新たな世紀王になってしまった俺が神喰いの世界を駆ける 作:カオスロイドR
フェンリルに所属してから数日が経ち、僕は新人ゴッドイーターがフェンリルに配属してすぐに受ける基礎体力の強化と基本戦術のカリキュラムを受けていた。
何でアラガミを倒してきた僕が今さらアラガミを倒すカリキュラムを受けているのかと思う人がいるだろう。
現にコウタとユウカにもそう言われた。
でも駄目なんだ。
我武者羅だけじゃこの先を生き残れない。
なぜなら素人の僕はアラガミや神機使いの事、力の使い方に関してまったく知識が無いからだ。
前半の二つはとにかく力の使い方というのは例えば一人で五体のアラガミを相手にするとしたらどうすればいいかと聞かれたとしよう。
答えは簡単だ。
四体倒して余力を残した状態のまま最後の一体を倒す。
これが模範解答だろう。
だが現実は計算式のようにそう簡単にはいかない。
アラガミと一言で言っても種類は多く小型から大型の大きさ、火や水や雷や毒針などの攻撃方法、そして強さも多種多様だ。
例えば最初から全力でいって強い四体を倒せたとしてもスタミナが無くなり疲労で動きが鈍った所を最後の弱い一体目に潰されてしまうかもしれない。
また不測の事態として六体目が現れる可能性があるかもしれない。
つまりいかに力を温存しつつ己の力を理解して一番弱いアラガミを見抜き、弱点を突いて効率的に倒す術を学ぶ為にカリキュラムを受けることにしたのだ。
昔の人は言っていた。
敵を知り己を知れば百戦百勝
実際その通りだと思う。
知識による想像力は力だ。
想像力が増えればそれだけ対処方法が広がる。
これは極東支部に来る前にあった半年間のサバイバル生活でアラガミとの闘いで殺されそうになりながらもピンチを切り抜けて導き出した答えだ。
午前中は講師に榊博士を迎え、博士の研究室でのアラガミの生態に関する講義を受ける。
これには僕の他にコウタとユウカも参加していた。
「さて、いきなりだけど・・・ライダー君はアラガミってどんな存在だと思う?」
「誰かが人工的に造った生物兵器の生れの果てかなと思ってます」
榊博士が訪ねてきたので思っていた事を素直に応える。
「なるほど実に面白い発想だね」
「いやいや発想がぶっ飛びすぎだろ」
「そうよ一般的には『人類の敵』『絶対の捕食者』『世界を破壊するもの』って認識されてるのに生物兵器って誰が造ったって事になるし造った人はまともじゃないわ」
コウタとユウカは納得できないようだ。
でもまともじゃないから例え神様でも善悪とか倫理感とかなしで命を弄ぶ行為を平気でやれるんだよ。
まあ実際に体験してみないと分からないから仕方ないか。
「いやいやライダー君もユウカ君も認識としては間違っていない、むしろ、目の前にある事象を素直に捉えられている」
「でもさすがに生物兵器はさすがに・・・」
「じゃあ、ユウカ君は何故どうやってアラガミは発生したのか?って考えたことはあるかい?」
「なぜ発生した・・・ですか?・・・すみません考えたこともなかったです、突然世界各地に現れたので・・・」
「そう君達も知っての通り、アラガミはある日突然現れて爆発的に増殖した。まるで進化の過程をすっ飛ばしたようにね」
だからあえて生物兵器だと言った。
どう考えても進化論を無視してるから自然に発生したとは考えられないからな。
「ふあああああ・・・なあなあ、この講義なんか意味あんのかな?アラガミの存在意義なんかどうでもよくね?」
講義に飽きたコウタがつまらなさそうにボヤいている。
けどなコウタ、知識は応用して工夫すれば弱点を探す武器になるんだよ。
特に命懸けな神機使いならなおさらだ。
なにがどう役に立つか分からないから覚えていて損はない。
それに誰にも話す気はないけど別の世界から来た僕が世界に来た時はすでにアラガミは存在し世界は荒れていたんだ。
だからアラガミの存在意義には興味がある。
「コウタ、マジメに聞きなさいライダーの邪魔になるでしょ」
「そうかね?アラガミには脳がない心臓も脊髄すらもありはしない」
「「うわ!」」
榊博士がいつのまにコウタに近づいていた!
え?クロックアップ?ポーズ&リスタートしたの?
