ここは飛行島、様々な人が住民としてここに暮らしているが今はそんな所の話より、シャケの形をした島が賑わっていた。
その中に二足歩行の熊の銅像がある私立茶熊学園という学校があった。その学園は生徒のほとんどは冒険者を主として様々な事を学べる場であり、入学には様々な条件をクリアせねばならないがその分以上のリターンが十二分手に入れられるという場所でもある。
-私立茶熊学園 三年生の教室-
「それじゃみんな、朝のHRだよーん。」
ここは三年生の教室で教壇には三年生の担任で座学の一辺倒の授業と飼育委員の顧問を任されているイシュプールが立っていた。
「ふんふん…うん、そうか分かってるよ。それじゃHRは終わりだからこの後はちゃんとシャケノボリにね?それじゃ…ニュルリンと…」
イシュプールは生徒達を見渡しそして背中の蛇たちが持つ名簿を見ると教室を抜け出した、その後教室内の生徒らはすぐさま講堂に行く者や席に座って話し合う生徒がいた。
「うーん…相変わらずイシュプール先生が何を分かっているのかが分からねえな…」
「うむ、妾にもさっぱり分からないな…?そういえば委員長は?」
その中で話し合っているカウボーイ風な男子生徒のデューイと何故か王冠みたいな物を被っている女子生徒のインヘルミナがいた。
「ん?あぁ、クライヴなら先に行ってんだろ?委員長だからな。」
「うむ…それもそうだな…妾らはいいのか?」
「別にいいんじゃね?弁当箱返してもらう時には『一緒に頼む』とか言われてないしな。」
「そうか、だが妾らも行こうぞ?たむろしていて遅れては風紀員の名が危ういしな。」
「そだな…まぁ、行きますか。」
そして二人は腕にまく『風紀』と刺繍されている腕章を掲げて講堂へと向かっていった。
-茶熊学園 二年生の教室-
「よォし!てめえらァ!朝のHRを始めんぞォ!」
室内なのにいかにも海賊みたいな仮面つきの帽子を被る少し顔が少し青めな男はエドガルド先生であり、体育の授業を受け持ち運動系の部活の顧問を任されている。あと生徒からはエドっぴーという愛称で呼ばれている。
「出席は定席表で確認済みだかァ…リアムとザックを知っているのはいねえか!?」
「あのー先生…」
「やっべー!?遅刻じゃねーか!?」
囲碁将棋部のハオが手をあげようとした時教室の扉が勢いよく開き、軽音楽部の部員のザックがローリングで入ってきた。
「…。」
「あっ…どうも、先生…おはようございます…」
「アァ…オハヨウゴザイマスだなァ…?ところでリアム…さっさと出てきなァ!」
エドガルドは開いている扉をくぐり抜け廊下に出て、ロッカーに対してローキックをくり出した。
「うっ…!」
「はよロッカーから出てこんかいィ!」
「わーったよ…!チィ…。」
いそいそとロッカーから出てきたのはザック同様に軽音楽部に所属しているリアムであり、エドガルドは二人を廊下に出してフシュルルと口から煙みたいなのが出そうなぐらい少し怒っていた。
「よォし…今から遅刻の罰でグラウンドを走らせようと思ったがァ…全体朝礼があるからなァ…」
「いや…先生…放課後は部活がだな…」
「そっ…そうですよ!俺たちで昨日夜なべして練習して手に入れたテクニックを…あ…」
リアムはいかにも『しまった』という顔をして隣のザックは青ざめてエドガルドは冷ややかな笑みを浮かべた。
「ホホーウ…良いことを聞いたなァ…?こりゃ楽しみだな…ケェハハハハッ!!」
「リッ…リアム…!」
「…マズッたか…」
そしてその後二人は短い説教の後何とか教室へと入れた。
「いやー二人共残念だねー?」
クヨクヨ席に着いた二人を待っていたのは楽しそうに笑っているコリンであった。
「でもそんな顔では今日来る新入生の皆さんを迎えられませんよ?」
そしてリアムらの後ろの席で少し心配するカモメもいた。
「そうだな…クヨクヨ顔だと部員も寄せつかない…ザックよ、イキイキと行こうぜ?」
「…そうだな、何時までもクヨってんのはダッセェからな!イキイキにリズムにハイッ!」
「Hey!リズムに…!ハイ…(小声)」
盛り上がろうとした二人だがエドガルドの睨みの視線を感じ取り萎縮していた。
そうして出席の確認を終えて二年の生徒たちは廊下に整列して講堂へと向かっていった。
「そういやカモメの方はどなの?部員の確保は?」
「私の方は明日の合同体育の時にでも勧誘してみます!コリンさんの飼育部はどうですか?」
「あたしの方は…まぁ…あともう一人ぐらいは欲しいかな?」
