6/10(土) 東京湾付近
「そんじゃあ、終わったら連絡くれ」
「了解です」
途中、この近くの海岸で西洋少女と戯れたり?して紆余曲折あったが、ようやく警護する演説会場へと到着した。警備上の関係で、会場の真ん前には車を停められないといことで、会場から少し離れた路肩で停めてもらった。
「じゃあ、行くか」
「うん」「そうだね」
特にその場に立ち止まっている理由もない僕らは、会場へと急ぎ、向かった。
今回、僕らは会場警備として参加するが、裏口から入るということ以外には、普通の聴衆と変わりない待遇である。会場には、全国からの中学校から学校代表として一校あたり数人が集まるため、中学生専用の座席ブロックがある。僕らは、そこに座り、緊急時には対応する、というプランだ。
「にしても、あんな薄い紙っぺら1枚見せられて、低い可能性に賭けて、ついつい来てしまったが、こんな信憑性の低いもの、アテにすべきだったものか」
「いいじゃないか前ちゃん。例え何も無かったとしても、あんなこと体験さしてもらえるなんて、滅多にないじゃないか」
「確かに。私はサポートだけしかできないだろうけど、不安半分、楽しみも半分あるかな」
「そりゃそうだが……………まぁいいか!」
あれこれ考えないといられないたちなのだが、こればっかりは、深く思考しても意味が無さそうだ。そんなことを思っていると、会場の裏口に着いた。一応、3人とも学校の制服に袖を通してきたが、それでも裏口のいかつい外国人の守衛が今にも僕らの身体をひと突きしそうな視線で睨みつけてくる。割と僕らはこういうのに慣れている(主に先生&友人たちの所為で)ため、少し怯む程度であるが、これ、普通の中学生だったら逃げたくなるだろうな。入場許可証を提示し、所持品検査を済ませ、中に入った。
「ようこそ、前山くん、青村さん、園枝さん」
裏口を入ってすぐ、一昨日の吉見さんがいた。関係者スペースとでも言うのだろうか、乱雑に長テーブルが置かれ、その上にケータリングやメッセージ封筒の入っているダンボールが置かれている。そのため、通路は一列になってやっと普通に歩ける幅だ。
「そうだ、これを渡し忘れていました。どうぞ。原版刷りがもうないので、メモだけ渡しておきます」
3人それぞれに手渡されたのは、簡単な会場図だ。これを見たところ、本当に手書きしたようだ。しかし、分かりやすくまとめられている。おそらく吉見さんが描いたんだろうが、これくらいの美術センスを青村に見習ってもらいたいもんだ。
「?何?前ちゃん」
「いや、何でも?」
いかんいかん。また思ったことを外に出して僕の身体が普通の描写では描写しきれないようなことになってしまうところだった。
「それにしても、大統領の演説って、こんなに大々的にやるものなんですかね。アリーナ、スタンド、しめて1万5000人」
「確かに、園枝さんの言う通り。だが、中身は私はおろか、政府の関係者でもごく僅かしか知らないらしいです。何か、大発表でもあるんでしょう。実際、このざわつきからも分かるように、一般席含め、満員です」
園枝と吉見さんが話している間に、ジュラルミンケースが一つだけ置かれている部屋に着いた。薄暗く、ジメジメとしている。
「これが、前山くんと青村さんの装備です。指定のものは用意しましたが、念のため、確認してください」
ケースの中には、M92F一丁、折りたたみ刀一本がそれぞれ入っていた。青村がM92F、僕が折りたたみ刀を手に取り、懐に忍ばせる。
「……………ねぇ、私、中学生が持つには、少々、いや、かなり物騒なものだと思うんだけど?その銃、実弾?その刀、真剣?」
「「そうだとも!」」
「変なところで息合わせるな!」
こいつの思っていること、言いたいことは、まぁ分かる。だが、もし万一の時には、これが僕の最強の武器になる。
「一応言っておきますが、何も起こっていないときには、絶対に他の人に装備を見せないでください。いいですね?」
「「わかりました」」
「それじゃあ、行きましょう。開式が迫ってきました」
「はい」
ジメジメとした部屋に別れを告げ、僕らは会場へと向かった。
※ 演説会場 アリーナ
「人混み、嫌い」
「うるさい引きこもり隠キャ野郎」
「2人とも相変わらずだな〜」
人混み、嫌い、と5分前から100回ぐらい言っている前ちゃんに、あやの本音がチラリ、といった構図だ。人混みと前ちゃんは言ったが、まさにその通り。私たちは、アリーナ席の後ろ側に座っているが、前を見れば人、右サイドのスタンド席を見れば人、左サイドのスタンド席を見れば人、さらに、全体的に警備員といった感じで、満員。まるでライブ会場にでもいるような感覚になる。学校の制服を着ているけど。
「おっ、暗くなった」
日常会話を繰り広げるうち、会場が暗転。ステージ、演台があるほうも、全てが暗転した。
そして、スポットライトが、ステージの方へ当てられた。
「ニホンノミナサン、コンニチハ。ケネスホワイトデス」
照らされているのは、アメリカ合衆国大統領、ケネス・ホワイト。アメリカ合衆国大統領ではあるが、大の日本好き、日本通で、よくプライベートでも来日することで有名。日本語も少し話せるという。
