山吹色の夜   作:サバの缶ずめ

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1話 新しい生活

「やった!合格だ!お前はどうなんだよ!」

 

隣にいる友人の声が響く。と同時に会場に貼り出されたボードを確認する。俺の番号は519。500番台に入り更に入念に確認していく。

 

「512.514.515.518.520」

 

残念ながらそこに519は無かった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「まあ良かったじゃん。お前は受かれたんだし。俺の分まで頑張って来いよ」

 

「そうだけど…お前は大丈夫なのかよ。この学校は誰よりも行きたがってたはずだろ?」

 

「しょうがないよ。落ちたんだし。自分の実力が無かったってことだよ。」

 

 

と言いつつもこの学校は落ちぶれた学校では無い。成績も上から数えた方が先に見つかるぐらいの学校だ。本人の都合と親の都合により公立に絞ろうと言う結果になった。選択肢はまだあったのだが夢を追いかける為にはこの学校に行きたかったのが現状。そして見てしまった現実。そう簡単には入れるような場所ではなかった。

 

 

「と言う事はここで学校自体の別れか。高校も一緒の学校に入りたかったんだけどな…」

 

シビアな話を切り出すがこればかりは仕方がないし落ちてしまったものに言い訳は付けられない。ただ電話や連絡は取れる為言うほど別れ感は無かった。

 

「じゃあ元気でな!文化祭とか有ったら遊びに来るから!」

 

「ああ!お前こそな!」

 

堅い握手を交わし別れを告げてその場を去った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その後、先生、俺、親の3人で面会を行い、一つの学校の案が出された。それは意外にも"定時制"だった。俺の学力があれば余裕で行けるとの事で言う程悪くないし考えて見ればバイトも出来るし俺にとっては効率のいい学校ではあった。ただ不安要素もある。大きく分けて2つ。

 

「今の生活リズムを崩し夜型の人間に対応出来るかどうか」

 

「様々な人がいる為に自分の良さを発揮出来るか」

 

 

高校選びは難しい選択である。正解の道を選ばなければならない為に選択期間ギリギリまで考えて迷った。時には親と意見が噛み合わなかった事もしばしば。

 

 

そうして導き出した答えは…。

 

 

「俺は定時制に行く!」

 

 

そう決めた心に迷いは無かった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

試験も無事合格し俺は高校生になった。青春と言った言葉も言う程必要では無いからこれぐらいの生活が丁度いい。それからの日々は少し余裕も見え始めた。友人から送られて来る祝いのメッセージも華々しい気持ちで読めた。

 

 

「いよいよ明日か。入学式」

 

「だな。中学の様に高校生活もあっという間に終わるのかな」

 

「そうなんじゃない?案外あっという間だったりするもんだろ」

 

「とにかく楽しんで来いよ!」

 

 

あの入試以降昔以上に親身になって話してくれている。気遣ってくれているのだろうか。もうそこまで落ち込んでも無いし自分に合う学校を見つけられたのでそれはそれで良かったんじゃないかなあとは思っている。時間は戻りはしないからそれ以上の物が出来ればいいんじゃないかな。

 

それにしても定時制ってどんな所なのだろうか。全日制とは違い様々な年齢層の人が居るって聞いたから世代が違う様な人もいるのだろうか。不安が募るが実際は行って見ないと空気も立場も分からないし当たって砕けろの精神でいいとは思うがどうだろうか。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

そんなこんなで長かったようで短かった休み期間も終わり今日からは学校が始まる。いつも出る時間帯とは違った時間に入学式がある為何とも違和感を感じていたがここも慣れで変わってくるのだろうと自答して自分に言い聞かせた。だが制服が無いと何か締まらないな…

 

 

「母さん今日の入学式は来れないから」

 

「了解ー」

 

「まあ高校生活も頑張るのよ。たった3年間だから後悔はしない様にね」

 

「分かったー」

 

 

 

家を出て20.30分ぐらい掛け電車と徒歩を歩きでやって来た。中学の頃の徒歩の移動に比べたらこれっぽっちもない。

 

 

「さて。学校に着いたぞ。確かエントランス集合だったっけ」

 

「それにしても学校広いな…。方向音痴は迷子になるな、絶対」

 

 

