※ 6/10(土)
現在 16:42
「んで、働いてたってのは何だ。真面目な回答でなければ電気屋の回収ボックスにぶち込むぞ」
「右に同じく」
『あーもうわかった納得いかなかったらレアメタル抜き取ってもらって構わないからひとまず話させろ!』
画面の中の男は、こちら側の一方的な口撃により、キレかけ。これ以上口撃しても何ら解決しないと踏んだ僕らは、だんまりを決め込むことにした。
『まず、そこがどこなのかから行こうじゃないか。端的に言うと、BIQ東京。BIHっていうのは、“バイター侵攻司令部、Biter Invasion Headquarters”っていう組織の東京支部と言った感じだ。まさかとは思うが、忘れてないよな。バイターのことは』
「いや、忘れるわけないだろ、2年半前、それもあんなことを」
「というか、いくら地下とはいえ、なんでこんな組織が都心で活動できるの。それに、仮に活動ができるとして、それを担う労働力はどうなってるの」
無意識のうちに、青村の論に頷いていた。そうなのである。かつて国をひとつ消しかけた組織を政府は見逃すはずがなければ、そうでなくともそれを支える労働力はこの地球上にはないはずなのだ。労働力になるはずのバイターたちは、永久的に星外追放になっている。もっとも、星外追放という言葉はそれをきっかけに編み出された単語であるが。
『そんなこと、どうにでもなってしまう。信じ難い話だろうが、この空間のことは、ここで働く者以外知らない』
「なぜ?」
『俺もよく分からん。だが、宇宙パワーでここの空間ごと、外部に認識されない、とかなんとか、異星人の中間管理職は言ってたがな』
「何だそれ。というか、異星人の中間管理職ってなん「まぁそれは後で説明するとしてだな」
「なんか無理やり疑問を遮られたぞ?」
『いや、ほんとに後で説明っすから、ちょっと待ってろ』
「青村、回収箱」
「イエッサー」
『やめろやめろ』
男の適当な応対に腹を立てた僕は、再び回収箱行きを命じたが、今それを実行に移すと困る。そのため、冗談はほどほどに、グッと堪えた。
「そんで、労働力どうなってんだ」
『学生』
「「は?」」
『恐い顔すんなよ。まぁなんて言うんだ。[日本なぞ潰れちまえ]という学生が潰そうとしているバイターの手を借りる。win-winの関係で成り立ってる。BIHは』
「学生運動かよ……」
「学生が、あいつらの手助けしたと。なんて話」
各々呆れかえる僕ら。中坊だが、それよりも長く生きている先輩たちを蔑むような思いだ。
「まぁいいが。それで?その空間がこうやって、あからさまな黒い丸をつけないといけないような感じになっているが、どうなったんだ」
『あぁ。それは、あれだ。生身の俺がしくじった。それで、中間管理職が怒り、パワーを放出』
「ちょっと待て!異星人の中間管理職なにもんだよ!」
『うん?あぁ、まだ説明してなかったよな。説明するとあれだ
[ Level4バイター ]
と言えば、理解してもらえるかな」
「「!」」
電流が身体に流れた。そのような刺激を感じた。それは………………恐怖からだろう。
『5つの段階がバイターにあるのは知っているだろ?この組織の中間管理職は、レベル4だ』
「マジ、かよ」
「本当に………?」
『残念だが現実だ。それと、これも伝えないとならんな』
「なんだ」
『その中間管理職、数日前、ここに来てだな。そのときにここを破壊していったわけだが、そいつ、またこの星を出てった。そして、また地球に戻ってくるぞ』
「青村、スクラップ」
「サー」
『八つ当たりすな八つ当たりすな!』
あまりにも飛躍しすぎた現実に、この男、もといホログラムを疑ってかかった。
「どうやって入ってくるんだよ!地球外生命体が大気圏に侵入してきた時点で撃ち落とされるはずだろ!」
『あいつら、ある天体のA地点からB地点からの瞬間移動はできないが、ある天体Aからある天体Bへの瞬間移動ができる。あいつらにとっても負担だから、普段はあまり使われないが、そのときに、中間管理職は使った。そして、今度は正攻法で来ようとしている。あいつらの最高軍事力を持ってしてな』
「「マジかよ」」
男言葉で、青村とシンクロした。実力のある僕らではあるが、流石に勝ち目が分からない。
「それで、次来るのはいつ。雑兵はもう交戦したけど」
『今は、16時49分だから………1時間15分程度か』
「青村、海へチャポン」
「オーケー」
『だから現実を受け入れられないからって壊す方向に進めるな!』
「なら早くここから出せ!知ってるんだろ!」
『分かった分かった。あと言っとくが、お前ら、孤立無援だ。心して行け』
「何を今更」
「あのときだって孤立無援だったさ」
『ならいいがな………………出口は、回れ右して、直進すると扉があるだろ。それだ』
「オーケー、どうも」
『じゃあ、俺は置いていけ』「はいはい」
手にしていたスマホを、僕は静かに地面に置き、大統領の娘のメリーさんの手を引く青村とともに、扉へと向かった。
『グッドラック。俺は、消えるぜ…………』
※
「よし、開いたな」
[非常用]と書かれた扉の先には、少しばかり古びたハシゴがあった。
「じゃあ、前ちゃんが先に行って」
「え、なぜ?」
「いや、前、ううん、あなた。デリカシーに欠けてる、ほんと」
先ほど、バイターに手を貸していた学生に呆れていた青村が、今度は僕に、呆れかえったような表情になっている。
「いい?私とメリーちゃんが今履いているのは、何?」
