新たな世紀王になってしまった俺が神喰いの世界を駆ける 作:カオスロイドR
本当に申し訳ない。
それでは16話始まるよ。
【ユウカside】
(コウタってああ見えて結構複雑な事情を抱えてたんだな……)
榊博士の講義が終わりコウタは部屋に戻り私、神咲ユウカは同僚のライダーと一緒に講義内容をアリサに伝える為にエントランスに向かっていた。
今日の講義の中で私はコウタの家族が外部居住区に住んでいて家族を養う為にゴッドイーターに志願したというコウタの意外な一面を知った。
普段のコウタは明るくすぐふざけて場を和ませるムードメーカー。
初めて会った時もいきなりガムを進めてきたけど最後のガムはもうコウタの口の中だったという抜けている所があり、俺の方が少し先に来たから先輩だなといってきたりと正直第一印象が『何この人?』って感じだった。
その後、エントランスやミッションで会ったりするたびにサクヤさんの好きな人って誰なんだろうなと話してきたりどっちがアラガミを多く狩れるか勝負を申し込まれたりとアリサの言葉を借りるなら少し浮ついたなにも考えていない人なんだなと思っていた。
けどそれは私の勝手な思い込みでそんな浅はかな考えを恥じた。
コウタにも背負っている大事な存在があったのだから。
私は、とある村の出身だった。
村といっても極東支部の外部居住区に住むことができなかった何組かの家族が寄せ集まって廃材を積み上げただけの粗末なバリゲードの中であばら家を建てて生活している小さな集団だった。
私は孤児で赤ちゃんの頃にかごの中に薄い毛布にくるまれ村の入口に放置されていたらしい。
理由は分からないが食べ物も少ない時代だ。
口減らしの為に捨てられたのだろう。
村の人たちは厄介者だと見捨てようとしたけど一組の夫婦が育てると名乗り出る。
私を拾ってくれた夫婦は子供を流行り病で失い、自分達も元々身体が弱くもう子供が作れないと宣告されていた。
赤ん坊の私に子供の面影を見て身代わりだといじめてくる男の子がいて泣かされていたけど……でも、そんなこと関係なかった。
泣いてたらいつもお母さんがギュっと抱きしめてくれた。
私はそれが嬉しかった。
捨てられた事は辛くないといえば嘘になるけど、でもそれ以上に私は本当の父と母のような愛情を受けて成長し幸せに暮らしていたのだから。
けどその幸せは突然を終わる。
住んでいた村をアラガミが襲撃してきたのだ。
「バリケードが食い破られたぞ!」
「もうだめだ!うわああ!!」
「にげ…ギャアアア!!」
「神さま!!!!」
襲って来たのはオウガテイルの群れ。
当時の力のない子供だった私と武器を持たない村人では脅威の存在だった。
村人は抵抗もできずただなすべもなく蹂躙されていく。
外から悲鳴や建物が壊される大きな音、恐ろしいアラガミの鳴き声が聞こえる中。
私は両親と一緒に家の中に隠れていた。
怖い、怖いよ…誰か助けて…
神様…。
お父さんは裏口の扉を少し開けて辺りを見回し、お母さんは金庫から必死に食料を出してカバンに詰め込んでいた。
食料はなによりも貴重だからどの家も奪われないように金庫に締まっている。
それがこの村の常識だ。
でももうそんなこと言ってられない事態になっている。
アラガミにとったらこんな金庫なんか簡単に噛み砕いてしまうのだから。
「いいか?このカバンを持ったらなにがあっても私達に構わず行くんだぞ」
「静かになったら裏口から出て行きなさい、いいわね」
お母さんがカバンを渡して怖くて振るえる私をいつもみたいに優しく抱きしめる。
そして今日はお父さんも一緒に力強く抱きしめてくれた。
泣いていたらいつもしてくれる。
今日はお父さんも一緒だ。
いつもより暖かいな。
そう思うといつのまにか振るえが止まっていた。
「お父さん達も一緒に逃げようよ!」
「身体か弱い私たちがいたら足手まといになる、だからおまえだけ逃げなさい」
「いや…私もお母さん達と一緒がいい!」
私は二人がやろうとする事を理解してしまい泣きながら父と母の袖を掴んで止めようとする。
「ここは危ないの分かって」
「ユウカと一緒にいたこの数年間は私たちは幸せだったよ、だから私達の分まで生きて!」
袖を掴んでいた私の手から力が抜けて袖から離れゆっくり下ろされる。
二人の意思は固く止められなかった。