いや違うな、改造人間は人間と異なる時間軸で生きているから停止系の技は効かないって本編BLACKの中で言ってたし。
じゃあ普通に移動した事だよな。
気配を一切悟らせないなんて。
榊博士ほんと何者だよ・・・。
「私たち人間は頭や胸を吹き飛ばせば死んじゃうけどアラガミはそんなことでは倒れない。アラガミは考え、捕食を行う一個の単細胞生物--『オラクル細胞』の集まり・・・そう、アラガミは群体であってそれ自体が数万、数十万の生物の集まりなのさ」
・・・改めて聞くとアラガミってほんとにとんでもない存在だよな。
細胞一つ一つが意志をもっているんだから。
まるで知能を得たアメーバだ・・・。
「そしてその強固でしなやかな細胞結合は既存の通常兵器では、まったく破壊できないんだ。じゃあキミたちはアラガミとどう戦えばいいんだろうね?」
「えっと、それは神機でとにかく斬ったり撃ったり・・・・」
慌てふためくコウタが身振り手振りで説明する。
そんな焦るコウタのあらかさまな態度に呆れるユウカ。
「そう結論から言えば同じオラクル細胞が埋め込まれた生体武器『神機』を使ってアラガミのオラクル細胞結合を断ち切るしかない・・・・と今までそう思われていたが例外が現れた」
サカキ博士が僕を見る。
すみせませんね、『オラクル細胞なしでアラガミを殴り飛ばす例外』を作ってしまって・・・。
僕の不貞腐れた態度に苦笑するユウカとコウタ。
「だがそれによって霧散した細胞群もやがては再集合してあらたな個体を形成するだろう。彼らの行動を司る司令細胞群・・・『コア』を摘出するのが最善だけど、これはなかなか困難な作業なんだ。」
そういえばサバイバル時代に倒したアラガミのコアをフェンリルに一つ一つ送ってたけどあれ結構めんどくさかったからな。
途中からはコアもそのまま砕いていたけどあれでも完全に死んでいないのか・・・。
完全に人類は追い詰められてるな。
どうすればアラガミを完全に死滅させることができるんだろう。
ほんと厄介な生物だよ。
「神機をもってしても、我々には決定打がない。いつのまにか人々はこの絶対の存在をここ極東地域に伝わる八百万の神に喩えて『アラガミ』と呼ぶようになったのさ」
神様もアラガミと一緒されるなんてとんだとばっちりだな。
まあ俺の知ってる神も結構ゲスかったけど。
くっ、あの顔を思い出したらなんかムカムカしてきた。
「さて今日の講義はここまでとしよう。アラガミについてはターミナルにあるノルンのデータベースを参照しておくこと、いいね?」
講義を聞き終わりユウカはアラガミについて考えコウタがやっと終わったかといった感じであくびをする。
そして僕は今日教えてもらった事を復習して午後からの実技訓練に備えるのだった。
午後の時間はツバキ教官から過去のデータを元にしたホログラムのオウガテイルの形をしたダミーアラガミと戦う基礎訓練を叩きこまれていた。
「どうしたライダー、そんな事では命がいくらあっても足りんぞ!もっと機敏に動け!」
「は、はい!」
「返事する暇があるなら体を動かせ!」
ツバキ教官の特訓は過酷の一言だった。
なにしろ格闘経験もない素人の僕が一から鍛えるのだ。
楽な訳がない。
ホログラムのダミーアラガミと戦いながらツバキ教官からチームでの戦いの立ち回り方や力の使い方を習う。
・・・・死ぬ!実戦前に絶対死ぬ!
なんだよオウガテイル十匹にコクーンメイデン十匹って!
こっちは俺一人だぞ。
いくら訓練用のホログラムだからって体に受けた痛みは本物で結構痛いんだ。
命がいくつあっても足らん。
「何をやっている!そんな事で実戦で生き残れると思ってるのか!」
ツバキ教官が怒鳴ると共にオウガテイルの尾から針を飛ばし、コクーンメイデンが上空に撃ったジャベリンが俺目掛けて降ってくる。
やばいこのままだと直撃する。
こうなったら・・・!
「キングストーンフラッシュ!」
拳をベルトのバックルの上で重ね、バックルから光とエネルギーが放出され針やジャベリンが跳ね返されてオウガテイルやコクーンメイデンに逆に突き刺さる。
跳ね返った針が目や体に刺さり痛みで苦しむオウガテイルの群れ。
コクーンメイデンの群れも同様にジャベリンが突き刺さっていて怯んでいる。
「今だ!」
バイタルチャージをしてエネルギーを溜めるとアラガミの群れめがけて突撃する。
まずはやっかいな固定砲台のコクーンメイデンから潰す!
コクーンメイデンは動かないけど連携されたら厄介だからオウガテイルよりも先に潰すした方がいい。
「ライダーチョップ!」
動きの鈍ったアラガミの群れに跳び込み赤く輝くチョップがコクーンメイデンの身体を切り裂く。
「ライダーパンチ!」
次にひるんでいるオウガテイル十匹の頭部にライダーパンチを浴びせて駆け抜ける。
バジ・・・バジ・・・バジ・・・
切り裂かれたコクーンメイデンと頭部が陥没したオウガテイルの群れは消滅していく。
ツバキ教官いわくこのホログラムは設定したダメージを与えると自動的に消える仕組みらしいからだ。
「ハァハァハァ・・・」
自分の右手を確認する。
パンチもチョップの威力も訓練の成果で以前よりパワーアップしている。
以前はオウガテイル一匹を倒すのにライダーパンチとライダーキックを浴びせてやっとだったのに・・・。
でも今はたった一発のパンチで倒すことができた。
間違いない・・・この身体も本編BLACKと同じで戦えば戦うほど力が増して強くなっていくんだ。
でも力を増せば増すほど俺は人の枠からかけ離れていく。
「よくやったライダー、今日の訓練はほぼ完璧だ。だが慢心するなよ今の貴様はようやく羽根が生え始めたヒナ鳥だ」
「・・・ありがとうございます」
肩で息をしてながら特訓室から出て通路を歩きながら先ほどの実戦訓練を思い出す。
力を得て自分が自分じゃなくなりそうなあの高揚感に似た感覚。
『化け物』『怪物』
その言葉が頭をよぎる。
僕はこれからどうなっていくんだろう・・・。
つづく
次回、第二部隊と共に第8ハイブ防衛戦。
おかしい、最後の方ここまでシリアスのような展開にするつもりなかったのにどうしてこうなった!?
それに本当は防衛戦までやれたらと考えてましたが講義や訓練が思ったより長くなり、おかげで記念すべき10話にアリサが来る筈が次々回になってしまうなんて…。
まさかゴルゴムの仕業!(違)
意見感想お待ちしております。