未来からの手紙   作:スターゲイザー

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皆様、感想ありがとうございます。
お陰様で、本世界線ではナメック星を襲わなかったメタルクウラが超3ゴジ―タの波動を感じ取って地球に向かうことにしたようです。
ではでは、どうぞ。



大体、敵の方が想定を超えるものである






第十五話 悟空+ベジータ=?

 

 

 

 クレーターの底で地面に座って眠るブウが薄目を開ける。しかし、また直ぐに瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼットソードに封印されていたという老界王神に潜在能力を引き出してもらっている悟飯は苛立たしく感じていた。

 

「まだなんですか?」

 

 老界王神は自らの超能力でどんなに凄い達人でも隠された力を限界以上に引き出すことが出来る。

 割と良くある類いの能力ではあるが、今はどんな藁にも縋りたい悟飯は煽て上げて儀式をしてもらっていた。

 最初は変な踊り、次は座り込んでただ手を向けているだけにしか思えず、悟飯でなくても問い質したくなる。

 

「まだまだじゃな。お前さん、かなりの潜在能力を残しておるようで、もう少し時間がかかりそうじゃ」

 

 悟飯の問いに答えながら眉間に皺を寄せる老界王神。

 

「魔人ブウの脅威は儂も分かっておるから巻きでやっておるんじゃろうが。口を開かんと自分の内にある力を感じろい」

 

 そう言われては儀式を行ってやってもらっている悟飯は素直に従うしかない。

 本来ならば儀式に五時間、パワーアップに二十時間かかる代物を一時間で終わらせようとしているのだから老界王神の負担はきっと大きいものだろう。

 悟飯はそれ以上の不満を呑み込んで目を閉じる。

 

(力、僕の中にそんな潜在能力があるのか?)

 

 昔から潜在能力が高いとは言われていた。

 今では悟空とベジータも成れる超サイヤ人2に最初になったのも悟飯ではある。怒れば全世界の誰にも負けないとは以前に悟空に言われたことがあっても自身にそんな潜在能力があると思ったことは一度もない。

 

(物は試し、か) 

 

 超サイヤ人になることはせず、少し気合を込めてみる。

 途端に予想もしていなかったパワーが瞬間的に体外に溢れ出して烈風を生み出す。

 

「ぬあっ!?」

 

 烈風は一歩踏み込んで手を伸ばせば触れる距離にいる老界王神を容易く吹き飛ばす。

 

「あ!? ご、ごめんなさい老界王神様!? まさかちょっと気合を入れただけでこんなことになるとは思いも知らず……」

「いや、まあ、力を感じろと言ったのは儂じゃからな」

 

 スッテンコロリンと何度も転がった老界王神は激発しかけたが、何度も頭を下げて謝る悟飯に溜飲を下ろして鷹揚に頷く。

 

「本当に凄い。こんなに湧き上がるようなパワーを感じたのは始めてです」

 

 手を握ったり開いたりしながら、一瞬だけとはいえ悟空の超サイヤ人3にも匹敵するパワーを発したことを感じた悟飯は改めて老界王神に尊敬の眼差しを向ける。

 

「時間がないんじゃろう。終わるまでは向き合うに留めい」

「はい」

 

 敬われて悪い気はしない老界王神は少し鼻高々になりながら元に位置に戻って儀式を続ける。

 今のやり取りで休息が取れたので仕上げに移る。

 再び集中を始めた老界王神はともかく、自分の内にある力の流れを感じ取った悟飯は少し暇になった。

 

「界王神様、お父さん達は?」

 

 少し離れた場所で地面に置いた水晶で地球の様子を見ている界王神に聞く。

 

「どうやら悟空さんは死んだベジータさんを現世に呼び戻してメタモル星人のフュージョンを試すようですね」

「フュージョン?」

「所謂、二人を一人にして強くする合体技じゃな」

 

 フュージョンのことを知らなかった悟飯は頭を捻るが、頬を汗が流れていった老界王神が簡潔に説明する。

 

「少ししか見ていない儂の私見じゃが、その悟空というものとベジータというものがフュージョンをした強さは恐らく潜在能力を解放したお前さん以上じゃろう」

 

 儀式の前に悟飯了承の上で記憶を見た老界王神の意見に悟飯は驚きを露わにする。

 ならば、別に自分は潜在能力を解放しなくても良いのではないかと考えが浮かび上がる。

 

「じゃが、楽観はせん方がええじゃろう。今のブウからは底知れない物を感じる。勝てるかどうかは未知数かもしれん」

 

 これだけ急いでいるにも関わらず、未だ終わらない悟飯の潜在能力に驚きを感じつつも、記憶を見た限りではフュージョンをした悟空とベジータが合体した戦士には劣ると見た老界王神。