「今ならこちら側にはアラガミはいない、さあ行くんだ!」
父と母が裏口の扉を開けると私は外に突き飛ばされた。
『……』
『……』
『『………』』
私は慌てて扉に駆け寄ろうとしたけど父と母のいつも見ていたあの優しい笑顔で私にある言葉を残しながら扉は無常にも閉ざされた。
「お父さん……お母さん……」
涙を必死に抑え、家に背を向けて走り出した。
「……行ったか?」
「……ええ」
「あの子は幸せになるだろうか?」
「なる決まってますわ、だって私達の娘ですもの」
「そうだな、自慢の俺達の娘だ!」
「…愛しているぞ」
「ええ、私もよあなた!」
二人が玄関を開けるとそこには三匹のオウガテイルがこちらを振り向く。
「さあこっちに美味そうなエサがあるぞ、来い!」
「そうよ、こっちよ!」
お父さんとお母さんは畑仕事用の鍬や鎌を持って自ら囮となりアラガミから私を逃がしてくれた。
私は振り返ることなく夢中で走り遠くまで逃げて気がついて振り返ると村のあった方向から黒い煙が立ち上っていた。
村は滅びた…。
なにもかも無くなった…。
美味しいお菓子を作ってくれた近所のおばさんも……。
一緒に遊んだ友達も……。
私をいじめた男の子も……。
私の家も……。
悲しかったり楽しかった思い出も……。
そしていつも温かくおかえりって迎えてくれたお父さんとお母さんも……。
なにもかも……。
『逃げろ!ユウカ!』
『生きなさい私達の分まで』
『『愛する我が娘よ!』』
最後に見た父と母の笑顔と言葉を思い出す。
私は二度目の家族とあの温もりが永遠に失われた事を頭で理解して実感し声にならない叫ぶを上げた。
その後、アラガミに村を滅ぼされて両親を失った私はショックと疲労で倒れていた所を巡回中のゴッドイーターに拾われて保護される。
保護され極東支部に運ばれた時、私に神機使い適正があると言われた。
もう少し早く私に神機使い適正があると分かっていればお父さんとお母さんを安全な壁の向こうに避難させて育ててくれた恩返しができたのに…。
やっぱりこの世界に優しい神様なんていやしない。
いるのは人に害をあだなす偽りの神様だけだ。
ならそんな神様はすべて滅ぼそう。
生きてほしいと願った両親の意思に背く事になるかもしれないけど……。
私は生きる為にそして同じような境遇を減らせればと思いアラガミに対する憎しみを胸に秘めて泣きながら志願した。
そして今、神咲ユウカは極東支部で人類の敵アラガミを狩るゴッドイーターとしてここにいる。
そして現在。
私は歩きながらちらりと横目でもう一人の同僚を見る。
仮面ライダーBLACK。
バッタような仮面と服の上からでも分かる筋肉質な体。
神機なしでアラガミと戦える規格外な存在。
過去の経歴は年齢以外は一切分かっていない。
本当に私と同じ16歳だなんて信じられないけど…。
鉄塔の森にいた所を保護してそのままフェンリル入りしたという人物。
彼にも何か言えない事情があるのかな。
「どうしたの?」
「え?ううん、ねえコウタの事知ってた?」
講義の時、両親が生きているコウタの話を聞いてつい羨ましいと思ってしまった。
コウタを妬んでも仕方ないのに。
嫌な子だな私。
「…いやただシユウ討伐のミッションの時にリンドウさんがアリサの態度を見てこんな時代だから誰かしら何か背負って生きていると言っていたからコウタもアリサと同じようにゴッドイーターに志願した理由がなにかあるんじゃないかと思っていたけどね」
「リンドウさんが…そっか…」
そうだよねアラガミの所為で不幸になったのは私だけじゃない。
アリサの目を見てれば分かる。
あれは私と同じ大切なものを奪われた目だ。
一時期の私もそうだった。
けど私を保護してくれた神機使いの人や支えてくれたアナグラの職員さん達がいたから悲しみから立ち直れた。
私を支えてくれた人達のように今度は私がアリサを支えられる人になりたい。
悲しみを誤魔化す為にただアラガミと戦って狩り尽くす存在だけになるのは辛すぎるから。
だからアリサが話してくれるまで私は信じて待ってるよ。
つづく
選ばれたコウタの家族と選ばれなかったユウカの両親。
同じ養子でも愛を与えられたユウカと与えられなかったBLACK。
そんな対照的な四人をテーマにした今回の話。