プラマイ!〜世界はプラスとマイナスから〜   作:梨味

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宿泊行事を大袈裟に書いてみたものになります。こうやってみるとこの中の男たちすげぇ()


プラマイ・005「男たちの、くだらない宿命」

5/23(火)

「吐きそうや…」

「ぶっかけたらブッ殺すぞ」

「前山、それ若干かかってるで」

「うるせぇ!鳴門海峡の渦潮に飲み込まれて死ね!」

「なんでや!?それとここは鳴門海峡じゃなくて太平洋上や!」

僕と室生はただいま太平洋上(正確に言えば青森沖)だ。というか、僕と同じ学校・学年の全員が太平洋上だ。なぜなら、中学2年の宿泊行事、北海道への「船中泊(を伴う自然教室)」だからだ。

「なぜ船で移動せなあかんねん!こっちはゲロ寸前やわ!」

「まぁそうカリカリすんな。余計吐き気がカンバックしてくるぞ」

吐き気でうな垂れ、普段大人しいのが逆上しているのは室生だけに限ったことではない。特大寝台室にいるほとんどの野郎どもがうな垂れている。こうやってピンピンしているのは僕くらいだろう。女性陣は………まぁやめておこう。

「あと2時間としないうちに着くんだ。もう少しの辛抱」

「へぇへぇ」

 

 

日本でも流氷というものは見られるらしい。だが、それは道北もいいところで、らしく、さらに最近ではそこですらも中々見ることができないという。そんな貴重な流氷をこんなことで使いたくないが、僕は、使う!!!

「僕だって最初は冷静に行こうじゃないか。君たちは男子部屋の見回りが手薄になっている間に外出しようと。うんうん」

「そして、女子風呂を覗きに行こうと。よう分かった」

「「許されるかぁ!?」」

「まぁやってみろ?そんなことしたら例え僕たちはやっていないとしても社会的な地獄に送られるぞ?分かってんのか?」

「止めようとしたのに完全にお前らと同罪になるんやで?そうなったら完全に山に籠るしかあらへんわ」

僕と室生は、冷静に語ったが抑えきれず怒り、しかし再び冷静になるという忙しない感情変化を見せながら禁忌に触れようとするメンズを自室で宥めている。

「大丈夫だって!絶対気づかれないから!さっきもしっかり下調べしてきたんだぜ?」

フラグを建てられるだけ建てているアホ丸出し、学校ではサッカーバカ。有倉 十色(ありくら といろ)。

「覗くと言っても、直接覗くわけじゃない。ここの自撮り棒につけたカメラでその瞬間を収めるだけ。憂いることはないさ」

クールに、無駄に落ち着いて、安全性を説いているが、言っていることがアウトであるため、完全に変態でしかない、学校ではガリ勉むっつり助平。北脇 愛人(きたわき まなと)。

「十色、てめぇはそのエネルギーをもっと別のところ、特別言うなら脳に回せ」

「きた、お前はそのむっつり助平をどうにかすべきやな。せっかくのインテリもそれに負けない変態性が打ち消されてるで」

「うっさいぞ!前山と室生!お前らだって、とんでもないもの拾っただろうが!むしろ、そっちの方がヤバイぞ!」

「そうだ。それを拾い、一度懐に収めた時点で、俺たちを糾弾する権利はないのだよ」

「「くっ………」」

一気に攻守が逆転した僕と室生と助平2人組。何を拾ってしまったのか、それは、ここに到着した直後、1時間半前に遡る。

 

~1時間半前~

 

『重たい……』

寝具係(シーツや枕カバーなどをリネン庫などから各々の部屋に運び、翌日再びリネン庫に戻す作業の担当)である僕(前山)は、シーツ等を部屋に運んでいる。4人分とはいえ、某アマゾンのような無駄な余白があるシーツや枕カバーであるため、運べないというほどではないがそれなりに重量がある。ノロノロと歩いていると、廊下の真ん中に一袋、ジ◯プロックが落ちていたのを発見した。

「?」

それが落ちている近くでしゃがみこみ、運んでいたものを太ももと上半身でサンドして、そのジ◯プロックを拾い上げた。そこには、おそらく日付であると思われる“5/23"と"黒下このは"と書かれていた。それが、先日青村とポッキーゲームをした黒下このはのもであることは容易に想像できた。後悔は、そこからだ。

「中身は、なんだろ…………………!!」

驚きと同時に、焦りというものが脳を過ぎった。ジ◯プロックの中身が(おそらく)このはの下着セット………言ってしまうとブラとパンツだから、そして、それを発見した僕が誰かに見つかり、“その中身は?"と追及され、The end。という一連のストーリーを頭に思い浮かべたからだ。しかし、僕は比較的後の方にシーツ等を取りに来たグループであったため、もうほとんど誰もいなだろう。そう高を括っていたが……

「遅いぞー。君たち優等生組なんだから、もう少し早く来れなかったの?」

「いやいや、それ120パーセント井間先生の所為ですよ?なんですかあのファイル?」

「ふふふ。お気に召していただけましたかな?お嬢さん♪」

「重しつけてオホーツク海に沈めますよ?」

なぜか人の声が聞こえてきたのだ。それも決して平和的とは言えない。1人は憎っくき教師、井間だが、もう1人は……

「あれ、どうしたの前山くん」

「おぉ前ちゃん。まだここにいるとは。もしかして、エロいことする気か?」

「名誉毀損で訴えて勝ちますよ?」

井間先生とともに歩いてきたのは、クラス委員長、江添 凪(えぞえ なぎ)。さすが模範であるというのだろうか。最も中学生らしい出で立ちをしている。というのはどうでもいい!僕の記憶が確かなら、こいつもこのはと同じ部屋。ここでこのジ◯プロックを返すように江添に言うべきか?いや、そんなことしてみろ。井間先生が

