未来からの手紙   作:スターゲイザー

8 / 39
少しの咳と鼻詰まりが酷い作者です。病院に行ったら喉が真っ赤ですねと言われました。温かくなったり寒くなったりしているので皆様も風邪には気をつけてください。



おおよそ、タイトル通りの展開です。




第八話 油断しない悟空

 

 

 

第25回天下一武道会が開催されたパパイヤ島のホテルにあるトイレにて、壊された壁の向こうから月光に照らされた孫悟空は突如として現れた二人組を注視する。

 

「界王様から聞いたことがあるぞ。界王神、いやアンタが界王神様だって?」

 

 悟空は自らを界王神と名乗った少年の方に意識の6割を振り分け、観察する。

 界王とは、各宇宙の銀河を見守る神。1つの宇宙は東西南北の4つの銀河に分けられており、それぞれを4人の界王が見守っている。4人の界王を統べる存在として大界王がいて、悟空の師の一人である北の界王から大界王の上に界王神がいることは聞いたことがあった。

 

「今回、地球に来る前に北の界王から孫悟空さん、あなたのお話は伺っています」

 

 界王の性格からして自分の上に立つような人物に悟空の話をするとは考え難いのだが、界王神の目的に強さが必要であるならば話をしていても無理ではない。

 

「ええ、私達は強い人を探していました」

「…………オラの心を読んだのか」

「不躾ではありますが、今は時間がないのです。私の力を破ったお二人なら頼ることが出来る」

 

 空の彼方へと消えていくスポポビッチとヤムーの姿を追った界王神の顔を見て、悟空は話の真偽はともかくとして時間がないのは事実だろうと判断する。

 

「そこの方はキビトが治します。これからあの二人に気付かれないように、こっそり後を付けます。もしよろしければ私と一緒にあなた達も来て下さい。その時に事情の全てをお話しします」

 

 悟空としても逃げた二人がヤムチャを襲った目的が気になる所であったから、界王神が宙を飛んで行くのを見て少し考える。

 

「どうしますか、お父さん?」

「付いていくさ」

 

 残った厳格な雰囲気の大柄なキビトと呼ばれた男がヤムチャの傍らに膝をついて手を背中に当てている姿からは害する気配は感じ取れず、悟飯の問いに迷いなく答える。

 

「クリリンはどうする?」

「俺は…………残るよ。こっちが安全とも限らないからな。悟飯は?」

「お父さんと一緒に行きます。理由は分かりませんけど、僕も必要とされているみたいですから」

 

 残る決断をしたクリリンとは反対に界王神の言い様から自らも赴くことを期待されていたことを察していた悟飯は迷いを見せながらも言い切った。

 

「これで良い」

「凄ぇ、仙豆を食べたみたいだ」

 

 残る者、行く者が別れた中でキビトが手をどかすとヤムチャが体を起こす。

 

「悟空さ」

 

 そこへ皆と共に悟天とトランクスが前に立ちながらチチがトイレの入り口から顔を覗かせる。

 

「チチ、動くなって言っただろ」

「すまねぇだ。ただ、悟天ちゃん達が悟空さ達が戦ってる気配じゃねぇって言ってたから」

 

 悟天とトランクスが前にいる以上は生半可な奇襲も意味を為さないが不用心すぎる。

 実際、戦闘を行う前に下手人は逃げたわけだがヤムチャが襲われた理由は謎のままである。キビトもヤムチャが立ち上がると界王神の後を追ってしまい、この場で事情を知ることは不可能となった。ならば、襲われた当の本人に聞けばいい。

 

「ヤムチャ、何があった?」

 

 チチらへの注意は後で言うとして今は現状の把握である。

 立ち上がって体の調子を確かめるヤムチャに確認する。

 

「用が足し終えて戻ろうとしたところで、いきなり丸坊主のあの変な二人が襲い掛かって来てな」

「待って下さい。二対一でもヤムチャさんが手古摺るような相手じゃないでしょ」

 

 ヤムーと対戦したクリリンは例え数的に不利であろうがヤムチャが抑え込まれるような実力ではないと知っているので、状況の不自然さに思わず口にする。

 

「酔っぱらってたってそこまで気を抜いちゃいないさ。ただ、振り向いたところで急に体が金縛りに合ったみたいに動かなくなった。そのまま抑え込まれて何かを刺されたと思ったら、どんどん力が抜けていったんだ」