「そうですか、でもこの機会にRASN(主人公の名前)さんも顔を少し出せるだけでも何か部活に入れば…」
「無理だね、便利屋の生徒会にはそんな暇は無いと思うけど…?ましてや会長なRASNは現場のお仕事があると思うんだけど…?」
「うぅ、やっぱりですか…RASN君意外と泳ぎが得意だからうちのエースにもなれるのに…」
「ははは…」
そうしている内に二年生らは既に三年生が粗方集まっているシャケノボリ記念講堂へとたどり着いた。
-シャケノボリ記念講堂-
講堂内の席には茶熊学園の生徒と先生らが着席しており、壇上には茶色い熊のカムイ学長がいた。
「はい、皆さまこんにちは!今日はこの学園に新たな仲間が加わる事となりました、今回は一年生の代表の何名かが挨拶に来ているので盛大な拍手で迎えてくださいねー。」
カムイ学長が舞台袖に合図を送ると茶熊学園の制服に身を包んだアレクサンダーとエシリアが出てきて、その後に何故か無口の生徒会長とも呼ばれるRASNを随伴させたコヨミがやって来た。
「ん…?えっと…RASNさんは何故?」
コヨミの側のRASNは何かを訴えかけるような目でカムイを見て、それを受け取ったカムイは何かを納得した。
「ふむふむ…まぁそう言うことなら仕方ありませんね、それじゃこっちから自己紹介を始めますか?」
カムイはエシリアにマイクを向けようとすると、アレクサンダーがグイっと詰め寄ってエシリアも負けずとマイクに詰め寄った。
「うむ、僕様はアレクサンダーなのだ!友達になってくれるか?!」
「エシリアだよー!好きなものは面白くて楽しくてキレイで珍しいものだよ!!」
「あー、非常にエネルギッシュで可愛らしいでしたね。それじゃ…RASN?」
カムイは二人の自己紹介が終わると耳の下辺りに汗を垂らして、RASNにマイクを渡しRASNは『分かりました、カムイ学長。』と言わんばかりの表情でマイクを受け取った。
「あう…にーに…」
そしてRASNのそばにいるコヨミは頬と顔を紅く染めて、RASNの手を握っていた。だがRASNはその手に自分の腕の代わりにマイクを握らせてコヨミの背中をポンポンと押した。
「にーに…」
コヨミは舞台の前の方に行かされチラリとRASNの方を涙目で振り返り助けを呼ぶような表情をRASNを見つめ、RASNは少し吐血したが優しそうな目でコヨミを見つめ返した。
そしてそれを見たコヨミは少しモジモジして、覚悟を決めた顔で壇下の上級生らを見つめた。
「…コッ…コヨミです…ここには…弟のタローと来ました…よっ…よろしくお願いします…!」
そう言うとマイクをカムイへと押し戻して、RASNの元へと直進してまた腕を握った。
「あらら…随分シャイで可愛らしい子ですね、今後が楽しみですねー。」
そう言うとカムイは四人の前に立った。
「他にも一年生の生徒はいるのでまぁその先は自分の目と足でお確かめをっと、それじゃ今日の今後の予定としては一年生は風紀委員長と生徒会長と一緒に校内を回って…二年生と三年生は校内の大掃除をお願いしますね。それじゃ、あとはそれぞれ担任の先生の指示をあおいで下さいね。」
カムイがそう言い壇上の一年生とRASNを引き連れて舞台袖に消えた。
「それじゃ…三年生は各教室の掃除でいいかな?エドっぴー先生?」
「クッ…エドっぴーは余計だがそれでいい、二年生は半数はシャケノボリと体育館でリアムとザック以外は図書室とかを頼むぜ?」
「…あのーエドガルド先生…?俺達は…?」
おずおずとザックとリアムがエドガルドに駆け寄って聞きに来たが、エドガルドはニタァ…と笑っていた。
「…お前らは二人だけで明日使うプールの掃除だァ!…他の奴等に比べて一ヵ所だけだから良心的だろォ…?」
「うぅ…」
「くっ…何て事だよ…」
こうして校内の大清掃が始まった。
-シャケノボリ記念講堂 舞台裏-
「うぅ…にーに…」
暗い舞台裏には一年生とカムイ学長と風紀委員長のクライヴとコヨミに抱きつかれているRASNがおり、カムイはとても興味深そうに見ていた。
「それにしても…RASN君コヨミちゃんとは一体どの様な関係なのですか?熊であってもなくっても気になりますからね。」
RASNは事細かに伝えようとしたが、この生徒会長ダメージを受けた時や攻撃や交代の時など特定の時にしか喋らない困った体質のようなものを抱えているが何故か皆が付いていきたくなるのである。
「…うーん…私にも分かる限度があるので…クライヴ君は分かりますか?」
