地球を離れていたフリーザ様がゴジットの気を感じて、こいつを超えなければならないと決意を新たにしたようです。
気のバリヤーで体を覆うことでブウに吸収されずに体内に入り込んだゴジット。
『もう誰一人として俺の邪魔をする存在はいない! 思う存分に殺戮と破壊を楽しんでやるぞ!!』
「五月蠅い奴だ。あの野郎の中にいるから声が響いて仕方がない」
全ては作戦通りに事が運んだが、この大声だけは予想外に響いていたので両耳を塞がなければならなかった。
「予想通り、逃げることも戦うことも考えられないように追い込んで吸収させることには成功した」
怒り様は演技ではなかったが悟天とトランクスをゴジットが見捨てるはずがない。
「ここで魔人ブウを見逃せば、吸収を続けられたら勝てる保証が無くなる。嘘であっても殺すと言ったことには二人で後で詫びなければならん」
魔人ブウの本当の恐ろしさは表面上の強さではなく、人間を吸収するごとにそのパワーを得ていくことにある。
今はゴジットが遥かに上回っているが、もしも二人と引き換えに見逃しても多くの人を吸収して自分の方が上になったら、また襲い掛かって来ることは想像に難くない。
少しでもゴジットが二人を気にする素振りを見せれば、ブウは確実に取引材料として利用したことだろう。確実に上回っている今しか、例え悟天とトランクスを自らの手で殺すことになったとしても、ブウを倒すことをゴジットに決意させた。
「さて、上手く潜り込めたが悟天とトランクスはどこにいるのか」
怒りすらも利用しきる戦士ゴジットは当初の目論見通り、バリアーを張ってブウの体内に潜り込んで悟天とトランクスを探し始める。
「気は探れんか」
方向も定まらないまま歩きながら気を探るが、流石に体内ではブウの気が大きすぎて二人の気はゴジットでも感じられない。
「となれば、足で探すしかない」
気が感じられなければ瞬間移動も使えないことを意味しており、吸収した時に合わせて小さくなった体で広大なブウの体内を自らの足だけで探すことを意味している。
「手や足に吸収した二人がいるとも思えん。あるとすれば、頭か胴体のどこか可能性が高い」
推測になってしまうが、それほど外れてもいないだろうと考えて歩きながら、もう良いだろうとバリアーを解いた直後に罅が入っていたポタラが音を立てて割れた。
途端にポタラによる合体が解けて、フュージョンによる合体も合わせて解けて三人に別れる。
「「「なっ!?」」」
三人は驚愕しながらも無様に尻餅を付くような愚は犯さず、危なげなく足から着地して互いの顔を見渡す。
「な、なんで合体が……? しかもポタラも壊れて」
ポタラのことを老界王神から直接聞いた悟飯が耳に付いているポタラを触ろうとして、既に粉屑と化して手は空を切る。
「一度合体したら二度と戻んねぇんじゃねぇのか?」
「僕はそう聞いたんですけど……」
悟空に聞かれても悟飯にだって分からないものは分からない。
「ふん、俺としてはこうなってラッキーだぜ。貴様らと一心同体になって一生に過ごすなんて寒気がする」
「つっても、ベジータ。オメェは死んでんだぜ。合体してなかったらあの世に戻るしかないんだぞ」
「覚悟の上で死んだんだ。そんなことは貴様に言われるまでもない」
生き返れないと分かった上で自爆をしたベジータにとって、悟空の言うことは今更でしかない。
「でも、本当になんで合体が解けちゃったんでしょう。ポタラまで無くなっちゃったし」
こうしている間にもブウに気付かれる危険があるが、このことが分からない事には先に進めない。
「…………これは推測だが」
天使の輪っかを頭の上に浮かべながら悟飯の疑問に一応の答えを自分なりに考えたベジータが口を開く。
「まず第一に、あのポタラって奴の想定外の使い方をしたからかもしれん」
「想定外って?」
「あ、フュージョンのことかもしれません。でも、老界王神様は何も言ってませんでしたけど」
「だから、推測だって言っているだろう」
ゴジットになるには、フュージョンをした悟空とベジータが合体してゴジ―タとなり、そこにポタラを使って悟飯と合体する必要がある。
普通ならば一対一の合体のはずが、片方の一人がフュージョンをした二人というのは確かに適切な使い方とは呼べない可能性はある。
「第二に、このブウの体内の嫌な空気だ。仮に界王神が魔人ブウと対極の存在だとすれば、そのポタラって奴は相性が悪いのかもしれない」
「界王神様と少し話をしましたけど、界王神様は惑星を作成し管理する創造神としての役割を持つって言ってました。ブウは気の資質が邪悪ですし、相性が悪いと言うのは合ってると思います」