 潜在能力を解放した悟飯よりも合体した戦士の方が強いかもしれなくても、今のブウの底は見えない以上は打てる策は打つべきだと集中している意識の端で考えた老界王神は別の思考に耽る。

 

(本当なら破壊神であるビルス様に出てもらうのが一番なんじゃが)

 

 かなり気分屋の上にワガママな破壊神を思い浮べたが、機嫌を損ねて7500万年もゼットソードに封印されていたので出来るなら最後の手段にしたい。

 

「じゃあ、フュージョンしたお父さん達と僕がそのフュージョンをすれば……」

「フュージョンは同じぐらいの強さでなければ合体できませんから、恐らく悟飯さんでは」

 

 悟飯が良いことを思いついたと顔を上げるが、界王神の推測も混じる言葉に却下された。

 

「ですので、悟飯さんが悟空さん、ベジータさんのどちらかとフュージョンすることも無理でしょう」

 

 超サイヤ人3を超える力を身に付けたら力の差が開いてフュージョンが出来る条件から外れてしまう。

 

「老界王神様、他に何か強くなる方法はありませんか」

 

 潜在能力を解放させた悟飯の力もまだ分かっていないので、取らぬ狸の皮算用に成りかねない。儀式の最中ではあるが、他にも方法はないかと聞く。

 

「…………ある」

 

 老界王神は少し考えた上で、そう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びブウがゆっくりと目を開けて、今度は立ち上がった。そして遥か彼方の空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピッコロの指揮の下、悟空達は動き出した。

 フュージョンの動作があまりにも格好悪すぎて不評が上がったりもしたが、そこは目の前の危機を乗り越えなくてはならないので我慢する。

 悟天とトランクスの指導をピッコロに任せ、悟空は瞬間移動で占いババの下へ向かってベジータを現世に呼び戻してもらうように頼み込み、チチやブルマ、仲間を回収して天界へ連れて行くことを繰り返す。

 

「悟天ちゃんは?」

「トランクスと一緒に精神と時の部屋に入っている。今は一分一秒でも欲しいからな」

 

 ピッコロの姿を認めたチチが開口一番に末の息子のことを聞いたのは当然の流れだろう。

 指導が無くても形になった二人を精神と時の部屋に入れてフュージョンの習熟をさせる。外界では一時間程度でも精神と時の部屋の中では十五日が経過する。可能ならば二人の実力アップを望んだピッコロの提案だった。

 

「もう出て来る頃だろう」

「お母さん!」

 

 噂をすればなんとやら。

 丁度、精神と時の部屋から出て来た悟天がチチの姿を見て声を上げる。

 

「トランクス!」

 

 遅れてトランクスも出て来て、チチの横に立っていたブルマが駆け寄った。

 

「ママ、そのパパは」

「分かってるから、大丈夫よ」

 

 抱き締められたトランクスは泣きはらした後のブルマの顔を見上げて言い難そうに口を開いたが、悟空からベジータの死を告げられていたので安心させるように頭を撫でる。

 二週間以上を精神と時の部屋で過ごして父の死を受け止めたと思っていてもまだ子供。トランクスは母の腕の中で少しだけ泣いた。

 

「オメェは大丈夫か、悟天」

「うん、僕は平気」

 

 答えた悟天は平気と言いつつも悟空のリストバンドとチチの服の裾を握っている。間近で肉親を亡くした悲哀を感じていただけに両親に触れていたいのだろう。

 

「お父さん、僕達フュージョンして超サイヤ人3に成れたよ」

「え、本当か?」

 

 息子の気持ちが分かる悟空が悟天の頭を撫でてやると、とんでもないことを言ったのでうっかり聞き逃しかけた。

 

「うん、五分ぐらいしか成ってられないんだ。お父さん達ならもっと長いと思うけど、僕達は五分経ったら合体も直ぐに解けちゃった」

 

 嘘だろ、と自身が超サイヤ人3に成るのに物凄く苦労した経験があるだけに容易に信じられなかったが、悟天が嘘を言う理由もない。しかも超サイヤ人3の特徴である燃費の悪さを教えたことがないはずなのに知っている。

 

「超サイヤ人3は燃費が悪いからな。フュージョンしている時に成っちまうと合体出来るエネルギーみたいな物が直ぐに無くなっちまうのかもしれねぇ」

 

 良く考えてみれば納得の出来る話ではあった。

 実際、フュージョンするとどうして二人が一つに成るのか原理は悟空も良く分かっていないので、燃費の悪い超サイヤ人3ではフュージョンの合体時間が短くなるのかもしれない。