全日制との兼用も合ってなのだろうか。だが今はそんな場合では無い。クラス確認表を見つけに行く為に先を急がなければ行けない。

 

少し歩みのスピードを上げようとした途端右手の影の女の子が視界に入る。

 

(あの人もここの生徒なのだろうか)

 

すると1.2と歩き出しこちらに近付いて来る。

 

 

「あの…。エントランスって何処ですか?」

 

「エントランスなら自分も向かってるので良ければ一緒に行きます?」

 

「良いんですか!?じゃあお願いします!」

 

 

途端に顔色を変え喜ばしい顔に姿を変える。状況は困ってる人の道案内で良いのだろう。

 

1人から2人になり少し経った。ただ会話に進歩はしない。数分前に会った人だ。会話して友達になるほど強メンタルの持ち主ではない。この静寂な状況を何とか打開するか、それとも時間を待つか、果たしてどちらが良いかは分からないが取り敢えず向こうが喋ってくれば最低限話すぐらいで留めておこう。それが無難だろう。

 

 

「連れてきていただきありがとうございます」

 

「いえいえ。当たり前の事をしただけです」

 

 

丁寧に深々と頭を下げこちらに向けて微笑むとその場を去っていった。

 

(多分俺と同じルートを通るならこの人も定時制の生徒なのかな)

 

ふと思いながらも俺も急がなければ遅れてしまうと同じ方向へ進んで行った。

 

 

 

「と言う事でこれで入学式を終える。」

 

 

一時間ちょっとの入学式が終わった。クラス決めも入学式も終わってようやく一段落と言った所か。と行きたかったがここからはクラスに別れて各自で進めていく。取り敢えず新しいクラスに行けという事。

 

俺は1年5組。ドアに貼ってあるクラス表を見るとこのクラスの人数は9人。9人は普通に見たら少ないが人数は気にしないタイプの人間なのでそこまで気にはならない。重要なのは数ではなく中身だと思っている。

 

中学卒業後この学校に即入学という形を取った為に歳は15。即ちここに居る人達は理論上では全て先輩に当たる。定時制とはそう言う場でもあるとここでも思い知らされた。

 

次々と同クラスの人が入ってくる中には予想通り見た目からして歳上ばかりだ。だが1人だけ同世代の人がいる気がする。後ろ姿からしか見れないが歳は同じぐらいだろう。

 

 

(いや待てよ、あの人さっき案内した人だよな…)

 

 

ヘアスタイルとか服装が案内した女の子と一緒。どうやら同じクラスになったみたいだ。

 

 

〜〜

 

「私は1-5担当の板野と言います!1年間だけですがよろしくお願いします!」

 

新学期あるあるの自己紹介タイムが始まった。まああるとは思っていたが何も考えてないし言う言葉も無いから取り敢えず軽く流すぐらいで合わせておこうか。順番が来れば柔軟に対応するか。

 

 

 

「じゃあ次は橋下くん。お願いします!」

 

「はい、このクラスの仲間達と頑張って行きたいです。よろしくお願いします」

 

「橋下くんは趣味とかありますか?」

 

「そうですね。あまり目立って主張出来るものは無いですが野球が好きです。」

 

「へー!そうですか!先生も良く野球観戦に行きます!」

 

 

「じゃあ次は山吹さん!」

 

「はい。短い間ですが1年間よろしくお願いします」

 

「山吹さんは好きな物とかありますか?」

 

「私は好きな物はあまり無いのでこの高校で作れていけたら良いなと思ってます」

 

「いい心構えですね!」

 

そんな感じで緩い自己紹介が終わった。

 

 

あの女の子が山吹さんと言うことは分かった。ただ多分向こうから話してくる事が無い限りは話にはだろうから正直知った事で得する事は無いし名前は遅かろうが早かろうがいずれかは知る事にもなる。

 

 

「では。皆さんこれにて今日は終了です。外も暗くので気をつけて帰ってください」

 

時計は6:30を少し過ぎたぐらいの時刻。7時に終了予定だったから少し早かったぐらいか。ここからは帰る一報で話が進んでいく。色々気になることは合ったが今日ではなく明日にしよう。明日からは通常日程だから時間を使える。今日は体力も使ったから疲れた。

 

「よし、帰ろう。明日も学校だし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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