乱したときはな空を見上げて動物に似た雲を見つけてみろ落ち着くぞ、それまでここを動くな…これは命令だ。そのあとこっちに合流してくれいいな」
「な、何でわたしがそんなこと…!」
「いいから探せ、な?」
ニカっと笑顔でリンドウさんがアリサに笑いかけたあと僕の方に近づいてくる。
「あとライダーお前も残って一緒に探してやってくれ、アリサを一人置いておくわけにはいかないからな」
そう言いながら神機を持っていない左手で僕の耳を触るリンドウさん。
アリサが一人で平気だと文句を言っているがリンドウさんは相手にしていない。
「僕もですか?分かりました…それにしてもあんなことがあったばかりだというのにそれでも僕に触れるなんてリンドウさんもしかしてそっちの趣味も…」
そう言うとサッとリンドウさんから距離を開けるユウカとアリサ。
「…ドン引きです」
「リンドウさん、好みは人それぞれですのでなんとも…」
「お、俺にそっちの趣味はねえよ!」
先ほどの冷静な態度と打って変わり慌てて否定する。
「冗談ですよ」
初対面の時からやられっぱなしなのでたまには仕返ししないと…。
それにリンドウさんが本当に好きな人は見てたら分かりますよ。
「…ったく、ほんとかわいい後輩たちだぜ。よしおしゃべりはここまでだ。ユウカ俺たちがまず先に行くぞ」
「はい!」
二人が滑り降りていく出発した。
「なんで私がこんなことを…」
文句を言いながらも命令通り空を見て雲を探している。
僕も探し始めるか。
センシティブイヤーをONにしながらね。
さっきリンドウさんが僕の耳に触れたのはそういう意味なんだろうな。
僕らから数メートル離れたリンドウさんとユウカが聞こえる。
普通の人間では声が聞こえない距離だが僕ならはっきりと聞き取れる距離だ。
「あいつのことなんだがな…どうも色々ワケアリらしい、まあこんなご時世…皆いろんな悲劇を背負ってるっちゃあ背負ってるんだが…」
なるほど確かにアリサにはあまり聞かれたくない内容だな。
これならわざとアリサに離れるような命令を出したのをうなづける。
「同じ新型のよしみだ…あの子の力になってやれ、いいな?」
「はいもちろんです」
「うっしいい返事だ、じゃあ行くか!…って靴紐がほどけちまってるな…悪い先に行って偵察してきてくれ、結び終わったら俺もすぐ向かうからよ」
「了解」
ユウカの足音が遠ざかっていく
「…あとライダー聞いてたんだろ?お前にもあの子の事を頼む、なんだかんだであの子がアナグラの中でいい意味でも悪い意味でも一番注目してんのがおまえさんのようだからな」
あ、やっぱり聞いているのに気づいてましたか。
分かりましたよリンドウさん。
僕も力になれることがあったら協力します。
「さっきからボケっと立っていますが真面目に探しているんですか、私は早くこんな命令終わらせて合流したいんです」
「あ、はいすみません」
こんな調子だけど僕はアリサと仲良くやっていけるのだろうか。
つづく