未来からの手紙   作:スターゲイザー

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お待たせしました。


第十話 復活のC&F

 

 光陰矢の如く、時間は瞬く間に流れていく。

 

「魔人ブウの復活エネルギーを得るのに十年以上はかかってるけど、この四ヶ月は特に長かった気がするよ」

 

 長かった日々を思い返すバビディはこの四ヶ月のことを思い返す。

 

「ドラゴンボールが石になってたから詳しい奴を探して聞き出す必要があるのに僕達の生存がバレちゃ意味がない。隠れながら調べるのは苦労したね」

 

 折角、死を偽装できたのだから利用しない手はない。また前のように邪魔をされない為には生きていることを悟られるわけにはいかないのだから行動も慎重になる。

 しかし、ブロリーを念入りに洗脳して手下にし、ドラゴンボールという万能の願い球を手にしたバビディだが初っ端から躓いていた。有能な部下が出来たのは良かったのだが、有効活用しようとしていたドラゴンボールは完全に石になっていてうんともすんとも言わない。

 

「幸いにもドラゴンボールの近くにいた子供の記憶に物知りな奴がいたから助かったけど、あのベジータって奴が近くにいた所為で中々手を出せなかった」

「ベジータ……」

「確か君達サイヤ人とかいうのの王子じゃなかったけ、ブロリー」

「はい」

 

 良く分からない物を良く分からないまま使うよりかは知っていそうな人物を当たることにする。幸いにも記憶を呼んだ悟天の関係者の中に該当する人物がいた。

 そして目的の人物がいるカプセルコーポレーションを探すのは容易い事だった。

 ブロリーと闘った三人の内の一人、ベジータの力を探ればいいのだから。自らの力を高める為に隠蔽など考えていないベジータの居場所を探るのは簡単だった。

 

「とはいえ、下手に近づきすぎれば感づかれかねなかったところで運良く離れてくれたお蔭で助かったね」

 

 魔術で隠匿しても完璧に消えられるわけではない。バビディは如何なる人物であろうとも気取らせない自信はあるが、孫悟空のように神に近い力を幾つか有していると気づかれる恐れがある。念には念を入れて確実を期そうとしていたら、ベジータが勝手にカプセルコーポレーションから離れてくれたお蔭で助かった。

 あまりにもタイミングが良すぎるので罠かと考えて暫く待機していたが戻ってくる気配はなかった。

 

「罠かとも思ったけど僕達が生きているのはバレていないようだから関係なかったみたいだし」

 

 バビディとブロリーが生きていることをベジータ達が知るはずもないので罠の可能性は低い。下手に時間をかけすぎれば界王神辺りがバビディが死んでいないことに気付く可能性もある。

 ブロリーに警戒を任せ、魔術で姿を消したバビディがカプセルコーポレーションに潜り込んでブルマの記憶を読むことに成功した。

 

「ただ、一つでも願いを叶えてしまうとインタバールが必要なのは少し誤算かな」

 

 ドラゴンボールで叶えられる願いは三つ。内一つでも叶えてしまうと次にドラゴンボールが使用できるまで四ヶ月必要になる。

 

「能力の限界も考えないといけないのは面倒臭いよね。作った神様の力以上のことは出来ないなんて無能も良いところだよ。これだと魔人ブウの復活は無理だろうな。僕に出来ないことを界王神とかが出来るはずがないし」

 

 ドラゴンボールを七つ集めると出て来る神龍が叶える願いは造った神様を越える力以上のことは出来ないという。

 死んだ者を蘇らせることが出来るなら十分かもしれないが、界王神を知っているので魔人復活をストレートに願っても叶えられる可能性は限りなく少ないだろう。

 

「復活の為のエネルギーも多分駄目かな。やっぱり誰か生き返らせて手下にするぐらいになっちゃう」

 

 そうなると以外に叶えてもらうことが少なくなる。

 

「今更、ダーブラを生き帰らせても頼りにはならないだろうし、どう思うブロリー?」

「分かりません……」

「さて、誰を生き返らせようか」

 

 ご機嫌のバビディは生返事のブロリーが相手でも気にせずにしゃべり続けて人里から遠く離れた地に移動して待っていた夜になった。

 

「始めようか、ブロリー。ドラゴンボールを」

「はい」

 

 額に「M」字が書かれた細い体のブロリーが従順に答え、持っていた袋から七つの球を地面に転がせる。

 

「ええと、ゴホン…………出でよ、神龍。そして我が願いを叶え給え!!」

 

 咳払いをしたバビディが合言葉を叫ぶと、七つのドラゴンボールが閃光を発して神の龍が出現する。

 

「これが神龍……」

 

 夜の空を神々しく照らし出し、光の中心に浮かぶ龍の姿は神の名に相応しい威厳を持っている。その技術に驚きながらもバビディの中に僅かな嫉妬が浮かび上がる。

 

