未来からの手紙   作:スターゲイザー

27 / 39
ちょっと遅れました。


ブルマの声優さんのご冥福をお祈りします。





ザマス編
第二十七話 未来決戦・序


 

 修理したセルのタイムマシンで悟空達は未来にやってきた。

 タイムマシンで時間を超えても場所を移動するわけではない。とはいえ、時代が変われば建物も変わる。最悪、空間が重なった場所に建っていた建物と同化してしまうのというのもありえる。トランクスが何時もタイムマシンを上空に浮かばせてから時間移動を行うのは、同化を回避する為もでもある。

 

「ここは……?」

 

 カプセルコーポレーションの上空で時間を移動しても、場所自体は変わらない。にも拘らず、悟空が地上に降りたタイムマシンから下りた時、そこが同じカプセルコーポレーションがあった場所とは思えない荒廃振りだった。

 

「嘗て西の都と呼ばれた場所、です。今はもう殆ど人はいません」

 

 タイムマシンをカプセルに戻したトランクスの横で辺りを見渡したベジータの視界に映るのは、見渡す限りの瓦礫と建物の残骸ばかり。

 こうなって一日二日という様子ではないのは、嘗てフリーザの部下としてあちこちの星を地上げする為に破壊していたベジータだからこそ良く分かった。

 

「誰もこんな瓦礫だらけの場所に住もうとはせんだろう」

 

 更地にするのではなく、中途半端に残すことで生きている人間の心を挫く。

 四大都市の一つである西の都はあまりにも広大である。その全てが瓦礫の山となっているのであれば、撤去するのには一年や二年では終わらないだろう。

 世界中が似たようなことになっているのなら、仮にゴクウブラックがいなくなったとしても西の都が復興するには十年、二十年かかっても終わるかどうか。

 

「…………これから、どうしますか? 一応、気は消していますけど」

 

 目の前の脅威であるゴクウブラックを倒さない事には何も始まらない。

 ビルスが戻ってくる前に出発することを優先した為、対ブラックの作戦は何も決まっていないに等しい。

 今更ながらの確認をするトランクスにベジータが鼻を鳴らした。

 

「気を隠す必要などない。ブラックだかザマスだか知らんが、カカロットと同じ顔なら俺が倒す」

 

 用心している悟空とトランクスはタイムマシンに乗る前から気を消して備えていたが、ゴッドの底知れぬ力を体感したベジータはそんな必要はないと平常モードである。

 

「おい、ベジータ。呼び寄せるにしてもどこに人がいるかも分からない場所じゃなくて、荒野とかにした方がいいんじゃないか」

「こんな所に誰もいるはずがないだろ。どうせ見つかり難い山とかに隠れているに決まっている」

「こういう街の中の方が無傷の缶詰とかもある可能性がありますから、絶対にいないなんて保証はないですよ」

 

 悟空の提案にベジータは自らの経験を下にしながらも、些か適当する考えにも思えてトランクスが眉尻を上げた。

 

「俺がブラックを倒すのだ。いる方が悪い」

「ん? ベジータ、もしかしてフュージョンをしない気か」

 

 傍若無人でベジータらしい意見だが、その言葉から一人で闘おうとしているのを察した悟空が流石に看過できぬと目付きも鋭く問いかける。

 

「必要ない。ゴッドの力を以てすればブラックなど恐れるに足らん」

 

 悟空を睨み返したベジータは自信満々に腕を組んで、更にはゴッドに成って威嚇してくる。

 

「悟空さん」

 

 トランクスに声をかけられて、ベジータに釣られてヒートアップしそうだった悟空は頭を冷やそうと一つ息を吐いた。

 

「ベジータ、ブラックを舐めるな。最後のロゼを見ただろ。ゴッドになったって勝てる保証なんてねぇ。確実に倒す為にフュージョンをすべきだ」

「…………貴様と合体するぐらいなら死んだ方がマシだ。あれは死んでいたあの時限りだということを知れ。ブラック程度の相手など俺一人で十分!」

 

 努めて冷静に説得しようした悟空に殺気交じりの目で睨み付けたベジータは比較的原型を留めていたビルの天井へと飛び上がって行った。

 

「ベジータのプライドを傷つけちまったかな」

 

 ブウ戦でベジータがフュージョンを了承したのは、自分の自爆で計らずともブウがブロリーを吸収して更に強くなったこと、死んだ後に占いババの力で一日だけ現世に戻って来た状態だったこと、ブルマとトランクスと再会した直後で自分では絶対に勝てないブウが現れた切迫した事態であったこと。