「…すみません学長、俺には全くサッパリで…」
「うーん…そうだ、コヨミちゃんはRASN君の言ってることは…」
「……。」
カムイがコヨミに語りかけようとするとスッとRASNの背中に隠れられた。
「あらら…?嫌われた…?」
「学長…もっと優しい熊にならないと皆に嫌われちまいますよ?」
「うーん、個人的には色々と努力はしているので余計なお世話なんですが…クライヴ君何とかしてくれませんか?」
カムイは一年生の列の先端にいるクライヴに助けを求めたが、クライヴはキョトンと驚いていた。
「…構いませんが…って何が余計なお世話なんですが…?」
「……えっ?でも優しい熊にならないと…って言ってましたよ…?」
「俺は何も…なぁ…?」
「そうだよなクライヴ、俺達は何も言っちゃいませんよね?」
クライヴは一年生に意見を求めようとしたが返ってきた返事は自分と瓜二つの声で、クライヴが一年生の方に振り返るとまるでミュージカルかクリスマスパーティに参加しているような服装のクライヴがにこやかに立っていた。
「んなっ!?俺っ!?」
「おや?クライヴ君はニンジャーにでもなったのでしょうか?」
「ふふふ…そうとも…」
「んなっ!?違う…いや違います!それよりお前は!?」
クライヴは懐から剣ではなく格闘家用のグローブを取りだしチャリンチャリンと鈴の音を鳴らせて両手にみーつふぁうすとを装備した。
「何者だ!?」
ザッと拳を掲げるがその際にもチャリンチャリンと鈴の音を鳴らせているので何か緊迫感に欠けていた。
「…フッ…」
だが拳を突きつけられているクライヴ(豪華版)は髪をかきあげてキラキラと何かの光を出しながら不敵な笑みを浮かべて剣を掲げていた。
「なら…実力で聞いてみたら…」
「…まさか…コリンねーね?」
先程からずっとRASNの陰に隠れていたコヨミがひょこりとやって来てクライヴ(豪華版)に近寄った。
「…。」
クライヴ(豪華版)は額に汗を垂らして、クライヴはハッと気付いた。
「そうか…、二年のコリン・ツチミカド…まんまと狐に化かされたか…!」
「ありゃりゃ…こりゃ参ったね…コーン!」
クライヴ(豪華版)はクルリと身を一回転させて煙となり、その中からはコリンが現れた。
「いやーちょっち一年生を挨拶代わりに化かしてやろうと思ったけどコヨミがいるとは思いもしなんだ…RASNも驚いたでしょ?」
「…。(コクコク)」
「…挨拶に来るのはいいんだか…二年は校内施設の清掃じゃ…?」
「ん?あたしゃシャケノボリと体育館の組で舞台裏の方を頼まれてね?」
「…成る程…」
「あーコリンさん?済みませんが私達も用があるのでこれ以上時間を取られては…」
「ん…?あぁすいませんね学長、んじゃあたしゃここを掃除するから…RASNはしっかりとコヨミを守るんだよ?」
「…!(コクッ!)」
「んじゃ失礼してもらうね、あと一年生は興味があれば飼育部に来てねー。」
そう言うとコリンは掃除用具入れから箒などを取り出して掃除を始めた。
「…宣伝するだけ宣伝して行きましたね…」
「…はい…」
「…ともかく後は生徒会長さんと風紀委員長さんにお任せしますので…」
そしてカムイもそさくさとその場を去り、クライヴとRASNは一年生を連れて校内を案内し回った。
-学生寮 こぐま館-
「それじゃ、最後にここがこぐま館だ。自宅からの通学の難しい生徒が基本的に寝泊まりしているが近場に自宅のある生徒会や風紀委員や部活動の生徒も申請すればここに寝泊まりできるんだ。」
「ふぅん…でも僕様は行きも帰りも出迎えがあるが…寮生活も悪くは無いか…」
「あちしはポテトと一緒に通学したいから関係無いかな…?」
「私は走るのがいいからピレちゃんと一緒だねー!」
一年生とRASNとクライヴは学校案内の最後にこぐま館へと訪れ、クライヴの説明を聞いて迷うアレクサンダーと関係なしと考えるピレスタとフウカやその他一年生がこぐま館の入り口にいた。
「あとこちらがこぐま館の管理をされているタイキさんだ。」
「俺、タイキっつうんだぁ。よろしくなぁ。」
鍬を持った筋肉モリモリのマッチョマンの変態ではない男が笑顔で立っていた。
「それじゃ、校舎案内はこれで終わりだが寮生は残れ。それ以外は明日は簡単なオリエンテーションと合同体育で水泳だから各自水着を忘れないように!」
「はーい!」
「うむ!分かったぞ!」
クライヴの掛け声と共に一年生はこぐま館を離れて下校をして、こぐま館の前には数名の一年生が残った。
