今年最後の投稿となります。皆さま、よいお年を。
死んだと思ったら誰かに呼びかけられ、目を開けた悟空の目の前には界王神がいた。
「なんで、界王神様が? オラは死んだはずじゃ……」
「死んではいませんよ」
頭を抑えながら体を起こした悟空に界王神は断言する。
「あの瞬間、私が瞬間移動で悟空さんを界王神界にお連れしたんです。間一髪でした」
そう言った界王神はブルリと身を震わせた。
よほどのタイミングで悟空は助けられたようだ。
「ただ、死んでもおかしくない傷を負っていたのでキビトの復活パワーを使って貰いましたが、どこか体に痛むところはありませんか?」
「全然ない。助かったよ、本当に」
心配そうな界王神とは裏腹に厳し気な面持ちを崩さないキビトに苦笑しつつ、本当に痛みなどないから悟空は立ち上がった。
「あれ、デンデ!?」
そこでキビトの影に隠れるように立っていたデンデに気付いた。
「ポポさんに逃がしてもらったんです」
そう言って我慢していたのか、デンデは流れた一滴の涙を拭う。
「悟飯さんが天界にやってきて有無を言わさずにピッコロさんに襲い掛かって、ポポさんが僕だけでも安全な場所にとあの世に避難していたところを界王神様とお会いしたんです」
「ってことはピッコロもやられちまったんか。オメェだけでも無事でよかった。流石、ミスターポポだな。これで希望は残った」
恐らくピッコロもベビーの魔の手に落ちてしまったのだろう。
しかし、デンデさえ無事ならばドラゴンボールを使える可能性が残っている。数少ない安心材料であった。
「でも、どうして界王神様があの世に?」
界王神が普段どういう生活をしているのか、悟空には全く分からないがそう頻繁にあの世とこの世を行き来はしないだろうと思って訊ねる。
「実は閻魔大王に聞きたいことがあったので訪れていたのです」
「閻魔大王のおっちゃんを?」
「ええ、ドクター・ミューという者が死んでいるかどうかを」
名前を出されても悟空には聞き覚えの無い名前なのでサッパリである。
「南の銀河を荒らしまわったマシンミュータントの親玉と目されている人物で」
「その話なら界王様から聞いてるぞ」
悟空が言うと界王神は話が早いと続きを口にする。
「四年前から消息が不明なので、もしかしたら死んでいるのではないかと一度聞きに行ったら、四年前の時点で死んで地獄に落ちていました。運良くまだ意識が残っていたので話をすることが出来ましたが」
表情を暗くする界王神に悟空はとてつもなく嫌な予感を覚えた。
「大分、意識が混濁していたので詳細は不明ですが、自分はベビーに殺されたと」
「ベビーってまさか」
「今、地球を襲っているベビーと同一と考えるのが自然でしょう」
話が繋がってしまって二人で顔を合わせた悟空は顔で手を覆って空を仰ぎ、力を失くしたように座り込んだ。
「こういう時に先代の界王神様がいてくれれば知恵を出してくれるのですが」
「いねぇんか?」
「ええ、三年ほど前からフラッといなくなることが増えて、もう数ヶ月は帰ってきていないんです」
魔人ブウとの戦いでは、唯一倒す方法を見い出していた老界王神の不在に悟空は辺りを見渡し、気も感じ取れないことに今更ながらに気付いた。
「界王神様はベビーが言っていたツフル人のことは知ってっか?」
「少しだけですが、ツフル人のことも元は先代様がお調べになっていたことなんですよ」
力なく問いかける悟空に界王神も重い口を開く。
「ツフル人とは、元は地球の10倍の重力がある惑星プラントに住んでいた者達です。身長は平均的なサイヤ人や地球人の約半分程度。恐らくベビーの本体もそのぐらいでしょう」
「今はベジータの体を乗っ取って三倍ぐらいに膨れちまってるけどな」
茶々を入れてしまった悟空は罰が悪げに口を閉じる。
「高度な文明を持っていましたが、他の星から漂着したサイヤ人達を受け入れて共に暮らすようになりました」
家族に襲われた悟空の心情を慮った界王神は話を続ける。
「数百年の間は何事もなく暮らしていましたが、ベジータさんの父であるベジータ王の時代に戦争状態となり、対抗し続けたツフル人はやがて絶滅させられました。ツフル人は滅亡直前にベビーの雛型を完成させ、それをカプセルに乗せて宇宙へと射出したようです」
「そして今に至る、か」
それならばあそこまでサイヤ人に復讐の念を燃やすのかも分かる。
大きな溜息を吐いた悟空に界王神は聞かなければならなかった。
「悟空さん、ベビーに勝てますか?」
「オラ一人じゃ無理だ。アイツは強い。しかも悟飯達まで操られてるとなっちゃ、下手に戦ってもこっちがやられるだけだ」