「その金縛りみたいなのは僕達もトイレに入った瞬間に合いました。超サイヤ人になって直ぐに破りましたけど」

「状況的にあの界王神様とキビトって奴のどっちかの力じゃないか?」

「問題はどうしてそんなことをしたかだな」

 

 ヤムチャの話に聞いてトイレに入った瞬間に体を襲った変化に思い当たる節があった悟飯が納得を示し、二人掛かりでヤムチャを抑え込んで何かをしていたスポポビッチとヤムーではなく界王神達の力によるものではないかと推測する悟空。

 その推測が正しいのだとしたら界王神達の目的も不明で、どうして同行を求めたのかも不明なままだ。

 

「やっぱ行くしかねぇか」

 

 不明なままにしておくことは出来ない。悟空はすぐさま決断する。

 

「俺は止めておくよ。お前達と一緒に行っても何も出来そうにない」

 

 クリリンではないがヤムチャも随分と前からサイヤ人と強さには付いていけていない。

 純然たる結果として、界王神と名乗った者が悪であってもその力を破れなかったヤムチャは付いて行かない方が悟空達の為になる。

 

「そう自分を卑下するなよ、ヤムチャ」

「俺は金縛りを破れなくて、お前らは特に苦もしなかっただろう。慰めはいいよ」

 

 ヤムチャが前言撤回しないと分かると、時間もないのでこの話はまた後ですることに決める。

 

「行けるか、悟飯」

「はい」

「俺も行くよ!」

「僕も!」

 

 ここで議論を交わして時間を浪費しては界王神達に追いつくことが出来なくなるので悟飯に最後の確認をすると、トランクスと悟天まで参加を表明した。

 何か未知の事態が起きていると察して目を輝かせている子供二人の前に歩み寄る悟空。

 

「いいか、二人とも。これは遊びじゃねぇんだ」

「それぐらいは分かってるよ。でも、俺達の強さは叔父さん達も分かるよね」

「うんうん、絶対にお父さん達の邪魔にはならないよ」

 

 二人は決してふざけているわけではなく、純然たる事実として戦力は多い方がいいだろうと目を輝かせる。興味本位の面がないわけではないが自分の力に絶対の自信を持っているが故の立候補だった。

 

「駄目だ」

 

 悟空は子供の浅慮をきっぱりと切り捨てる。

 

「確かにオメェ達は強い。だけど、戦いってのはオメェ達が考えているよりもずっと怖いもんなんだ。今はクリリンやヤムチャと一緒に母さん達を守ってくれ」

「「でも……」」

「みんなを守るのも大事な役目だよ。二人は僕と父さんが信じられないかい?」

 

 片膝をついて二人の肩に手を乗せて真摯に向き合う悟空と、少しの茶目っ気を覗かせながらも言う悟飯の顔を見た悟天とトランクスは、それぞれの母親に宥めるように頭を撫でられて不承不承に頷く。

 

「さっさと戻って来ないと俺達も行っちゃうからね」

「ああ、直ぐに戻って来る」

 

 不満を抱きながらも強さに関して悟空と悟飯には自分の実力以上に信頼があるからこそ、トランクスは減らず口を叩ける。

 悟空はチチとブルマに目だけで自分の意志を伝えると、子供達の肩をポンと叩いて立ち上がった。

 

「気を付けてけれ、悟空さ」

「何かあったら直ぐに連絡してね。ベジータを寄越すから」

 

 母親達に子供達を任せて頷いた悟空は、最後に18号を見る。

 

「念を押さなくたって分かってるよ。心配せずにさっさと行きな」

 

 マーロンを抱き抱えながら言う18号に悟空は苦笑しつつ、クリリンとヤムチャにハイタッチしてから宙を飛んで猛スピードで界王神達の後を追う。

 

「悟飯君」

 

 悟空の後を追おうとした悟飯をビーデルが呼び止める。

 振り向いた悟飯に、ようやく常識の枠外に適応し始めていたビーデルは事態の変遷に戸惑いつつも言うべきことを探した。

 

「気をつけてね」

 

 結局、そんなありきたりの言葉しか伝えられなかったが、悟飯は力強い笑みを浮かべて親指を立てて飛んで行った。

 

「死なないでね、悟飯君。無事に帰って来られたらデートとかしたいから」

 

 と、夜空の向こうに瞬く間に消えていった悟飯を見送ったビーデルは自分の発言を近くで聞いてニヨニヨとした笑みを浮かべる女性陣に気付くまで後数秒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の海や山を越えて界王神とキビトに合流した悟空と悟飯は彼らの目的を聞いていた。