 様々な複合的な要素が絡み合ったことでベジータがプライド云々を持ち出す暇もなかったことが大きい。

 一日の時間があったこと、悟空が独力でゴッドに辿り着いたこと、悟空の顔をしたブラックが自分よりも遥かに強いこと等々、これまた複合的な要素が絡み合ってベジータを追い込んでいたのだ。

 

「悪いな、トランクス」

「いいえ、父さんがああいう人だというのは良く分かってますから。こちらこそ父がすみません」

 

 ベジータの誇り高さが悪い方向に進んだ場合のことをセルとの戦いで良く見知っているトランクスだからこそ、言葉で止められるような人ではないので悟空を責めるようなことはしなかった。

 

「俺達は気を消していますから、父さんの気を察知してやってきたブラックを狙う作戦で行きましょう。三人でかかれば戦いの場所を変えるのも難しくはないはずです」

 

 トランクスは何時も自分には背中を向けて立つゴッドになったベジータを見上げる。

 

「大人に成ったな」

「俺も直に三十になるんです。何時までも子供ではいられませんよ」

「そうか」

 

 頼もしいやら、子供に追い抜かれて寂しいような複雑な心境の悟空である。

 

「悟空さんはゴッドでブラックのロゼに勝てると思いますか?」

「…………難しいだろうな。ゴッドに成った状態で闘ったわけじゃねぇからハッキリとしたことは言えねぇけど、多分勝てない」

 

 不完全とはいえゴッドに成れた悟空の一撃では倒しきれなかったのは判断材料にはならない。

 今までの経験から考えて、ゴッドの先に至った悟空でさえ厳しいものがあるだろう。ベジータが節を曲げてフュージョンしてくれれば十分に勝てると思うのだが、あの様子では難しい。

 

「ところで、さっきから言っていたフュージョンというのは?」

 

 悟空とベジータは知っている前提で話していたが、トランクスはフュージョンなるものが何なのか全く聞いていない。

 

「ベジータの奴、教えてなかったのか…………フュージョンっていうのは、セルとの戦いで死んだオラがあの世でメタモル星人と仲良くなって教えてもらった技で」

 

 気を探って辺りの警戒を続けながら話をしていた悟空の第六感とでも呼ぶべきものに引っ掛かるものがあった。

 

「これは瞬間移動の――――ベジータ!!」

 

 瞬間移動の遣い手だけが感じ取れる微妙な感覚。

 違和感は離れた場所から感じられて、ベジータの直ぐ背後からだと気づいて叫ぶが時既に遅し。

 

「ぐっ!?」

 

 瞬間移動を感じ取れなかったベジータだが戦士としての勘か、悟空の声が放たれる前に防御にエネルギーを全振りしたのは流石と言えるが踏ん張りまでは利かなかった。

 

「父さん!?」

 

 ビルの屋上から蹴り飛ばされて何かの建物の残骸に突っ込んだ。

 

「馬鹿め、あれだけ気を発しておいて狙われないと思ったか」

 

 瞬間移動で現れた超サイヤ人ロゼになっているゴクウブラックが蹴り飛ばしたベジータを嘲笑う。

 

「まさか正面から現れて馬鹿正直に決闘を行うとでも考えているのならスポーツでもやるんだな」

 

 戦いの場において奇襲は立派な戦術、勝てば官軍なのである。

 まさか瞬間移動で奇襲を仕掛けて来るとは悟空達も予想していていなかったが、命のかかった戦いで卑怯だと批難したところで意味などない。

 

「くそったれがっ!!」

 

 自分で作り出した瓦礫の塊を盛大に吹っ飛ばしたベジータが苛立ち気にゴクウブラックを睨み付ける。

 

「時の指輪を使ったようには見えん。タイムマシンをもう一台用意していたか。抜け目のない奴め」

 

 ベジータに毛先程の興味も抱いていないゴクウブラックは、敵の出現に寧ろ喜んでいる様子で屋上の端に右足を乗せて悟空を見下ろして笑う。

 

「超ドラゴンボールで人の体を勝手に奪ったやつに言われたくないぞ」

「そうだ、ザマス! 界王神見習いにまでなった奴がなんでこんなことをするんだ!」

「…………ほう、どうやったか知らぬが俺の正体にまで辿り着いたか。褒めてやる」

 

 真名の言い当てられても焦った素振り一つ見せず、鷹揚に頷いたゴクウブラックは決して悟空が浮かべない歪んだ笑みを浮かべた。

 