「………………あぁ!!スカート履いてるから、パンツを見られ「心臓を捧げよ」シンプルに謝るんで解いてください青村さん!」
えげつない速さで僕の腕に関節技をかけた青村は、巨人を感じさせる一言とともに、なんかこう、皆様にお見せできないような表情をする。
「おっとこんなことしている場合じゃない。早く行こう」
「だからなんなのこのサディスト」
「ハヤクイキマショ」
「まさかのメリーさんサディストだーーーー!」
サディスト×2であると知った僕は、絶望スマイルを顔に浮かべる。そのまま、僕は扉の先にあったハシゴに手をかけた、
※ 6/10(土) 都内・バイター緊急対策室 東京本部
現在 16:37
来襲まで 1:29
「これって……………なぜこうなっているんです!」
国の担当者や都の職員でざわめく特大会議室。しかし、ざわめきとは違った、男性の力強い怒声が会議室に響き渡った。
「ほとんどの自衛隊員が殲滅作業に当たらないって、どうなっているんですっ!」
「まぁ落ち着け吉見くん。そういうことはデータを見てから言いたまえ」
「っ!………………」
そう、肝心なバイター殲滅に、自衛隊の人員を割けないのだという。本州、四国、北海道の自衛隊員は、住民の避難誘導にあたり、都心にほど近い自衛隊基地所属の隊員は、行方不明、もといあのアリーナの奈落へと落ちたアメリカ合衆国大統領の娘さんの捜索に当たっているらしい。警察も同様だと言う。
「それに自衛隊も、大方の避難誘導が完了すれば、殲滅に参加する。“あの2人”に全て託す、ということはない」
「ですが、それでは2人の負担が………」
副室長という、この部屋の中で2番目に偉いおじさんに吉見さんが尤もらしく説き伏せられている。しかし、この場合は吉見さんの論が正しい。なぜなら。
「あいつらなら、最初にレベル2、3の中位個体を放出するはずです」
「なに?というか、君は誰だ?部外者は出ていきなさい」
吉見さんの斜め後ろで直立していた私は、いてもたってもいられず、口を開いた。しかし、部外者扱いをされ、冷たい目で退室しろと言う。怒鳴りこそしないものの、その副室長がイラついていることが分かった。
「部外者とはなんですか。西」
右耳に、唐突に中年女性と思わしき声が聞こえてきた。右手側を向いた私の目の前に、その人はいた。
「こんばんわ園枝さん。あなたと、あなたのご友人のことは聞いています」
「は、はい」
その人は、日本の防衛におけるトップ。防衛大臣の古宮 晴子(こみや はるこ)大臣であった。彼女が左手を差し出すと、私は反射的に右手を出して固く握手を交わした。
「西、あなたは下がって」
「しょ、承知しました」
大臣の一声で、西と呼ばれる副室長はどこかへ行ってしまった。どうやら立場は大臣には抗えない立場のようだ。
「園枝さん、あなたの、バイター殲滅に対する考えを聞かせてください」
「はい」
大臣の真っ直ぐな視線、冷静さを持った声に、私はただ実直に『はい』と答えた。
「前回、2年半前にバイターたちが他国を1つ滅亡寸前まで追いやった後、日本に襲来してきました。向こうも、探り程度だったからでしょうが、ほとんどがレベル1の下位個体でした。そして、その危機に現れたのが…………あの2人。レベル1とはいえ”圧倒的な力の差“で打ちのめされた下位バイターたちは一部が生き残り、地球から去って行きました。おそらく、今回襲来したのは、侵略とともに………”復讐“の意味もあるのではないかと考えています。だから、前回とは違い、最初から、全開で来るはず。実際、レベル4個体を、検知していると聞きました。そう考え、2人以外の戦力の増強を思いつきました」
「なるほど………………………………………」
かなり長い言葉になってしまった。しかし、前回と今回を合わせて考えれば、自ずとそのような答えに行き着く。2人だけには、傷つかせない。そんな思いもあった。大臣は、身につけていたメガネを外し、俯き、長考し始めた。
「…………………………………確かに、一理ありますね」
「そ、それって………………』
「総員に告ぐ。作戦の変更だ。まず、関東甲信地方に展開中の自衛隊員は、後に特定されるバイター降下地点に向かい、殲滅に参加すること。他についても、状況に応じ銃の発砲を許可する」
「大臣………!」
大臣の英断に、思わず敬意が溢れ出る。卓上マイクに向かい、この作戦に参加する総員への指示を続けている。
「……………………私も、上層部に連絡します」
「吉見さん…………」
私の隣にいた吉見さんも、心が変わったかのように行動に移し始めた。警察も参加すれば心強い。2人だけが、傷を背負うことがなくなる、のだ。
「降下地点予測出ました!モニターに出します!」
怒声にも似た大声が会議室でこだまする。それと同時にすべてのモニターに降下地点が表示された。
「これって…………………」
地図に示された降下地点は、静岡県と山梨県の県境付近。つまり、富士山だ。
「総員、降下地点は静岡県と山梨県の県境、富士山だ!心してかかれ!」
大臣の檄が室内に響く。そこにいる全員が『はい!』と返答した。そこにいた私は、一体感というものを感じた。
2人はまだ戻っていない。降下予測まで、1時間半をとうに切っている。だが、心の引っ掛かりというものは、私には無かった。必ず来ると、信じているから………
そのうちイラストつけようかなとか思っていたりいなかったり。
この篇はあと3話程度で終わる(と思う)予定です。最後まで楽しんで読んでいただけると中の人はキュン死してしまいます( )