だが、あの時点でならば悟飯達に邪魔されなければベビーに勝つことは難しい事ではなかった。
「悟飯達さえ正気に戻ってくれれば勝てるはずだ」
「そうですか……」
その正気に戻す方法が分からないからこそ、悟空と界王神は頭を悩ませる。
「もしかしたら超神水なら」
そこで何かを思い出したデンデが呟いた固有名詞に覚えがあった悟空が顔を上げた。
「超神水ってカリン様が持っているアレか?」
嘗てピッコロ大魔王が蘇った時に悟空は一度敗れている。
体の中に隠れ持っている潜在能力を引き出すことができる水ということで、悟空は強く成る為に無理を押し通して飲んだ。
一晩近く苦しみ抜いた末に効力を得ることができたが、ベビーが植え付けたという卵を取り除く効果があるとは思えなかった。
「いえ、神殿の方に置いてある超神水はまた別物です。古今東西あらゆる世界にある毒物を浄化できる効果があるので、洗脳も解けるかもしれません」
それを聞いた悟空の目に希望の光が宿る。
「よし、直ぐに取ってくる! 神殿のどこにあんだ?」
「言葉では説明し難いので僕も一緒に行きます」
「危険ですぞ!」
「地球の危機にジッと待っていることなんて出来ません!!」
止めようとするキビトと睨みつけるデンデ。
その迫力に界王神の従者であるキビトの方が気圧されていた。
「まあまあ、キビト。では、こうしましょう」
強い剣幕なのはデンデの方だが、与しやすいキビトの方を抑える界王神が自分の案を出す。
「神殿に誰がいるかは分かりません。戦闘力を考えたら悟空さんが防御に回り、デンデさんが超神水を見つける。そして私とキビトが囮になるのが一番作戦の成功率が高いと思うのですが」
「界王神様はここでお待ちください。あなたのお命に万が一でもあれば破壊神様まで死んでしまいます」
ナチュラルに自分を作戦に組み込んで自身の命を危険に晒す界王神に頭を抑えるキビト。
「ですが、囮は多い方が」
「囮は孫悟空と私だけで十分です」
「いや、オラだけで十分なんだけど」
「…………私がデンデ殿に同行して超神水を確保次第、瞬間移動を使えば悟空殿も後を追えましょう」
食い下がる界王神を押し留めていたら自身まで悟空に却下されたらキビトは、現状では最善と思える配置を提案する。
これにはデンデも悟空も異存はないので力強く頷いた。
「しかし、超神水もそこまで多くはありません。地球人類全員にまでは到りませんよ」
「…………最低でも悟飯達が正気に戻りさえすれば、後はドラゴンボールでみんなを元に戻してもらうか、超神水を増やしてもらえばいい。ベビーさえ倒してしまえば後はどうとでもなる」
「ああっ!?」
と、超神水が大き目の瓶に入る程度の量しかないことを知っているデンデに悟空が自信を持って拳を握っていると、神殿に誰がいるか確かめていた界王神が大きな声を上げた。
そちらを見れば、地面に置いた水晶で地球を見ている界王神とキビトの姿があった。
「ベビーがドラゴンボールを集めています!」
「なにっ!?」
慌てて悟空とデンデが駆け寄って見ると、水晶には四星球を持つベビーの姿が映し出されていた。
ベビーの傍に部下のように立つブルマの手にはドラゴンレーダーがあり、ベビーが何らかの理由でドラゴンボールを集めさせているのだろう。
「こうしちゃいられねぇ。ベビーがドラゴンボールを全部集めちまう前に超神水を呑ませねぇと」
「そうです。逆にこれは好機でもあります」
焦った悟空が直ぐにでも瞬間移動しようとして界王神の言葉に動きを止めた。
「見る限りでは悟飯さん達が手分けして集めているようです。これなら、悟空さんなら一人ずつ捕まえて超神水を呑ませることも出来るんじゃないですか?」
「そうか……!」
分散してくれているならこちらも手が出しやすい。
スピード勝負になるが決して分の悪くない勝負に悟空は目の前が開けて来た気分だった。
「私はナメック星に行って、万が一を考えてドラゴンボールを集めてもらっておきます」
希望が見えてきた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ボージャック一味を悟空が捕まえたことでやることのない北の界王は優雅にシエスタを決め込んでいた。
「起きろ、北の界王」
「んなっ!?」
誰かにチェアベッドを蹴られて地面に叩き落とされた界王は文句を言おうとして下手人を見て固まった。
「び、ビルス様ぁっ!?」
まさかの人物というか神物にビックリ仰天した界王はアワアワと慌てながら身を正す。
「本日はお日柄も良く――」
「何言ってんの、君?」