 魔導師ビビディが作り出した魔人ブウの恐ろしさと、ビビディの息子のバビディが地球に封印されたブウの復活を目論んでおり、スポポビッチとヤムーは魔術で操られてその尖兵にさせられていること。魔人ブウを蘇らせる為に必要なエネルギーを得る為に天下一武道会を狙うと予測し、下手にスポポビッチとヤムーを倒してしまうとバビディの居場所を知ることが出来なくなるので会場に潜り込んで泳がしていた。

 界王神達にはヤムチャに危害を加える意図はなく、悟空と悟飯の乱入もあって一時エネルギーを得た二人がバビディの下へ向かったのではないかと聞いた悟空達は一定の納得をした。

 

「降り始めましたよ」

 

 気を抑えて先行するスポポビッチとヤムーを追っていると付けられているとは考えもしていないのか、二人が高度を落としていく。

 

「おかしい。この辺りも一応調べたはずだが」

 

 同じように高度を下げながら、丁度良い位置にあった近くの小高い岩山に着地する悟空達。

 

「お二人も気配を殺して…………言う必要はありませんでしたね」

 

 界王神が言う前から悟空と悟飯は最大限に気を殺しており、寧ろ界王神とキビトの方が気配を放ち過ぎている。状況を良く理解している二人に苦笑した界王神は気配を殺して眼下へと視線を移す。

 

「あの二人とは別に誰かいるぞ。あいつがバビディって奴か?」

 

 月光のみの灯りでは見えづらい。ようやく人影が見える程度だが何かのドアが開いてそこから灯りが照らされ、スポポビッチとヤムー以外の人影を映し出す。

 

「いえ、違います。恐らくバビディが操っている戦士だと思われます」

 

 魔術で人を操るのならば、他にも操られている者がいても不思議ではない。ただ地球人には見えないのでバビディが他の星から連れて来たのだろうと悟空は一人で結論を出す。

 

「…………暗闇でハッキリとは見えませんがあの辺り一帯だけ地面が変な感じがします」

「そうか! バビディの奴、船を地中に隠したのだな。それで探しても気が付かなかったのだ」

「宇宙船は目立ちます。地中に埋めて隠蔽工作を図るということは私達がこの地球にやってきていることをバビディは知っているのかもしれませんね」

 

 月明りだけでは見え難いが三人が立っている地面に普通とは違う感じを受け取った悟飯の疑問に、キビトと界王神は一度調べたにも関わらずバビディの居場所が知れなかった原因に至る。

 同じように地面を追っていた悟空の目には、宇宙船が埋まっているという場所から少し離れたところに民家を見つけた。

 

「おかしい。近くには家があるのに灯りがついてないし、気配も感じられねぇ」

 

 かなり近い位置に民家が立っているが夕飯時を過ぎているにしても灯りがついておらず、仮にもう寝ているとしても気配が全く感じられないことはありえない。

 

「お父さん、あそこ」

「あれは……」

「恐らくバビディか、その手の者に殺害されたのでしょう。親のビビディ同様に残忍な性格をしているとすればやりかねません」

 

 悟飯に言われて家から僅かに離れた場所に、夜の帳の中では見難いが家の主と見られる家族が事切れて野晒しにされていた。既に出てしまった犠牲者に顔を歪めた界王神の顔を見た悟空は視線を改めて三人に向ける。

 

「宇宙船の場所が分かったのなら、ヤムチャさんから奪ったエネルギーで魔人ブウが復活する前に攻撃を仕掛けた方がいいのでは?」

「魔人ブウの復活は宇宙船を壊さないように外で行うはずです。もう少し様子を見てその時を狙いましょう」

 

 本当に待つべきなのか、と悟飯の問いに答える界王神に悟空は疑問を抱いた。

 

(恐るべき強さを持っているとしても、それは完全な時の話。居場所が知れた以上は宇宙船諸共破壊してしまった方がリスクは低いはずだ)

 

 勿論、破壊出来ずに中途半端な状態で魔人ブウが蘇ってしまうリスクはあるわけだが、この場には悟空と悟飯がいて界王神とキビトともいる。西の都にはベジータもいるわけだから、ここは多少のリスクを承知の上で先制攻撃を仕掛けた方がメリットは大きいと悟空は考える。とはいえ、魔人を復活をさせないことに越したことはなく、界王神が慎重を期したい気持ちも分かる。

 

「誰か出て来るぞ!」

 