腕を組んだ悟飯がゼットソードを抜きに行く際の少しの時間の間に話した内容と合致するベジータの推測に頷く。
「最後に、これは単純にあのポタラが俺達が合体したパワーに耐え切れなかったことだ」
これには悟空も悟飯も少し考え込んだ。
「ああ、オラもまさかあそこまでパワーアップするなんて思わなかったもんな」
ブウを追い詰める為とはいえ、超サイヤ人3になった時のパワーは今の悟空では逆立ちすらしたって及びもしない領域にある。
悟空の知っている界王神が界王神の中でも普通のレベルにあるとすれば、あまりのパワーにポタラの耐久力が持たなかったという推測は考えさせられるものがある。
「とはいえ、ポタラが壊れてしまった以上はここで話していても答えが分かっても意味はありません。悟天とトランクスを探しましょう」
「だな。二人を助けて、セルやブロリーをやっつけちまえば今の悟飯なら楽に倒せるだろう」
「忌々しい話だがな」
全く以てベジータにとっては、悟空の超サイヤ人3も潜在能力を解放した悟飯の力はいけ好かないものであっても頼もしいことに変わりはない。
「で、どう探すんだ? 手分けして探すか?」
急ぐ必要はあるが二人がどこにいるかも分からないので、一番手っ取り早いのは分かれて別々に探すことである。
「ブウの体内ですから下手に別れるのは得策ではないと思います」
取りあえず、真っ直ぐ進みながら悟飯が答える。
「そうだな。気づかれて各個撃破されてしまうのが一番怖い」
この中で一番弱いのはベジータである。別れて行動していて一番殺される確率が高いのはベジータだ。
「一緒に行動していれば一人二人が足止めしている間に悟天とトランクスを助けられるもんな」
足止めに徹しなければならないのは戦闘力が一番高い悟飯が次点で超サイヤ人3になる悟空となる。
その場合、悟飯は必ず逃がすと心に決めた悟空は微かに気を感じて顔を上げた。
「悟天の気だ!」
「…………こっちだ!」
一番最初に悟空が気づき、遅れてベジータが微かに感じたトランクスの気の方向を割り出して走り出す。
そう時間もかからずに目的の場所へと到達する。
「悟天、トランクス!」
見つかることなどお構いなしに全力で走った三人の中で最初に辿り着いたのはやはり一番戦闘力の高い悟飯だった。
遅れて悟空とベジータも到着し、悟天とトランクスが上下から伸びた繭のような物に囚われた状態ではあるが無事な姿を発見して胸を撫で下ろす。
「良かったぁ……」
はぁぁぁぁぁ、と長い安堵の息をついた悟空は座り込まんばかりであったが流石にブウの体内で尻をつける気にはなれなかった。
隣で厳しいしかめっ面を珍しく和らげてトランクスを見たベジータは、近くで二人と同じように繭に囚われたセルを見つけた。
「セルもいるのか」
「どうやら、ここが吸収された人を安置する場所なのかもしれませんね」
悟天とトランクスだけでなくセルの姿も直ぐ近くにあったといことは、悟飯の言うようにこの場所は吸収された人はこの場所にやって来るのかもしれない。
「おかしいぞ。ブロリーの姿がない」
二人を切り取って助けるのは簡単だがブウに気付かれる可能性も高いので、先に吸収されたセルとブロリーを排除しておく必要がある。
「もしかしたらブロリーだけ別の場所にいるのかも」
「アイツの強さを考えたら特別扱いもするか……」
ブウ自身よりも強いのだから特別扱いもおかしいことではない。
「おい、こいつは一体どういうことだ?」
困惑したベジータの声に、二人を切り取ってから別の場所を探すか、それとも先に探すかを思案していた悟空と悟飯が声の聞こえた少し離れた場所に向かう。
すると、そこには意外な物があった。
「ま、魔人ブウ!?」
「こいつは封印から出て来た方の太っちょの方だな」
悟飯が界王神界にいた理由である初期ブウの姿に驚きを露わにしていると、比較的冷静な悟空がベジータと同じ疑問を抱く。
「ブロリーにやられかけてセルを吸収して、それでも敵わなくてベジータの自爆を活かしてブロリーを吸収、更にゴテンクスを吸収したけど、なんだってこいつがここに? 自分で自分を吸収したってのか?」
「そんな馬鹿な」
ブウがブウを吸収するなど、ベジータが鼻を鳴らすほど理屈に合わない話である。
「やはり吸収されていなかったか」
「「「っ!?」」」
そこへ唐突に体内表面からブウが現れて悟空達はその場から飛び退いた。