 

「良く教えてくれた。助かったぞ、悟天」

 

 ピッコロの言っていたように実際に試してみなければ分からないこともある。分からないまま行っていれば致命的な失敗に繋がっていた。

 戦闘の中で訳も分からないまま合体が解除されていたら混乱して大きな隙に繋がっていたことだろう。

 

「来たか、ベジータ」

 

 褒めながら悟天の頭を強く撫でていた悟空は唐突に現れた気の持ち主のことを思い浮べて笑みを浮かべる。

 

「パパ!」

 

 遅れてベジータの気を感じ取ったトランクスが母の腕の中から抜け出して宮殿の外へと駆け出していく。

 悟空達も後を追って外に出ると、占いババに横に立つ天使の輪っかが頭の上にあるベジータがトランクスに泣きながら抱き付かれて困った顔をしていた。

 

「ベジータ、アンタはもう」

 

 死んでいるのに無事というのも変な話だが常と変わらないベジータの姿に感極まったようにブルマはそれ以上、何も言えない様子だった。

 その背中を苦笑したヤムチャが押してやると、ブルマはベジータに駆け寄るとトランクスと一緒に抱き付いて泣く。

 

「ははっ、あんなベジータの困った顔は始めて見たな」

 

 一つの家族の姿に思うところがあったクリリンはそう言いながらもマーロンを挟んで18号と目を合わせる。

 

「写真でも撮っときたいな」

「ベジータが気付いたらキレるぞ」

 

 悟天を肩車しながらチチの肩を抱いて笑う悟空の怖い物なさに少し呆れたクリリン。

 その近くで手カメラのポーズをしたヤムチャが一人で感慨深げに頷いている。

 

「カカロット、時間がないのだろう。無駄死にして敵を強くしただけの阿呆の俺をあの世からわざわざ呼び戻したんだ。策の一つや二つはあるのだろうな」

 

 トランクスとブルマから逃げるように振り払って来たベジータが早口に捲し立てる。

 

「無駄死にって…………自分を卑下し過ぎだぞ」

「ふん、ブウがブロリーを吸収したことは聞いている。最早、ブウは手の付けようのない化け物にしてしまった。慰めなど何の意味もない」

「だとしても、オラ達は逆の立場になっていたかもしんねぇんだ。前向きに考えようぜ」

 

 同じ選択をしようとしていた悟空は、自身の自爆後の顛末を知ったベジータの気持ちも分からなくもない。

 下手な慰めは誇り高いベジータに意味はないので、これからの話をしようと提案する。

 

「…………いいだろう。あの野郎は倒さなくちゃ気がすまん。貴様の提案に乗るのは業腹だが今は従ってやる」

 

 ベジータでは勝ち筋すら見い出せない相手だ。

 死人すら使うことで勝ち筋を見い出せるというならやって見せろと言わんばかりのベジータの態度である。

 

「フュージョンって奴をオラ達でするんだ。悟天とトランクスにやってもらうから」

 

 死んでも変わらないベジータの傲慢とも取れる態度に、後ろにいるブルマとトランクスが抱き付きたそうにウズウズしているのを見ながら苦笑した悟空が続きを口にしようとした瞬間、あってはいけない事態が起こった。

 

「っ!?」

 

 異常すぎる速さで移動する巨大過ぎる気。

 あの地で休眠しているはずのブウが突如として動き出し、この天界に向かって近づいてきている。

 

「全員、逃げろ!!」

 

 悟空が叫ぶが遅い。

 その直後にブウは天界へと上がって来た。

 

「ここにいたか、カカロット」

 

 天界に降り立ったブウの姿は以前とは全く別物だった。

 ピンク色の肌は変わらないがブロリーの体格とセルの知性を感じさせる眼差し。何よりもその身体から無意識に放散される力だけでも超サイヤ人3の悟空を上回る。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

「――――はぁああああああああああああああっっ!!」

 

 真っ先に飛び出したのはピッコロ。そして一瞬遅れてヤムチャ。

 彼らは自分がブウに手も足も出ないと分かりながら時間を稼ぐ為に自ら捨て石となった。

 

「行け!」

 

 マーロンを18号に押し付けたクリリンもブウに向かって行く。

 一瞬迷った18号は腕の中のマーロンを見て、ベジータが投げたブルマを抱えて天界を飛び出そうとした。遅れて同じように悟空に投げられたチチを受け止めたビーデル、亀仙人と牛魔王は自ら飛び降りようとする。鳥に変化したウーロンとプーアルが飛ぶ。

 

「悟天、トランクス! ! フュージョンを!」

 