 キビトの声に思考を中断した悟空が視線を眼下に戻すと、宇宙船から二人の人物が出て来た。

 

「ダーブラ!? バビディの奴、魔界の王まで手の内にい、入れてしまったのか!?」

「むぅ……まさかダーブラとは」

 

 現れた人影を見て慄いているキビトと界王神とは裏腹に悟空と悟飯は冷静に相手を見る。

 

「ダーブラってのはデカイ方か?」

「ええ、暗黒魔界の王ダーブラ。この世界でのナンバーワンはあなた達かもしれませんが、もう一つの魔の世界でのトップは完全にダーブラなのです」

「ということは、あのちっちゃい方が魔導師バビディってことですか」

「そうです。非力ですが恐ろしい魔術を使いますので決して侮ってはいけません、まさかあのダーブラですら操るとは…………大誤算でした」

 

 魔界の王であるダーブラがバビディの手下になっていることに、かなり深刻そうな界王神とキビトの二人を横目に見ながら悟空は悟飯を見る。

 

「あのダーブラって奴、どう見る悟飯」

「強い、でしょうけど感じられる力はセルと同じぐらいですね。まだ力を隠しているかもしれませんけど」

 

 悟飯と同じ見立てを立てた悟空は暫し考える。

 強敵ではあるが今の二人にとっては界王神達のように勝算が無くなったと恐れるほどではない。

 この時点で自分達と界王神達との間に大きな認識の違いがあることを自覚した悟空が眼下に視線を戻すと、バビディによってスポポビッチが破裂させられているところだった。

 

「あ!?」

 

 操っているとはいえ、こうも容易く手下を葬った姿を見て悟空はバビディを倒すべき敵と結論付ける。

 悟空が決意を固めている間にも、仲間を殺されたヤムーがバビディに恐れを為して逃げ出したが、名前が出されていない戦士の気弾によって消滅した。

 

「悟飯、オラを守れ」

 

 その瞬間、悟空は情けを捨てた。悟飯に言ってかめはめ波の体勢を取る。

 

「か」

「孫悟空さん、何を!? それでは敵に」

「め」

 

 真っ暗な夜の中でかめはめ波の溜めの最中は光って目立つ。

 界王神が止めようとするが既に遅い。これだけ目立てばバビディ達にも居場所がバレているはずで、予想通りダーブラが超スピードで襲い掛かって来た。界王神も迫って来るダーブラに気を取られて悟空の行動を止めることが出来ない。

 

「は」

「だらぁっ!」

「ぐっ!?」

「め」

 

 悟空の言葉から意図を読み取っていた悟飯が超サイヤ人2に一瞬で成って気功波を放つ体勢になっているダーブラを蹴り飛ばす。

 まさか自身を上回る速さで迎撃されるとは思っていなかったのか、まともに腹に悟飯の蹴りを受けたダーブラがピンボールのように跳ね戻って行く。

 

「波っ――!!」

 

 悟飯に全幅の信頼を寄せていた悟空の目は宇宙船の前にいるバビディにだけ向けられており、最初から邪魔などなかったように民家の直上に瞬間移動して(・・・・・・・・・・・・)かめはめ波を放つ。

 

「バビディ様!?」

 

 名前も明かされなかったプイプイが主の名を呼ぶが、もう遅い。

 放たれたかめはめ波は、スポポビッチとヤムーが引き連れて来た界王神とその仲間を餌程度にしか考えておらず、この二重の奇襲(・・・・・)を予想すらしていなかったバビディ達を襲う。

 先程までいた場所から遥かにずれた場所からのかめはめ波が直後に着弾、爆発が起こり、大きなキノコ雲が夜空に広がる。悟空は自らが放ったかめはめ波の衝撃から遺体を守る。

 

「気は、感じませんね」

 

 悟空の隣に着地して超サイヤ人を解いた悟飯が辺りを見渡し、自身が蹴り飛ばしたダーブラや宇宙船の傍にいたバビディ達の姿は見えず、また気も全く感じられないことを確認する。

 

「む、無茶をしますね……」

 

 発生した局所的な地震から離れる為に空を飛んだ界王神が頬を引き攣らせ、悟空の近くに下りて来る。

 

「悪い、界王神様。勝手なことしちまって」

「いえ、ダーブラのあの反応の速さからして、どうやら私達は誘い出されたようです。結果的にはこれで良かったのかもしれません」

「しかし、界王神様……」

「認めましょう、キビト。私達はダーブラに反応すら出来なかったのですから」

 