「中身は………こ、これは!前ちゃん、君もついにか………」

とか言いかねないし、場合によっては、江添にも

「前山くん、あなたまさか盗んで、怖気付いて返すとでも言うの!?最低!」

とかもともとありもしない事実を捏造されて、どのみちThe end ルートまっしぐらじゃねぇか!詰んでる!人生詰んでるよコレ!というわけでサッとシーツとシーツの間に隠したジ◯プロックはそのまま、自室に持って帰ってきた。

 

~そして、啓たちに相談したところ、そのように現在に至る~

 

「2班、点呼ー」

開けっ放しにするように指示された出入り口から入ってきたのは、担任、古佐和先生。こんなとき、同性に相談するのが一番良いのか、と考え質問してみた。

「先生?」

「なんだ前山」

「先生って、人生詰んでるって思うとき、どうします?」

「は?」

質問の意図が理解できなかったのか、聞き返す古佐和先生。しかし、少し考えたあと、このように言った。

「まぁ、質問の意図が見えてこないが、強いて言えば、一縷の望みに賭けるってところだな」

「なるほど」

「………なぁ、何で聞いた?」

「いえ、特に深い意味はありません。軽く水に流してください」

「おう、そうか?」

戸惑ったような様子だったが、特に深く干渉はせず、点呼を終えて先生は次の部屋へ向かっていった。『一縷の望み』か。

「…………………よし、僕はやってやるぞ」

「は?何をや」「何だよ!」「何だ?」

「社会的地位奪還作戦だ」

 

 

「上手くいく気がせぇへんわ」

「もちろん同感だ。だが、やるしかない!」

社会的地位奪還作戦の実行のために僕と室生が向かっているのは、このはたちが使っている部屋があるC棟3階への連絡通路のたもとだ。女子が入浴時間である今、この作戦を実行するほかにない。

「C棟3階、ここだな」

「せや」

慎重に歩みを進め、C棟3階に着いた。あとは、このはたちの部屋を探し、ジ◯プロックをそこに置いて全力で逃亡!非常に単純明快ではあるが、これが作戦の全貌だ!もし女子に見つかったとしても、C棟にいる養護の先生に用があって来たと言えば簡単に逃げられる。

「ここだ。ちょっと待ってろ啓、その辺りに置いてくる。見張っていてくれ」

「任しとき兄貴!」

威勢のいい返事をした啓を廊下に残し、部屋に入る僕。ジ◯プロックを適当に放り投げ、退室。完璧だ!

「よし!ここまで終われば、あとはどうにかこうにかハッタリでどうにかなる!やったな!啓!」

「おう!最初は乗り気になれへんかったけど、成功するとええなぁ!」

「だろ!」

作戦成功の喜びを分かち合う2人。エクスクラメーションマークを多用しているが、なるべく響かない声で喜びを分かち合った。その後、女子や先生に鉢合わせすることもなく、自室に戻ることができた。

 

そして、部屋に戻ると、愛人と十色がいた。

「お前さんたち、本当に覗いたのかね」

「あぁ…」「そうだ!」

「アホとしか思えへんわ」

蕩けた表情で佇む2人。

「おまけにバレた感じも全くない」

「ほら見ろ!バレなかっただろ?」

「「へぇへぇ」」

勝ち誇ったような態度を取る2人を軽く遇らう。本来あるべきでない日本の原風景だ。

「お、そろそろ夕飯の時間やで。そろそろ行こうや」

「OK。ほら、十色、愛人、行くぞ」

慣れない地での生活、無駄なエネルギー消費もあり、いつも以上に空腹感に侵されている。早く行こう。

 

 

「……………」

「……………」

「……………」

「……………」

各班は、4人ずつで、円卓で夕飯は取っている。どの班も実に静かで、咀嚼音しか聞こえず、お代わりをする者も実に静かだ。しかし、静かな平和を突如砕くかのように、

「!!?痛い?!」

肩のあたりから、一点の圧力がかかった。痛みを覚えたが、それ以上に気を抜いていたために、驚きが痛みを上回った。そして、恐怖を覚えた。そのため、後ろに振り向き、圧力の主が誰かを確認することができない。その代わりと言わんばかりに発声。

「こんばんは前ちゃん。先ほどは、私の班のこのはが、どうもお世話になりました」

「ひぃ?!」

この限りなく落ち着いたキレ声は、青村だ。ずいぶんと物腰柔らかな言葉の羅列にも思えるが、声が怖すぎる!

「明日、班別行動のとき、きっちりお礼をしますから、ぜひご期待くださいな……」

アカン、殺される。本能がそう叫んだ。そして、隣に座る啓にも同じような言葉を投げかけた。そして、覗き魔2人組には

『学校に帰ったら、理科室のありとあらゆる薬品をお出ししますから、お楽しみに』

という言葉を投げかけたのであった。そして、その2人組に関しては、女子全員から鋭い視線が注がれている気がする。それはまさに、流氷のように………殺されるであろうことを察した僕らは、夕食後、静かに留置場、もとい自室に戻り、明日に怯えながら眠りにつくのであった。




さて、ありがとうございました!船中泊編はあと1話ぐらい続くとさ。
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