「何時まで経っても変化がないからおかしいと思って確認しに来てみれば、どうやったか知らないが吸収から逃れたようだな」
自分の体の中に現れたブウは、しかし言葉とは裏腹にそれほど悔しげではない。
「三人に別れていて耳飾りもしていないということは、もうあの厄介な合体は出来ないと見た」
「くっ!?」
的確に見抜かれた悟空とベジータが超サイヤ人2になり、悟飯は潜在能力を解放するが魔人ブウに比べれば焼け石に水。
好材料といえるのはブウがいる場所は初期ブウを挟んでいることで、悟空達の背後に悟天とトランクスがいた場所に繋がっている。
「はぁっ!!」
アイコンタクトを一瞬で交わした三人は、悟空がブウの体内に全力の気功波を放つのを合図にして動き出した。
「体が縮めば破壊力も減る。そんなことも分からんのか」
しかし、気功波は傷は付けたものの貫通することは出来ず、予想外の事態にベジータと悟飯も動けなかった。
「オメェを倒して出口を探すしかねぇってことか」
「出来るのか、その程度の力で?」
悟天とトランクスを助けて、セルを排除し、ブロリーを探して更に排除する。それを目の前のブウから逃げながらとなれば、三人が別々に逃げても難易度が高すぎる。
「殺される前に一つだけ聞きたい。吸収された悟天・トランクスとセルはいるのに、なんでブロリーだけがいない?」
少しでもマシな方法はないものかと悟空が会話で時間を稼ぐ。
「アイツだけは例外中の例外だ。俺にも押さえつけられないから完全に同化するしかなかった」
「同化?」
「そいつらを見て分かるように吸収しても俺の糧となるならば肉体を残すことが出来る。だが、ブロリーの場合は下手に体を残しておけば内側から破られかねなかった。だからこそ、急いで同化する必要があった」
つまりはブロリーが暴れ馬過ぎて飼い慣らすことが出来なかったので消化して同一化するしかなかったということか。
同一化してしまったのなら、道理でブロリーの姿だけがないわけである。
「ってことは太っちょのブウまで悟天達と同じ扱いなのは」
「セルを吸収した時に知性を得て、ブロリーと同化したことで新たな人格が誕生したことで不要になったからだ。厳密に言えば、俺はもう魔人ブウの皮を被った別人ということになる」
悟空の疑問に次々に答えていくのはブウの余裕の表れと同時に ゴジットの圧倒的なパワーと恐怖から解放された反動で饒舌になってしまっていた。
「最も完全に不要というわけではない。ブロリーの破壊衝動が強すぎて、今の人格を保つにはセルの知性と元の魔人ブウの理性が無くては安定しない」
ジリジリと悟空と悟飯の姿に隠れて囚われた二人の下へと蟻の速さで移動していたベジータの動きが止まった。
「良いことを聞いたぞ、ギャリック砲!!」
どうせ殺されるなら一矢報いてやるの精神で、悟空と悟飯にすら何も教えず最後尾から太っちょのブウに向かって全力のギャリック砲を放ったのである。
「ば、馬鹿野郎が!?」
悟空と悟飯は慌てて飛び退き、太っちょのブウの前に出現したブロリーと同化したブウが必死にギャリック砲を止める。
「悟飯!」
「合わせます!」
「「――――波っ!!」」
なんであれ弱体化するならば好都合と、悟飯と示し合わせた悟空がかめはめ波を放って追撃する。
「な――」
このダブルかめはめ波にはブウも対処が出来ず、体外までの穴は開けられなくても同サイズの太っちょのブウを消し飛ばすぐらいの威力はある。
ブウが振り返った時には芥子粒すら残っておらず、そしてその結果を見届けることなく悟空達は一目散に退却していた。
「ベジータ、オメェな」
「文句は後だ!」
気を隠す意味も無くなったので全力で飛んでトランクスの下へとやってきて繭を切り落とすベジータに、同じように悟天の繭を切り落としていた悟空が文句を言おうとしたが確かに今はそんな場合ではない。
「ついでにセルも、魔閃光!!」
手が空いていた悟飯は数時間前にボコボコにしてくれたセルへの恨みもあって、ブウの戦力ダウンの必要もあったので魔閃光で消し飛ばしておく。
「ぉ、ォおお……ぁああ、ぐぁあああああああ!!」
悟空とベジータが我が子を助け出して悟飯も出口を探して飛び上がると、表の魔人ブウの苦しむ声が聞こえたのと同時に辺り中がグニョグニョと不気味に変化し始めた。
「あった、出口だ!」
出口を見つけて外に出るよりも変化しきるのと同時に押し潰されるのが先かというところで、悟空が外から漏れる光に気が付いた。
真っ先に気付いた悟空が光の見える方向に向かい、行き過ぎていたベジータが引き返して続く。最後に殿を自主的に努めている悟飯が背後を気にしながら進む。