「そんじゃ、今から部屋の鍵さ渡すから名前呼ばれたら取りに来てくんろぉ?あぁ荷物は玄関に置いてあるから取っていておいてくれよ。」
タイキは手元の名簿を元に名前を呼んで次々と鍵を渡していった。
「それじゃ、俺は一応風紀委員の方を見てくるから後は頼むぞRASN?」
「…!(コクリッ!)」
そしてクライヴは校舎へと戻っていき、RASNは鍵の受け渡しを見ていた。
「んーと、あとはパン・メルヘラヴィー!」
「あっ…はい…」
学生服だがウサギをモチーフとしたフードを被った少女がおどおどしながら鍵を取りに来た。
「ほい、無くさんでけろ?」
「あっ…!はい…。あの…あとでお話ししたいことが…」
「んあ…?話かぁええけど先ずは部屋に行きな、夕食の後に幾らでも相手になってやら!」
「…!?はい…!わかりゅましゅた!?」
パンはタイキの勢いのある声に気圧されたのかかなりビクビクしながらこぐま館に入っていった。
「よーし…って嬢ちゃんどうした?」
タイキの手にあった鍵の束も空となり名簿も懐にしまったがタイキの前にはコヨミが立っていた。
「あの…私も寮生活を希望していて…私のは…?」
「んん?でも鍵はもう無いしのぉ…?」
「え…?」
「ん…?ちと調べてくるから待ってくんろぉ。」
タイキはドスドスとこぐま館へと入り、残されたコヨミはRASNの元へと近寄った。
「…にーに…。」
「…。」
RASNは不安そうな顔をしているコヨミの頭を無言で撫でるしかなかった。
そうして日が傾き夕方となり二年と三年の寮生が続々とこぐま館へと入っていき、RASNとコヨミはベンチでそれをただ見るしかなかった。
「にーに、タイキさん遅いね…」
「…。」
RASNは目を細めてコヨミの頭を撫でていた。
「あり?どしたの二人共?」
寮へと入って来る学生郡の中からコリンと生徒会の副会長であるアイリスが二人の方へと駆け寄った。
「RASNにコヨミちゃん、一体どうしたの?」
「…!…!?…!!」
RASNは身ぶり手振りで二人の女子に何かを説明していた。
「んー?ダメだ少ししか分からないや…。」
コリンは半々程度分かっているような仕草で、それに対してアイリスはふむふむと頷いていた。
「成る程…でもタイキさんを待たないと分からないね…」
「…ちなみにアイリス、何て言ってたの…?」
「あっ…ごめんなさい、実は…(かくかくしかじか…)」
アイリスがコリンに翻訳の内容を伝えているなか、こぐま館からスドズドとタイキがやって来た。
「おぉう!生徒会長さん!待たせたべ!」
「むぅーむ…なら今は待つしかないよね…って来てるし。」
「それでなぁ、コヨミちゃんだっけな?」
「あっ!はい…コヨミです…」
「おらの所の部屋をひっくり返したり学長さんに問いただしてみたけんどよぉ…どうやら手違いで寮生じゃないって感じて部屋を用意出来ていねぇみたいなんだ…」
「…それは何となくアイリスから話を聞いて大体予想はしていたけどさ…どうすんの?」
「んー…学長さんに相談してみたんとこな…生徒会長さんの部屋は今RASN一人だからそこに住んでもらうって感じになったんだが…コヨミちゃんはどうだい?」
「…えっと…つまりにーにと一緒に住むって事なの?」
「ん?…まぁそう言うことだな、でも数ヵ月もすりゃコヨミちゃんの部屋も用意できんかも…」
「私!それでいいです!」
「んぉ!?」
コヨミは先程からおどおどとしていたが、RASNの部屋で寝泊まりすると聞くとキッパリと大声で了承し、それを聞いた三人のは驚いた。
「んなぁ…まぁそういうことなら後は会長さんに任せんべ、ほんじゃオラは夜食用のスープ用意すっからこれでな。」
タイキはいそいそとこぐま館へ戻り、コヨミは顔を少し赤らめてRASNに飛び付いた。
「えへへ…にーにと一緒だね。」
「…他に策はなかったのかしら…?」
「んー…でも学長が…ってことはやっぱあの時のかな…?」
「どうしたの?」
「…うんにゃ…何でもないよー、それよりコヨミ早いとこ荷物をRASNのとこに運ばないとね。」
「あっ…うんそうだね!」
「私も手伝うけどRASNは当然手伝うよね?」
「……!(…コク…)」
RASNは少し困惑した顔付きで頷いた。
「…にーに、ふつつかものですがよろしくね…?」
「…、…!」
RASNはニコッと笑いコリンとコヨミと共にこぐま館に入っていった。
「すっかり空気に流されちゃったど…大丈夫なのかしら…?」
そしてアイリスは一人寂しくこぐま館へ入っていった。