『さあ、願いを言え。どんな願いでも3つまで叶えてやろう』

 

 神龍が厳かに、そして傲慢にも聞こえる口調で告げる。

 

「これは願いではないのだけれど」

 

 と、まずは前置きを置いて確認する。

 

「孫悟空を知っているかい?」

『知っている』

「じゃ、じゃあ、孫悟空とその仲間に殺された悪人の中で、このブロリーに近い強さの持ち主か、潜在能力を有している者を生き返らせることは可能かい?」

 

 孫悟空を知っているのならば話は早いので、この四ヶ月の間に考えた願いは叶えられるかを聞く。

 

『…………』

 

 考えているのか、調べているのか、神龍は十数秒沈黙したまま言葉を発しない。バビディも敢えて問い質すことなく、神龍の返答を待つ。

 

『孫悟空とその仲間に殺された者の中で、そのブロリーという者の力の半分も持つ者はいない』

「いないのか。じゃあ、潜在能力の方は?」

『…………該当する者が二人いる』

 

 おお、と返って来た返答にバビディは感嘆する。

 

『だが、その者達はどちらも死後一年以上経っており、例え生き返っても肉体までの蘇生は出来ない。そのまま魂だけ戻っても意味はあるまい』

「え、そうなの?」

 

 そう上手くことが運ぶわけではないらしい。少し予想外の神龍の言葉にバビディは考えた。

 

「じゃあ、どうすれば肉体も含めた蘇生が可能になるのかな?」

『その問いに返すには願う必要がある』

「気が利かないね」

 

 ブロリーに近い潜在能力を持っている者が二人いることを教えてくれただけでも十分に気が利いているのだが、自己中心的なバビディが気が付くことはない。

 

『願いがないのならば消えるが?』

「あ、あるに決まってるだろう! 勝手に消えられたら困る」

 

 バビディの嫌味はしっかりと聞こえているが勝手に消えることも出来ない。

 

「一つ目の願いだよ。ブロリーに近い潜在能力を持っている者を肉体も含めて蘇らせる方法を教えろ」

『随分、偉そうだな』

「うっ、蘇らせる方法を教えてください」

『しょうがない、分かった』

 

 願いをかなえてもらう立場のバビディは下手に出るしかない。

 言い方を変えると、仕方なさげに神龍の赤い目が光る。

 

『二人の魂はあの世にあり、まずその魂をこの場に連れて来ることを第二の願いとする』

 

 神龍は呼び出されれば願いを叶える。呼び出した善悪に関わらず。

 

『そして第三の願いで肉体の蘇生を願うことで、蘇生は果たされる。どちらか片方では意味がない。両方を叶えなくては二人が完全に蘇ることはない』

「つまりは三つの願い事を全て使い切らないと駄目なわけだね」

 

 バビディは少し考えて後ろのブロリーを振り返って、こいつに近い強さの持ち主か、潜在能力を持っているならば十分だと判断する。

 

「分かった。その二つを願いを叶えてほしい」

『良かろう』

 

 再び、神龍の赤い目が光ってバビディとブロリーから少し離れた場所に二つの光が生まれる。

 

「ここは……」

「私は地獄に……」

 

 現世に蘇った二人は今の現状を直ぐには認識できずにいるようだった

 

『願いは叶えてやった。では、さらばだ』

 

 その直後、3つの願いを叶えた神龍の姿が消えて、地にあったドラゴンボールが天高くに浮かび上がり、やがて四方に散った。

 七つのドラゴンボールの行方を追うことなく、バビディはにこやかに「やあ、始めまして」と蘇ったばかりの二人に声をかけた。

 

「あなたは?」

「君達を蘇らせた魔導師バビディだよ」

 

 小さい方の者が話しかけたバビディに不審の目を向ける。

 

「さっきのはドラゴンボールか。どうやら本当に生き返ったようだな」

 

 大きい方の者は空の彼方へと消えていったドラゴンボールを目で追いかけていて、バビディの言葉と合致する今の状況から己がどうなったかを認識する

 

「ドラゴンボール? あのナメック星の」

「ここは地球という星だよ。孫悟空とその仲間に殺された君達を僕がドラゴンボールを使って蘇らせたんだ」

 

 聞き覚えのある物の名を聞いた小さい方の疑問にバビディは少しの訂正を加える。

 

「説明は面倒だからね。やっちゃって、ブロリー」 

「はい……!」

 

 蘇らえた二人の邪心をビンビンに感じていたバビディはこれ以上は危険と判断して、後ろにいたブロリーをけしかける。

 気を入れてその身体の筋肉を肥大化させて超サイヤ人2になると、なんらかの動きを取ろうとしていた二人が波濤となって襲い掛かってきたブロリーに身構える。

 