 悟空がそう言っている間にピッコロとヤムチャが軽く振るわれたブウの腕によって殺された。

 悟天とトランクスも即座に気を合わせてフュージョンを始めた。その時にはクリリンも死んだ。

 二人のフュージョンが完成する直前、敢えて(・・・)悟空達ではなく天界から逃げようとしている者達にブウが手を向けていることに悟空だけが気づいた。

 

「止めろ!」

 

 ベジータはフュージョンを覚える為に見なければならず、見る必要がない悟空はブウが何をしようとしているのかを察して気功波を放つが、簡単に弾かれた。

 

「死ね」

 

 悟空が放った気功波を簡単に弾いたブウは嗜虐の笑みを浮かべて、一度溜めた気弾を握り潰して投げ放った。

 フュージョンが完成した光が一瞬だけ悟空とベジータの視界を染め上げる。その瞬間にブウの気弾は目的を達成していた。

 

「チチ! 牛魔王のおっちゃん! 亀仙人のじっちゃん!ブルマ! ビーデル!」

 

 ブウが放った気弾は数えることすら出来ないほどに無数に分裂し、逃げようとしていた者達を呆気なく殺しただけではなく、地上にも飛んで行って地球にいる全ての生きとし生ける者達を殺した。例外はない。

 

「「よくも母さん達を!!」」

 

 悟天とトランクスが合体したゴテンクスも気弾が直撃した母達が塵も残さずに死んだ姿を見てブチギレた。

 一気に超サイヤ人3になって悟空が止める暇もなくブウに向かって行く。

 

「ベジータ!」

「分かっている、始めるぞ!」

 

 悟空との融合と、あんなポーズを取るぐらいなら死んだ方がマシだという思いがあるが今のベジータは死んでいる身。何よりもブルマを殺されて大人しくしているほどベジータは人間が出来ていない。

 

「連続死ね死ねミサイル!」

 

 ゴテンクスが地上よりも丈夫な天界の一部を削り取るほどの連続の気弾を放つが、ブウはその只中を散歩するかのように歩いていく。

 スーパーゴーストカミカゼアタック他、ゴテンクスの全ての技で足止めを行うがブウは無人の野を進むが如く距離を詰める。

 

「雑魚が」

「「ぐわぁっ!?」」

 

 そして最後の一歩で触れるほどの距離に接近すると、ブウにとっては軽く小突く程度の裏拳を頬に叩き込まれて吹っ飛ばされた。

 たった一撃で超サイヤ人3が解除され、通常の状態になったゴテンクスが地面を抉りながら動かなくなった。

 その瞬間、再びの閃光がブウから離れた場所から迸った。

 

「「よくもやってくれたな、ブウ」」

 

 先程まで悟空とベジータがいた場所にゴテンクスと同じようにメタモル星人の衣装を纏った一人の男が立っていた。

 

「また雑魚がやられに来たか」

 

 超サイヤ人のオーラが柱のように天に昇って行く。

 一気に超サイヤ人3になったころで、大瀑布の如きオーラが天界を覆い尽くす。

 明らかに悟空とベジータとは一線を画す戦闘力を有する男を前にしてもブウに臆した様子は見られない。

 

「「俺は悟空でもベジータでもない。俺は貴様を倒す者だ!」」

 

 悟空とベジータが合体した戦士ゴジータは超サイヤ人3に成った感じから制限時間は十分と推定して、その間にブウを倒すと心に決める。

 

「他の奴よりは破壊し甲斐がありそうだ。少しは俺を楽しませろ」

 

 先程までとは次元違いの増大した気の波動を浴びてブウは少しは楽しめそうだと笑い、二人の超戦士の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 




悟飯の記憶と水晶でセルとブロリーを吸収したブウを見た老界王神、かなり焦って潜在能力を解放させる為に無理をする。
後、ビルス様が存在することが確認されました。

現世に戻って来たベジータ一家の触れ合いに思うところありのクリリン一家と孫一家。
そこへまさかのブウ強襲。
ピッコロ、ヤムチャ、クリリン死亡。
逃げようとした者達もろとも地球にいる生物を殺したブウにブチ切れたゴテンクスは瞬殺される。死んではないが気絶。

誇りだ恥ずかしいだと言っている暇もないベジータもフュージョンを了承。ゴジ―タとなる。
超3となるが、元の二人のエネルギーコントロールを鑑みてゴテンクスよりは合体時間は長くなると算定(ドラゴンボールGTの超4ゴジ―タの合体時間が10分なので)

次回、『第十六話 嗚呼、合体戦士達』

果たして超3ゴジ―タはブウを倒せるのだろうか? 尚、制限時間は10分間のみ。

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