 油断なくかめはめ波が着弾した地を見つめていた悟空が界王神に謝るも、突発的な悟空の行動に最適ともいえたダーブラの反応に自分達が誘き出された事実を悟って顔を歪ませる界王神。

 同行したキビトがあまりの力技と独断専行を認めてよいものではないと物申そうとして、界王神の言うように立っていることしか出来なかった自分達には何も言う資格はないと告げる。

 どのように表情を作ったら良いのか、分からないといった風情の界王神が宇宙船があった荒野に深々と出来たクレーターの端から覗き込む。

 

「すまねぇ、界王神様。勝手なことしちまって」

「いえ、少々力技の嫌いはありますが避けられるタイミングではなかったですし、流石にバビディとダーブラも死んだでしょう。魔人ブウ復活の兆候も見受けられません。お二人のお蔭です。礼を言います」

 

 隣に立ってクレーターを覗き込みながら独断専行を謝る悟空に界王神が頭を下げる。

 少し経っても魔人ブウが復活する様子はないので今のかめはめ波で吹き飛んだか、封印が破られなかったのか。どちらにせよ、復活していない以上は二人のお蔭でバビディ達を倒せたのだから頭を下げることに躊躇いはない。

 

「犠牲者たちの埋葬しないといけませんし、詳しい調査はこちらで行いますので、お二人はご家族の下へ帰られては如何ですか? また後日にお礼に伺わせてもらいますので」

「礼なんてそんな」

「勝手に付いてきたのはオラ達なんだ。礼なんていいさ。ただまあ、チチ達も心配してるだろうし、本当に任せてもいいんか?」

「寧ろこれ以上、お願いすると心苦しいです」

 

 恐縮している界王神とその後ろで仏頂面をしているキビトを見るに長居する方が為にならないと判断した悟空が悟飯を呼ぶ。

 界王神がキビトに彼らを送って行ってもらおうとしたところで、悟空と悟飯が瞬間移動でいなくなった。

 

「彼らは瞬間移動も使えるのですね」

「下界の人間にしては確かにやるようですな」

 

 その利便性に比例するように習得自体がかなり難しいので悟空が瞬間移動をしたことに素直に驚きを示す界王神と、少し認め難いが功績と行いは評価すべきであるとキビトも頷く。

 

「孫悟空さんは北の界王が言っていたように面白い人でした」

 

 苦笑交じりに述懐した界王神は表情を改めてクレータの底に身を躍らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 界王神とキビトがいる荒野から遠く離れた山野にそれらは突然に現れた。

 

「アイタッ!?」

 

 ドテッとバランスを崩して転んだその人物は直ぐ近くにあった球体に頭をぶつける。

 

「いてて、いきなり一発かまして来るなんて予想外だったね。それに危機が迫った時に発動する緊急避難転移魔術がこんなに乱暴だったなんて思いもしなかったよ」

 

 その人物は打った頭を擦りながら今の状況を理解しようと辺りを見渡した。

 

「命とコレがあっての物種だけど、まさか界王神があんな手に出て来るとは予想していなかったよ。それにダーブラを倒す奴が地球にいるなんて聞いてない」

 

 ブツブツと言いながら一通りの悪態をついて不満を吐き出し満足したことで顔を上げる。

 

「宇宙船も無くなって、ダーブラも死んじゃった。強い奴が何人もいるみたいだから今までのやり方じゃ拙い。まずは使える手下を揃えて、邪魔してきた奴らからブウ復活に必要なエネルギーを得ないとね」

 

 残ったのは自分の体とブウ復活の玉のみ。それだけあれば十分とばかりに玉を浮かせて安全な場所に向かって運びながら笑う。

 

「このバビディ様に喧嘩を売ったんだ。ただで済むと思わない方がいいよ」

 

 バビディは空で輝く月を睨み付け、暗い執心を全く隠すことなく山の奥へと消えていった。

 まだ何も終わってなどいない。全てはこれから始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バビディの魔人ブウ復活未遂の数日後、孫家に遊びに来たビーデルは目を丸くした。

 

「ビーデルの姉ちゃん、俺達と一緒にドラゴンボールを集めようぜ!」

「ようぜ!」

 

 丁度、遊びに来ていたトランクスと調子を合わせた悟天に言われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




舐めプなし、油断なんてしない。速攻でケリをつけようとすると、必ずしっぺ返しがやってくるものです。



次回、『第九話 逆襲のブロリー』


 

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。