「おぉっ!!」

 

 二人は互いに相手をけしかけてその場から逃げようとするが、ブロリーの動きの方が速い。

 

「ぐぉっ?!」

 

 ブロリーの拳が防御した大きい者の手を簡単に弾き飛ばしてその腹に深々と抉る。

 

「ちいっ」

「遅い」

 

 小さい者が地を蹴って大きい方よりも早く動き出して距離を開けようとするが現状の戦闘力の差はどうしようもない。

 瞬く間に追いつかれ、頭を掴まれて地面に叩きつけられる。

 一撃ずつを受けて二人はピクリとも動かなくなった。

 

「もうやっつけちゃったのかい。意外に持たなかったね、この二人」

 

 一撃でブロリーにノされて気を失ってしまっている二人に落胆するべきか、ブロリーが強すぎることを喜ぶべきなのか。

 ブロリーによって揃って頭を掴まれて吊るされている二人を見てバビディは感情表現に悩んだ。

 

「ほほう、邪心の塊みたいな奴らだね。ふむふむ、潜在能力も凄まじい物を持っているみたいだ。特にこの小さい方はブロリー以上になるかもね」

 

 ブロリーが意識のない二人をバビディの前に並べて、伏している二人の頭に手を当てたバビディが記憶や心を精査して想像以上の潜在能力に哂う。

 

「僕の手下に成ってもらうよ。はぁああああああああっ!!」

 

 手っ取り早くする為に二人を纏めて洗脳する。

 

「うおおおおおおおっ?!」

「ぐあああああああっ?!」

 

 意識がないまま苦しみ出す二人にバビディは更に力を籠める。

 

「秘めてるパワーを引き出してあげるよ。喜ぶといい、僕のお蔭で孫悟空とその仲間に復讐できるんだから」

 

 このまま洗脳に屈して協力するならば自分達を殺した者に復讐する機会を得ることが出来るのだと甘い悪魔の囁きをする。

 

「く、くおぉおおおおおおおお!!」

「うがぁあああああああああ!!」

 

 潜在能力を限界を超えて引き出すと、叫ぶ二人から尋常ではないパワーが辺りに向かって放出される。

 

「良く逆らうね。でも、君達はもう僕の術中にある」

 

 バビディですら魔術を使わなければその場に留まっていられないパワーの上昇に、このまま洗脳できれば良い手駒になると想像させて力を籠める。

 

「この私を……ぐっ!?」

 

 それでも尚、逆らおうとする小さい方をブロリーが腹を踏みつけてダメージを与える。その瞬間に生じた意識の隙間に洗脳の力を滑り込ませて浸透させる。

 

「ぐぐぐぐぐぐぐ……!」

「う、うう」

 

 こうしている間にも二人の脳裏には自分が殺された時のことがフラッシュバックしていることだろう。そうやって憎しみを煽ることで洗脳する。

 

「孫、悟飯――っ!!」

「ぉおおおおおおおおおおお!!」

 

 より大きな力の波濤が辺り一帯に広まり、爆発が起きたように地面が吹き飛ぶ。

 

「そう言えばまだ二人の名前を聞いてなかったね。君達の名前はなんて言うんだい」

 

 洗脳に手応えを感じたバビディは出来たばかりのクレーターの底でブロリーが張ったバリアーに護られながら、目の前で立ち上がる二人の額に浮かび上がったMの字を確認して聞く。

 

「セル」

「フリーザ」

 

 大きい者――――セルと、小さい者――――フリーザが自らの名を答える。

 

「くっくっくっ、これで奴らに一泡吹かせて魔人ブウの復活を果たすことが出来るよ」

 

 セルとフリーザを完全に従えたと思ったバビディは高笑いしていたが、その姿を後ろから見ていたブロリーの笑みが僅かに変化していたことに気付かなかった。

 

 

 




復活したのは御覧の通り、セル(C)とフリーザ(F)でした。

「C」はセルの名前の由来である「細胞」を意味する英単語「cell」の頭文字から。
フリーザは言わずもがな。その潜在能力も映画「復活のF」でのゴールデンフリーザを考えれば現時点でのブロリー以上が見込める。

本作において、超2のブロリーで超3悟空と同格。超3が超2の四倍ということで、超2悟空は超2ブロリーの四分の一。
悟空の超2の強さは原作とほぼ変わらないとして、セルはダーブラ以下で大した相手ではないらしい。とはいえ、フリーザや悟空達サイヤ人の細胞を使っているのでその潜在能力はまだあると仮定。

と言った経緯でセルとフリーザが蘇りました。
バビディに操られ(?)、潜在能力を引き出されれば悟飯達とも戦えるはず。

尚、ドラゴンボールは一年間使えない様子。

次回、『第十一話 バビディの招待』



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