殆ど会ったことのない破壊神に何を喋ったら良いのか分からなくて定型の挨拶をしようとしたら、物凄い馬鹿を見るような目を向けられて口を閉じる。
機嫌の悪そうな破壊神の隣で穏やかな天使が苦笑する。
「落ち着いて下さい。今日はあなたに聞きたいことが会って来たのです」
「なんでしょうか?」
相変わらず対照的な二人の神と天使が自分に聞きたいこととは何ぞやと首を捻る界王。
「少し前まで南の銀河を中心として起こっていた様々な星が襲われていたことはご存知ですか?」
そのことは界王も見知っている。
「管轄外ではありますが、マシンミュータントと思われる生命体が星に住む生命を襲っているとは聞いております」
「なら、話は早い」
どう話が早いのかは分からないが、どうやらその問題がわざわざ破壊神と天使ほどの人達が来た理由であるようだ。
「しかし、最近は沈静化していると聞いていますが」
「馬鹿たれ。南の界王が何者かに殺されたことを忘れたか」
ビルスに指摘されたが、マシンミュータントのものと思われる生命搾取は沈静化しており、安易に繋げて考えて良い物かは断定できない。
「時期が合いませんが」
「だから、関係がないか調査に来たんだ」
関係がなければそれでいいが、なんらかの繋がりがあるのならばより詳しい調査が必要になる。
「君の手の者が捕まえたというヘラー一族はどこだい? どうせ何も知らないと思うけど、奴らは南の界王が殺されたからこそ封印から出てきたのなら何か知っている可能性があるから聴取したいんだ」
南の界王が殺された犯人について殆ど何も分かっていないから駄目元で聞きに来たということか。
「大界王様の下におります」
「アイツのところか」
ビルスが苦い表情になったが、大界王と破壊神に如何なる関係性があるのか界王ならずとも気になる所である。
「しかし、よく君の手の者程度でヘラー一族が捕まえられたね」
「孫悟空に頼みましたので、特に苦労は」
「…………ああ、あのサイヤ人なら楽勝だったね」
何故かビルスの視線の温度が下がった気がする。
「ビルス様、北の界王様に当たるのはお止めください」
「別に当たってなんかないよ」
「そういうならば不機嫌オーラを収めるべきですよ」
我知らずにジリジリと足が下がっていた界王の為に天使であるウイスが不機嫌なビルスを注意する。
その注意を受けてビルスも不当な八つ当たりであると自覚してオーラを収める。
「しかし、本当にマシンミュータント程度に仮にも界王が殺されるのでしょうか?」
オーラは収めても視線の温度は上がらなかったので話題の転換を図ることにした。
「そうでもないよ。四年前の起き抜けにマシンミュータントを破壊したけど、フリーザよりも遥かに強かったしね」
嘗てビルスが破壊したザマスのように、鍛えれば破壊神に至れるような強さを持った界王などほぼ皆無である。
北の界王も戦闘力で言えば、北の銀河だけでも大した域にはいない。
「調査ではマシンミュータントの大元と思われる人物はドクター・ミューという者らしいのですが、不思議なことに四年前から人前に姿を見せていないのです」
「僕が破壊した奴はまた別人だよ」
一瞬、界王はビルスが破壊したのがドクター・ミューかと思ったが本人から否定されてしまった。
「南の銀河を中心に広まっていたマシンミュータントの大半は、四年もかけて僕が大体破壊した」
やりたくもない仕事をやらされて機嫌の悪いビルス。
「だけど、大元と思われるマシンミュータントはまだ見つけれていないんだ。そこに来て南の界王が殺されたという話。どうやらマシンミュータントの中には他人に憑りつく能力を持っている者もいるようだから、もしかしたら僕の存在に危機感を覚えて南の界王に憑りついたんじゃないかと思ってね」
推測に推測を重ねた証拠もない暴論であると話したビルスの話をウイスが継ぐ。
「駄目元ではありますが、北の銀河で何か異変の起こっている星などはないかとも聞きに来ました。西と東の界王にも聞きに行く予定です。界王神の奴には閻魔大王に死んだか確認に行かせたのに帰って来ないし」
それぞれの銀河を収める界王は自分の支配権ならば、どの星であっても好きに見ることが出来る。
「異変、でありますか」
その時点で今まで地球が様々な敵に狙われて来たことを知っている界王は嫌な予感を覚えた。
実際にその予感は当たっていたのである。
上げて落とす。
勝利条件:ビルスが地球にやってきて破壊してしまう前にベビーを倒すこと
敗北条件;悟空が敗ける、ビルスが地球にやってくる
余裕だね(白目)
しかし、老界王神はどこにいるんだろうね。