「追って来ない? それにこの声と言い、一体何なんだ?」
セルと元のブウを消滅させただけにしては苦しみ方が異様過ぎる。
外の光から入って来る穴が見えて向かいながら悟飯は自分達の行動は浅慮ではなかったかと思い始めていた。
「出た! 戻った!」
収縮を繰り返していた穴が開いたタイミングで外に出るとなんらかの法則でも働いていたのか、悟空達と囚われていた悟天とトランクスの体が元のサイズへと戻った。
「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!」
そこへ背を向けていたこともあってブウの気が混じった咆哮をまともに浴びて全員が吹っ飛ばされる。
クルクルと回りながらも遠く離れた場所に着地した悟空達が振り返ると、巨大なブウの体が膨張していた。
「お、おい、これ以上の変なことは勘弁してくれよ」
悟天を抱え直した悟空は背筋に走る嫌な予感に全身を震わせていた。
「気は減ってますけど……」
「取りあえずガキ達をどこかに隠すぞ」
セルと初期ブウの消滅と共に気の総量はグッと下がってはいる。
だとしてもまだ危険なことには変わりないのでベジータが子供達を避難させようとしたところで、カッと開いたブウの理性を失った瞳が悟空を捉えた。
「―――――――カカロット!!」
「ぃいっ?! またオラか!?」
巨体の割に無駄に素早いブウが殴り掛かったきたが、悟天を抱えているので悟空は避けれない。
「お父さん!」
手ぶらの悟飯が横からブウを蹴飛ばした。すると、今度は悟飯に向かって襲い掛かって来る。
「見境ないぞ、コイツ!」
ブウが自分だけトランクスを遠く離れた場所に避難させてきたベジータの姿を認めると、身体能力任せで向かって来るので避けるのに苦慮していた悟飯から標的を変えた。
「ウギャギャ、カカロット!!」
理性と知性も一緒に言語能力も失ったようだが、視界に悟空が入るとそちらに標的を変えて向かう。
悟空に向かう時だけは隙が大きくなるが、基本戦闘能力がブロリーの物を継承しているようで無駄に頑丈な上に防御だけはしっかりしているので攻撃が効いている様子はない。
「くっ」
瞬間移動でトランクスの傍に悟天を置いてきた悟空。
ブウの相手をする悟飯が限界を迎えると態と視界に入って悟空が気を引いてベジータが横から蹴飛ばし、一息ついたところで悟飯がまた相手をするというサイクルを繰り返すも先に倒れるのは自分達だと悟る。
「カカロット、フュージョンは!」
「無理だ。オラ達がフュージョンするには後一時間近くねぇと」
悟空とベジータのコンビではフュージョンすることは出来ない。
残るは悟飯だが、今のブウに押されながらも相手が出来るのは他にいない。
ベジータではフュージョンを覚えているか怪しいものがあり、そもそも悟飯にフュージョンを教える時間もない。
「どうする?」
悟空は自問する。
今のブウは理性と知性を失ってはいるがブロリーと変わらない戦闘力を持っている。悟飯が辛うじて食い下がれているのも理性と知性が失われているから。
悟空とベジータでは絶対的に戦闘力が足りず、フュージョンも出来ない。
今のブウが以前と同じく化け物染みた回復力を持っているとすれば、一瞬で消し飛ばすしか倒す方法はない。
「一つだけ手がある」
嘗て自身を追い詰めた、たった1つだけ残されたブウを倒す方法を先に思いついたベジータが苦い顔をして、悟空にその方法を告げた。
またお前の所為か、ブロリー!! 映画キャラの癖にどこまで出っ張るんだ!!
尚、ポタラが壊れた原因としての推測は三つ
1.ポタラの使用外の使い方をしたから
フュージョンと合わせるのは界王神専用アイテムでは無理だったんじゃないかな。
2.ブウの体内の空気
邪悪なブウの体内の空気は創造神の界王神のアイテムと致命的に相性が悪い
3.ポタラの耐久限界を超えたパワーを発揮した
これに関しては一番可能性は薄い模様。
まさかのブロリーが暴れ馬過ぎて完全同化されてしまった様子。
初期ブウとセルがいなくなり、理性と知性を失ったブウは邪悪な本性とブロリーの破壊衝動、悟空への執着が結びついてしまった模様。
ブウは弱体化し、15000程度まで戦闘力低下。しかし、アルティメット悟飯で5000、超3
悟空で4000と本作設定でなっています。
理性と知性を失ったブウは割と猛獣。悟飯でもギリ戦えるレベル。
ベジータが明かす決死の策とは?
次回、『第十九話 さらば、そして何時か』
続編のネタを下さい、なんて。