それから、大統領は演説を続けた。私はヒアリングもできるため、内容はだいたい分かるが、まだまだ本題には入らなそうだ。隣の2人は………………
「………………………」
「………………………」
寝てはないけど、完全に聞き流してるよこれ。まぁ、まだまだ本題ではないから聞く必要もあまり無いだろうけど。なのに、この気の抜きよう、とても警備に当たっているとは思えない。
※
6/10(土)
「暇っすね」
「そうだね」
昼下がりの土曜日、現役をリタイアをしたご年配の方のように、公園のベンチにのほほんと佇むこのと私、江添凪。もともと、青さんと玲とで1日自宅でダラダラと過ごす計画を立てていたものの、2人に突如外せない用事ができたため、気づいたらここでのほほんとしていたのだった。
「何やってるんだろう。青さんと玲は」
「さぁ?あまり多く語らずにどっか行ってしまったっす」
会話がワンバウンドしか続かない。特に話すこともないからだ。ならばなぜ今日、このようにして共にしているのか。一緒にいることに意味があるから、だと思う。そうしているとき、こののスマホに通知が届いた。このはスマホに目を向ける。
「なんっすか、これ」
「どうしたの、この」
「いや、なんかショートメール来たんっすけど、知らないアドレスで、しかもURLだけ貼られて届いたっす」
「何それ。危ないから開けないほうがいいよ」
「そうっすね」
こののスマホに届いたのは、出どころの分からないURLだった。この手のURLはウイルスで、スマホがジャックされる。よくある手口だ。
「お、黒下と………………君の名は!…………何や」
自転車で私たちの前を通りかかった啓くん。サドルから降りたかと思えば、さっきの某新海さんの有名映画の一言であるっす。これを聞いた凪さん、静かにベンチから立ち上がり、的確にミゾオチをつく一撃、啓くんはその場に倒れこんだっす。
「かぁ……………何
「『君の名は』なんて、随分とご挨拶だねぇ。室生くん」
「じゃあ、『接近戦 切り裂く 僕の前に立ってる お前は誰だ?』のほうがよ」
啓くんの発言を遮断し、さらにひざ蹴りで顔面打撃!痛そうっす!そして、凪さんは人を人とも見ない目、ゴミ以下のものを見るような目をしてるっす。
「JASR◯Cに怒られる…………」
「いやそういう問題っすか?!」
どうやら、JASR◯Cに目をつけられるのが面倒くさく、啓くんの発言を遮ったらしいっす。でも正直、この小説、JASR◯Cに目をつけられるほど(以下中の人による自主規制)
「んで、鼻と口から血を垂れながら蹲っている室生くん。なぜここにいるのぉ?」
「血と蹲りに関しては完全にマジLOVE1000%おめぇのせいやろ!江添、お前の青村化が進みまくっとるわ!」
「それは逆っす啓くん。凪さんがあやさんに寄ってるんじゃなくて、あやさんが凪さんに寄ってるんっす」
「マジかいな…………はっはっはっはっ」
啓くんの絶望スマイル、こうなんか、私の中のサディストが目覚めてくる。
「それで、なぜここを通りかかったの?」
「んまぁ、今日は前山と遊ぶ約束しとうたんだが、急にアイツの方からキャンセルの連絡を貰ったんや。そんで、急遽暇になったんで、この近くのお宝鑑◯団に向かっとるってわけや」
「室生くん、君もか」
「は?どういうことや」
「私たちも、あやさんと玲さんに今日の予定キャンセルされたんで、路頭に迷ってるところなんっす」
「路頭ってお前……………でも、そんな偶然もあるんやな」
不思議な偶然があるものだと感嘆する私含めた3人。もしかしたら、ただの偶然じゃない?いや、なるはずの未来、必然なのではないか、そう思った私がいたっす。
※
私たちは、相変わらず会場のアリーナ席で演説を聞いていた。とは言っても、大統領の、ではなく、その側近や近親者などの講話となっていた。また、前ちゃんとあやの聞き流してる感じも相変わらずだ。本題はまだまだ遠いと思われていたが、そんなレベルの遠さではなかった。まぁ、私にとってはリスニング、ヒアリングのいいレッスンになるけど。
そして、ひとつ、さっきから違和感に感じていることがある。人の動きが、開式直後に比べ、激しいことだ。この演説、一度会場に入ってしまうと、一度たりとして退室することができない。警備上の関係で、だそうだ。その割には、退室する人が多い気がする。トイレが我慢できなくなったとしても、些か多すぎである。そして、その退室している人は、一般席、スタンド席に多いことがわかった。
「ねぇ、あや…………?」
さっきまでの、聞き流しているあやとは違っていた。前ちゃんも同様に、だ。前を見据え、姿勢を正して座っている。言葉で形容するならば
『何か起こることを、予感している』
といった感じだ。そして、2人は、装備を忍ばせている懐に手を当てる。
轟音が鳴り響いた。スタンド席側にある二枚扉が、爆発四散した。煙、砂埃が落ち着く前に、私たちが望む敵が姿を現した。爆発によって、スタンド席、アリーナ席双方に脱出欲に支配された人々の暴走…………………パニックが起こった。しかし、私は脚がすくんで動けず、前ちゃんとあやはただ、動かずにいた。その敵が、動く気のない私たちをロックオン。一直線に、こちらに向かってきた…………………
戦闘描写、頑張ります!(誰)