プラマイ!〜世界はプラスとマイナスから〜   作:梨味

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プラマイ・008「ブロンドの少女」

〜某日某所〜

俺は、いつからここにいるのだろう。何か、大きな志を持っていた気がするが、思い出せない。この薄暗い地下空間の中には、大量の長卓とその上に並べられているデスクトップパソコンしかない。

「全員、注目!」

雄叫びにも聞こえる大声が、この空間の中で轟く。そいつは、この空間、部屋の中で一番のお偉いさんだ。といっても、一般企業にありがちな中間管理職のジジイといった感じだ。そして、注目した先には、この世に生を受けた人間とは思えない存在がいた。というより、実際問題人間ではない。端的に言えば……………異星人だ。俺がこの地下空間に篭り始めてから、何度かそいつはここに顔を出している。どうやらそいつは、地球の言語、詳細に羅列するなら、英語、フランス語、ポルトガル語、アラビア語、スワヒリ語、ハングル語、中国語、そして、日本語に精通しているという。こうやって、この惑星(ほし)のやつらとも問題なくコミュニケーションすることができる、らしい。

「再戦の時が、来たのだ!」

(異星人)の語りは、俺ら人間、特に日本人と同じように、熱いものが感じられる。しかしながら、どこか中二病臭さを感じる言い回しではある。そして、再戦のとき、というのは、工夫なしに言ってしまえば、少し前、具体的に言うなら2年半前、この惑星に勝負をけしかけたらことごとく負けたからその腹いせをする、といった魂胆だ。あなたたちが負けようが勝とうがどちらでもいいんですが、それは一方的に勝負けしかけて負けたというのは、あまりにも自分勝手な利己的な感情でしかねーじゃないかと、異星人の中間管理職さん。

とは思っているのは、この空間の中にいる人間、地球人の中では俺だけだろう。ならば、俺はなぜここにいるのか。それを見失っているのだ。

「おい……………」

「あれは…………」

と、ここで、中間管理職のような一番のお偉いさんの地球人と、醜いと否定することができない異星人の中間管理職に耳打ちをし始めた。正直、誰も見たくねぇ光景だ。いや、正直をつける必要性も無かったか。俺以外の奴ら(地球人)も、顔の向きは正面を向いているが、視線はそいつから外しているのがよく確認できる。

「おい!18番!こっちに来い!」

ここでは個人を番号で呼んでいるが、異星人に呼ばれてしまった。かなりお怒りの様子だ。こいつは、もうお仕舞いかもしれねぇな。

「はい、何でしょうか」

「……………………!!」

刹那、醜い異星人の表情がパッと変わった。それと同時に、俺の腹を冗談にならねぇ強さで殴ってきやがった。さすがに、少し堪えるな。

「…………っ!」

「お前に、彼らに一矢報わんとする意志はあるのか」

「…………………さぁ、わかりません。最近は何を目的地としてここにいるのか。ハッキリしませんね」

「貴様…………!」

「だが、ひとつ言える」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この惑星に、一矢報おうとしていないってことだけは、分かりますがね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、思い出した。俺の志。しかし空気の流れが変わった。多分、この異星人、次の瞬間にはいよいよ俺を殺るつもりだ。

 

 

「消えろ、我々の意志を邪魔する者………」

「せいぜい無駄な足掻きをするんだな、異星人の中間管理職。お前たち、あいつらに暴力で挑もうなんて、できやしない。また、無力さを説かれるだけだ」

 

 

俺は、白い閃光を視認した瞬間、意識が途切れた。

 

 

 

 

 

6月10日(土) 首都高速

 

「この英単語の日本語訳を答えなさい」

『sightseeing』「「観光!!!」」

都内へと向かう車中、僕らは期末テストに向けてのウォーミングアップをしていた。今は、英単語早押しをしていたところだ。青村が出題し、僕と園枝が答えるという形だ。しかし、今のところ、寸分の狂いもなく、2人同時に答え、全問正解している。あ、ちなみに今日は僕が助手席、女子2人組が後部座席に座っているぞ。

「すげぇな。2人同時に答えて、今の今まで全問正解って」

「何をおっしゃりますか常田先生!」

「私たちの英語力向上に一役買っているのは先生ですよ!」

「そして、生徒人気も高い。こんなにパーフェクトを極める先生は他にいませんよ」

「すげぇ賞賛のされようだが、ありがとう」

この先生は、心から尊敬できる、というか部下になりたい先生No.1だと僕は思う!運転しているため、正面から表情は見えないが、少なくとも顔の表情筋を緩めている様子はない。ベタ褒めされても、一喜一憂しない感じがまたいい!井間先生?そんな人は知らん。

「それにしても悪かったな。洋人、古佐和先生が送迎する予定だったんだが、急に部活の練習試合が入ってしまって。連絡も直前になって申し訳ない」

「いえいえ、私たちは大丈夫ですよ」

「正直、私たちは井間先生とかいう理科教師による送迎でなければ、よかったですから」

「井間先生への対応冷たすぎないか」

「まぁ僕ら、1年のとき、あの先生の担任でしたけど、3日にいっぺんくらいは中学生のようないたずらに遭ってましたから、こんな対応で十分なんですよ。ぶっちゃけ、うちのクラスの理科担当があの先生っていうのが、マジ許せねぇ」