「では、俺の目的を今更語る必要はあるまい。我が人間0計画の為に死ねよ、サイヤ人」

「ブラック、どこを見て話しをしていやがる! 貴様の相手はこの俺、ベジータゴッドだ!」

 

 悟空達は神龍に正体を聞いても目的を知らないままだったが、知る気も無かったベジータは自分を見ようともしないゴクウブラックに激発する。

 

「はっ、先の一撃を防ぐのに大半のエネルギーを使って良くほざく。分からんのか、ベジータ。お前の出番はもう終わったのだ。引き際を弁えるんだな、前座」

「貴様っ!!」

 

 気炎を吐いたベジータは先よりも明らかに衰えたゴッドのオーラを指摘され、怒りを抱くが二の口を告げなかった。

 

「ゴッドに至ったようだがそれまでと見える。いいぞ、三人でかかって来るがいい。俺の糧となれ」

「ブラックっ!!」

 

 三人がかりで丁度良いと言っているようなブラックに舐められていると感じたベジータだが行動に移すことはなかった。

 

「どうした掛かって来ないのか、ベジータ?」

 

 挑発に乗らなかったベジータを揶揄するゴクウブラック。

 ベジータにも分かっているのだ。こうしてその姿を間近で見たゴクウブラックの超サイヤ人ロゼは明らかにベジータの超サイヤ人ゴッドを上回っている。しかも先の奇襲でダメージを受けてしまって力の差は更に広がっている。

 

(勝てん、か)

 

 悟空と一緒に格上ばかりと闘ってきたベジータは、図らずとも見上げる形となった超サイヤ人ロゼのゴクウブラックから感じられる力を前にして口惜しさに身を震わせた。

 嘗てフリーザに挑んだ時ほどの実力差はないかもしれない。しかし、ゴクウブラックの厄介なところは自己回復も出来るところだ。仮に追い詰めることが出来たとしても、回復してパワーアップされては何の意味もないどころか勝率を下げる行為でしかない。

 

「トランクス」

 

 ベジータにとっては死にも勝る屈辱の選択である。それでもあの悟空の体を使っているゴクウブラックは必ず倒さなければならない。

 ゴッドの力を馴染ませる為に重力室での修業でトランクスより聞かされたこの世界のブルマの死とその願い。無為に帰しては過去の自分達に希望を託して死んだこの世界のブルマが浮かばれない。

 

「時間を稼げ!」

「……はい!」

 

 この一度だけ、この戦いの間だけ、この男を倒す為にベジータは再びプライドを捨てることに決めた。

 何をするのかを察したトランクスがゴッドになってゴクウブラックに襲い掛かる。

 

「またお前か、トランクス」

 

 興ざめだとばかりに露骨に溜息を吐いたゴクウブラックはトランクスの拳を容易く受け止める。

 

「ブラック!」

「ゴッドになったところで力の差は変わらん」

 

 ゴッドの炎のようなオーラを迸らせたトランクスの気迫を柳に風と受け流し、掴んだ拳を引いて横っ腹を蹴り飛ばす。

 辛うじて防御したようだが先程のベジータのように吹っ飛んで行く姿を見ることも無く、目的である悟空を見ようとした。

 

「「はっ!」」

 

 取るに足らないトランクスが超サイヤ人ゴッドになったことで試したいという気持ちがゴクウブラックにはあった。復活パワーを使ってのパワーアップとロゼへの覚醒が二重の意味でゴクウブラックに油断を招き、悟空とベジータにフュージョンする時間を与えたのである。

 

「「――――――――一つだけ教えてやろう。貴様を葬るのは、このゴジ―タ・ゴッドだ」」

 

 太陽のプロミネンスのような莫大なオーラが天へと昇って行く。その発生源であるゴジ―タがゴッドの赤髪を靡かせて宣言する。

 

「凄い!? これが父さんと悟空さんが合体した力なのか……」

 

 同じゴッドの位階のはずなのに桁違いパワーに畏敬を抱いたトランクスは勝利を確信した。

 

「メタモル星人のフュージョンか」

 

 ゴジ―タが悟空とベジータのフュージョンした姿だと即座に看破したゴクウブラックに焦りはない。

 

「不遜だぞ、戦闘民族。神の名を冠するなど、百度死んでも償えぬ罪と知れ」

 

 ゴクウブラックは鼻を鳴らして見下し、全身から淡紅色のオーラを更に迸らせる。

 

「ゴッドに成ったところで下等生物に神は超えられんということを教えてやる!」

「「はぁっ!!」」

 