「前山、ルームミラー越しに見るお前の顔がえげつないことになってるぞ」

「おっとおっと。失礼しました」

「それにしても、それなりの悪事を働いているのに、何で井間先生教育委員会に首切られないんですかね」

「それに関しては突っ込んではいけない」

「「「先生?」」」

(主に)下ネタ科学作品を生徒たちに掲げている井間先生に関して、園枝が素朴な疑問を常田先生に投げかけるが、常田先生は感情のこもっていない、棒読みで警告している。

「んまぁ、真面目に言うと、井間先生には教育委員会にも保護者の方にも、こうなんか、手出しできない何かを放っているんだよ、あぁ」

「「「えぇ…………」」」

衝撃の真実を聞いてしまった気がする。というか、絶望しかねぇ。だって、教育委員会も親たちも手出しできない、そんなこと耳に入ってきたら、お先真っ暗!あの下ネタリケジョ教師………

「なぁ、前山たちは午後からそれに行くんだろ?」

「そうですよ」

「そんでもって、昼飯は持ってきてだろ?だったら、車中で食べるよりも、"あそこ"で食わないか」

「「「?」」」

あそこがどこかというのは、全く見当がつかないが、特段拒否する理由もない、むしろ行ってみたい気持ちはあるため、先生の運転に揺られ、先生の言う目的地へと向かった。

 

 

「いいですね、この青空と海のそばで昼食を食べるのは」

「確かにそうだな。粋な計らい、ありがとうございます」

「ここに来て良かったね」

「だろ?」

私たちが昼食をとるために来たのは、東京湾沿い、レンガ敷きのフリースペースだ。梅雨入りも間近になり、どんよりとした天気が最近は続いていたが、今日は気持ちいいほどの青空だ。おまけに、心地よく吹き抜ける潮風はさらに心を洗われるようだ。

「それにしても、よくこんな場所ご存知でしたね。あまり人がいないですよね。いい場所だと思うのに」

「まぁ、あまりメディアとかで取り上げられるような感じでもないしな。俺も昔、愛したやつとここで………」

「「「先生!?」」」

「おっとすまんすまん」

何だろう。私は、先生の開いてはいけないパンドラの箱を開けかけてしまったのかもしれない。というか、先生に何があったのか、とてつもなく気になる…………

 

「あ、あれって何ですか?なんか、肌色っぽいものが浮いてますよ?」

「え、………………ほ、ほんとだ。何だろう、あれ?」

前ちゃんが、会場に浮かぶ肌色の物体を見つけた。その物体の正体が気になったのか、前ちゃんと玲が柵の方へと歩き出す。肌色ってワードが、私としては嫌な予感100%だ。それは常田先生も同じなのか、立とうとしない。しかし、何事も無かったのか、2人は普通に帰って来た。

「いやぁー意外に何もありませんっしたわー」

「何も無くて、ちょっと残念でしたね」

「そ、そう」

バラエティ番組のスタッフかのようなリアクションだ。予想に反して面白いことがないとネタ元を切る、最近のテレビ業界はそんなのばっかりだ。って、何の話だ。

「全くガッカリ……………!!」

「え、えっ」

バカ話をしていた前ちゃんだったが、何かに気づいたのか、唐突に走り出していった。前ちゃんが走り出していった方向に目を向けると、小さい子供らしき人が柵を飛びこえようとしていたのだ。海への探究心ってやつだろうか。海への落下を阻止した前ちゃんのもとへ、私たちも向かった。落ちかけていたのは、やはり小さい子供だったのだが………………

「か、かわいい………………」

玲の口から漏れ出しているが、玲の感想は実に的を射ている。私は、ロリコン趣味はないが、それでも、この少女はかわいらしいと思ってしまう。ロングブロンド、碧眼、淡い水色の、膝下まであるワンピース。まるで、西洋のお人形さんのようだ。私の、幼心が立ち返ってきそうだ。

「なぁ青村」

「なに前ちゃん」

「多分この子、海外、もっと限定するなら欧米人、だよな」

「そんなこと聞かれても…………まぁ、身なりだけ見れば、そうじゃない?」

「なんか、どっかで見たことあるんだよな。もっとこう、ひっそりとしたところじゃないところで」

「すれ違ったとか、それだけじゃないの?」

「そうだよな……………」

前ちゃんは、心に何か引っかかりがあるようだ。少なくとも、私は覚えはない。

「Please tell me your name? Where did you go from?」

「れ、玲さん?」

「青村さん。今の園枝を止めることはできないぜ。一度コイツがEnglish communicationを始めたら、もう、無理だぜ。僕もそうだが」

「そろそろセンチュリオンで身体吹き飛ばすぞ前ちゃん」

「うわー第二次世界大戦後の第1世代の主力戦車だぜー」

さすがにルー語と同調を同時に出されるとイラッとくる。こう、お腹の底から湧き上がるような怒りが。

 

「..........Good bye.Meet again」

 

そんなことを思っていると、少女は小走りで立ち去っていった。ヨタヨタとした走り方だったが、速さはそれなりにあった。

「行っちゃった…………本場の方と話せる数少ないチャンスだったのに」

「ま、まぁいいじゃん玲。学校行けばそんな機会腐るほどあるじゃない」

玲がいつも見ないくらいに肩を落としている。私としては、外国人と話す機会は要らないのだが、玲はその機会を欲しがっている。あと、前ちゃんも少し。

「おっと、そろそろ時間じゃないか」

「ほんとだ。そろそろ行こう。じゃあ先生、車、あと少しよろしくお願いします」

私は、少し本来の目的を忘れていた。決して観光に来たわけではない。大統領の演説会場の警護に行くのだ。そして、アレが来るならば…………………

 

To be continued...




正直、リアリティが全くないと思っている中の人。だって、僕の妄想が詰め込まれてるんだもんね!(誰)
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