 両者が同時に飛び立ち、ビルの屋上から飛んだゴクウブラックと地上から飛んだゴジ―タが激突する。

 

「ぐっ」

 

 中間地点で激突した内、力負けして弾き飛ばされたのはゴクウブラックの方だった。

 

「「まだまだ!」」

 

 足場にしたビルへと逆戻りするゴクウブラックを追ってゴジ―タが飛翔する。

 

「くっ」

「「瞬間移動に頼ったところで」」

「がっ!?」

「「こっちも使えることを忘れたか」」

 

 ビルを突き抜けて彼我の姿が一瞬とはいえ、見えなくなったことを利用して瞬間移動で退避しようしたゴクウブラックの背後に現れたゴジ―タの回し蹴りが背中を直撃する。

 瞬間移動をする為の集中を乱されたゴクウブラックは、まるでピンボールのように同じルートを逆走する。

 

「「はっ! しぃっ! せいっ!!」」

「ぐふっ!? がっ!? ごぐぅ!?」

 

 ベジータの負傷によって、恐らくは全開時の半分程度の力に留まろうともゴクウブラックを上回っている。ゴッドを安定して使える悟空とベジータの合体だからこそ、超サイヤ人3の時のような合体時間が短くなるようなこともない。それでもゴジ―タに油断はなく慢心もない。

 

「こ、こんなことが……」

「「これで最後だ!」」

 

 瞬間移動をする暇を与えない連撃に瞬く間にズタボロになったゴクウブラックは信じられぬという思いで一杯だったが、ゴジ―タがそのような感傷に浸らせる時間など与えない。

 

「「ビックバン――」」

 

 左手でゴクウブラックを上空へと殴り飛ばしている間に右手は気を溜めており、左手を添えて腰だめに構えた。

 

「「――――かめはめ波!!」」

 

 戦闘不能と呼べるほどのダメージを負っていたゴクウブラックに、ゴジ―タの最強技であるビックバンかめはめ波を受け切ることは出来ず、瞬間移動で逃げる集中力もない。

 迫るビックバンかめはめ波。

 動かない体。

 

「――ふっ」

 

 にも拘らず、ゴクウブラックは笑った。

 

「待たせたな、私」

「遅いぞ、私」

 

 直後、ビックバンかめはめ波は消えた標的を捉えられないまま直進して、成層圏を抜けて宇宙の彼方へと消えて行く。

 

「「誰だ?」」

 

 ゴジ―タは見た。後少しでビックバンかめはめ波がゴクウブラックを呑み込まんとした時、突如として現れた何者かが助け出したところを。

 瞬間移動でビックバンかめはめ波から助け、ゴジ―タから離れたビルの屋上に移動した謎の人物がゴクウブラックの胸の上に手を添える。

 

「危ない所だったな。今治すぞ、はっ!」

「…………助かったぞ。流石に今のは危なかった。しかし、これでまた一歩、究極体に近づくことが出来た」

 

 直後、ゴジ―タから受けたダメージがあるにも関わらず何事もなかったように立ち上がるゴクウブラック。

 

「改めて自己紹介しよう」

 

 ゴクウブラックの横に立つ謎の人物をゴジ―タは勿論、トランクスも知らない。

 

「「我が名はザマス」」

 

 ゴクウブラックと、この世界のザマスが自らの名を告げたのだった。

 

 

 




 安定と安心のベジータの慢心。
 当初は基礎戦闘力25のゴッドの3600倍をかけて90000の戦闘力があったが、ゴクウブラックの奇襲を受けて基礎戦闘力が18にまでダウン。
 フュージョンするには気を合わせなけなければならないので、悟空も18に合わせて合体。
 結果、ゴジ―タ・ゴッドの戦闘力が万全ならば
 25×25/1.5*3600=1500000(150万)が、
 18×18/1.5*3600=777600(77万6千)と、およそ半分にまでダウン。
 それでもゴクウブラックはロゼになると125*4000=500000(50万)なので戦闘は有利に運べていた。

 後少しで倒せたが、この世界のザマスが助け出して復活パワーによって回復。更にパワーアップ。
 基礎戦闘力が125→150にアップし、ゴクウブラック・ロゼの戦闘力は150*4000=60万に到達する。

 パワーアップしてもゴジ―タ・ゴッドの77万6千には勝てないが、ゴクウブラックとザマスがフュージョンのことを知っていたら当然、制限時間のことも知っているはずで……。

次回、『第二十八話 未来決戦・破』

未来のチチは既に死亡しています。しかし、何故死んだのか……

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。